ISSUE 震災復興

2 years ago - 2014.02.22

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日本をひっくり返して見てみよう。堀潤さんのドキュメンタリー映画『変身』と、映像クリエイター集団「NOddIN」が問う福島の「これから」

映画『変身』 映画『変身』

東日本大震災と福島第一原発の事故からまもなく3年、帰還への道筋すら見えない帰還困難区域から避難中の人々がいる一方で、私たちの多くはほぼ震災前の生活へと戻っているようにも思えます。そして、日々の生活に忙殺される中で原発事故との心の距離もどんどん広がっていっています。決して忘れてはいない、でも意識に上ることは少なくなった、そんな方が多いのではないでしょうか。

しかし、やはり忘れてはいけない、あの時何があったのか、自分が何を感じたのかを。そして、今何が起こっているのか、これからどうなっていくのか、にも目を向け続けなくてはいけない。そのように思います。そのように思い続けるために最善なのは、その情報に折に触れ接触すること、そして、それを考察するような本なり、映画なり、TV番組内を読んだり見たりして考えることです。

東日本大震災の際、Twitterなどで情報を発信し多くのフォロワーを集めたものの、その後NHKをやめてフリーとなったアナウンサーの堀潤さん、あちこちで叩かれたりもした彼が、原発事故をテーマにしたドキュメンタリー映画を制作し、現在、劇場公開されています。

先日、その作品『変身』が、福島原発事故に触発されて映像作品を作ったグループ「NOddIN」の作品とともに先行上映され、トークショーも行われました。そのイベントを作品とともに紹介します。

NOddIN(ノディン)」は東日本大震災後に映像クリエイターたちが「日本をひっくり返して見てみよう」と考えて作ったグループ。グループ名も「NIppON」を逆さまにした形をしています。

s_noddin

今回上映されたのは、昨年8月にCLASKA The 8th Galleryで開催された展覧会「NOddIN 1st Exhibition」で上映された映像作品9本です。

作品は、東京の湾岸に福島第一原発があるという合成映像を使った谷一郎さんの『Here, There』、避難して人がいなくなってしまった福島の映像に、かつてそこに住んでいた人たちの会話をかぶせた石井貴英さんの『マツマチ』、日本が原発を輸出するおがあるトルコの人たちにトルコ語で原発について伝える手紙を読む丹下紘希さんの『あなたを心配する手紙』、事故後チェルノブイリに戻って自給自足の生活をする老人を撮った関根光才さんの『IVAN IVAN』などで、長さもテーマも手法もさまざまでした。

特に印象が残ったのは石井さんの『マツマチ』。この作品は、現在の荒れてしまった福島の町の映像に、駅に迎えに来た父と娘やコンビニの前で会話をする高校生といった人たちの震災前の会話をかぶせたもの。会話はフィクションですが、映像と音とのギャップがかつてそこにあった生活を明確に想像させ、同時に現在の状況を印象付けます。

会話をしている人たちがどうなったのかはわからない。しかし、そんな人達が様々な感情を抱き暮らしていた街はそこに存在し続けている、無人のまま、ということを印象づけ、その場所へと見ている人たちの意識を向かわせます。それによって私達は福島の今について考えることになるのです。

マツマチ MatsuMachi from ishiitakahide on Vimeo.

堀潤さんの『変身』は福島第一原発事故、スリーマイル島、ロサンゼルス郊外のシミバレーなどの取材映像と、再稼働反対デモの投稿動画などを編集したドキュメンタリー映画。長らく放射能漏れの実態が明らかにされていなかったシミバレーの住民集会を描いた部分や、福島第一原発に作業員として入った男性の撮った映像、そのインタビューなどは原発事故について新たに知見を広めることにもなり、約50年前のシミバレー、約30年前のスリーマイル島の現在を描くことで福島の未来にも思いを馳せることにつながる作品になっています。

映画上映後、NOddINのメンバーと堀潤さんとで行われたトークショーで、堀さんはこの住民集会を含めたシミバレーの場面について「ニュース9で放送する予定で取材をしたのだが、放送しないということになった。それもNHKを辞めた原因の一つ」と話しました。

住民集会の場面は完全に観察者に徹して住民と行政のやりとりを淡々と追い、住民へのインタビューでは「乳がんになったけれど、遺伝かもしれないし、放射能の影響かどうかはわからない」という住民の率直な言葉を引き出しています。50年という時の経過がただでさえわかりにくい放射線の影響をさらにわかりにくくしているのです。この作品では彼らのその後は語られていませんが、彼らが補償を受けることはおそらくないでしょう。

もう一つ印象的なスリーマイル島の場面では、近くに住む若者が放射線の影響について「大丈夫じゃなかったらなにか言ってくるだろうから、大丈夫なはず」と発言しています。

『変身』トーク トークイベントの様子

トークショーでNOddINの関根光才さんが「3.11以前の僕らもそうだった。今は情報は自分たちで取りに行かなきゃいけないんだ本当はと気づいた」と言っていたように、その言葉はもはや通用しないことを私たちは知っています。しかし、30年したらもしかしたら私たちは再び、スリーマイル島の若者のように考えるようになってしまっているのかもしれないとも考えられます。

時間とともに忘れられること、この作品にたびたび挿入される再稼働反対デモの映像、そのデモの盛り上がりはもはや過去となってしまっています。丹下さんはNOddINを立ち上げた動機の一つとして「一瞬だけどすごい熱量で考えたことが、圧倒的な現実を前にした時に霞んでしまう、そんな現実に対抗してそれを保っていける真実がほしかった」ということを言っています。

確かに私たちは震災の後、「すごい熱量」で原発のことを考えました。その時考えたことを忘れずに、じっくりと温め続ける、せっかく考えたのだからそうしなければもったないと私は思います。

NoddINの作品も堀さんの作品も、そのようにして私たちに3年前に自分が考えていたことを思い出させてくれます。それを私たちは今後も続け、30年、50年たっても、それが社会の財産として保たれ続けるようにしなければならないのです。

『変身』で審らかにされているのは、スリーマイル島の教訓が福島では生かされ得なかったということです。私たちは福島の教訓が世界で活かされるようにしていかなければなりません。こういう映画やイベントで私たち自身が忘れないでいることはできます、しかしそれをどう伝えればいいのか、その問いの答えを探すことこそ、今私たちがやらなければならないことなのではないでしょうか。

『変身』上映情報

【東京】渋谷アップリンク
2014年2月15日(土)~28日(金) 連日13:00-
※2月22日(土)は元原発作業員の林哲哉さんのトークショーが決定!

【大阪】シアターセブン
3月8日(土)~3月14日(金)10:50(1日1回上映)
3月15日(土)~3月21日(金・祝)15:00(1日1回上映)

【広島】福山駅前シネマモード
3月8日(土)~3月14日(金)
※3/9(日)上映後に堀潤監督による舞台挨拶あり。

http://unitedpeople.jp/henshin/

writer ライターリスト

石村 研二

greenz シニアライター 東京生まれ。大学の法学部を卒業するも、法律に向いていないことに気づき、長いモラトリアム期間を過ごしながらひたすら映画を観る。 2000年にサイト「日々是映画」を立ち上げ、書くことを仕事にすべく駄文を積み重ねる。現在、ライター/映画観察者。greenz.jp以外には六本木経済新聞、WIRED.jpなどに出没。暇なときはSFを読んで未来への希望を見出そうとし、世界は5次元だと信じている。 日々是映画-ヒビコレエイガ http://www.cinema-today.net/

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