ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

2 years ago - 2014.02.27

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再生可能エネルギーを学んで未来をつくろう!『グリーンパワーブック』を制作したThink the Earth上田壮一さんとエネルギー対談

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

エネルギーの話って気になるけど、難しそう。そう思ったことはありませんか?

エネルギーのことが気になり始めたとき、分かりやすく楽しく解説してくれる本があったなら、その思いは明るいかたちへと変わっていくのかもしれません。

再生可能エネルギー教育の副読本として製作された『グリーンパワーブック ~再生可能エネルギー入門』。再生可能エネルギーを最初に学ぶ際の入門編として発行され、子どもの楽しい読み物でありながら大人も読み応えのある内容となっています。

私たちの暮らしにかかせないエネルギー資源について、今どんな学びの場が生まれているのでしょうか。

今回は『グリーンパワーブック ~再生可能エネルギー入門』を編集した、Think the Earthの上田壮一さん、3章を担当したgreenz.jpライターの増村江利子さん、そしてグリーンズ発行人の鈴木菜央さんによる鼎談の様子をお届けします。

再生可能エネルギー:自然の活動によって資源が絶えず再生、供給され、枯れることなく繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しないエネルギーのこと。永続的に利用できるエネルギー源として太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、バイオマスなどがある。「再生可能」という語は英語の「renewable」の訳語。
(『グリーンパワーブック 〜再生可能エネルギー入門』より引用)

グッドアイデアが満載!未来をつくる、エネルギーの新しい力

今はまだ、日本の発電電力量のわずか1.6%を占めるに留まっているという「再生可能エネルギー」。太陽、風、大地、水、生きものなど、身近な自然の中でエネルギーは生まれ、私たちの暮らしへとつながっています。この小さなエネルギーには、どんな可能性やパワーが秘められているのか気になりませんか?

対談では『グリーンパワーブック 〜再生可能エネルギー入門』に寄せられている感想を交えながら、グリーンパワーの可能性や、なぜ子どもたちに向けて本をつくることになったのか聞いてみました。

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左から、鈴木菜央さん、増村江利子さん、上田壮一さん

鈴木さん いきなりですけど、すごく良い本でしたね!こんなにも愛があるエネルギーに関する本は初めてです。

よくハードの話ばかりになってしまったり、愛に寄りすぎてふわっとしたものになったり。愛に溢れているけど、データがない本もありますよね。だけど『グリーンパワーブック 〜再生可能エネルギー入門』は、その両方があって。愛で貫かれているけれど、かといってベタベタに「こうしたほうがいいよね」と押し付けているものではなくて。

“ グリーンパワー”のことをよく知っている人たちがつくった本だと感じています。分かりやすさとデータの深さと愛と、その全てがある。これは、すごい本をつくったなと思いました。

上田さん 狙い通りですね(笑)。そう言っていただけて本当に嬉しいです。グリーンズと一緒につくれてとても良かったです。

鈴木さん 主に三章ですかね?(笑)。再生可能エネルギーは「役に立つし楽しい!」という世界のグッドアイデアが紹介されている。

上田さん 冗談抜きに、子どもたちも本書の中でグリーンズが担当してくれた3章にとても反応してくれています。特に小学生の男の子たちから届いた感想文に三章へのコメントが多いんですよ。

子どもたちにとって身近なエネルギーから見えてくること

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発電するサッカーボール「ソケット」で子どもたちが遊んでいる様子

上田さん 三章の中で、発電するサッカーボール「ソケット」の事例紹介をしていて。ボールを蹴ると、発電システムが衝撃や振動を吸収してエネルギーに変えるという仕組みに子どもたちは驚いていました。

鈴木さん 衝撃ですよね。サッカーボールは確かに目の前で動いているけれど、これで電気やエネルギーがつくれるなんて思いつかない。でも、そこで「これもエネルギーなんだ」と思う。

上田さん そうですね、意外性もあります。そういう意味では3章には、驚きのある具体的な世界の事例がたくさん載っていて。しかもそこには、面白くて楽しいアイデアがある。

再生可能エネルギーの子ども向けの本は、どうしても複雑な仕組みを説明する内容になってしまう。理科や社会の教科書の内容を、そのまま言葉を柔らかくして楽しそうに見せていて、それは少し違うなと感じていました。

僕らがやりたかったのは 、知識としての再生可能エネルギーというアプローチではなく、「面白そう!」とか「楽しそうだ」というところから、興味をもってもらえるようなアプローチをしたいと考えていました。

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イラストレーター・ひらのあすみさんが描くイラストは情報を分かりやすく楽しいものに

子どもたちにとって、身近な食べものや生きものから入っていって、将来は漠然とでもいいので自分たちの暮らしや仕事につながるようなイメージをしてもらえたらいいなと。

そのため今回は写真やイラストを中心にしながらも、いろいろな切り口で学べるビジュアルブックをつくりたいと思いました。参加してくれた編集者、デザイナー、ライター、カメラマン、イラストレーター、それぞれが気持ちよく仕事をしてくださいました。

この本のために全国に取材に行きましたが、台風シーズンにも関わらず最高の天気で取材ができました。そういう意味でも愛や運に恵まれた、オリジナリティ溢れる一冊になったと思います。

子どもも大人も楽しめる入り口をつくろう!

「グリーンパワーブック」は、GREEN POWER プロジェクトの公式ブックとして発行されました。「日本を、グリーンの力でうごかそう。」というコンセプトをもとに経済産業省・資源エネルギー庁を中心にスタートした取り組み。再生可能エネルギーへの理解を呼びかけ、官民連携で普及を進めていく活動を行っています。

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増村さん この本は子どもも楽しめるし、大人が読んでも面白いですよね。

上田さん  元々この本は経済産業省 資源エネルギー庁がスタートさせた「GREEN POWER プロジェクト」の取り組みの一つです。この本は、小学校と中学校と高校に贈る前提でつくられています。

小学生と高校生では知識もまるで違うし、あらゆる子ども達に関心をもってもらわないといけないので苦労もします。そこで、いろんな子たちが、関心を持てるよう多様な入り口を至る所に散りばめた本をつくりました。

それは、結果的に大人も子どもも一緒なのではないかと思います。絵が好きな人は絵から入ればいいし、数学が好きな人は数字から、ビジネスが好きな人はデータから入ることができます。

「どこから読んでもいいよ」という仕立てにはなっていて、いろんな読み方ができる、いろんな入り口のある本がつくりたいと思ってつくりました。

全国各地の先生に届くと、子どもたちにも届く

現在『グリーンパワーブック 〜再生可能エネルギー入門』は、一般書店で販売されているほか、希望する学校に寄贈するプログラムも行っています。

「再生可能エネルギーをテーマに、どんな授業を行いたいか」を応募いただいて、全国の小学校・中学校・高等学校・高等専門学校を対象に各1クラス分(40冊)ずつ寄贈しています。

書籍が届いた後には、授業の成果などをアンケートに記入して送ってもらっているそうです。実際に、どんな反応が返ってきているのかを聞いてみました。

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鈴木さん 少し話がずれてしまうかもしれませんが、僕は、小学校に「エネルギー部」ができることを目標にしたいと思っているんです。全国同時にはできないかもしれないけれど、どこかの学校と協力して子どもたちが自発的に活動できるような場をつくれたらいいなと。

増村さん エネルギーをつくることを“文化”にしたいとしたら、その文化をつくるってどういうこと?という話ですね。子どもからお年寄りまで、何らかの文脈でエネルギーに関わりが日常的にあることが“文化”になったと言えるかもしれない。

これは菜央さんが言っていたことですが、野菜のことを話すように、エネルギーについて話しているとか、月9のドラマの主人公が地域のエネルギー会社に勤めているとか。そのひとつの例として、全国の小中学校にエネルギー部ができる、と。

鈴木さん 「先生、エネルギー部はどうしてないんですか?」という声が子どもたちから先生にあがっていくかもしれない。学校の電球を変えた方がいいかもしれないとか。

上田さん そうだよね、エネルギーをつくる部。作る、減らす、貯めるという役割を子どもたちが担ったりして。

「グリーンパワーブック」を送った学校からの声が少しずつ返ってきています。教育の現場で、どんなふうに活用されているのか知ることができて嬉しいです。実際に理科や家庭科の授業などでもつかってもらっている声が僕らに届いています。

面白いと思ったのが中学校の英語の授業での活用案でした。「エネルギーをつかうのに、あなたはどんなことができると思いますか?」という問いかけのもと、グリーンパワーブックを読んで、英語でディスカッションをしたり作文を書くという授業のアイデアです。

鈴木さん いろんな可能性がありますよね。単純に再生可能エネルギーを伝えるのは当然のことですけど、こういった使い方もある。

上田さん この本の最大の目標は、全国各地にいる情熱を持った先生と出会うことだったんです。学校の現場でどんなことができそうか、学校だけではなく、どんな学びにつながっていくのか。例えば、子どもたちと先生が学校の外に出て行って地域とつながるというケースもあったり、先生たちと相談しながらうまく連携できたらと考えています。

鈴木さん 数人の志のある先生と、いくつかの事例をじっくり取り組めたらいいですよね。

上田さん そうですね。こんな活用法や、やり方もあるんだ!という発見も生まれるでしょうし。

増村さん 学校の学科って、ものすごく分かりやすい縦割りになっていて。でも、エネルギーの視点で考えると、教科は曖昧でいいと思うんです。仕組みだったら理科かもしれないけれど、つくるなら図工や技術でもいいかもしれない。

使うということなら家庭科とか。ひとつの教科では教えられないほど、生きることの基盤になっているものがエネルギーだと思うので。だから、英語の授業での活用法には驚きました。教科書も、先生の使い方次第なんですね。

上田さん 驚きますよね。ほかの教科で、どんな使われ方をしていくのかも気になります。「グリーンパワーブック」を作る過程でも、随所に先生からのアドバイスもいただいています。5つのグリーンパワーのメリット・デメリットをしっかり明記して比較をしているのは先生のアドバイスがあったからですね。

世界に誇る日本の技術力と市民の手で生まれるエネルギー

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上田さん そのほか、「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム」や「藤野電力」など日本各地の取り組みも取材しました。特にこの2つの取り組みのコントラストは、日本の再生可能エネルギーの今を象徴していて面白いと思いました。

「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム」は、福島県沖20kmの海上にあります。経済産業省の委託で日本企業10社と東京大学が進めているプロジェクトで、洋上風力発電の大規模な実証研究をしています。僕がこのウィンドファームをすごいと思ったのは日本の技術力と、短期間でまとめあげる力です。波やうねりに負けない巨大チェーンがあり、世界で初めての技術が多く使われているんです。日本の技術者も誇りを持って取り組んでいる。

「藤野電力」は神奈川県藤野発の、一人ひとりの市民や地域社会が中心となり「自分たちの手で電気会社を作る社会をつくる」という動きです。この動きは日本全体に広がっています。

鈴木さん 「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム」と「藤野電力」はコントラストがありますよね。両方あるのは今までにない視点だと思います。これからこういう活動が増えていく中で、ひとつの「ものさし」として、自分の尺度を持つことで理解できる感覚があると思うんですね。

上田さん 家でできるバーベキューとレストランの関係性かもしれないね。

鈴木さん 誰かが用意したごはんを食べるのではなく、自分でつくることもできる。電気を安定供給するってこんなにも難しいことなんだと知る機会にもなる。

増村さん エネルギーについても、学校教育に任せっぱなしにするのではなくて、親が自分の子どもに教えてあげられたらいいと思っているんです。プラスとマイナス。ワット数や消費電力。それから、このエネルギーはどこでつくられて、どう使われているのかって。

(鼎談ここまで)

日本の再生可能エネルギーの学びを子どもたちへ

今回の「再生可能エネルギー」のお話いかがでしたか?
グリーンパワーブック制作に関わった3人のお話から、見えてきたことは子どもから大人まで共にエネルギーについて楽しく学ぶためのヒントやグッドアイデアに溢れていました。

子どもたちにとってのエネルギー、身近にある暮らしや、普段は見えないけれど自然や科学技術の恩恵、そして国内外のグッドアイデアから見えてくるエネルギーの力。

『グリーンパワーブック 〜再生可能エネルギー入門』の寄贈は現在も行われています。締め切りは2014年2月28日までですが、好評につき柔軟に対応してくれるとのこと。学校教育の現場で活用されることで、子どもたちの再生可能エネルギーに対する好奇心を育む機会が増えたらいいですね。

これまでに応募された方の中には、生徒やご両親から担任の先生に紹介があった、というお話もあるようです。近くに先生や、お子さんのいる方は、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか。

全編、かわいいイラストや分かりやすい図解と写真などが中心の構成となっているので、エネルギーのことが気になり始めた方にも読みやすい内容となっています。興味のある方は、手に取ってみてみてくださいね。

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目次

ワークシート1 「身近なエネルギーについて考えてみよう!」

第一章 グリーンのちから
太陽、風、大地、水、生物など、再生可能エネルギーの起源である自然について、楽しいイラストで紹介。ワークブックとしても使えます。

第二章 日本のグリーンパワー
日本各地で始まっている再生可能エネルギーへの取り組みの最新事例をフォトレポートで紹介します。
宗谷岬ウインドファーム / オトンルイ風力発電所 /村山六ヶ村堰ウォーターファーム /銘建工業バイオマス発電所 / 八丁原地熱発電所 / 鹿児島七ツ島メガソーラー /福島復興・浮体式ウィンドファーム / 藤野電力

第三章 世界のグッドアイデア
世界には、あっと驚くようなアイデアで活動している人たちがいます。未来に夢が広がる多彩なアイデアを紹介しています。
空飛ぶ風力発電機 / 発電ブランコ / 自動車アイスクリーム / 発電サッカーボール / 三輪車の家 /ソーラースクーター / ペットボトル電球 / おしっこ発電 / 太陽光ロッキングチェア /風の力で走る車

第四章 もっと知りたいグリーンパワー
グリーンパワーをさらに学ぶためのキーワード集や、書籍、映画などの解説をしています。
ワークシート2「自分たちでアイデアを出してみよう!」
グリーンパワーコラム
人類とエネルギー / 日本のエネルギー事情 /
再生可能エネルギーへの期待 /日本の再生可能エネルギー /
普及のための今後の課題

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みんなで一緒に考えることのできるワークシートも収録されています。

writer ライターリスト

藤本 あや

藤本 あや

greenz ジュニアライター 広島県出身、鎌倉市在住。デザイナー、ライター。ときどき旅人。暮らし、働き方、食、ものづくり、地域、学びが日頃から気になるテーマ。 ものづくりをコミュニケーションの場として捉え、もの/コト/場をつくるKULUSKA(クルスカ)に所属。全国各地を訪れ参加型のワークショップ「旅するデザイン」を展開している。つくるひとを育む「自分でつくる教室」主催。地域に仕事をつくること、誰かと誰かの笑顔がつながる未来をつくることが目標。 暮らしの目線と旅の視点を行き来するリトルプレス「旅と手紙のある暮らし」を準備中。

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わたしたちエネルギーは、エネルギーを、じぶんごとにして楽しむプロジェクトです。エネルギーを減らしたり、つくることを楽しむ。つくったエネルギーで得られる楽しさ、幸せをみんなで共有する。エネルギーで地域が自立する。今、そんな試みが全国に広がっています。わたしたちは、greenz.jpの記事をつくること、グリーンズの学校で共に学ぶことなどを通してそんな動きをサポートし、そして共に歩みたいと思っています。 このプロジェクトは、経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。 ⇒ 特集「わたしたちエネルギー」FacebookページGREEN POWER プロジェクト WEBサイト

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