ISSUE ものづくり

2 years ago - 2013.12.17

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社会貢献をビジネスにするために必要なのは、消費のしかたを変えること。Lalitpur 向田麻衣さん×SIRI SIRI 岡本菜穂さんインタビュー

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社会貢献を続けたいけど、ビジネスにするのは難しい。
ソーシャルな活動を、どうしたら持続できるだろう。

greenz.jpの読者のみなさんなら、そう考えたがあるかもしれません。

今日は、ネパール発のナチュラル化粧品のブランド「Lalitpur(ラリトプール)」を立ち上げた向田麻衣さんと、既成概念に縛らないユニークな素材を活かすジュエリーブランド「SIRI SIRI(シリ シリ)」代表の岡本菜穂さんに、ソーシャルな活動を持続させるために必要なことをお聞きしました。

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Lalitpur 代表 向田麻衣
高校在学中にネパールを訪問し、女性の識字教育を行うNGOに参加。2008年8月よりトルコにて6ヶ月間のフィールドワークを行った後、2009年にCoffret Project(コフレ・プロジェクト)の活動を開始。2010年からは活動の拠点をネパールに絞り、2013年5月にネパール発のナチュラル化粧品ブランドLalitpur(ラリトプール)をスタート。ネパールの人身売買被害者の女性の雇用創出と自尊心の回復に取り組んでいる。

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SIRI SIRI デザイナー 岡本菜穂
桑沢デザイン研究所スペースデザイン科在学中より、ジュエリー創作に向かう。2006年、ジュエリーブランドSIRI SIRIを発表。通常のジュエリー創作にはあまり見られないユニークな素材を活かすSIRI SIRIのスタイルは、既成概念に縛られず自分の美意識を追求する人たちの生き方に呼応する。

岡本さんとの二人三脚で生まれた「Lalitpur」

製造のすべてをネパール人女性の手で一つひとつ丁寧に行われている、ナチュラル化粧品ブランド「Lalitpur」。商品を作るのはネパールの低所得層出身の女性たち。パッケージの飾り紐は、シェルターに暮らす身寄りのない子どもたちが制作するなど、その取り組みは国内外から高い評価を受けています。

代表の向田さんは、「このブランドに関わるすべての女性たちへ誇りある仕事をつくり、彼女たちが自信を持って、自由に生きることができるように」と願いを込めて立ち上げました。

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向田さん ロゴデザインやパッケージデザインを「SIRI SIRI」デザイナーの岡本菜穂さんに依頼したのですが、ブランドを立ち上げる前に、1週間ほどネパールに滞在したんです。その期間中、ずっと一緒に寝泊まりして、いろいろ話し合って。対話を積み重ねて、二人三脚でつくってきたんです。岡本さんとは、このブランドをどんなものにしたいかというイメージもぴったり同じでした。

岡本さん 使っているソープが同じだったりと、好きなものも似ているんですよね。言いたいことが言えるという関係は、特に女性同士では大切なことと思っています。男性社会では、いろんな仕組みを男性がつくってきている。いろんな物事の進め方を、今までのやりかたになぞらえることはないと思っているし、女性なりのコミュニケーションの仕方で仕事をつくることを、当時から考えていました。

向田さん 岡本さんのつくっているプロダクトのセンス、プロダクトそのものにとても共感しているので、何と言うか絶対的な信頼感があって。女性なりの感性のコミュニケーションというか。岡本さんとのやりとりで生まれたものは、今でも、ブランドの根底にあります。

プロジェクトから、ビジネスへ

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岡本さん 今では、OCAILLE(オカイユ)、GALERIE VIE(ギャルリー ヴィー)、PASS THE BATON(パスザバトン)などのセレクトショップに商品を置いていただくようになりましたね。

向田さん すべて「SIRI SIRI」が卸しているセレクトショップで…。思った以上に注文いただいてはいるのですが、それでもビジネスとして考えると、まだまだ。ソーシャルプロジェクトとしてスタートした「Coffret Project」は、これまでは「プロジェクト」だったんです。社会的意義に賛同してくれる人や団体からの寄付をベースに途上国で活動をする。でも、4年の活動を通して、だんだんともうひとつの柱としてビジネスの要素が加わったんです。

岡本さん プロジェクト型の活動から、ビジネスモデルをつくり、活動を継続していくかたちを目指していると。

向田さん そうですね。でも、そこにはいろんな壁があって。例えば、キャッシュアウトからキャッシュインまでの長さです。製造は、ネパールで2ヶ月ほどかかるんですね。そこにはネパールという国が抱えているいろんな法律も絡んでいるのですが、商品の納品のタイミングで現地の工房に50%をお支払いして、日本への発送のタイミングで残りの50%をお支払いしています。

日本に届いた直後に売れたとしても、クレジットカードでの決済だと、2ヶ月後にキャッシュが入ってくる。つまり、お金になるのに4ヶ月もの期間がかかるんですね。

岡本さん 小売りのビジネスだと、それくらいが普通ですね。

向田さん いろいろと考えた末に、定期便の仕組みを導入することにしたんです。ネパールにプレッシャーはかけたくない。それで、お客様に毎月積み立てをしていただいて、3ヶ月目に3ヶ月分の商品が届く仕組みです。来年の4月からスタートさせたいなと。昨日の講演会では、定期便を女性用10口、男性用10口を予約してくれた人もいました。

岡本さん 最初はそういった、直接買ってもらうというのが大切ですね。SIRI SIRIも友人や知人の支えからのスタートでした。ファッションの世界は、展示会というイベントでプロダクトが動くんです。春夏と秋冬の年2回、各社のバイヤーが展示会で商品を買い付ける。そうした展示会の時期にあわせて新商品をリリースするのはもちろん、声を掛けていただいた催事には、すべて出展していました。

催事という場に自分自身が立つということも、やはり大切だと思うんです。体力を使うし、出展料のお支払いもあるので大変ですけど、そうやって自分でブランドを伝えていくことに手を抜かなかったですね。今はショールームを持ったり、インターネットショップで販売したりという方向に力を入れています。

向田さん SIRI SIRIは、バイヤーさんをどうやって捕まえていったたんですか?(笑)

岡本さん バイヤーさんって、半年分の予算を持っているんです。でも、やみくもに新商品をリリースしさえすればいいというわけではもちろんなくて、時期が早くても、他にいいものが後から出てくるかもしれないと買い付けをしてくれなかったり、時期が遅いと、もう予算を使い切ってしまって買い付けができなかったり。

向田さん Lalitpurは、リリースをしてから、次の仕掛けがまだできていないですね…。

岡本さん 仕掛けるにしても、従来のやり方はどうだろうと思っているんです。例えばジュエリーだと、女優さんにつけてもらうとか。果たして、自分たちがその商品を身につけてほしいお客様に届いているのかどうかは、疑問ですね。マスメディアでのワンシーンよりも、ブロガーのひとつの投稿が反響を呼ぶ社会ですから。でも、Lalitpurは、今はたくさん「出していく」時期かなって思います。

小さな積み上げこそが、ビジネスをつくる

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向田さん その「出していく」ときの出し方も考えますよね。よく、「この商品はプロダクトの良さで売っていくのか、社会貢献のプロダクトとして売るのか」って聞かれるんですが、この議論は違和感があって。どちらの方向を選ぶかではなく、どちらも伝える必要があると思っているんです。

はじめは社会貢献性で関心を持ってくれた人に買ってもらっても、商品自体がよくて使い続けてくれるという入り方でもいいし、Lalitpurのデザインが気に入って買ってくれて、のちのち社会貢献性を知ってより好きなってもらってもいいと思っています。

岡本さん そこは一つひとつ、小さな積み重ねをしていくしかないんですよね。積み重ねのなかには、一緒に仕事をする人の気持ちの積み重ねも大事なことだと思うんです。

例えば、スタッフが疲弊すると、会社の雰囲気も悪くなってきて、それがプロダクトにも現れてしまうところがあったり。自分だけの積み重ねではなくて、みんなで積み重ねていくということが必要ですね。楽しかったり、幸せだったり。そういうのって、ブランドイメージにも透けて見えてくることだと考えているんです。

向田さん そうですね。

岡本さん それで、みんなが楽しいかどうか、幸せかどうかを考えると、時には大きな投資も必要になってくる。プロダクトを売っていくことって、売れば売るほど投資が必要になるんですね。そこはある程度の覚悟を持ってやらないと、って。

向田さん 確かに小売り業って、商品をつくっても、売れていない状態ってつまり負債を抱えているのと同じなんですよね。

岡本さん それと、もうひとつ大切なのは、どんなビジネスも、人と人とのつながりの小さな積み重ねだということ。つい最近、パリの展示会に出展して思ったよりもオーダーがあって喜んでいたら、職人さんに怒られたんです。「そんな数聞いていない」って。仕事を取ってくれば喜ばれると思っていたけど、そうではなかった。忙しくなって、職人さんとコミュニケーションが取れていなかったんです。最初は足しげく通っていたけど、管理をする人から電話で発注をするようになって。

ビジネスが軌道に載れば、忙しさや疲弊感からみんな解放されると思い込んでいたけど、そうではなかった。それは、意識して変えていかないと、仕事を取ってくるだけでは解放されないんだって気づいたんです。

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向田さん 初めてのことばかりだから、動きながら考える必要がありますよね。

岡本さん プロダクトって、途中で降りることって難しいんです。続けていかないと、続かないというか。

向田さん そうですよね。最近、とある大先輩の女性起業家に、「あなたはとにかく、あなたのキャラでいけるとこまでいきなさい」って言われたんです。そして、「営業を洗練された知的な仕事だと思いなさい」とも言っていました。自分の仕事を確立させて、スタッフに見せていきなさいって。

岡本さん 女性のクリエイターはいるけど、そのクリエイターを支えてくれる女性のフリーランス営業っていないんですよね。営業力のある女性は大手企業にいて、仕事がつまらないとしても、収入がいいので抜けられない。フリーランスPRだと憧れの職業になるけど、営業ってどうも言葉の響きに憧れ感を持ってくれない。確かに、洗練された知的な仕事ですよね。従来の肩書きの概念に左右されない価値観を持つことも大切なんですよね。

向田さん 最近、自分で自分の道を極めていくしかないのかなって。いろんな人にアドバイスをいただきますが、その人なりのパーソナリティと経験があっての「手法」なので、その通りの「真似」はやっぱりできないんです。だから、自分のダメなところも受け入れて、いいところも理解して、その上でスタイルをつくっていくしかないのかなって。

社会貢献プロダクトを選択することが当たり前の社会に

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岡本さん 自分がいいと信じたものを、とことん信じきって、それを形にしてシェアしていく。それがプロダクトになっているわけですが、例えばSIRI SIRIでやっているような、伝統工芸の技術を使ったりすることが特別なことではなくて、普通なことになったらいいなって思うんです。

向田さん どんなポイントが社会貢献なのかを、いちいち説明しなくちゃいけないのって日本くらいだと思うんです(笑)。ヨーロッパだとフェアトレードのものじゃないと売れない。それが当たり前の市場になっているんですね。売れないから、バイヤーは途上国から、高くてもフェアトレードのものを仕入れる。そうすると市場原理でますます高くなるので、日本のバイヤーは本当は買いたいとしても、持っている予算では買えないという悪循環になってる。

私たちはこうした流通のすべてを変えることはできないかもしれないけど、こういうのが普通だし、こういうほうが、その先の未来の子どもたちもハッピーでしょって提案し続けたいですね。

岡本さん 日本では消費者が成熟しているようで、実はしていないんですね。でも成熟するためには、私たち自身も変わるべきなのかもしれません。

よく、つくる側の人でも、この人はまず儲けたいというビジネススタートの発想の人もたくさんいます。そこからプロダクトを考えている。でも、スタートの仕方っていろいろあると思っていて。このプロダクトがあることで、どう人が幸せになれるのか、健康になれるのか、楽しくなれるのか。そんなプロダクトスタートというか、自分以外の誰かの幸せが根底にあるかどうかは、大切なことだと思います。

向田さん 本当にそう思いますね。売ることよりも、誰かの幸せを考える。そこに想像力を働かせられたらいいなって。

(対談ここまで)

私たち消費者は、「値段」でものを選びがちです。
例えばものが安かったら、その商品の生産フローにおいて、安い理由が必ずどこかにある。もしかすると、そうした安い商品は、不当に安いのかもしれないのです。
私たちの手で、「当たり前の社会」を変えていきませんか?

writer ライターリスト

増村 江利子

増村 江利子

greenz シニアエディター/シニアライター 国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。一児の母。主なテーマは、アート、建築、暮らし、まちづくり。八ヶ岳の麓の賃貸トレーラーハウスで、“小さく暮らす”をモットーに、DIY的暮らしを実践中。 facebook:http://www.facebook.com/e.masumura twitter:https://twitter.com/eriko_n

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