ISSUE 震災復興

2 years ago - 2014.04.21

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東北復興ってどうなってるの?復興の持つ”ワクワク”に目を向ける『3YEARS 復興の現場から、希望と愛を込めて』

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東日本大震災から3年が経ちました。3度目の3.11に、テレビで放送されたたくさんの特別番組や復興に関連する本、雑誌や新聞の特集など、多くの情報を目にする機会があったことでしょう。その中で、多くの復興関連の本とは一線を画す一冊があります。

それは、地域・テーマを横断した復興のためのメディア「東北復興新聞」を編集・発行する本間勇輝・美和夫妻による『3YEARS 復興の現場から、希望と愛を込めて』(A-Works)です。
 
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表紙には、東北の人たちの笑顔が溢れている

復興に関する本と聞いて思いがちなのは、震災に遭ってあまたの悲しみと苦しみを背負った人が、それを力強く乗り越えていく物語かもしれません。しかし『3YEARS 復興の現場から、希望と愛を込めて』に掲載されているのは、もっとエネルギッシュでエキサイティングな東北の人びとの物語です。

「不謹慎かもしれないけれど」と前置きをしたうえで、勇輝さんは「東北って、今すごく面白いことが起きている場所」といい切ります。本間夫妻は東北でどんな人たちと出会ったのでしょう?ふたりが東北に関わることになったきっかけは、偶然ともいえるものでした。

2012年1月に東北復興新聞をスタート

震災が起きたあの日、ふたりは世界一周旅行の真っ最中で、南米のチリにいました。当時のお話はふたりの前著『ソーシャル・トラベル 旅ときどき社会貢献』(ユーキャン)に詳しいのですが、ふたりは現地の人たちと一緒に折り鶴を折り、東北へのメッセージビデオにまとめるというアクションを起こします。

そのあと帰国し、世界一周旅行の経験を生かした仕事を考えているときに、友人に誘われて東北へ足を運びます。それが、2011年10月。ガレキの撤去などはほぼ終わり、人びとが徐々に仮設住宅に移りはじめたころ。

そこで被災地域に足りないと感じたのが、復興のためのベストプラクティス「よき事例」または好事例を共有するための、情報のプラットフォームでした。

こちらの仮設住宅での良いアイデアが、あちらの仮設住宅では活かされていないという現実。良いアイデアをシェアする機会をつくるため、2012年1月「東北復興新聞」がスタートします。その制作過程でたくさんの人びとと出会う中、勇輝さんは、今の東北の面白さに気づきます。

勇輝さん 今の東北は、ぽっかりスペースが空いている、そんなイメージだと思います。だからそこに、いろんな人がいろんな考えを持ってやってくる。

「支援したい!」「社会変革の一端を担いたい!」という人が群雄割拠して、外からさまざまな分野の一級の人材が流れ込んで、各地で革新的な活動を始めていたのが2011年頃。それから少し経って、今は地元の人が「このままではいけない」と新しい取り組みに立ち上がり、チャレンジしています。だから東北は面白い!

そこで、3年の節目にふたりが本を通して伝えたかったのが、「こんなに面白いことが起きている東北に関わらなくて、本当にいいの?」というポジティブなメッセージでした。
 

イキイキと働く人たちに触れてほしい!

日本全国に共通する社会課題に一歩先んじて取り組む15人の人たち

『3YEARS』の2章には、「食べものづくり」「子供たち」「ふるさと」「ふくしま」「社会」といったテーマごとに、東北でさまざまな取り組みをしている15人の人たちが紹介されています。

彼らは、先進性を持ちながら、少子高齢化、過疎化、産業の衰退など本質的な社会課題に取り組んでいる人たちばかり。復興というと、震災で失われたものを取り戻すイメージかもしれませんが、今東北で起きている復興は、さらにその一歩先を行くドキドキするような取り組みばかりです。

彼らの多くを突き動かしているのは、ふるさとへの熱い想い。東京生まれ、東京育ちの勇輝さんにとって、それは衝撃であり、うらやましいことだったそう。その想いに触れたからこそ、「東北のリーダーたちの、“新しい東北、前よりいい東北に”という夢に感動して、応援したいと思った」といいます。
 

ふるさとの東北の海

そこで出てきたキーワードが、「震災前より良くする」復興。1章では、「何が、どうなってるの? 復興の基本のキホン、教えます」と題して、ざっくり復興の全体図がイラストで解説されていますが、そこでは「震災前より良くする」復興への道筋が紹介されています。美和さんの言葉はとても力強いものでした。

美和さん 高齢化や産業の衰退で消えゆく東北ではなくて、魅力的な、逆に東京で疲れている人が住みたくなるような、子育てしたくなるような街にしたい!そういう東北に変わるための大きなチャンスであり、同時に踏ん張りどころが今なんです。

日本全国にやってくる高齢化といった社会課題を、本当に解決できるかはわからないけれど、どういう形でふるさとを資本主義社会の中で残していくのか、それに向き合っているところが面白いんですね。課題があるからこそイノベーションが生まれるわけで、だから東北が熱いんだと思います。

「東北が熱い」という二人の言葉を聞けば、被災地という、東北のイメージが大きく変わるのではないでしょうか。確かに課題はあるし、未だ苦しんでいる人もいますが、そこからこそ新たなものが生まれていくのかもしれません。

美和さん ここから新しい産業や、今までと違った行政のあり方が生まれつつあるんです。それは、日本全国の過疎の地域の希望の種だと思っています。それらはきっと世界中の先進事例になっていくはずです。

 

ここに東北の希望の種がある

震災を経験した子どもたちと、復興にたずさわるNPO

その中でも、特に可能性を感じていることのひとつに、教育面での取り組みがあります。

『3YEARS』の2章には、福島県で中高一貫校を設立する文科省の職員や、いわき市で「創造的復興教育」事業を行う教育委員会の学校教育推進室長、語り部団体を立ち上げた女子高生といった人たちが紹介されていますが、ここで目にする子どもたちの姿は、被災したかわいそうな子どもなどでは全くなく、未来をめざして力強く歩む、可能性に満ちた姿です。

勇輝さん 思春期の頃に震災を経験した人たちが、10年後とかにすごい成果を出していくと思いますよ。将来、“震災世代”と呼ばれるとか、やたら起業家が多いとかね。特にいわきがハンパないんです。

実際に、いわきで現地の中学生たちを目にしている勇輝さんは興奮気味に語ります。

勇輝さん いわきでは、震災のようなことがあっても自分で生き抜いていける、リーダーシップを発揮できるような人を育てる教育をしようとしているんです。

今までのカリキュラムだけではそういった子どもは育たないから、海外に行かせたり、英語で劇をやらせたり、自らプロジェクトにチャレンジさせたりと、めちゃめちゃクリエイティブな教育を行っているんですね。

そういう教育機会が東北の子たちに必要だと。現場ではすごいパワーを感じますよ。「これが中学生か!?」って思います。


中央は、NPO法人「@リアスNPOサポートセンター」代表理事の鹿野順一さん

そしてもうひとつ、大きな存在として取り上げられているのはNPOの存在です。ここにも勇輝さんは東北の面白さ、先進性を見て取っています。

勇輝さん この3年で、行政や企業、NPOといったいろんなプレイヤーがいろんなことをしたけれど、特にNPOが受け皿になって、その地位が高まりましたね。これまでとは圧倒的に違う予算を持って、NPOプロフェッショナルとして社会事業をやっていく立場として試されて、実験場になったんです。

『3YEARS』を手に東北へ足を運んで

3章では、今からでも参加したり、取り組んだりできるプロジェクトのリストが、4章には、「旅に出たくなる」または「実際に訪ねたくなる最新の東北ガイド」が掲載されています。

「関われなくて申し訳ないとか思う必要はなくて、単純に行かないともったいないんです」という美和さんの言葉を信じて、ぜひ『3YEARS』を片手に東北の街を歩いてみてほしいところです。今の東北の面白さ、そして昔から変わらぬ東北のすばらしさに気づけるのではないでしょうか。
 

北へ足を運んで、この笑顔に出会ってほしい

「おわりに」には、美和さんの東北での気づきが記されています。

美和さん 東北に関わるようになって本当に良かったと思います。

生きていく、生活していくことの価値の指標、豊かさの判断軸みたいなものが変わりました。世界一周旅行で新しい価値観になって帰ってきたと思ったんですけど、世界で2年間かけて気づいたことは、東北にあったんです。

人間ってこうやって生きていかなといけないんじゃないかっていう根本的な部分を見つめ直しました。どうぞ東北に足を運んでほしいです。

3年前の震災で、東北は「被災地」と呼ばれる特別な場所になりました。でも、それは決してネガティブな意味だけを持つものではなく、希望と可能性に満ちたものであることが、『3YEARS』からは伝わってきます。

勇輝さんと美和さんが東北でみつけた希望の種に、ぜひ『3YEARS 復興の現場から、希望と愛を込めて』で触れてみてください。復興という言葉が持つ、本当のすばらしさを感じ取れることでしょう。

もっと東北の復興のことを知ろう!
TOMMOROW

writer ライターリスト

村山幸

村山幸

greenz シニアライター 1973年京都生まれ。ライター。雑誌やWEBでインタビューを数多く手がけています。 人権問題に特に関心があり、誰もが自由に自分らしく生きられる世界に少しでも近づくように、小さなアンテナを広げ中。

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