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2 years ago - 2014.04.11

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波の力で地域循環型のR水素サイクルを!東北の研究者が考案した、単純さと安さが自慢の”波力発電システム”って?

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みなさんは「波力発電」という発電方法を知っていますか?名前の通り、波の力でタービンを回して発電する方法です。

海に出かけると、養殖いかだを浮かべるブイや、海水浴場の範囲を示すブイなど、大小さまざまなカラフルなブイ(浮き)を見かけます。

「この波間に揺れるブイが発電してくれたらいいな。」そんな素朴な願いが、東北学院大学工学総合研究所・木村光照客員教授のアイデアで実現するかもしれません。

福島第一原発の事故を契機に、従来の発電を根本から比較検討して、新しい波力発電システムを考案したんです。最も単純な構造を考えた結果、安価なものになりました。

電子工学が専門の木村さんは、宮城県の多賀城キャンパスで多分野にまたがる研究を展開しています。「国際水素・燃料電池展(FC EXPO)」では、前年の水素ガスセンサの発表に続き、2014年は、「新しい波力発電システムとこの電力によるR水素発生の提案」という題目で講演しました。その内容をレポートします!

波力発電は途切れない

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「FC EXPO 2014」に「R水素ネットワーク」と共同で出展したブースで。木村さん(左)が手を置いているのがデモ機

エネルギーは距離と力をかけ合わせたものですから、距離が一定なら「いかに大きな力を得るか」に尽きます。そして力とは、結局のところ質量です。

水は1立法メートルで1トンもの重さを持ちます。そして波は、24時間途切れずエネルギーを出している。「これを浮力に変えたら発電できるのでは?」と考えました。

軽い空気に頼る風力発電は、効率を上げるためにブレード(羽根)を大きくして支柱も巨大化するけれど、空気より非常に重い水を使う波力発電であれば、より小型のシステムですむというわけです。

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原理検証用の卓上サイズのデモ機の概略図面。交流発電機を固定したブイ(浮き)と、ロープで吊るした錘(おもり)と海底に置くだけの錘と、プーリ(滑車)が主な構成要素。ブイの上下運動で発電する

この波力発電システムは2013年1月に特許出願済み。そして木村さんはなんとその権利の半分を、NPO法人「R水素ネットワーク」に無償で譲渡しているとのこと!権利譲渡をうけたR水素ネットワークでは、再生可能エネルギーで作った電気が余ったときに、その電気で水を電気分解し水素を取り出し貯めて長期的に活用しようと呼びかけています。

自然エネルギーの多くは出力が変動しがちですが、水素を取り出す過程では、多少の変動は問題になりません。さらに、このタイプの波力発電なら、夜でも悪天候でも休まず発電できるので、R水素との相性が良いのです。

シンプルが一番!

すでにさまざまな波力発電の実証例がありますが、空気などを介さず滑車の回転を直接伝達して交流発電機を回転させるのが、木村さんのアイデア。よりシンプルでより小型です。

製造からメンテナンスまで、いかに安くするかが重要です。そして信頼性も大事で、数年に1度の大波や暴風雨にも耐えなくてはなりません。だからこそ、大きくして対応するのではなく、それを回避できるような構造にすべきだと思います。

水深30メートルの海に錘(おもり)を沈めれば、10メートルの荒波がきても30メートルのロープで持ちこたえるでしょう。単純だから強いんです。

木村さんは、直径2.5メートル、体積8立方メートルのブイの場合で発電能力を試算しました。8トンの浮力を受けるこのブイに4トンの錘おもりを付けた場合、波高2メートルのときの発電能力は1日あたり0.5メガワットアワーだそうです。

錘の重さを差っ引いた分の浮力で浮いているブイが、波で上下して24時間発電します。効率50%と低く見積もっても、一般家庭約40軒分のエネルギーが取り出せる。1基500万円でつくれたら、概算で太陽光発電の1/10か、それ以下の発電コストになります。

デモ機で計測したところ、プラモデルの発電機を使ったにもかかわらず、約15ボルトの出力が得られました。試作機では約1キロワット出力の発電機を使う予定です。

波力は他の自然エネルギーと比較してもエネルギー密度が高く、さらに木村さんの波力発電システムでは滑車が左右どちらに回転しても往復で発電できるので大きな出力を期待できます。

また、ブイを浮かべるタイプだと、波打ち際で発電するタイプより海の広範囲で発電できるのも強みだとか。しかし、この波力発電システム、実はまだ本格的な試作や海での実験は行っていません。

試作機は材料費100万円くらいでできるので、ぜひ実証してみたい。一緒にやってくれる企業を探しています。将来的には、電気を水中ケーブルで運び、海岸で水素をつくろうと思っています。

波の力を活用して、地域循環型のR水素サイクルを実現しようと考えている木村さん。震災を体験した東北の研究者として、一極集中の大規模発電所に頼る暮らしからの脱却を提案しています。実用化に期待したいですね。

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瀬戸内千代

瀬戸内千代

greenz シニアライター 東京生まれ。両親の故郷で瀬戸内海に親しみ海洋動物生態学者を志すも理系文系の橋渡しに興味が移り出版業界へ。2007年からフリーランスの環境ライターとして書籍・雑誌、ウェブに執筆している。プロフィール画像は伊豆下田でスケッチしたムラサキクルマナマコ。

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