ISSUE☆おすすめの連載! STORY OF MY DOTS

2 years ago - 2014.04.25

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とにかく他人のせいにしないこと。エネルギーから世界を変える磯野謙さんが「自然電力」をつくるまで [STORY OF MY DOTS]

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

特集「STORY OF MY DOTS」は、“レイブル期”=「仕事はしていないけれど、将来のために 種まきをしている時期」にある若者を応援していく、レイブル応援プロジェクト大阪一丸との共同企画です。

今回お話を聞いたのは、自然電力株式会社を創業した磯野謙さん。自然電力株式会社は、「エネルギーから世界を変える」というビジョンを掲げ、2011年の創業以来、再生可能エネルギー事業を通して社会の問題を解決することを目的に事業を進めています。

2013年にはドイツのjuwi(ユーイ)社とのジョイント・ベンチャー会社を設立。国際色豊かなメンバーとグローバルな技術で、日本の各地域に根ざした高品質な発電所を提供しています。
 
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磯野謙(いその・けん)
大学卒業後、株式会社リクルートにて、広告営業を担当。その後、風力発電事業会社に転職し、全国の風力発電所の開発・建設・メンテナンス事業に従事。2011年6月、自然電力(株)を設立し、代表取締役に就任。主に地域産業と連携した事業開発を担当。2013年1月juwi自然電力設立後、同社取締役も兼務。長野県生まれ。慶應義塾ニューヨーク学院、慶應義塾大学環境情報学部卒業。コロンビアビジネススクール・ロンドンビジネススクールMBA。

南米で出会ったきれいな海を忘れない

磯野さんは大学4年生の時に、海外の約60カ国を巡る旅をしました。多くの旅先の中でも、特に忘れられない光景があると言います。

自然がすんごいきれいな、南米の離島に行ったんですよ。そこで見た光景ってのは今でも忘れないぐらい。マングローブが根っこまで綺麗に見えてて。マングローブって淡水と海水の間にあるから、水は濁ってるような感じなんですけど、そこはですね、もう全部透明で。根っこにいる魚まで全部見えてスゴいなって思ったんです。

磯野さんは長野県生まれで、自然やアウトドアスポーツが大好き。旅をしながらも、手段は分からないけれど、きれいな場所に住んで、苦手な都会よりも自然の中でビジネスをできたらいいな、と考えていたそうです。

そんな中でこの島の地元の人から聞いた話も、心に深く残ることになります。島周辺にある多くの無人島が、資源開発のためになくなりつつあったのです。そこで磯野さんは、「地球をきれいにすることをビジネスでできたら」と考えるように。

「海や地球をきれいに」というこの思いは、後に創業する自然電力株式会社のコーポレートロゴにも表れることになります。
 
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自然電力株式会社のロゴは、海と地球を意味しています。創始者たちが海と深い関わりを持ち、そこで感じた自然への思いやりが、この事業の発端となりました。持続可能で安全な地球の未来のために、毎日を安心して過ごせるように、自然の恩恵を受け、地球に返していく、そんなビジネスを目指しています。

卒業後に就職したリクルート社を、磯野さんは2年で退職。その後の状況について、「ニートに近かった」と磯野さんは言います。

僕がイメージしている未来というのは、きれいな自然があって、秋田犬みたいな大きな犬もいて、美味しい野菜もあって…というもの。当時の自分の生活ではそれらは揃ってはいましたが、それは瞬間として切り取ってみると、揃っているというだけでした。

ニートでしたよ、ほんとに。努力はし続けて、何もしてなかった訳ではないけれど。

大好きな自然はある。だけど一人でなんとか生きていて、自分だけが自然に満足している状態も嫌だな、という思いが磯野さんにはありました。また、この状態をキープできるのか、とも考えていました。

30年後もその先もこの生活を続けるには、今やっていることだけではダメなんじゃないか。もし子どもができたり、両親の健康が悪くなったりしたら、今の所得水準では“自分がほしい生活”はやっぱりできないのではないか、と思ったのです。

自分がほしい生活を“維持”するには、必要なものは変わってきます。経験による対応力だったりとか、問題の解決能力、ビジネス的なスキルも必要だし、自分の人間力っていうのも多分大事だと思う。ほしい生活に向かっていろんなものを、どんどん成長させていかないとダメなんじゃないかなって思います。

自分の価値観にぴったりはまる天職との出会い

転機となったのは、後輩がたまたま働いていた風力発電のベンチャー会社を受けたときのこと。面接会場の発電所の工事現場で大きな衝撃を受けたと言います。

それまで風力発電には関心はあるけど“知っている”だけでしたが、実際の風車建設風景を見て、それを事業とする社長と直接話をしていくと、かつて旅をした島で感じた「自然の中で地球をきれいにする仕事をしたい」という思いが再び強まりました。手段はわからないけれど、風車を見て「これは天職だ」と直感した磯野さんは、その会社に参加し、新規事業を担当することになります。

しかしその後、風力発電事業にとって大きな課題が出てきました。国が再生可能エネルギー導入を止めることになったのです。政策的な後押しもなく、発電所をつくるコストは高い。作っても売れない状況が続きます。
 
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『論語と算盤』(渋沢栄一著)

そんなとき、磯野さんは一冊の本に出会います。その『論語と算盤』(渋沢栄一著)という本は、利潤と道徳の調和について書かれたものでしたが、その中で紹介されていた「自分には厳しく、他人には寛大に」という論語の言葉が、その後の磯野さんに強い影響を与えました。

その内容を自問自答すると、他人のせいにしている自分に気がついたと振り返ります。

自分のなかでは努力してたんですけど、僕はその本に出会うまで、なんかね、やっぱ他人のせいにしてたと思うんですよ。レイブルな人には、本当に才能があって遅咲きの人もいれば、他人のせいにしてて成長してないっていうパターンも結構あると思うんです。僕はそっちでしたね。

再生可能エネルギーって天職だなって思ったんですけど、政策的なこととか社会的な状況で、正直事業としては難しくて、どこかそのせいにしてしまっている自分もいた。でも自分で選んだ道だったし、その意思決定したのは自分だっていうことに気づいた瞬間から変わってきたと思います。自分の立ち位置や自分とまわりの関係も含めて。

自分がやる、という覚悟を決めた

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3.11の東日本大震災の後、磯野さんは自分たちが何をするべきかを同僚と話し合います。そうして自分たちがやれることは再生可能エネルギーを増やすことで、再生可能エネルギーの発電所の作り方をよくわかっている自分たちがやるしかない、とそのメンバーとともに自然電力株式会社を立ち上げることにしたのです。

その当時は固定価格買取制度もなく、政策的な後押しは見えませんでしたが、磯野さんたちは他人のせいにはせずに「自分たちでやるしかない」と考えるように。その時、磯野さんはそれまでの点と点がつながった、と言います。

「STORY OF MY DOTS」っていう企画はすごくいいですね。僕もスティーブ・ジョブズの「Connecting the Dots」の言葉をかなり良く使ってるんですけど、僕も30歳の時に全部点がつながったんですよ。

環境問題をビジネスで解決したいという思いは20代の前半から変わってないけど、20代じゃ多分できなかったと思いますね。例えばビジネスの規模も扱う金額も大きいじゃないですか。それまで出会ったコンサル会社や広告会社の友人も、30歳くらいになってくると決裁権を持って、自分たちでできるようになってるんです。

だから30歳というタイミングは、この事業をつくることに賛成してくれる友達が、気持ち的に賛成なだけじゃなくて、仕事として一緒に乗っかってくれることができるようになる時期だったんです。

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タイミングは“待つ”ものではなくて“来る”ものだ、と磯野さん。タイミングは来た時に掴むもの。止まって待っているのではなくて、イメージを持って動いていないと掴めないのではないか。そのためには「自分の中に軸が必要」だと言います。

よくスポーツ選手がイメトレが大事だと言っていますが、ビジネスをやるにも、何をやるにも、それと近いと思うんですよね。イマジネーションというか、イメージがあるから動ける。

僕の場合も、こう動いたらこうなって、こうなるだろうみたいな、そういうイメージは結構してるかな。その時考えられることを全部考えて、その中の一番良いもので動いてみる。僕はイメージしてから動き出すまでが早いから、ただ動いているように見えたり、人に伝わりにくいことがあるんですけど、実はロジカルに考えているんです。

待っていても誰かがやってくれるわけじゃないし、その時に自分ができることで突き進むしかない。そこでタイミングが来ると、点と点がつながる瞬間があるんじゃないかなと思います。

世界規模の視野を持ち、地域に根ざす

磯野さんが同僚のメンバーと創業した自然電力株式会社は、1年半後には再生可能エネルギー分野における世界トップレベルの企業juwi(ユーイ)との国際ジョイント・ベンチャー、juwi自然電力株式会社を設立し、大きく成長します。

juwi社が自然電力株式会社をパートナーに選んだのは、マーケット事情や規制などのローカル情報に深い理解があり、持続可能な地域開発力があることが理由でした。
 
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(C)自然電力(株)

自然電力グループでは発電所をつくるだけではなく、それを維持するための仕組みや地域コミュニティ、地域産業のことまで考えています。

例えば地元業者との協業や売電収入の一部を地元に還元するとか、ローカルコミュニティの活性化を大切にしています。

熊本県合志市との取り組みでは、自然エネルギーを謳った新たな地域ブランドを創出して、地元の農産物などの販売促進につなげていく仕組み作りを進めています。エネルギーの先にある、人の営みや地域の産業まで、地域と一緒に考えていくんです。そういう思いを込めて、僕たちは経営ビジョンとして「エネルギーから世界をかえる」と言っています。

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調印式で握手する荒木義行市長(左)と磯野さん(右) (C)自然電力(株)

関西周辺では、今年の春、和歌山県みなべ町にメガソーラー発電所を竣工するそうです。

ここは地元の森林組合が所有する休眠地を活用してるんですよ。みなべ町は備長炭という炭を伝統産業としていて、その原料の「ウバメガシ」をこの土地に隣接する森で育成しているんです。

発電所の工事中も竣工後も、この発電所は周囲の森と共存します。そういう風に、僕たちは日本の各地域やニーズをまず聞いて、それに適したかたちで世界の知識や経験を提供していく、という“ローカル&グローバル”なスタイルをとっています。

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みなべ町の建設予定地 (C)自然電力(株)

とにかく、他人のせいにしないこと

日本中を仕事で旅する磯野さん。この日も北海道へ向かう途中でした。仕事の後の休みに予定しているスノボが楽しみという磯野さんに、最後にレイブル期にいる人たちへのメッセージを伺いました。

自分の人生を楽しめるか、幸せになれるかってのは、自分次第だから、やっぱり他人のせいにしないってことだと思います。僕の場合は、数十年後も自分は生きてるだろうし、そういう未来で自分がどういう世界に住みたいかとか、どう生きたいかということを、ただ追求しているだけっていう感じです。

自然電力の仕事は社会的価値も、意義もすごくある仕事だと思ってるし、同時にやっぱり自分の未来も自分でつくっているっていう意識もあるんです。ここが両立しないと続かないと思うんですよ。だから、他人のせいにしないってのに尽きるんですよね。

他人のせいにしないで自分の未来を自分でつくる。そう決めた磯野さんは、30歳の時にいくつかの点がつながりました。しかしそれまでには、考えながら動いて、たくさんの点をつくりだすプロセスがあったようです。

ほしい未来をイメージする。その思いを追求して行動する。それが新しい現実を作り出すヒントなのかもしれません。

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板村成道

板村成道

greenz ライター 1次産業や自然エネルギーを中心に、産業や業種を横断して新しい流れをつくりだすヒトやプロジェクトに注目。福岡在住。

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大阪一丸

全国で61万7千人、大阪府には約4万3千人といわれているニート状態の若者。その中でも、働く意志を持ち行動を起こしている若者をレイブル(late bloomer=遅咲き)と提唱し、就労から自立までを応援する、大阪府のレイブル応援プロジェクトです。 ニートの問題は「働けない特定の若者の問題」ではなく、働く若者や企業の在り方そのものへとつながる、地続きの問題。 企業と行政とそして府民とが一緒に、まさに「大阪一丸」となって、全ての若者がイキイキと働き、また働き続けることができる社会環境づくりを。 笑いのまち・ここ大阪から日本中に笑顔を届けるため、様々なプロジェクトをすすめていきます。

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