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2 years ago - 2014.04.29

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電気を使わなくなることで、生まれる何かがある。三宅洋平さん×江原春義さんが語る「これからの文明論」とは?(中編)

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前回の「三宅洋平さん×江原春義さん対談(前編)」では、理性的な科学の言葉を学び、対立する価値観を持つ人々に対話を、そして、代替案を提示しよう、という話が展開されました。

続く今回の中編では、マーケットと政策の切っても切れない関係の話から始まります。R水素がつくる新しくて小さな経済はどうすれば実現するのか、三宅さん、ハルさんと一緒に考えてみましょう!

前編をまだご覧になっていない方は、「R水素って何?」という話もふくめてそちらからお楽しみください。

政策はマーケットをつくる役割がある

ハルさん 現状の税金の使い方は、R水素という地産地消のエネルギー産業が形成され、商品が量産されて普及が進むには、ほど遠い状況なんだよね。

一方では、化石燃料産業には、巨額の補助金(※1)が呼び水となって、金融機関や企業の莫大な投資が流れ込んでいる。そして、この巨大な化石燃料産業が、世界経済全体を、地球の生命維持システムを壊す方向へと猛スピードで突進させる原動力になっているんだよね。化石燃料会社や電力会社の株主も社員も、政治家、官僚も、メディアも、誰もがこの地球に依存して生かされているのに。

しかも、化石燃料はグローバルな金融マーケットで商品としてトレードされていて、投機の対象になり、価格が乱高下するリスクもある。

一方で、R水素がつくる経済は、地球のエコシステムを壊さない、エネルギーを地域内循環させる小さな経済。地域でつくって貯めて使うからね。地域に眠っている、枯渇しない再生可能エネルギー資源を活用することで、地域内でお金が回る。

グローバルな金融マーケットのマネーゲームに振り回されないし、巨大送電網のような大規模な設備も必要ない。つまり、R水素は持続可能な循環型の地域経済を後押しするんだよね。

例えば、東北芸術工科大学の三浦秀一准教授が試算した資料によると、人口120万人の山形県の場合で、年間の農業販売額約2000億円に対して、重油・灯油・ガソリン・電力の消費額が約2410億円。この、ほぼ県外や海外に流出している2410億円を地産地消で取り扱えれば、今の農業と同じぐらいの規模の産業と雇用が地域に生まれるんだよ。
(情報提供: エネルギーシフトヤマガタ

だけど、IMFのレポートにもあるように、地産地消のエネルギー産業がちゃんと利益を出して成長するためのインフラ整備には、十分な税金がまわっていない。

三宅さん 長距離の送電網の整備・維持も要らない?

ハルさん そう。近所に1つ、発電設備をつくればいい。化石燃料もいらないし、原子力も要らない。
 
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オーストラリア、グリフィス大学のオフグリッドのR水素教育棟

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屋根は、数多くのソーラーパネルが組み込まれている。

ハルさん で、世界に14億人いると言われている電気のない生活をしている人々も、シンプルなR水素でエネルギーを供給することで、いまの文字通り「パワーのない状態」から脱する事ができるんだよね。

三宅さん うーん。補助金がまわっていないから産業が生まれないと言うけど、もし僕が大企業のいちメンバーだったら、「みんながやらないんだったら、オレの会社で水素発電システムをつくって、安い電気ばんばん売ろう。電気のシェアを、原子力から奪っちゃえ」ってなるけどな。そう思う人はいないの?

ハルさん それを実現するには、政策、つまり税金の使い道の問題をクリアしないといけなくて。マーケットをつくる役割を担う政策がR水素を無視しているからね。企業はHITACHIも、東芝も、水の電気分解や燃料電池の技術を当然持っているけど、会社の規模からすると、セクションが小さい。国の予算がつかないから、細々とやっている。

原子力は国策だから、会社としてもボーンと予算をつぎ込んじゃう。国のスタンスが、技術を持っている企業の中の原子力セクターと水素セクターの力関係に影響してくるんだよ。

第二次世界大戦後に原子力の平和利用が謳われて、日本国内でも原発の市場化に向けた動きがはじまり、オイルショックを機に「エネルギーの安定供給が喫緊の課題だ」ということで広まったのと比べると、R水素の基本的な技術(水の電気分解や燃料電池)は産業革命の頃に発見されているんだよね。全然新しい技術じゃないの。「人工光合成」も1972年には世間にリリースされていて、こちらも新しい技術じゃない。

だけど、水素は気体だから扱いにくくて、コストが高いとされてきちゃったR水素ビジネスは、完全に成り立たないとされてきたのではないかといえるね。

三宅さん 石油の方が液体だから扱いやすく、便利で安い、という話でここまで来た、ということね。

ハルさん 実際には補助金漬けだから末端価格が安いだけなんだけどね。莫大な富と権力が一極集中する社会のかたちをつくりたいひとにとっては、R水素は不都合だった。だから、ぼくは世界中でこれを隠してきたんじゃないかと思っているんだよね。

三宅さん その石油メジャーとか原発メジャーとかを牛耳っている人たちのなかで、自分たちでR水素やって儲けようみたいな考えはないの?

ハルさん やろうとするパフォーマンスはある。でも、R水素は化石燃料や原子力に比べたら、今までのようには儲からないんじゃないかな。古いしくみの方が圧倒的に儲かって権力を持てるからから、誰も本気でやろうとはしていない。

三宅さん それはじゃあ、意味を理解していないってことだね。電気とかエネルギーを供給ことが目的じゃなくて、巨大な設備とか、要は複雑で摩擦が多いほど彼らには都合がいいんだね。

ハルさん たとえば、政府が政策で明確な意志を持って地域循環型のR水素のマーケットをつくろうとする方向性を示せば、研究開発や普及のために税金が投入されて、企業も安心して投資を始め、こういう機械(写真)が量産されるようになるだろうね。

待ってても来ないからこそ、取りに行く

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三宅さん そこで注意が必要なのは、現段階では、こういう機械をつくるのにも化石燃料がいるってことだよね。だけど、だからって「ダメだ」と思考停止になる必要はなくて。

少なくとも、今の、使い捨てのバッテリーや、化石燃料で化石燃料を使う機械をつくるというループにはまっているよりは、こっちにスライドしたほうがいい。ソーラーパネルにしたってそうだけど、マテリアルをつくること自体には、どうしても負荷があるじゃん?

だから、パネル自体が地球上に増えることはやっぱり苦なんだけど、1枚買ったら、1人が10年は使うから。ゴールではないけど、今はまっているループよりは、質が向上していくだろうね。

ハルさん それで言うと、いまの再生可能エネルギーは、技術レベルはまだ開発段階といっていいレベル。クオリティも低いし、いろいろな問題がある。それも、結局はマーケットができないということが障害で、企業に改善のチャンスが与えられていない。

携帯電話が最初どれだけ大きくて重かったか、覚えている人もいると思うけど(笑)マーケットができないと、品質の向上も量産によるコストダウンも起きないんだよ。今回、FITでマーケットができたから、再生可能エネルギー発電に関しては産業界がわーってやりだしたけど、水素はまだ。

R水素システムが完成しちゃったら、電力会社だけでなく、石油業も石炭業も変化を迫られる。だから、R水素のマーケットができないような政策をいっぱいつくっている。説明しきれないぐらいいっぱい。だから、何十年も前からずっと、「将来的にはR水素が理想だけど、コストやインフラなどの問題があるから実現はまだまだ未来」ってずーっと言われてる。

つまり、待ってても永遠に来ないんだよ。だから、みんなで取りに行くものなんだよね、小さなコミュニティ単位でやっていこうよ、と言いたい。(都知事選に立候補した)細川護煕さんなんかが、脱原発だけじゃなくて、R水素もあわせてアピールしていってくれると、切り開けてくるとも思う。

三宅さん 「みんなで取りに行く」っていうスタンスは、大事だよね。国がやらないし、国の代わりにやるってことで、公共事業費を取りにいくとしても、時間がかかるし。だから、いずれそういう日が来たときのためにも、まずモデルケースを自分たちでやることからじゃないかな。

ハルさん うん。つまりは、一人一人に責任を持たせるってことなんだよね。今は、誰もが無責任だから。その道筋として、小さなコミュニティでR水素に取り組む。そうすると、成功体験が生まれるじゃない。「自分たちで電気やガソリンにかわる動力源をつくれた!」という。その成功体験となる一つのモデルが、大きな影響を与えるんじゃないかな。地域の絆も取り戻せる。
 
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2012年の「Rio+20」では、「R水素ネットワーク」のブースを出した江原さん

R水素はいろんなニーズを満たすもの

三宅さん マーケットという視点に話を戻すと、ニーズはどこにあるのかな?

オレん家は、今150Wのソーラーパネルと車で使われているのと同じ鉛電池でつくったシステムで生活してて、今の倍ぐらいにすればなんとか賄えそうなんだよね。今使っている設備を11万円ぐらいでつくれたから、あと10万円ぐらい追加して、いろいろ変えちゃおうと思うのね。冷蔵庫と洗濯機は節電型のにするとか、非電化型も考えてる。

そうなってくると、うちの場合、R水素さえ必要ないんだよね。ただ、考えなきゃいけないのは、ソーラーシステムはゴールじゃないってこと。いろいろと負荷が高いでしょ?その課題を、R水素を導入することで、どれぐらい解決できるかが知りたい。R水素はどんなニーズにこたえられるんだろう?

ハルさん 電気をためる機能を担えるという視点で言えば、バッテリーと比べて技術的な伸びしろがめちゃくちゃある。すでに再生可能エネルギー電力を水素で貯める発想は、大企業による実証実験の段階まで来ている。
(出典: 「余剰電力、水素で貯蔵 東芝が英で11月から実験 ~再生エネ出力変動を吸収」

それから、R水素は家庭用の電力の用途だけじゃなくて、2015年に日本の大手自動車メーカーが市販を開始する燃料電池自動車の動力源にもなる。個人単位ではなくて地域単位で、それも、電気だけじゃなく車とかも包含した地域循環型のエネルギーシステムをつくる上で、扇の要のように機能してくるのがR水素なんだよ。
 
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HONDAが2011年に建設した、ソーラー水素ステーション

ところで、洋平くんみたいに自分が実験台になってチャレンジして、300Wでいける!って言ってる人は稀で(笑)。多くの人はR水素じゃ「量が足りない」というんだよね。だけど、今の文明のあり方そのものがおかしいんだよ。アメリカ産のマグロを日本で加工して、またアメリカに返すとか、そんなバカげたことやってる。

そういうグローバルビジネスで排出されるCO2は、どこの国もカウントしてない。地域で循環できるものは、どんどんまわしていかないと。そうすると、地域経済も活性化していく。だから、R水素を伝えるときは、文明全体のあり方も伝えないといけないんだけど。

三宅さん その類いの話は僕も経験がある。そういう場面で、「文明のあり方を変えよう」と言うと、「それじゃ経済がまわりません」ってすぐに「経済」が引き合いに出されるんだよね。経済っていう言葉が免罪符のように使われる。

でも、厳密に言えば「経済がまわらない」んじゃなくて、「それを言っているあなたたちが困るだけですよね。」っていう話なんだよ。ここではもう、違う経済ができてますよっていう話だよね。

ハルさん あと、「成長の限界」というテーマを持ち出さないとね。今の経済は無限に成長できることが前提になっているから、そこも「違う」ということを伝えなければいけない。

電気も、食べ物と同じように無駄にしないようにって考えるようにしないとね。さっき、14億人が電気のない生活をしてる話をしたけど、彼らが電気を得たら、夜に明かりがあるってことに感動すると思う。だけど、ぼくらにとっては当たり前過ぎちゃって、もうありがたみを感じない。「エネルギーも、食と同じように大事に使おうね」という考え方へのシフトが必要だと思うね。

僕の友達が宝塚で派手なお店をやってたわけ。阪神大地震のときに、そのひとが僕に、「あんな店は何の役にも立たないということが、よーくわかりました」って言ったんだよね。

本当に大事なのは命だから、余分なものは要らない。シンプルで素朴な道具と、衣食住が足りていれば充分という考え方にシフトしないと、もう地球は限界だから。そういう考え方にシフトしたライフスタイルを実践して、あとは政治的なアクションに参加することが大事。

たとえば、ぼくらの提案に対して、日本の電気が足りる・足りないと考え始めるひとが多いんだけど、そもそも電気を使い過ぎているってことに当たり前に気づくような、新しい価値観にシフトすることを考えてもらわなきゃダメなんだけど。
 
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ポータブルなR水素充電グッズ。
水素をつくる・ためる・つかうことができる、ハイドロフィル&ミニパック。

電気を使わなくなることで、生まれる何かがある

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三宅さん 日本人が少し努力をすれば、使用する電力なんて簡単に半分に減らせると思うね。ここからは、またプラグマティックな投げかけにならざるを得ないんだけれども、電気を使わなくなることで、生まれる何かがある。電気に頼っていた自分の身体が動き始めたりする。たとえば、運動量が増えるだけでも、気分がいいし、足腰も丈夫になるし。カロリー消費がよくなる。

人間こそが最大の自然エネルギーで、みんなの10分歩くのが苦じゃない精神状態は、使わなくなった電気の価値に勝るはず。さらに、往復20分歩くことには、一石三鳥ぐらいの効果があるとかね。そういう人間力を磨こうというのは、決してストイックな話ではなくて、「気持ちいいことに気づく」という快適性の話なんだよ。

歩くと、精神的にもハイになるし、病気も減る。社会的な医療費も減る。老人の病気をみると、「歩かなすぎでしょ?」ということが原因だからね。「面倒くさい病」なんだよね。

この重大な「面倒くさい病」をなんとかしないと。だってさ、いまの一般企業的な日本人の肉体能力だったら、2000年前では生きていけないと思うよ。退化してるんだから、人として。筋力、腕力、なにもない。骨も弱い。神経だけ過敏。エネルギーの話をするときに、そういうところを話題にしていくことって、すごく大事だと思うな。
 
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極論を言えば、R水素化したりして、どんなにエネルギー源がクリーンになっても、エネルギーを消費すること自体が熱を生むでしょう?そうすると、人類全体の活動量が多すぎるから、地球温暖化が起きているという考え方ができる。そういう意味では、ぼくらはもっと、休まなきゃいけない。社会全体で熱量を下げなきゃいけないよね。

ハルさん うん。必要なのはパラダイムシフトだね。

※1)IMF-国際通貨基金-が2013年1月28日付けで発表したレポート「エネルギー補助金改革-教訓と影響-」の日本語訳(2013年3月27日付け)によると、エネルギー補助金の総額は全世界で1兆9000億ドルに達する。

これにより、ガソリン1ℓとペットボトルのドリンク500mlの価格がほぼ同じというように、エネルギーの末端価格が歪められ、低く抑えられている。結果として、(化石燃料依存からの脱却に)必要なインフラへの投資がほとんど行われていない上に、公衆衛生や教育分野への投資に資金がまわらず、人的資源の発展を蝕んでいる。

(構成: 浅倉彩)

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