ISSUE☆おすすめの連載! 音楽の街づくりプロジェクト

2 years ago - 2014.03.04

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水戸を市民ビッグバンドで盛り上げる!駅ビル発の育成型音楽コミュニティ「エクセルレディースビッグバンド」

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特集「音楽の街づくりプロジェクト」は、音楽の力を通じてコミュニティの未来をつくるプロジェクトを紹介していく、ヤマハミュージックジャパンとの共同企画です。

茨城県内で一番の乗降客数を誇り、多くの人が行き交うJR水戸駅。第1・第3水曜日の昼、駅ビル6Fにあるレンタルスペース「エクセルホール」を訪れると、年齢も職業もバラバラな女性たちが、トランペット、ドラム、キーボードとそれぞれの楽器を手に、楽しく真剣に練習をしています。

彼女たちは、音楽を通して水戸を盛り上げるために結成された市民ビッグバンド。水戸駅ビル「エクセル」を運営する水戸ステーション開発株式会社からの依頼を受け、音楽によるまちづくりを推進するヤマハの「おとまち」チームが企画し、2013年10月に誕生しました。

結成から1年後の2014年10月のデビューコンサートを目指し、練習を重ねています。はたして、市民ビッグバンドはまちにどんな影響をもたらすのでしょうか。

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左から島田さん、丹代さん、佐藤社長

おとまち」のプロジェクトを通して音楽によるまちづくりの可能性を探る本連載、第1回でご紹介するのは、「エクセルレディースビッグバンド」の事例です。

事務局としてビッグバンドを応援する水戸ステーション開発株式会社代表取締役社長の佐藤一弘さん、サポート役を務めるかわまた楽器店マネージャーの島田裕士さん、ビッグバンドのメンバーでトランペット奏者の丹代友子さんにお話を伺いました。

メンバーは18歳から59歳の女性、35名

「エクセルレディースビッグバンド」のメンバーは、水戸市内や近郊に住む女性たち35名。18歳から59歳と、幅広い年齢層の方が参加しています。月2回の練習は、日本を代表するジャズクラリネットプレーヤーの花岡詠二氏が指導。1年間みっちり練習し、デビュー後はエクセルを中心として市内各地で演奏会を開くなど、地域に根ざした音楽活動を展開していく予定です。

このビッグバンドが始まった背景には、「駅発信で水戸を盛り上げたい」という佐藤社長の想いがありました。

水戸駅の利用客は多く、朝の人通りは大変なものです。でも、行き交う人の流れが、私にはこう、無機質なものに見えていたんです。そこに音楽があれば、何か面白いことにつながるのではと思いました。音楽の感動は、多くの人に共通しているものですから。(佐藤社長)

音楽でまちを盛り上げ、駅ビルの集客にもつながるイベントを開きたい。でも、単発のイベントを何度も行うと経費も手間もかかるし、一過性のものになってしまう。自分たちの手づくりで、何か価値のある試みができないだろうか?

音楽といえばヤマハさんです。何かそういう取り組みをしているかもしれないと思ってネットで調べたところ「おとまち」に辿りつき、さっそくご相談しました。(佐藤社長)

おとまちでは昭島や船橋でも市民ビッグバンドを養成していて、その事例に佐藤社長が共感。ビッグバンドという音楽コミュニティを育て、演奏会などをすることで水戸を盛り上げようと計画が固まっていきました。

東京で働いているおとまちスタッフと共に地域のサポート役になってもらうため、ヤマハとつながりの深い地元の「かわまた楽器店」にもプロジェクトチームに入ってもらうことに。ビッグバンドのメンバーを女性に限定したのは、地元の音楽事情に精通するかわまた楽器店のアドバイスからです。

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地域に密着した経営をしている「かわまた楽器店」の島田さん

水戸は音楽が盛んなまちで、ビッグバンド自体はたくさんありました。男性だけの団体もあって。楽しく活動しています。でも、女性だけの団体はなかった。楽器をかじったことがあるけど本格的にやったことはない女性、昔やっていたけど今は中断している女性がたくさんいるんじゃないか、と考えて後押ししました。(島田さん)

その予想は的中。市内各所にチラシを配布したところ、定員30名を超える応募がありました。「ちゃんと人が集まるだろうか」と心配していたプロジェクトチームのメンバーは、飛び上がるほど喜んだといいます。

音楽から離れていた主婦が、もう一度楽器を手にすることができた

主婦の丹代さんも、チラシを見て応募したひとり。別のバンドにも参加していて、メンバーの大学生から「私は授業と重なって行けないけど、丹代さんいかがですか」と教えてもらったそうです。

ジャズクラリネット奏者で有名な花岡先生に教えてもらうことができて、しかも練習会場としてエクセルホールを使える。音楽活動をしていると、会場にいつも悩まされるんです。お金もかかるし、空いている日時をあちこち探さないといけないし。だから、「これは参加しないと損だわ、おばさん行ってくる」って(笑)(丹代さん)

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ビッグバンドではトランペットを担当している丹代さん

練習時間を昼間に設定したのは、子どもの送り迎えや夕飯の準備がある主婦でも参加しやすいように、という配慮から。実際、メンバーの中でも、30代から40代の主婦が多くの割合を占めています。

音楽団体はたくさんあるけど、活動は大抵の場合、夜なんです。子どもを家に置いて出かけるのは抵抗があるお母さんもいますよね。集まる時間が昼間だったことで、普段はなかなか参加できなかった主婦層が参加できるようになったと思います。(丹代さん)

才能豊かで音楽が大好きなのに、結婚や出産を機に楽器を辞めてしまう女性は多いもの。子どもが小さいうちはそばを離れられず、大きくなって手がかからなくなった頃にはブランクが開いているので「周りに迷惑をかけるのでは…」と気後れしてしまう。丹代さんはそういう女性をたくさん見てきたそうです。

でも、ここはプロの先生による指導のもと、音楽に向き合えるので、参加するハードルがぐっと低くなったと思います。このバンドが眠っていた楽器が目を覚ますきっかけをくれた、という人は多いんじゃないでしょうか。(丹代さん)

音でコミュニケーションをとれるようになってきた

丹代さんは、レディースビッグバンドではトランペットを担当。もうひとつのバンドでは別の楽器を吹いているので、10年ぶりにケースの中で拗ねていたトランペットを表に出したそうです。練習のときは、中央で伸びやかな音を発していました。

もう、毎回緊張しっぱなしです。今までは大人数の団体で上手な人に乗っかって吹いていて、自分がひっぱらなきゃいけないという経験がなかったから。「ひゃー」って、いつも汗いっぱいかいています(笑)でも、緊張できる場があるっていうのも幸せなことですし、「挑戦させてもらっている」と思ってやっています。(丹代さん)

メンバーは練習を重ねるごとにどんどん上手くなっていき、毎回音が変わっていくそう。丹代さんは、「音でコミュニケーションがとれるようになってきた」と話します。

「あ、今日はすごくピアノの人のノリがいいな」とか、「あの人がソロを吹いているから支えよう」という感じですね。「このドラムの人いい音だな、相性がいいな」って振り向くと、前もそう思った人だったりして。名前より先に、音で覚えてしまいました(笑)(丹代さん)

練習後、時間のあるメンバーはエクセル内のお店でお茶をしていくのだとか。色々な世代の人がいますが、教え合ったり、雑談をしたりと、あまり年齢差は感じないといいます。

「花岡先生と一緒に飲みに行きたいですね」なんて話も出ています。普段、私は幼稚園の子どもの迎えがあるのですぐに帰ってしまうんですが、デビューコンサートの後はぜひ打ち上げをしたいです。(丹代さん)

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最年長の女性は59歳。取材日はバレンタインが近かったので、花岡先生とメンバーの皆さんに、手づくりチョコレートを配っていました

駅ビルに人が集まり、周辺の商店街へつながっていく

ビッグバンドが始まって4か月。メンバーたちは月に2回練習でエクセルホールを訪れ、エクセルや水戸駅周辺に対する愛着が生まれている様子です。

郊外の大型ショッピングセンターに足が向きがちでしたが、エクセルに来るとやっぱり水戸の中心だなと実感します。最近の流行や若い人がどんな格好でどう歩いているのかがわかりますし。来る機会が増えてよかったと思います。(丹代さん)

いま、地方都市では中心市街地の衰退が進んでいます。郊外のショッピングセンターは大賑わいなのに、駅周辺の商店街は閑古鳥。しかし、中央機能が郊外へと拡散すると、都市経営コストが増加し、車を利用できないお年寄りが生活できなくなるという問題も。そこで、全国各地で中心市街地に賑わいを取り戻す施策が行われています。

水戸も中心市街地がどんどん寂しくなって、商店街のみなさんも心配しています。そこを何とかしたいという想いは以前からあって、かわまた楽器としても以前から行政や商店街と一緒にまちなかで音楽イベントを開いたりしてきました。

でも、単体だと力がどうしても弱いんです。だから、今回エクセルさんが動いてくれたのは嬉しかった。エクセルさんが核となって人を惹きつけ、その流れが商店街にもつながって…となったら一番いい。音楽でまちを盛り上げられるなら、うちとしてはとても幸せです。(島田さん)

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レディースビッグバンドの公開練習の日は、多くの人が見学に集まりました

先日、水戸の大学生は郊外のショッピングセンターでデートをするという話を聞きました。私は驚いてしまいまして。大学生とは文化をつくる人じゃないですか。まちなかを歩いて、いろいろなものを吸収し、発信していく人。ファッションも文化もそうです。それが、ひとつの施設に集まっていたのでは、何も生み出さないでしょう。だから、もっとまちを歩くようになってほしい。

それには、同じ趣味の人が集まるテーマ型のコミュニティがたくさんあり、いつもまちなかで何かしている、という状況になったらいいと思うんです。回遊していて楽しいでしょう。ハコモノをつくるだけではなく、そこにコミュニティをつくっていくことがこれからの時代に大事なことではないかと考えています。(佐藤社長)

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コミュニティがあり、文化があり、にぎわいのあるまちになってほしい。佐藤社長は、駅ビルだけではなく、まち全体のことを考えています。

駅ビルの特性に、「撤退できない」ということがあります。普通のショッピングセンターは、時代が変わって経営状況が悪くなったら、撤退してほかのところにつくるということができるでしょう。でも駅ビルは、取り壊して更地にして、駅だけにするなんてことはできない。だから、時代の変化に応じて、さまざまなことに取り組む必要があるんです。(佐藤社長)

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練習は和気あいあいとした雰囲気で、メンバー同士が回を重ねるごとに親しくなっています

水戸ステーション開発では社員8人でプロジェクトチームをつくり、ビッグバンドの運営にあたっています。スタッフのみなさんはビッグバンドに愛情を注ぎ、仕事として以上の熱意で取り組んでくれているそう。

これは予想外の効果で、「えっ」と驚きました。組織の垣根を越えて一緒に取り組めるものがあるのはいいものですね。(佐藤社長)

そんな佐藤社長も、ビッグバンドを親のような気持ちで見守っています。

実は、「うちで演奏してくれないか」というオファーはすでにあちこちからきているんですよ。地域に根ざした演奏活動をしたいという想いは当初からあったのでありがたいことですが、みなさんを、見せ物のように連れ回してしまうのは嫌なんです。みなさんのライフスタイルも壊したくないですし、演奏会もできるだけ昼間の時間にしたいな、と慎重に進めています。

大事に育てていきたい…というとおこがましいですが、育っていってほしいんです。(佐藤社長)

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エクセルレディースビッグバンドのことを愛おしそうに語る佐藤社長

このプロジェクトの実施期間は、3年間。その後はエクセルから独立し、自分たちで自由に活動を展開してもらえたら…という展望を描いています。現在、練習一回ごとにメンバーから参加費千円をいただいていますが、そのお金は貯蓄して、独立後の資金に充ててもらおうと考えているそうです。

うちをきっかけに、音楽に取り組む人が増え、水戸がより一層魅力的なまちになっていったらいいなと思っています。でも、まだスタート地点に立ったばかりで、大事なのはこれから。10月のデビューコンサートに向けてがんばっていますので、今後もエクセルレディースビッグバンドを応援していただけると嬉しいです。(佐藤社長)

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参加者だけでなく、サポートする人も含めたあたたかいコミュニティになりつつあるエクセルレディースビッグバンド。今後もメンバーを増やしながら、音楽を愛する女性たちに活躍の場を提供していくでしょう。そして、10月のデビュー後は、駅を中心として水戸市内のさまざまな場所で演奏会を開き、「音楽のあるまち」として水戸を盛り上げていくのだろうと思います。今後が楽しみですね。

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hidaemi

hidaemi

greenz.jpエディター/ライター 1984年2月29日生まれ。茨城出身、神奈川在住。 「地域」「自然」「生きかた・働きかた」をテーマに、書くことや企画することを生業としています。虹を見つけて指さすように、この世界の素敵なものを紹介したい。 HP:http://www.cotohogu.com/ blog:http://himaemi.blog.jp/ twitter:@emi229「東北マニュファクチュール・ストーリー」というサイトを、一般社団法人つむぎやと一緒に運営しています。 ・日本橋のシェアオフィスにて、気ままなごはん会「6階食堂パルプンテ」を開催。日によって美味しさにばらつきがある、適当な会です。

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ヤマハミュージックジャパン

株式会社ヤマハミュージックジャパンの「音楽の街づくりプロジェクト(おとまち)」は、音楽のあるコミュニティづくりを推進しています。 音楽による街づくりを目指す自治体・市民の皆さまに、地域コミュニティプランへのコンサルティング、地域文化資源を活かした市民参加型のイベントやフェスティバル、ワークショップなど文化活動のご提案、イベントプロデュースなどを通して、地域の価値を高める街づくりのお手伝いを致します。 ⇒ 「おとまち×グリーンズ」対談! WEB: http://jp.yamaha.com/otomachi/ Facebook: http://www.facebook.com/otomachi

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