ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

2 years ago - 2014.04.28

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いま一点突破するべきはエネルギー問題!三宅洋平さん×江原春義さんが語る「これからの文明論」とは?(前編)

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2013年7月の参議院選挙で「政治をマツリゴトに」のスローガンを掲げて立候補し、17万票を獲得した音楽家の三宅洋平さんと、自然化粧品メーカー「kogendo」やウェブマガジン「greenz.jp」、再生可能エネルギーと水と酸素と水素がくるくる永遠に回るエネルギーのかたち「R水素」社会を推進する「NPO法人R水素ネットワーク」を立ち上げた起業家の江原春義さん

問題山積みな私たちのエネルギーや政治の現実を、自らが変化となって進化させる志向を持つおふたりが、三宅さんが暮らす沖縄県本部町の公設市場で対談しました。

江原さんの解説から始まったお話は、科学への感度や理性、経済、そして勇気や精神エネルギーへと展開して…「ほしい未来をつくりたい」と考えるグリーンズ読者のみなさまへ、大胆に思考し、実直に学び、具体的に行動するおふたりの、希望に満ちた激励をお届けしたいと思います。
 

※「R水素って初耳!」という方は、R水素ネットワーク公式サイトで25分間の映像をご覧ください

必要なのはプラグマティズムと理性の橋渡し

編集部 今日はよろしくおねがいします。

三宅さん こちらこそよろしくおねがいします。

編集部 まず江原さん(以下、ハルさん)からR水素の概念や技術の概要を説明してもらいましたが、三宅さんはR水素について率直にどう感じましたか?

三宅さん 事前に映像を見て理解していたとおりで、電気を貯めるためのものだってことはわかる。でも、このあいだ「バッテリーの原料に、いかに環境負荷の低い素材を使うかにこだわってる」って言うヤツと話していたとき、「R水素のほうがいい」とは説得できなかった。オレもバッテリーの勉強は全然で。


ハルさん とにかく、R水素ってしくみはシンプルなんだけど、理解してもらう説明が難しいの!今の世の中は、「エネルギーの話はとっても広くて複雑で難しく、一部の人間の専門領域だ」という意識づけがされているからね。

水素エネルギーについて、科学者が学術論文をまとめた専門書は、これまでにもたくさん出ているけど、一部の業界の人のためだけに書かれている。だから政治家にもフツーの人にも全然届いてないんだよね。
 
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毎日新聞発行「マイECO VOL.38」に掲載されたFC EXPOとR水素に関する記事

一方で産業界では、2015年にTOYOTAやHONDAを含めた世界中の大手自動車メーカーが、水素で走る燃料電池自動車の量産販売を始めようとしているし、東京ビックサイトでは毎年、水素エネルギーに関する国際展示会「FC EXPO」が行われている。

ガスやガソリンの主成分は炭素と水素の化合物だし、「エネファーム」だって一般家庭の7万軒に導入されているけれど、実は化石燃料からとりだした水素発電だったりする。石油化学プラントでは、原発や化石燃料のエネルギーを使って原油から水素を分離して、その水素をガソリンの精製に使ってるし、光ファイバーや医薬品の製造工程でも使われていたりと、水素はさまざまな産業に欠かせない、おなじみの元素なんだよ。

だから僕は、洋平くんが選挙フェスをやっていたときに楽屋にお邪魔して「R水素がある」とシンプルに伝えた。そうしたら、洋平くんが「国策のトップにすえるべきだ!」ってブログやtwitterで発信してくれたんだよね。
 

 
三宅さん 今の話でいうと、「科学を専門家だけのものにしないことが大切」ということは、僕も痛感してる。よく「三宅さんはプラグマティックですね」と言われるんだけど。プラグマティックって、「経験主義的な」とか「実用的な」という意味で、ニュアンス的には「正しいことを肌で掴む人」のことだね。これ、実は科学の視点では蔑みを含んだ形容詞で。じゃあ科学の視点で何が崇拝されているかというと、理性なんだよね。

つまり、プラグマティックな人たちが直観でとらえて「原発は危ないからいやだよ」と言うと、それは「自分はまともだ。理性的で、科学的根拠でものごとを判断するのだ」という世界に生きている人たちにとっては一番嫌いで、オカルトにしか聞こえない言葉なんだよね。「こういうバカが諸悪の根源」とすら感じられてしまう。

だけど、例えば「微生物の運用」っていうテーマで言えば、「科学者が何を言ってるのか知らんけど、オレは何十年畑を上手くやりこなしてる」っていう話のほうが、実証主義的という意味では科学なんだよね。

それなのに、太陽も浴びずにラボにこもりっきりの科学者が、企業の論理のなかでしかモノを考えないで科学を振りかざす。そういう科学者を崇拝することが主流になっているから、プラグマティズムを持った人は馬鹿の役回りを演じないといけない社会になっている。

ということは、本来、直観と理性の両方を使いこなす存在が人間なのに、理性しか扱えない、人間として少し劣化した状況が主流になってしまっている。その主流派を、変えなきゃいけないと思うんだよ。
 
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一方で、プラグマティック派は科学を毛嫌いしているのか、あまりにリサーチをしない人が多いのも事実で。僕は科学ってリサーチだと思っているんだけど、リサーチをしないでTwitterを読んで知った気になって、それが口づてに劣化しながら伝わっていっちゃう。

結果的に、それを小耳にはさんだ科学者が、「三宅はこんなこと言ってるのか。あいつはオカルトか」と誤解して、その瞬間に僕の言葉はすべてノイズになる。断絶の原因になっているんだよね。

だから僕は、プラグマティック派に対しては、愛をもって科学の言葉を学ぶ啓蒙が必要だと思ってる。世界共通言語だから英語を学ぶのと同じように。主流派の優越感を損ねずに、「こういう研究結果・データもありますよ」と科学の言葉で伝えてあげないといけない。それで、「君たちも、ようやく科学を勉強してきたね」みたいなことを言われながら、ドキッとさせる。

例えば「NAU(※三宅さんが主宰する「日本アーティスト有意識者連盟」)科学班」という、民間の研究機関を立ち上げたいって言ったら、立ち上がるかな? あらゆる判断の基準になっている「事実」を突き止める研究が国まかせだと、いろいろな障害がありすぎるから。

例えばさ、そこのコンビニに売ってるポテトチップスに何が含まれているかをいますぐ知りたいとなったら、それをサッとできないと、と思う。そういうことを国がやってくれるのかと思ったら、やらないし。やってるんだろうけど、データを出してこないじゃん? だからフツーの個人が、知りたい「事実」を自分たちで得るには、自分たちの研究機関を持つしかないんじゃないか、と。

国が必要な情報をスピーディーに教えてくれないんだったら、自分たちが研究機関としてパワーを持つことで、企業に情報開示を求めていくこともできる。民間に影響力のある研究機関が生まれれば、国が開示しなくても「俺たちは知ってるよ」って問いつめられる。

ハルさん そう!R水素に当てはめて言えば、フツーの人たちが、「俺たちは地域でつくって、ためて、つかう地域循環型のR水素という解決方法を知ってるよ」って声をあげていくことは本当に大事。政治家はR水素を見て見ぬふりし続けてきているから。

三宅さん 政治家は、ノイズをいっぱい入れられちゃっているんだろうね。人間一人の頭の容量って、決まっているから、8人ぐらいの官僚と秘書と、政治筋と経済筋からの情報で、もう埋まっちゃう。さも大事そうな話はほかにいっぱいあって、ちらっとR水素の話を聞いても、危機感すら感じていないから反応しない。
 
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コペンハーゲンにある水素ステーション。水素ならば、車の燃料として使っても排出物は水だけ!

地球環境はもう失うもののない状態である

ハルさん 危機管理は、全然できてないね。今は、地球環境はもう失うもののない状態だから。2050年までにCO2を何%削減っていう話は、課題を未来に先送りすることで、つまりは誰も責任を取らないということなんだよ。みんなが、誰かがやってくれると思ってる。

三宅さん ローン的な発想だよね。痩せられないひとのダイエットの話を、聞いているみたい。

ハルさん そうそう。夏休みの宿題を、子どもはなかなかやらないじゃん。でも、8月の終わりになると、バーッととりかかる。締め切りがないと、誰も本気にならないから、先延ばしはダメ。すでに限界だということを、共通認識にしないといけない。国にも、NPOにも、緊急事態宣言をしてもらわないと。

2014年3月に英ガーディアン紙が報じたNASAゴダード宇宙飛行センター出資の最新調査では、人類は自らつくり出した工業化社会とともに、滅亡にむかっていることが改めて明らかにされた

論文によると「解決策は主に2つ。資源がもっと平等に配分できるよう、経済の不平等を減らすこと。資源負担の軽い再生可能エネルギーに依存し人口増加を抑制することで、資源消費を劇的に減らすこと」なんだって。

ソマリアではすでに、数十万人の子供たちが干ばつが原因の大飢饉で亡くなっている
 
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Some rights reserved by DFID – UK Department for International Development

「ショック・ドクトリン」の著者で世界的な、平和環境活動家のナオミ・クラインが出演した「デモクラシーNOW」を見てほしいんだけど、この中でクラインは「先進国の気候変動対策は『孫のため』ですが、アフリカではまったなしです」と話している、その通りなんだよね。

そして「それにもかかわらず、先進国の気候変動対策は、欧米型の生活スタイルを変えるのは無理で、生活水準は犠牲にしないという前提に立った小手先のものばかり」とも指摘している。

三宅さん ほんと、そうだよね。国際的な環境の緊急事態宣言をするべき状況だよね、もはや。

ハルさん まずは、水や空気を汚さないで、電気や燃料をつくる方法がどこにあるんだろうか?ということから考え始めたい。だから、今の科学班というアイデアもいいけれど、まずはテーマをエネルギーに集中させたい。

エネルギー問題というのは一筋縄ではいかなくて、放射能汚染を問題にして「原発を止めても化石燃料で推進していけるじゃん」なんていっても、一方では気候変動を引き起こし、化石燃料の奪い合いで戦争が起きている。あらゆる問題の元凶。だからやっぱり、エネルギーというテーマにみんなの注意を引きたいな。

三宅さん そうか。独裁的な世界のいまの産業動向、つまり、グローバリゼーションは新しい形の独裁政治だから、その中に存在する利権を全方位的に打ち壊すのは、難しい。なぜなら、今はまだオルタナティブになり得るシステムを構築をしている段階で、リソースは限られているから。

じゃあ、そのリソースを、どこに集中投下するか。僕も、一点突破しかないと思うんだよね。相手の体力源はどこかといえば、それは、エネルギー。だから、取り組むべきはエネルギー問題なんだろうね。
 
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風力の電気で水を電気分解して水素をつくる「水素発生装置」と、生成した水素を貯蔵する「水素タンク」

国会議員だけが政治家じゃない

編集部 三宅さんが選挙で提唱されていた「チャランケ」つまり「問題解決のために根気よく対話すること」を成立させるためには、「科学」という共通言語を学ぶ努力が必要というお話が出てきました。

そういう意味では、R水素ネットワークも、R水素について、またはエネルギー問題について、市民・企業人・政治家・科学者などさまざまなセクターの人に相手の知識の状況や志向性に合わせて説明できるよう、共通言語の習得に励んできたのでは?

ハルさん そうだね。感情的に訴えても伝わらない。 エネルギーの問題は、エネルギー業界に携わっている人だけでなく、政治と深く関わっているんだよね。政治と深く関わっているということはつまり、この地球上で生きている人みんなに関わりがあるということ。

だから、多種多様なバックボーンや、それぞれに別々の情報でできた違う意識レベル、興味関心を持つ沢山の人々に伝える必要がある。そのためには、様々な文脈で伝える事が要求されてくる。例えば、技術や科学の文脈、それから環境や人権、経済、国際政治・・・。

三宅さん たとえば、田舎の郵便局長にずどんと伝えても伝わらないから、一緒にご飯食べて、考えましょうよっていうようなことだよね。

そんな前提で、今、さまざまなセクターの中で、一番対話し、伝えなきゃいけないのは、真っ向から対立している人たちだと思う。小泉元首相が、「3割の賛成、2割の反対、5割の中立」と言ってるんだけど、これは真理。3割の賛成派も2割の反対派も、5割の中立に対して陣営を張ってしまう傾向にあるんだよね。

だけど、エネルギー問題の現状でいえば、3割の人たちがはっきりと間違っていて、なおかつ力を持っている。2割の人たちは、この3割の人たちの考えの間違いを、はっきり正す必要があるんだよね。でまぁ、3割の論理は、力を持っていない2割には力を持てない理由がある、ということだし、向こうからすれば当然、「お前らが間違ってるから力がないんだ」という話なわけで。

この3割と2割が向き合って、お互いにリスペクトを持って「ぼくがわかってほしいのは、こういうことだ」という話をちゃんとする。時には科学の共通言語も使って対話をする。今目指すべきはそれで、5割の中立は結局どっちにもなびくから、関係ない。

もっと言えば、政治の力学的にも、何の議論でもそうなんだけど、推進派の3割がつくった議論の土俵に、2割の反対派が乗らざるをえない状況がつくられていて、3割の論理に巻き込まれるのが常だから。2割側は、どんどん自分たちの代替案を新機軸として打ち出して、先制攻撃していくべきなんだよね。

その方法論としては、必ずしも国会で提起する必要はなくて、効果的なメディア手法をもって何十万にアピールできればいいと思ってる。僕は、そのアピール力というか、実質的影響力を獲得する為に選挙を利用したし。

発言力と影響力、政治に向き合う覚悟さえあれば、それはもう政治。「国会議員に当選しないと政治家じゃない」ということではないと今は思っている。”まつりごと”は、人が動く、人を動かすことが肝心なんだよ。

あとは、人を動かしてムーブメントをつくる上で、相手が焦って変なことがおきない、死人が一人も出ないかたちで話を進めたいと思う。どっちかなんだよね。秘密裏に計画を進めて、いきなり奇襲のように繰り広げるか、情報をだだ漏れにして「いつのまにかみんな動いてて、誰が言い始めたかわからない」ような展開をするか。ぼくは、後者が有効だと思うんだよね。

ハルさん それはいえるね。

三宅さん だから、僕が実験したいのは、例えばR水素みたいな新しい技術を広めるときにも、大企業が何億円もかけて訴えるんじゃなくて、フツーの人がそれぞれ家で、「どのようにこれを活用して生きていくか」を考える状況をつくることかな。
 
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カナダのベラクーラー。小水力電力を水素で貯める、パイロットプロジェクト。
写真提供: Powertech

ハルさん そうだね。そのためのR水素のモデルケースや情報がダダ漏れしている状況をつくりたいんだよね。政治家にレクチャーをするのでも、どこかの党派の神輿を担ぐんじゃなくて、党派を超えたネットワークやムーブメントをつくっていきたいと思ってるのね。

今、代替案という話が出たけど、そもそも僕がR水素をやってるのは、「コスト」に対して「愛」という代替案を提示したいから。

昨日も、うちの子どもがコンビニにシャケのおにぎりを買いに行ったけど、これはコストのおにぎりなのね。シャケが入っているけど、シャケに安いエサをあげて安くできたおにぎり。だから、コストのおにぎり。愛がない。でも、パパがつくる玄米のおにぎりは、シャケは入っていないけど、コストじゃなくて愛だから。子どもはそれを作っていた姿を思い出して、愛を食べるのかな。

いまの経済と社会のありさまは、すべてコストじゃない? 水や空気を汚してでも、コストが大事。水や空気を汚すという本当のコストは、考えていない。水や空気を大事にするというのは、愛なんだよ。愛がいっぱいあるものか、数字的なコストのものか。思いやりや優しさが、R水素のエネルギーだと思う。石油とかウランは、思いやりと優しさがない。巨大送電網にも、思いやりなんかない。
 
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愛とコストの違いは、両方を体験してはじめて理解できるじゃない?戦争があるから、平和のありようが分かるようにね。悲しみがあるから、幸せが理解できる。両方あってはじめて理解できる相対の世界なんだけど、今僕らは、原子力を推進してきた人たちの嘘がどんどんばれてきたりと、明暗がどんどんはっきりしてきている状況にある。

それなのに、「明暗」の「明」はなんだ?というと、みんなわからない。相対の世界なのに、「暗」の反対の「明」がわからない状況がある。だから、ぼくは「明」としてのR水素をやってるんだよね。

石油やウランの世界から、R水素の世界になるっていうのは、コスト一辺倒のベクトルから、愛とか優しさとか思いやりへ、向きが変わってひっくり返ることなんだよ。そういう僕も充分にできているわけではないんだけどね。

(構成: 浅倉彩)

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