ISSUE ものづくり

2 years ago - 2014.04.11

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“無形文化”のデザインカンパニーへ!フィリピンの山岳少数民族の文化を守る「EDAYA」が次に目指すもの [クラウドファンディングのその後]

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カリンガ族のおばあちゃんと山下彩香さん

クラウドファンディングサービスはここ数年で次々と開設され、たくさんのプロジェクトが資金調達に成功するなど浸透してきています。

一方で、「支援したおカネは実際にどういかされているの?」「資金調達に成功した人たちの、その後が知りたい!」など、いろいろ気になっている方も多いかもしれません。

そこでグリーンズでは、「クラウドファンディングのその後」を追いかける特集をすることに。

今回は、フィリピンの山岳少数民族カリンガ族の消滅寸前の伝統音楽・工芸を、記録・保存し、日本で紹介するとともに、現地の村の長老から子どもへ伝える機会を作り、村人たちにフィートバックしている活動をしている「EDAYA」代表の山下彩香さんの”その後”をご紹介します。

消えゆく伝統文化を守りたい

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2013年5月2日に目標を大幅に上回り成立!

グリーンズでも「新しい形での途上国とのかかわり方を探すブランド」としてEDAYAを紹介しましたが、改めて山下さんとカリンガ族の出会いについて聞いてみました。

大学では土壌物理学を専攻しましたが、人類生態学も学びました。もともと海外支援に興味もあったので、フィリピンの山岳少数民族の実地調査がしたかったのです。在学中に調査に行きましたが、そこで出会ったのは、山岳少数民族の村々の急速な過疎化による伝統文化消滅の危機という現実でした。

そこで大切な「無形文化」を残すために、伝統音楽や竹を素材にした伝統楽器の制作現場など、村人たちの暮らしを撮影し、展覧会を開催。同時に「EDAYA」というブランドを立ち上げ、彼らの伝統工芸品の輸入・販売にも乗り出しました。
 
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カリンガ族の居住地は、1500~2000級の山岳地帯です。マニラから約20時間バスに揺られ、そこから徒歩で奥地に入るしかない秘境ともいえるところです。

クラウドファンディングに挑戦してみて

消滅寸前のカリンガ族の伝統音楽を記録保存することを目的に行ったクラウドファンディングでは、目標金額120万円に対して193人の方から約135万円を集めることに成功します。山下さんはクラウドファンディングに挑戦した理由について、こう話します。

EDAYAの販売収益では、とても記録・保存事業が賄えなかったんですね。そのとき大学の後輩や知人が、すでにクラウドファンディングでの資金調達に成功していて、やってみたいと思ったんです。ただクラウドファンディングと展覧会の開催が重なってしまいほとんど周知活動もできず、最初はまったく集まらない状況でした。

そこで、締切直前に慌てふためいて、日本各地の色々なイベントに飛び込み参加してPRをしたり、メディアに出させていただいたり、Facebookで毎日のように支援を呼びかけました。そのおかげで、なんとか最後の最後に目標金額を上回ることができたんです。

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ダオ村の竹楽器制作の名手。右手奥にはクリトンという楽器が見える

いただいたお金の使い道の一つは、自分たちが日本の展覧会で行ったことを、現地の村々に持ち帰ってフィードバックすることです。カリンガ族というのは総称で、実際は少しずつ異なる文化を持つ45の部族で形成されています。しかも、かなり閉鎖的で、村が違うだけで伝統文化も違うんですよね。そこで、彼らにも他の村の伝統文化を知ってもらうことで、自分たちのアイデンティティを考える機会を作りたかったのです。

もうひとつの目的は、長老から子どもたちに伝統音楽や工芸などの無形文化を継承するワークショップを現地で開くことでした。竹を伐採し、楽器をつくるまでの全ての工程を長老の方々に見せていただき、村の子どもたちに伝えてもらったのです。

ワークショップは実際に8つの村で開催され、2013年8月には日本でその報告会も実施。現在は、収録した記録映像を現地語から英訳へ、そして日本語訳にして、DVDに落としこむ作業中とのこと。既にいくつかの音大などから、貴重な資料として、そのDVDを提供していほしいというオファーも来ているそうです。
 
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竹楽器の制作に取り組むカリンガ族の子どもたち

無形文化のデザイン・カンパニーを目指して

EDAYAは単なる伝統工芸のアクセサリーブランドではなく、無形文化のデザインカンパニーなんです。体験型イベントを通じて無形文化を次世代に継承するには、どういうあり方があるのか。その仕組み自体をデザインするような事業に、シフトしていきたいと思っています。

あとはもう一度大学に戻って、博士号を取得しようかと思案もしています。もともと土壌物理学を専攻していたこともあり、水路をつくったり、土木的なことも含めて、伝統文化を守る担い手である村人たちの暮らしそのものをデザインできないかなと。

大切なのは、暮らしと文化が共存できる現実的で社会的なデザインだと思うんです。それを描けるように、勉強しなおそうかとも考えています。

確かに伝統文化は後継者である人の営みがなくなれば、そのとたんに消滅します。それはフィリピンに限らず、小さな祭りが消えつつある日本にもいえそうです。

伝統文化の記録から、文化と暮らしをつなぐ社会のデザインへ。山下さんの挑戦から学ぶべきことは多そうですね。

writer ライターリスト

高馬卓史

高馬卓史

ジャーナリスト。月刊誌『選択』・元編集人。『オルタナ』編集委員。…ソーシャル・デザインを勉強中です。よろしくお願いします♪

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