ISSUE ものづくり

2 years ago - 2014.06.07

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自分が間伐した富士ヒノキをファブラボ鎌倉でDIY!森とつながるきっかけをつくる体験型ものづくりイベント「FUJIMOCK FES」

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「日本の森を元気にしたい」そんな願いを抱いて、森とともに歩む人々がいます。

普段あまり森と関わることがない人たちが実際に間伐を体験し、伐採した富士ヒノキでものづくりをしていく。そんな私たちの暮らしと森をつなぎ、さらに素材とつくり手の新しい関係を生み出す実践の場が「FUJIMOCK FES(フジモックフェス)」です。

今回は、クラウドファンディングなど様々な支援を受けて2回目の開催を実現したフェスティバル当日の様子をお届けします。
 

FUJIMOCK FESの4つのパート。2013年は「FAB」が二ヶ月に延長となりました

「FUJIMOCK FES」は、富士山(FUJI)の間伐材で、アイデアをかたちに(MOCK-UP)するフェスティバル(FES)という意味。“暮らしの中にある森”をテーマに、間伐した樹木の乾燥から実際に作品が完成するまで、約半年間をかけて参加者自らアイデアを形にしていくプログラムになっています。

ホールアース研究所やファブラボ鎌倉、それに若手木こり集団といった、各分野のプロフェッショナルがサポートしていることも特徴のひとつ。主に都会で暮らしながらデスクワークをしている方々が多く参加していますが、様々な年代の人たちも関わることで、世代を超えた交流が生まれています。

参加者と森の伝え手で一緒につくる新しい”木育”

「森のことを考えるなら、10年続くような取組みでありたい」と語るのは、立ち上げメンバーのひとりで「ファブラボ鎌倉」代表の渡辺ゆうかさん。その思いをもとにクラウドファンディングに挑戦し、122人のサポーターから115万円もの支援を集めることに成功しました。
 

和紙の工法を応用し木の布でつくられたエプロン姿の渡辺さん(協力:株式会社和紙の布、制作者:KULUSKA)

日本は世界でも有数の森林大国でありながら、林業をとりまく環境はますます深刻な状況に陥っています。森を健やかに育てるために、増えすぎた木を間引き、森に入り光を入れる必要がある。まずはそこを新しい「ものづくり」で解決したいと思ったんです。

「FUJIMOCK FES」は、自然の中で素材とつくり手がじっくり木と向き合い、最新技術を駆使しながら思いっきり試行錯誤できます。生活と近い形で森を意識できるような、そんな新しい”木育”の形を目指しています。

木や森を知ることで、日本の森を意識する機会に


静岡県富士宮にあるホールアース自然学校と神奈川県鎌倉市にあるファブラボ鎌倉の2拠点連携事業

間伐体験の場所は、富士の麓にある田貫湖近くの富士ヒノキの森。台風の影響で、当初の予定から遅れるハプニングもありましたが、2013年11月10日に無事開催することができました。参加者は安全確保のためヘルメットを着用し、若手木こり集団の指導を受けながら間伐体験に臨みました。

間伐前の森は光が入ることがなく、昼間であっても暗がりの印象。そこから、チェーンソーやノコギリを手に伐採していくことで、ようやく光が射し込んできます。安全を確認しながら、木を倒す方向を探ることも楽しみのひとつ。参加者同士で協力しながら、最後はロープで引っぱって倒します。
 

切り倒した木に手を当てて、年輪の説明を行う鈴木さん

切り倒したばかりのヒノキから木の優しい香りが漂う中で、年輪が語る木の生い立ちについて丁寧に教えてくれたのが、木こりであり樹木医でもある鈴木礼さん。参加者は自分で伐採した木に触れながら、その木が過ごしてきた年月に思いを寄せてゆきます。

年輪といえば、一年に一本ずつ輪が増え、それを数えることでその木の樹齢を知ることができるもの。それは子供でも知っているくらいポピュラーな話ですが、年輪が語るものはそれだけではないことはあまり知られていません。木は、人のように話し伝えることはできない。だけど、年輪という形で自らに起こった出来事を刻み込んでいきます。とても正直に。

あるベテランのきこりが「木とよく対話しろ」と言っていました。木と向き合い、発信するメッセージを読み解くことで、生い立ちだけでなく、今後どう手入れをしてほしいのかを予想することもできる。それくらい年輪には多くのメッセージが込められているのです。

木を初めて切り倒す体験をした参加者の方々からは、「普段は自然に触れることがないのですが、『こうして木は生きてきたのだな』と思うと身近に感じますね」といった声。まずは木そのものを知っていくことで、森と私たちの暮らしは近づいていくのかもしれませんね。
 

森で間伐体験を終えてヒノキを手にする参加メンバー

日本の森を元気にしたい!木×デザインで思い描く森の未来

森での間伐体験を終えた後は、ホールアース研究所の施設に場所を移して「木こり特製バーベキュー」!そこでは森林に生息している野生動物と森の関係といった話を聞きながら、後半のセッションへと向かっています。

ここで登場する木こりの前田剛志さんは、天竜杉で有名な天竜を拠点に活動しています。日本の森事情に詳しく、FUJIMOCK FESで何ができるのかを前向きに考えている一人です。
 

日本の森の歴史を参加者へ伝える木こりの前田さん

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実際に森から切り出してきた材の読み方を学ぶ

戦後復興の後の拡大造林で造られた山は、材価の低迷とともに見捨てられています。天竜杉で名の知られる天竜でも、梢に近い細い部分は採算が合わないために山に捨てられているんです。それって単純に「勿体無い」ですよね。他所から来た自分にとっては。何十年と生きてきた木が、伐られ、捨てられ、朽ちてゆくことが忍びないのです。

なんとかそんな木を生かすことができないか?いろいろ模索して出たヒントが”木×デザイン”でした。FUJIMOCK FESに全力投球するのは、そこに答えを見つけたいからなのかもしれません。

森の生態系についても多くの質問が寄せられ、質疑応答にも熱がこもった時間。参加者の人たちは木こりの暮らしについて話を聞きながら、手にした木材をどう暮らしの中でいかすのか、これからのものづくりのフェーズを楽しみにしている様子が伝わってきました。
 

FUJIMOCK FESへの思いを語る山崎さん

この日の最後に登場したのは、ホールアース自然学校事務局長の山崎宏さんです。参加者へのメッセージとして、山崎さんはこう語ってくれました。

日本の森を元気にするためには、そこに生えている木の付加価値を高めていくことが必要です。そのためにはクリエイターやデザイナーが持っている発想力が鍵だと考えています。そういう意味でも「FUJIMOCK FES」は、森に新たな価値を与えてくれる可能性がある人たちが集っていることが非常に魅力だと思います。

参加者が実際に木を切り、木に触れ、日常的に木に触れている木こりから話を聞くことによって、どんなインスピレーションが沸いてきて、どう形にしていくのか。私もそこがすごく楽しみです。

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富士の森セッションを終えた参加者の集合シーン

デジタル工作機械と日本の知恵を活かすこと

富士山の森での間伐体験を終えた一行は、いよいよ鎌倉に舞台を移して、富士ヒノキ使ったモックアップ制作に入りました。ファブラボ鎌倉でレーザーカッターなど最新のデジタル工作機械を使い、作品をつくりあげていきます。

昨年は1日だった期間を2ヵ月に延長したり、作品の完成度を向上させるために仕上げの技術にこだわったり、二年目に向けてバージョンアップされた鎌倉セッション。渡辺さんもたくさん試行錯誤できる環境が、どう作品を変えていくのかを楽しみにしている様子でした。
 

木工家具デザイナーの犬塚さんのアドバイスを受ける参加者


木製のサラダボール(制作者:浜田雄)

普段はプログラマーとして働いているエンジニアの参加者は、木製のサラダボールを制作するために、プログラミングで造形を書き出し、レーザー加工に挑戦中。その後ろでは無垢材の表面にヤスリをかける参加者の姿も。こうした「素材と加工法の試行錯誤がこのフェスの醍醐味」と渡辺さんは話します。

鉋(カンナ)で富士ヒノキをやする、この行為ひとつにもいろいろな知恵がつまっているんです。刃の研ぎ方、ヤスリ方、身体の使い方など。デジタル工作機械とこうした日本の知恵を上手く活かした場づくりは、あらためていいなと実感しました。

 

鎌倉でFUJIMOCK FES 参加者による発表会

そして2014年3月8日、サポーターとして応援してきた方々も見守る中、参加者が心をこめてつくった作品のお披露目となる「FUJIMOCK FES発表会」が開催されました。木の靴や木の布まで、まさに豊かな発想力が生み出した素敵な作品が勢揃い!これからのデータは、「FabTools」というサイトで公開されており、素材と作り手のオープンな関係性が新しいモノづくりの可能性を感じさせます。
 
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間伐材を使用した新たな素材へのアプローチ。和紙の工法を応用し木の布で、キモノの制作も思案中。(協力:株式会社 和紙の布)


丸太からできた靴。地道な作業で片方は手作りで完成させ、片方はスキャンしてデジタル工作機械でつくってみたいとのこと(制作者:相澤知宏)

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回路をいれるための「Wood Beacon Case」


富士ヒノキのキーホルダー(制作者:昨年の参加者である駒野美智さん)

素材や生態系についてゼロから考え、自分のアイデアをカタチにしていった参加者たち。ファブラボ鎌倉の渡辺さんは、今年の「FUJIMOCK FES」の成果についてこう振り返ります。

一緒につくる意味と価値だったり、素材特性を研究するだけでなく、流通や販売のあり方や場づくりまで様々なアプローチが含まれていて、とても示唆に富んだ提案ばかりでした。最初はそれほど林業に興味がなかった方々が、ここまで熱を持って語ってくれたことが何より嬉しかったですね。

1年目は林野庁の補助事業としてプロジェクトが成立し、2回目は何もサポートがないところから始まり…たくさんの方々から支援をいただいて実現できましたが、今回は、昨年行けなかったところまで踏み込めたような手応えがありました。そだからこそファブラボ鎌倉としても、間伐材を活用した素材を開発したり、新しい設備を導入したり、もっとチャレンジしていきたいと思っています。

FUJIMOCK FES2013
発表会の様子

間伐してから発表会までに、参加者全員が何ヵ月もヒノキと生活をともにすると、みんなの家がヒノキの香りでいっぱいになるのだそう。その香りこそ、何より森と暮らしをつなぐ大切な仕掛けなのかもしれません。

現在の日本の森の状況を知るには、データだけではなく実際に森に入ってみることで実感できるもの。その機会はきっと日本中にあるはずです。みなさんも、今住んでいる地域の森に訪れることから始めてみませんか?

FUJIMOCK FESのプロジェクトを見てみよう
FUJIMOCK FES

writer ライターリスト

藤本 あや

藤本 あや

greenz ジュニアライター 広島県出身、鎌倉市在住。デザイナー、ライター。ときどき旅人。暮らし、働き方、食、ものづくり、地域、学びが日頃から気になるテーマ。 ものづくりをコミュニケーションの場として捉え、もの/コト/場をつくるKULUSKA(クルスカ)に所属。全国各地を訪れ参加型のワークショップ「旅するデザイン」を展開している。つくるひとを育む「自分でつくる教室」主催。地域に仕事をつくること、誰かと誰かの笑顔がつながる未来をつくることが目標。 暮らしの目線と旅の視点を行き来するリトルプレス「旅と手紙のある暮らし」を準備中。

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