ISSUE 食と農

2 years ago - 2013.12.07

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「みなとみらいInnovation & Future Center」から始まる、食と農業のよりよい未来 [イベントレポート]

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「食」は、世の中にあまたの社会問題があるなかで、誰もが気にせずにいられないテーマ。

私たちは生きていくために食べ物や飲み物が必要です。でも、食糧危機の問題や安全性の問題など、食には気になる問題がたくさんあり、健康な暮らしを支える食の安全性、そしてその根幹を担う農業へ高い関心が高まっています。しかし、ひとりで食の問題に取り組もうとしても、どこから手をつけていいのかわからないのが正直なところです。

そんな背景を受けて、横浜市にある富士通エフサスの施設「みなとみらいInnovation & Future Center」(以下、みなとみらいIFC)で10月11日、「食と農の未来について語り合おう」というテーマでフューチャーセッションが開かれました。

私たちが食と農について気にすべきことや、働きかけられることとは、いったいどのようなことなのでしょう。活発な意見が交わされたフューチャーセッションの様子をレポートします!

幕開けは、食と農にまつわる5つのインスピレーショントークから

この日、みなとみらいIFCに集まったのは、農と仕事が直結している「JAさがみ」のみなさん、みなとみらいIFCを運営する富士通エフサス、富士通デザインのメンバーのほか、管理栄養士や産業医など、さまざまな立場の人たちが50名ほど。どちらかといえば企業人が多く、会場にはスーツ姿が目立ちました。

この日、はじめて顔を合わせる人たちもたくさんいるなかで、フューチャーセッションは次のようなプログラムで進められました。

どうすれば、食と農のよりよい未来は開けるのか。この大きくて、でも誰にとっても身近で、あまり先延ばしにもしていられない問題について、農の専門家であるJAさがみのメンバーが中心となって、富士通エフサスがフューチャーセンターの場を開設。具体的な活動方法の創造を目指して、参加者たちの表情には真剣な様子が浮かんでいました。

▼当日のプログラム
1)インスピレーショントーク
2)テーマの抽出
3)ワールドカフェ
4)ハーベスト(まとめ・発表)

インスピレーショントークには、仕事を通じて食に関わる、あるいは関心を持つ機会の多いメンバーが5名登壇。千葉のカフェ&宿泊施設「ブラウンズフィールド」で働きながらgreenz.jpでライターも務める磯木淳寛さん、国際ボランティアNGOの理事で磯木さんと同じくgreenz.jpでの執筆も行う吉本紀子さん、遊びと学びのフィルターを通して食を考える「tasobi」主催の堀田幸作さん、農と医療を連動して研究している北里大学の相澤好治教授、富士通エフサスの執行役員である松井正明副本部長の5人が登壇。それぞれの立場から、「食と農」についてのトークを披露しました。

磯木さんは、「Oisix」で働いていた頃に、無農薬野菜のプロフィールをきちんと紹介すれば、値段が少々高くても消費者に受け入れられた話、吉本さんは「土佐山アカデミー」に参加して高知県に滞在したときに地元ならではの豊かな農作物に驚かされた話、掘田さんは食文化の改善の鍵を握る料理人の話など、トークの内容はゲストそれぞれの視点が活かされたもの。少々時間をオーバーしながらも誰もが聞き入ってしまうような興味深い話がいくつも紹介されました。

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「良質な食材の裏に流れる物語を消費者にちゃんと届けることが大切」と磯木さん

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吉本さんは土佐山アカデミーでの経験から食文化にある地域ごとの豊かさをプレゼン

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扱う食材のルーツを料理人に知ってもらうtasobiのコンセプトをユーモアいっぱいに紹介した掘田さん

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食育という見方から食と医療の深い関係を提示してくれた相澤教授

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松井さんはフューチャーセンター運営の立場から未来を切り開くこうとする意志の大切さを強調

ワールドカフェスタイルでどんどんアイデア出し

5人全員のインスピレーショントークが終わると、フューチャーセッションに参加しているメンバー一人ひとりが、食と農について語り合ってみたいテーマを用紙に書き出しました。

参加メンバーは企業の若手からベテランまで、といった雰囲気でしたが、アイスブレイクもあったおかげか、あるいはフューチャーセッションにも慣れているおかげか、まるで誰もが以前から顔見知りであったように和やか。テーマについても思うところが多いのかすらすらとペンを走らせます。

用紙を回収して分類してみると、「楽しく、おいしく」「つなげる・つたえる」「地域」という3つのテーマが誕生。その後は、書き出したテーマが似ていた人同士で3つのグループを作り、ワールドカフェスタイルのセッションがはじまりました。

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セッションではまず、テーマに対して自分がやってみたいこと、自分ができそうなことを付箋に書いてどんどんアイデア出し。ひと通りアイデアを出し終わると整理をして、今度は模造紙の上にわかりやすく分類、ペンを使ってグループ分けをしました。果して、未来の農と食に対して、具体的なアクションを伴うプロジェクトは誕生するのでしょうか?

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付箋に書いたアイデアを分類。意見を交換するとついつい楽しくて笑顔が広がる

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場を引っ張る人、サポートする人など、役割分担が自然にできてくるのがおもしろい

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分類しているときにはここからどんなアイデアが生まれてくるか誰もわからない

場の盛り上がりにまかせて、セッションは柔軟に変化!

このプログラムのデザイナーは当初、全部で3回のワールドカフェを企画していました。でも、蓋を開けてみると最初のワールドカフェだけで想像を上まわる盛り上がり! ここでセッションを中断して、改めてチーム分けするよりもこのままの3チームで話を詰めていったほうがおもしろそう……。場の盛り上がりからファシリテーターはきっとそう判断したのでしょう、アイデアの発散から収束まで、最初に分かれた3つのチームのままより深い会話が重ねられることになりました。

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それにしても、なぜ、フューチャーセッションはこんなにもおもしろいのでしょう。その日初めて会ったばかりだったり、立場もまったく違ったりするメンバーたちですが、喧々諤々とにぎやかにアイデアを形にまとめていくと、すぐに1時間30分もの時間が経過。あっという間にチームごとの成果発表の時間がやってきました。

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自由に広がっていたアイデアがだんだんまとまり、発表できるかたちになってきました!

3つのチームそれぞれがユニークなアイデアを発表!

ワールドカフェで話し合ったアイデアは、

1)プロジェクト名
2)プロジェクトの目標
3)直近でできること

という形でまとめて、プロジェクトの大きな目標の設定のほか、プロジェクトを行動に移すための「直近でできること」までを発表しました。

最初に発表を行ったのは、「楽しく、おいしく」チーム。

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このチームがつくったプロジェクトの名前は、「楽しい美味しい場づくりプロジェクト」。「食を農」を考えるうえでは、家庭を中心にあらゆる場所でおいしい食事を楽しむことがまずは大切です。おいしい食事を楽しむには、食を知っていく必要があり、生産現場やレシピ、歴史などをもっと理解していこうという話でまとまりました。

直近でできることとしては、みんなで産地に行ってみて、その地方の食材を使った料理を堪能。その様子をフェイスブックなどで発信することからはじめればよいというアイデアに落ち着きました。

続いては「つなげる・伝える」グループが発表。

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こちらのチームが考えたプロジェクトの名前は「これからの食育を考える」ということで、食品のよさを伝えていく仕組みをつくることを大きな目標としました。

直近の目標としては、まずは自社の社員に食に関心を持ってもらうために、社内にある食堂メニューをタニタ食堂のようにヘルシーに改善。さらに、ヘルシーな食にまつわるセミナーなども開催して食に関する興味の入口を広げる提案を行いました。

そして、最後の「地域」チームは、プロジェクト名「日本を喰らうプロジェクト」を発表。

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キーワードとして「MATSURI」という言葉をピックアップして、「結局、食を通じて互いが理解し合うには、実際においしいものを味わうしかない。食を通じて、生産者と消費者の“間”を“釣る”ような、つまり“MATSURI”を開催したい」とユニークにプレゼン。その“MATSURI”を通じて、みんなをつなげることを目標としました。そして直近の目標として地域にしかない食材などの試食会の開催などを提案しました。

プロジェクトがどう動いていくのかはまだこれからの話

3チームが3様のアイデアを出し終えましたが、重要なのはむしろここからだと言えるかもしれません。フューチャーセッションを行えば、プロジェクトにレベルの差こそありながらも、なんらかのアイデアは出てくるものです。

でも、実際に話し合われた内容が、具体的に動き出せているかと言えば、それは決して数多いわけではないのではないでしょうか。

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そういった意味も込めて、今回のフューチャーセッション「食と農の未来について語り合おう」では、各チームのメンバーに直近でできそうな具体的な目標まで落とし込んでもらいました。果して、ここで生まれた「食と農」にまつわるプロジェクトはこれからどんな動きをみせるのでしょうか? 

もちろん、動くことなくプロジェクトはなくなってしまうことがあっても、それはなくなるべくしてなくなったアイデアだったのだということ。すべてを動かす必要はありません。でも、フューチャーセッションからプロジェクトが動き出す成功事例をつくったり、仕組みをつくったりと、ここでトライ&エラーを繰り返すことができれば、それは世の中にとっても大きな前進となるはず。

誰もが身近な問題として捉える事ができる「食と農業」。これからもこの問題は、ここ、みなとみらいIFCでさまざまな展開を見せていきそうです。ここで生まれたプロジェクトが、同じメンバーがでもっと発展していくのか、それともメンバーを変えて引き継がれるのか、あるいは仕切り直しになってしまうのかはまだこれからの話です。

どんなふうにも動いていけるこのフューチャーセッション「食と農の未来について語り合おう」。ぜひ、みなさんも、このプロジェクトの行方を観察してみたり、あるいはフューチャーセッションに参加して当事者のひとりになってみたり、ウェブサイトをチェックしながら、ぜひ関わりを持ってみてはいかがでしょうか?

「みなとみらいIFC」に行ってみよう
気になるイベントがあれば、参加してみよう!

writer ライターリスト

井上 晶夫

greenz ライター フリーランスのエディター&ライター。編集プロダクションや出版社を経てフリーランスとして活動開始。企業コンテンツや雑誌、ウェブの記事などを手がける。今、テーマとしているのは“対話”。

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