ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

3 years ago - 2013.11.30

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ドライフードが漁業を変える!気仙沼の海の恵みを、もっと身近で楽しむ「Dry Food Cafe」

cafe_menu_kakuni気仙沼産の「鰹なまり節」を使った角煮丼

特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

するめに昆布、魚の薫製…。皆さんは普段、どれぐらい食べていますか? 

どちらかと言うと「渋い」イメージのあるこれらの食べ物。お店でもあまり食べないし、家で料理に使うとなると一層手が伸びない…という人が多いのでは?でも実は、こういった水産物の加工品には、漁業の構造を変える可能性が眠っているんです!

乾物や薫製、瓶詰めや缶詰めなど、常温流通が可能な加工品を総称してドライフードと呼びます。このドライフードを使ったランチメニューを提供する期間限定カフェ「Dry Food Cafe(ドライフード・カフェ)」が、11月30日(土)から12月21日(土)まで、東京・高田馬場の「02cafe(ニカフェ)」でオープンします。

“持続不可能”な漁業

「ドライフードが漁業の構造を変える」。この意外な発想は、東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市への支援活動の中から生まれました。

気仙沼市への中長期的な復興支援を目的とした「プロジェクトMaru」を主催する「一般社団法人Maru協会」の代表・田村大さんは、活動の中で気仙沼の漁業に危機感を抱いたと話します。

hiroshi_tamura田村大さん(左)

気仙沼の漁業従事者たちの年収は、非常に低い水準にあります。例えば10トン以下の小型船の乗組員だと、年収200万という人も少なくありません。このままだと産業そのものが持続しないし、少しでも現金収入につなげようと魚など水産資源の乱獲が起こるのも当然の成り行きだと感じました。

日本の魚食文化を支配する“鮮魚信仰”

そんな中、 プロジェクトMaruの活動のひとつとして行われた、宮城県気仙沼市とイタリア南部の町・トラムートラとの交流活動において、ひとつの発見がありました。

tramutolaトラムートラ訪問の様子

交流活動の中でMaruのメンバーがトラムートラを訪れた際、ある日の夕食のメインディッシュに、干しダラが使われていました。

「干物がメインディッシュになる」。

日本では干物と言えば、ダシや調味料、酒の肴に利用されることがほとんどです。メンバーは考えたこともなかった干物の使い方に驚くと同時に、魚に関して自分たちでも無意識に「干物は脇役、主役は鮮魚」と考えていたことに気付きました。

toramutola トラムートラで振る舞われたタラ料理「Baccala Carrettiera(バッカラバジリカータ風)」

「日本には根強い”鮮魚信仰”がある」と田村さんは言います。

日本の魚食文化は、「魚は鮮度が高いほど価値があり、なるべく手を加えないで食べるのがよい」という価値観に支配されています。これが”鮮魚信仰”です。新鮮な魚を供給するには、魚を産地から鮮度を保ったまま消費者まで届けられる、複雑で高コストのチルド流通が不可欠です。

しかしチルド流通では、この仕組みに乗りづらい魚は、そもそも取引きの対象とされません。その結果、 市場に出せず自家消費や廃棄に回さざるを得ない魚が、かなりの量にのぼります。

しかし、常温での流通が可能なドライフードであれば、チルド流通に乗せる必要はありません。Maruのメンバーはここに、鮮魚信仰に基づいてつくられた現在の漁業の構造を打ち崩す可能性を見出しました。そして、その可能性を現実のものとするため、新たなプロジェクト「Dry Food Lab(ドライフード・ラボ)」を発足させたのです。

kesennuma_namaribushi気仙沼でつくられる鰹なまり節

ドライフード文化を広めよう

「Dry Food Lab」が目指すのは、せっかく獲れた水産品を有効活用すること、そして、産地に新たな産業と収入源を生み出すこと。そのためには、まずは消費者にドライフードを食べる文化が根付くことが必要です。そこでDry Food Labがその第一歩として始めるのが、11月30日からの「Dry Food Cafe」なのです。

Dry Food Cafeでは、これまでドライフード を食べる習慣が無かった人たちにも楽しんでもらえるようレシピを開発、さらにそれらのレシピを無料で配布する予定です。

cafe_menu2気仙沼産の「新巻鮭の天日干し」を使った豆乳グラタン

cafe3 青森県八戸産の「スルメ(干しスルメイカ)」を使ったペペロンチーノ

今回カフェで提供されるメニューについて、レシピ開発を行った食卓研究家の新田理恵さんに伺ってみました。

美味しそう、食べたいと直感的に思ってもらえるよう、どのメニューも色合わせに気を遣いました。ドライフードってなんだか「茶色い」イメージがないですか? そんなイメージを変えたくて、ドライパプリカやドライトマトなどカラフルな素材を使ってみました。

rie_nitta食卓研究家の新田理恵さん

ドライフードは 「現代に合った食材」と新田さんは言います。

一度慣れてしまえば、ドライフードってとても使いやすいんです。例えばするめやカツオのなまり節(蒸したカツオを炙る、干すなどしたもの)は、 戻して具材にするのと同時に、戻す時に濃厚で美味しいダシが出て、一石二鳥です。

戻すのは少し億劫かも知れませんが、次の日に使う分を夜のうちに水に浸しておくなど、寝る前のひと手間で十分です。「明日はあれを作りたいから、夜のうちに戻しておこう」といった料理の段取り力も鍛えられますよ。また、保存が利きすぐに食べ切らなくてもよい分、余らせて悪くしてしまうことが少なく、経済的です。

美味しくて、しかも使いやすくてエコ。これって今の食にニーズに非常に合ってると思うんです。

srume スルメからは美味しいダシが出ます


しかしそういったメリットも、ドライフードが食卓から遠ざかりつつある現在、認識されづらくなっています。

レシピを考える時はいつも事務所であれこれ試作を繰り返すのですが、するめなどを置いておくと、他の若い女性スタッフから「なんか臭い」という声が上がるんです。実家でよく干物を口にしていた私にとっては「美味しそうな匂い」なんですが、慣れない人からすると臭いんですね。

ドライフードが食卓に登場する数が減っているとは言え、今はまだ親やおじいちゃん、おばあちゃんと小さい頃に干物などを食べていたという人が、ある程度います。しかしこのままドライフードが日常の食卓から離れてしまうと、次の世代にはドライフードに慣れ親しんで育った人がほとんどいなくなってしまいます。だからこそ、今は文化としてドライフードを再定着させることができる、ぎりぎりのタイミングのような気がしています。

今選ぶ食材で、次に残す文化が変わる——。そう話す新田さんは、「“食べる”ということは“選ぶ”ということ」と続けました。

自分自身や身近な人がつくった食べ物を食べる場合は別として、私たちが食べ物を口にするまでの間には必ず、「どの材料を買うか」「どのお店に入りどのメニューを注文するか」といった、何かを選び お金を払うという工程が入ります。そこで何を選ぶかということは、 誰を応援し何を残していくか選ぶということ、つまり、自分が誰と生きて行くかという意思表示だと思います。

今回のカフェを通じて、これまで「慣れていない」「どうやって使えばいいかわからない」とドライフードを素通りしていた人たちに、新しい選択肢を提案できたら嬉しいです。

カフェと現地をつなぐ

今回のカフェ企画には、新田さんを始め アートディレクターや PRエージェント、カフェ経営者など、活動に賛同する多くの人が参加しています。

カフェでのランチメニュー提供期間終了後は、それらの参加者たちと02cafeの学生たちが気仙沼を訪れ、実際に使われたレシピやカフェの来店者からの反応などを現地の漁業関係者に報告する予定です。

kesennuma-gyoko

kesennuma-gyogyo

田村さんは、カフェの取り組みで得たものをカフェだけで閉じずに、 現地の生産者まで繋ぐことが重要だと言います。

もはや市場が存在しないと思っていた水産品が、カフェでは新たな用途で使われている。これを知ることで、一次生産者を中心とした地元の漁業関係者の中に、新たなビジネスチャンスへの期待と確信が生まれると思います。

それにより、チルド流通に乗らずに有効活用されていなかったような海産物や、流通したとしても儲けにならなかった魚などを活用した、新たなドライフードの開発やレシピ拡充も進みます。

この循環をスピーディに回していくことで、これからの魚食文化をより豊かなものにしていければと思っています。

美味しいランチとともに、「漁業を変える第一歩」に参加することができるDry Food Cafe。ドライフードが好きな方も、これまで関心が無かった方も、一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

(Text:北村明子)

ドライフードを使ったメニューを食べてみよう
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栗林 明子

栗林 明子

大学卒業後、不動産ポータルサイトにてウェブディレクション、編集などに従事。現在はサンフランシスコでライター兼、主婦ときどき学生。 主なテーマは住まい、都会と地方、食、健康、旅 etc....

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