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子どもだって落語は楽しい!パパママの願いで実現した落語会「TOKYO ⇔ EDO こども×落語」 [イベントレポート]


写真右から、まきさん、志の春さん、スタッフのみなさん。

「テン テテン テテテンテン」

出囃子の音とともに高座へあがった落語家はゆっくりと座布団に座り、「マクラ」という本編に入る前の小噺をはじめます。しばらくしてそそくさと羽織を脱ぎだすと、さあ本編の始まりです。

「おーい、八っつぁんよー」などと、よく通る声で威勢よく話し始めるやいなや、お客さんは一瞬で江戸の雑踏へタイムスリップ。そしてぐいぐいとその世界に引き込まれていきます。
 

会場となったアーツ千代田3331(東京都 千代田区)

子どもはNG。だけど一緒に

みなさんは、落語に出かけたことがありますか? 「一度は行ってみたいと思っているけれど、なんだか敷居が高そう」あるいは「子どもが小さいうちは無理無理!」と思っている方も多いかもしれません。

落語は本来、大人のためのエンターテイメント。その芸を存分に堪能してもらうため「噺の間」をとても大切にします。だからできる限り、物音はたてて欲しくないのです。「子どもさんお断り」となる場合が多いのはそうした理由から。

ですが、「どうしても子どもと一緒に落語を楽しみたい」と願う人たちがいました。それは、「初心者の方にも気軽にふれてもらいたい」と、さまざまなな方々とコラボレーションし落語を広めている、立川志の春さんの落語会「TOKYO⇔EDO(トーキョー トゥー・エド トゥー・トーキョー)」に足しげく通っていたパパママたちです。

前述の理由から最初はお断りしていた主催者の「まきしまいきかく」」さんも、度重なる問い合わせに動かされ、子ども連れOKの落語イベントを開催することになりました。それが、2014年2月、アーツchiyoda3331(東京・千代田区)で開催された「TOKYO ⇔ EDO こども×落語」です。

どうしてそんなに落語に夢中になるのでしょうか。その魅力をちょっと探ってみることにしましょう。
 

「ふう、間に合った!」親子が続々会場に

落語は、江戸時代中期に日本で確立され現在まで伝承されている伝統芸です。身振り手振りを交えて話し、道具は扇子と手ぬぐいだけ。このような形態の話芸は世界でも非常に珍しいのだそう。

そして何より興味深いのは、落語は受け手の「想像力」の中で楽しむものだということです。噺がはじまるやいなや、その目に見えない世界にぐいぐい引き込まれてしまうのは、頭のなかで「想像力」が働くからなんですね。

落語は世界No.1のエンターテイメント。もっとたくさん楽しんで

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始まる前の会場の様子はとってもにぎやか

ふとしたことから立ち寄った、立川志の輔さんの寄席に衝撃を受け、 一流商社マンから落語の世界に飛び込んだ志の春さん。幾度も弟子入りを断られるも門戸をたたき続けるその本気度に、師匠である志の輔さんもおれたといいます。「落語は世界No.1のエンターテイメントだと思う。もっと多くの人に愉しんでもらえたら」と活動を広げる落語家さんです。

一方のまきしまいきかくさんは、子どもから大人まで毎日がちょっぴり豊かに楽しくなる、互いを知らなかった人と人とがつながっていく、そんな時間と場所づくりをめざし、姉妹でさまざまな活動をしています。

今回実現した落語会について、まきさんはこう語っています。

まきさん 子どもさんが会場にいるのは確かに芸の妨げになってしまうかも、でも、何か思いもしないことが起こるかもしれない。落語の力を信じることにしたんです。

もともと知り合いだった志の春さんと姉のまきあやこさん、二人がタッグを組むきっかけとなったのは、あやこさんが志の春さんの昇進会によばれたときのこと。噺と身振り手振りだけで、一瞬にして別の世界に引きずり込まれ、「こんな芸術があったのか」と衝撃が走ったのです。

子ども達も真剣!

さて落語会当日。寒さに身をすくめながら、大勢の親子が会場へやってきました。子どもたちは普段どおり元気いっぱい。こんな様子で無事に落語会はできるのでしょうか… ちょっぴり不安がよぎります。

ところが、心配には及びませんでした。志の春さんが話しをはじめるやいなや、それまで思い思いに遊んでいた子どもたちがじっと前方を凝視し、真剣なまなざしをむけはじめたのです。赤ちゃんだってママの背中からおとなしく高座を見つめているのですから不思議です。
 

おそばを食べる様子をみせる志の春さん

演目は、「初天神(はつてんじん)」と「時蕎麦(ときそば)」のふたつ。「初天神」は、天神様へ初詣にいく途中、子どもがいろいろとおねだりをしてお父さんを困らせるというお話。子どもがあめ玉をなめる場面があるのですが、その様子を大げさにやってみせると子どもたちは大笑い。

会のなかでは、おそばやおまんじゅうを食べるまねを一緒にやってみるというワークショップの時間もありました。「とにかく頭をからっぽにして楽しむ。普段はなかなか頭をからっぽにできないですからね。こういうことをちゃんと経験してもらいたいです」と志の春さんはいいます。

笑いころげて想像力が育まれる、そんなのアリ!?

客席に、最初から最後までひときわ大笑いをしている男の子がいました。分かっているのかいないのか、とにかくゲラゲラゲラゲラずっと笑っているのです。

会の後、「ずっと笑っている男の子がいましたね」となげかけると、志の春さんは、こう話しました。

志の春さん あの子は賢い子ですよ、いま見えていないものを想像して笑っている。落語は想像力を養うんです。

物や情報のあふれた豊かな時代に生まれ育ち、とくにテレビやDVDなどから「視覚」による情報を得ることに慣れっこになっている現代の子どもたち。これから人生を生き抜く上で大切な「想像力」を養う機会が奪われているのでは、と危惧する声がきかれます。

だからこそ感じる心や考え方が柔軟な子どもの時に落語に出会うことは、その後の人生をいっそう豊かなものにするのかもしれません。
 

親子で落語の世界に夢中になります

もちろん楽しいのは子どもたちだけではありません。仕事に家事育児、ちょっぴり疲れたパパママたちの心にも「笑い」はとびきりのビタミン剤。

そして親子一緒に落語を楽しむことで、「ああ、こんな場面で笑えるようになったんだな」と我が子の成長を実感したり、なにより隣りで笑いころげるパパママを見る子どもたちだってうんと幸せな気持ちになるはずです。
 

休憩時間に高座にのぼり遊ぶ子どもたち

次回の落語会は4月20日、素敵な和菓子と落語のコラボレーションを楽しむ企画です。春の訪れとともに、笑いながら想像力を育む落語への扉をたたいてみませんか?

(Text: 梶原上記子)
 

立川志の春落語会「TOKYO⇔EDO7」
開催日: 4月20日(日)15時〜
会場: アーツ千代田 3331
参加費: 3,000円(和菓子とお茶つき)

話題の和菓子ユニットwagashi asobiさんが、当日の演目にあわせて、その日限りの和菓子を作って下さいます。日本の伝統文化に携わる落語家と和菓子職人によるトークもお楽しみに。落語と和菓子の創造的なコラボレーションを五感でご堪能下さい。(※次回はお子さんをお連れになることはOKですが、親子同席の企画ではございません。)