ISSUE まちづくり

2 years ago - 2014.03.14

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“三世代先の未来”を見据えて。高知県・土佐山地域で暮らしをつくりたい人をサポートする「土佐山ワークステイ」

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「地域で暮らしたい。でもどうすればいいのかわからない」という人のために、高知県高知市の土佐山地域に、滞在拠点ができました。「土佐山ワークステイ」が新たに始まります。

土佐山地域(旧土佐山村)は、高知市の中心部から車で20分ほどでありながら、豊かな自然と田畑を備えた中山間地域です。清流鏡川が流れ、春は梅、秋には柚子がたわわに実をつける美しい土地で、人口1000人弱が暮らしています。

土佐山ワークステイを行なうNPO法人土佐山アカデミーは、もともと3ヶ月の学びのプログラムを提供していました。その様子は今までグリーンズでも何度か紹介していますが、新たに始める「土佐山ワークステイ」とは何なのか、プログラムマネージャーの山本堪さんにお話を伺いました。

土佐山ワークステイとは?

高知県越知町出身、ドイツでの長い海外生活を経て、土佐山に来た山本さん
高知県越知町出身、ドイツでの長い海外生活を経て、土佐山に来た山本さん

もともと土佐山アカデミーのメイン事業は、「地域で学び、暮らす」という3ヶ月プログラムでした。その「学ぶ」の部分と「暮らす」の部分を分け、「暮らすこと」に主軸を置いた新しい枠組みが今回始めるワークステイです。

「学ぶ」の部分は、今までアカデミーのカリキュラムだった、土と農、食、ナリワイ、ものづくり、自然学、暮らしとエネルギーなどのテーマを凝縮した2泊3日の合宿型の講座を季節ごとに開催するシリーズ型プログラムとして提供していきます。

「地域資源を活かしてプロジェクトをしたい」「地域で仕事をつくりたい」など、今、地域での暮らしに非常に関心が高まっていて、移住して地域に根ざした仕事や生活がしたいと思っている人はたくさんいると思います。

でも、都市の人がいざ地域で暮らしたいと思っても、家が借りられない、車がないので移動手段がない、地域の人を知らないから、コミュニティに入れないなど、様々なハードルがあります。中でも、家や車といったハード面でのハードルが一番高いのではないでしょうか。「そこをできる限り下げたいと思った」と山本さんは言います。

ワークステイの参加者は、土佐山アカデミーが改修した空き家に住むことができ、カーシェアリングも使えます。また、スタッフが随時相談にのって、仕事やプロジェクトの実践に必要な地域資源やネットワークを使う手助けをします。

現在、5名のワークステイのメンバーを募集していて、そのメンバーと、アカデミー関係者が集まって、お互いのプロジェクトの進捗状況やアイデアを共有したり、相談できる場「夜学会」も定期的に開催していくつもりです。

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とくにアイデアはあるけれど、資源や場所を探している人が一番向いている、と山本さん。

ただ田舎暮らしをしたい、というよりも、その人の力やセンスで土佐山の資源を活かして外に出していってくれるような人。そしてそれをナリワイにしてくれる人が来てくれたらうれしいですね。

とは言っても、来てみて合わなかった、ということがあっても、それは失敗ではないんです。土佐山のような中山間地域では、まず人が来てくれることが大事。こんな地域があると知ってもらえるだけでも大きいし、外からの風が入ることでお互いに得られるものはとても大きいのです。

アカデミーの受講生や地域の人が改修した空き家がワークステイの滞在拠点となる。
アカデミーの受講生や地域の人が改修した空き家がワークステイの滞在拠点となる。

アカデミーは2012年から今までで4期が修了し、それぞれ3ヶ月間のプログラムで合計27名の人が学んできました。そのうち3名が土佐山に移住し、2名がこの春に引っ越してくる予定だそう。スタッフも入れると、アカデミー関係で13名が土佐山に移住しているそうです。それだけ土佐山に魅力を感じている人が増えているということですね。

アカデミーの卒業生は、地域に根ざした暮らしに価値を見出すところから入っているんです。地域の楽しさ、面白さを最初に実感しているし、3ヶ月間暮らす中で人間関係もできてきて、ハードルがどんどん低くなっていく。僕たちがアカデミーを始めたときは、移住者を増やすこと自体が目的ではなく、まずは地域に目を向けてくれる人を増やすことが目的でした。

また、他の地域でアカデミーで学んだことを実践してくれるというのも目指していました。結果として、土佐山に住んでくれる人が増えたらうれしいとは思っていましたが、思っていた以上に土佐山の魅力が伝わったのだと思います。

アカデミーの授業やご近所づきあいを通じて、どんどん地域に知り合いが増えていく。
アカデミーの授業やご近所づきあいを通じて、どんどん地域に知り合いが増えていく。

土佐山で農業&自然エネルギーで起業

ワークステイのメンバーは現在募集中ですが、ワークステイ0号とでも言うような青年がいます。高知県四万十市出身で、昨年4月から土佐山で農業をしている鳥谷恵生さんです。
 
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投資会社から農業へと転身した鳥谷さん

農業研修生として働きながら起業し、今年4月からは農家としても独立する予定だという鳥谷さんに、土佐山の暮らしや仕事について聞いてみました。

僕の祖父母は、四万十で米作りをしていました。父は船乗りでしたが、農業もやっていた。小さい頃から親や祖父母の仕事を見ながら、コンバインの上に乗って遊んだりしていたので、自然が大好きで、農業が大切なものだという気持ちがずっとありました。

大学を卒業し、名古屋で投資関係の仕事をしていたのですが、一日中パソコンに向き合っているだけの仕事で「自分のやっていることは何か違うんじゃないか」と思い始めて。そんな時、今一緒に会社をやっている友達から「お前は何がしたいんだ」と言われ、「農業と自然エネルギーで起業したい」という目標が明確になったんです。

そこで、地元の高知県で環境に優しい農業を一から学びたい、と思っていろいろ調べたら、土佐山で有機農業をやっている夢産地とさやま開発公社という会社があることを知ったのです。研修生を募集していたので、早速電話をかけ、実際に土佐山を見に来て、2013年4月から土佐山に住み始めました。

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高齢化により、休耕地も土佐山には結構ある

土佐山で有機農業を教えてもらいながら、ソーラーファームという事業で起業も果たしたという鳥谷さん。

ソーラーファームというのは、畑の上にソーラーパネルをつけて、太陽光で電力を生み出せる畑です。四万十市で200平米の土地を借りて、この事業を昨年から始めました。土佐山の畑はソーラーファームではないのですが、農地を借りて、ゆずと四方竹、野菜を生産する予定です。

土佐山には農地はたくさんあるのですが、高齢化で手が入れられなくなっている、そういうところを借りて若い人の働く場にしていきたいんです。僕ひとりで農業をやるのもいいのですが、それでは広がりがないですよね。法人化して、人を雇って、たくさんの人が関われるようにしたかった。それで生計が立てられて、田舎でちゃんと暮らしていける人を増やしたいんです。

土佐山地域の魅力については「人と人との結びつきが強い」と続けます。

例えば、僕の借りた農地は、自分で探したのではなく、ほとんど地元の人が見つけてくれて、「探しといたよ」という感じで教えてくれる。単に働くだけではなくて、祭りとか飲み会とか草刈とかの地域の行事にもなるべく参加するようにしています。それによって、どんどん知り合いが増えていくし、自分のやっていることも知ってもらえます。

最初はアカデミーの受講生と一緒にシェアハウスに住んでいましたが、今はアカデミーが修復した空き家を借りて、一人で住んでいます。でもそれも人とのつながりがあるからこそできたこと。ワークステイというかたちで来れば、やはり地域に溶け込みやすいと思います。

大皿の皿鉢料理をつつきながらの飲み会は高知ならでは!
大皿の皿鉢料理をつつきながらの飲み会は高知ならでは!

ワークステイに来る人は,土佐山で仕事をつくっていくわけですが、どんな仕事が生み出せるのでしょうか。

まず、自然が豊かなので、農業、それから生産品の加工ですね。あと、僕がやりたいと思っているのが、教育ファーム。子どもたちに固定種の野菜の苗を植えてもらったり、肥料をやったりという農業体験をしてもらうことで、命のつながりを感じてもらいたいんです。

僕は農業に関心があるので、こういった事業を思いつきますが、全く違った発想もあるでしょう。それに、都会と違って何か一本で起業するのではなく、農業をやりながらプラスαの仕事をしてもいいし、小さい仕事をいくつかしていってもいいと思います。

自然、土地、水、長く住んでいる人の知恵など、様々なリソースがここにはあるし、高知市の中心から車で20分という地の利もある。来る人のアイデアで様々な可能性が生まれる場所ですよ。

講演会や講座などには、高知市中心部からも大勢の人が参加している。
講演会や講座などには、高知市から大勢の人が参加する。

百年、三世代先の未来へ

ワークステイの参加者は現在募集中。もうすでに応募はあるのでしょうか、山本さんに聞いてみました。

問い合わせはたくさん頂いています。女性が多く、子どものいる人にも関心を持ってもらっていますが、もちろん年齢、性別を問わず広く門戸を開いています。ワークステイは資格、経歴も問いませんので、住居をシェアするのが大丈夫であれば誰でも応募は可能です。

来た人がその一員になりたいと思ってしまう地域になったら良いなと思います。お互いに教え、学び、育っていくコミュニティ。才能がある人が一人来てもどうにもならないんです。いろんな人のいろんな視点が入ることで、アイデアが生まれやすくなる。今はそんな土壌を作っていきたいと思います。短い期間では答えは出ないかも知れませんが、先を見ながら一緒に地域を創っていく、そんな人が来てくれるのを待っています。

都心で暮らし続けることに疑問を感じていたり、地方で何かやってみたいと思っていたりする人は多いはずです。そして、もっと人に来てもらいたいと思っている地域もたくさんあるはず。その両者を結びつける試みを、本気で楽しく、丁寧にやっていこうという土佐山ワークステイ。

百年という、三世代先の未来を見据えた地域をつくる。そんな考え方を大切にしている土佐山で、地域に根ざした暮らしづくりに挑戦してみませんか?
 
あなたの一歩をお待ちしています!

土佐山ワークステイをもっとしろう!
土佐山ワークステイ
今年からは東京分校も開校!
土佐山アカデミー東京分校

writer ライターリスト

Yoshimoto Noriko

編集者、ライターのキャリアを積みつつ、国際ボランティアでアジアやアフリカ、日本各地を巡る。伝えることの大切さを感じつつも、現場で人々の生活をよりよく変えられる活動がしたいと修行中。NPO法人NICE理事、土佐山アカデミー2期生。2014年末より、東ティモール在住。

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