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食物アレルギーを持つ子どもの親の不安を減らしたい!食の可能性を広げる「ウィルモア」

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みなさん、食物アレルギーってご存知ですか?
特定の食べ物に体が敏感に反応することを食物アレルギーというのですが、その症状は、湿疹、嘔吐、下痢などから、呼吸困難やアナフィラキシーといった命に関わるものまでさまざまです。

以前と比べて、食物アレルギーという言葉は浸透してきているのではないでしょうか。実際、小・中学校や保育園では、アレルギーを持ったお子さんのために給食対応をしているところが多数あります。にもかかわらず、民間でのサービスは希薄で、アレルギーのある方、またアレルギーのお子さんを持つお母さんたちは、食材探しからメニュー作りまで、日々大変な時間と労力を費やしてるのが現状です。

そこで、「アレルギーチェッカー」と「クミタス」というサービスを始めたのが、株式会社ウィルモアの代表取締役、石川麻由さんです。

食物アレルギーがある方の不安や負担を減らす新たなサービスとはどのようなものなのか、お話を伺いました。

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株式会社ウィルモア代表取締役の石川麻由さん

食物アレルギーの課題

1.増え続ける食物アレルギー患者

ご自身も食物アレルギーがあるという石川さん。乳児の頃から特定の食べ物に拒否反応があらわれ、現在も乳製品やキウイなどにアレルギー症状が出やすいのだとか。

2010年に東京都が発表した「アレルギー疾患に関する3歳児全都調査」によると、食物アレルギーと診断を受けている子どもの比率は、回答者数の14.4%という結果が出ました。東京都がこの調査を始めたのが1999年。当時の結果では、食物アレルギーと診断された子どもの比率は7.1%だったことから、10年前に比べて患者数は倍増しているといえるのではないでしょうか。

以前と比べて患者数が増えているのに、民間のサービスなど対応は遅れていて、当事者が自分でどうにかしているというのが食物アレルギーの現状だと、石川さんは指摘します。

2.分かりにくい食物アレルギーの実態

食物アレルギーは症状や原因が多様であるため、周りに理解されにくいといわれています。

症状は一時的なものが多く、見た目からはどの人が食物アレルギーを持っているのかは分かりません。今でも、食物アレルギーって皮膚が痒くなるだけでしょ?と誤解をしている方もいらっしゃいます。

食物アレルギー症状には、じんましんや湿疹といった皮膚に現れる症状や、せきや呼吸困難といった呼吸器官の症状、下痢や腹痛といった消化器官の症状など、じつに様々なものがあります。そして一番重症なのが、血圧が下がり意識がなくなるアナフィラキシー症状で、これは命を脅かす可能性もあるのです。

3.時間と労力がかかる食生活

食物アレルギーに治療薬はなく、もし診断された場合、原因食物(アレルゲン)を除去した食生活を送ることになります。

その食生活も、アレルゲンとなる食品そのものを除去すればいいというわけではありません。例えば、アレルギー患者数が最も多いと言われている鶏卵。卵は、お菓子やパン、中華麺、そしてハムといった加工食品など、実に様々な食品に使われています。卵を使わない食材で食事を作るとなると、交通費をかけて遠くのスーパーまで買い物に行ったり、食品店をはしごしたりと、多大な労力とお金がかかってしまうのです。

アレルゲンは除去するけれど、バランスの取れた食事を作りたい…。原材料の表示が明確ではないから買っていいのか分からない…。食物アレルギーのある方、そういったお子さんのいるお父さんお母さんは、食品選びの際、不安を感じることも多々あるのです。

簡単、便利な「アレルギーチェッカー」

もっと楽に、もっと安心して食品が購入できる方法はないのだろうか?そう考えた石川さんが開発したのが「アレルギーチェッカー」というサービスです。

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「アレルギーチェッカー」

「アレルギーチェッカー」は無料のスマートフォンアプリで、商品のバーコードをカメラにかざすと、原材料、原産地、カロリー、栄養成分といった商品の情報が表示される優れものです。

石川さんが最も力を入れているのが正確な情報を表示すること。商品情報は社内で収集・管理し、綿密なチェックを重ねてから掲載しています。

食品パッケージにも原材料などの情報が記載されていますが、それが100%ではない場合もあります。たとえば、ゼラチンは何から作られているのか。豚か、牛か、魚なのか。また、原産地などが記載されていない場合もありますので、足りない情報はメーカーに問い合わせて確認しています。

その他、水酸化Naといったアルファベット表記はカタカナ表記に、エリスリトールといったあまり馴染みのない言葉は分かりやすいように書き換えて、消費者の食品リテラシーを上げる努力もしています。

気をつけているのはリニューアル商品です。日本の食品メーカーはリニューアルの頻度が高いため、なるべく最新の情報を優先していますが、お店によっては古い商品をストックしていることもあります。そういう場合も考慮し、できるだけいつからリニューアルしたのかを表示するようにしています。

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リニューアル商品には常にアンテナを張っているという石川さん

「アレルギーチェッカー」は、現在約42,000商品に対応しており、掲載されていない商品をリクエストすることも可能です。

食を満たし、苦労を満たすサービス「クミタス」

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「クミタス」

食物アレルギーの方の悩みは食べられる食材が限られていることと、食材を探すのに手間がかかることです。これらを一度に解決するのが、食品検索サイト「クミタス」です。

今はネットで何でも買える時代です。けれど、ネット販売の場合、食品情報の掲載義務やルールがまだ整っていないという問題があります。食べられる食品かもしれないけれど、情報が不十分なために買うことを断念する方も多いのだとか。

「クミタス」は「アレルギーチェッカー」とデータベースを共有しており、商品の正確な情報を掲載しています。自分が除去したいアレルゲンを設定して食品を検索すると、「乳を使わないチーズ」や「卵の入っていないクッキー」など、手に入りにくい食品を探せるうえ、食品の値段や購入できるサイトが比較できます。使用料は無料で、ユーザーが支払うのは商品の購入代金のみというのもうれしいところ。

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いつ、どこでも、手軽にアレルゲンを含まない商品を検索できる「クミタス」

「クミタス」には、苦労を満たす、食を満たすという意味が込められています。今まで食べられないと思っていた食品を見つけ出し、アレルギーがある方の食の選択肢を広げたい。新たな食材に出会える体験を増やしていきたい。そのような願いから生まれたサービスです。

「アレルギーチェッカー」や「クミタス」は、マクロビ、ヴィーガン、食事制限をされている方など、いろいろな方にお使いいただけるサービスです。

食物アレルギーを持つ皆さんへ

お子さんに食物アレルギーがあった場合、自分の体質や妊娠中の食生活を疑い、責任を感じてしまう母さんもいると聞きます。けれど、自分を責める必要はまったくありません。食べられないものがあることは、悪いことではないのですから。

心配な場合は自分で判断せずに、医療機関で食物アレルギー検査をしてもらった方が良いと石川さんは言います。アレルゲンを特定できれば、お母さんも安心できますし、除去する食材も最小限に抑えられるからです。

もちろん、周りの人に食物アレルギーについてちゃんと理解してもらうことも大切です。何が食べられないのか、食べるとどうなってしまうのかを伝え、食物アレルギーに対する疑問や誤解を減らす努力をしていきましょう。

食物アレルギーと診断を受ける子どもが増える今、石川さんは現代を生きる子ども達にこう言います。

食物アレルギーは、個性なのかなと思います。もちろん、メニューが制限されたり、みんなと一緒のものが食べられなかったりと、苦労はありますが、食物アレルギーがあることを後ろめたく思わないでください。

最善の予防は、アレルゲンを食べないこと。ネットなどのツールを使えばきっといろんな食材が見つかるはずです。悲観的にならずに毎日の食事を楽しんでいただければと思います。

ご自身の食物アレルギー経験をもとに、優れたサービスを始めた石川さん。「アレルギーチェッカー」と「クミタス」という便利なツールを通じて、食の可能性が広がるよう、これからも地道な努力を重ね、サービスを充実させていくそうです。