ISSUE まちづくり

3 years ago - 2013.11.21

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“いなかセンス”と”とかいセンス”、どっちも大事!地域コーディネーターを育てる海士町の「めぐりカレッジ」体験記(前編)

海士町遠景

“まち”とは“ひと”が暮らす場所に生まれるもの。
人の営みとその土地の環境とが混ざり合い、少しずつ育まれるもの。

では“まちづくり”というとき、私たちはどれだけまちのことを理解し、本当の意味での“まちづくり”に取り組めているのでしょうか?

近年、よりよい社会を目指し、まちづくりや地域づくりに取り組む人は、増え続けています。しかしその一方で、まちづくりに取り組み始めたものの課題にぶつかっている人、思いはあってもプロジェクトの成果がなかなか出ないという人、地域の人々との信頼関係がうまく築けていないといった悩みを抱える人も、増えています。

そんな状況を打破し“よりよい未来を地域からつくる”ことを目指すために、島根県の離島のまち、海士町で、地域づくり・教育・メディア事業などを手がける「株式会社巡の環」が、“とかいセンス”と“いなかセンス”を兼ね備えた地域コーディネーターを育成する「めぐりカレッジ」をスタートさせました!

「めぐりカレッジ」ってどんな学校?

海士町役場 吉元操課長

今回ご紹介する「めぐりカレッジ中級コース」は、すでに地域での活動を実践している人や企業を対象にしたコースです。

受講期間は半年間。最大4名までの少人数制で、コーススタート時には、受講者全員が参加する3泊4日の海士町合宿が行なわれます。その後はスカイプなどを利用して、ケースメソッドとグループディスカッション、各自が取り組んでいるプロジェクトの個別カウンセリングを毎月1回、計6回ずつ受講します。

オンラインなので、全国どこの地域で活動していても受講することができ、受講期間終了後は、東京で開催されるAMAカフェで成果報告を行なうことになっています。

“いなかセンス”と“とかいセンス”が地域コーディネーターのカギ!

ところで、“いなかセンス”と“とかいセンス”ってなんなのでしょうか?

いなかセンスとは“地域の価値をその土地の目線で見て、敬意をもって理解できる受信力”のこと、とかいセンスとは“地域の価値を観光や物販にのせることのできる発信力”のことです。

地元住民であればいなかセンス、移住者であればとかいセンスと、どちらか片方のセンスをもっている人は大勢いますが、これら両方を合わせ持った人材は、それほど多くはありません。巡の環では、この両方のセンスをもった橋渡し役(地域コーディネーター)こそが、これからのまちづくりには必要になってくると考えています。

とかいセンスといなかセンス

前置きが長くなりましたが、以前にグリーンズでもお伝えしたとおり、「めぐりカレッジ」は、巡の環が海士町での経験を日本の未来に活かしたい、そのための学校を開きたいという目標を形にしたものです。そこには、並々ならない想いがあります。

そこで、藤野電力トランジションタウン運動などで知られる神奈川県の旧藤野町に7年前に移住し、まちづくり活動にも深く関わるまちづくり実践ライターまんぼうが、いち受講生としての視点から、複数回に渡ってその魅力を紹介していきます!

海士町合宿に参加しました!

まずは2013年10月11〜14日に開催された、「めぐりカレッジ」中級コースの海士町合宿に参加してきました!

実際に海士町を見て回ったり、地域づくりに関わるさまざまな人から直接話を聞くことを通して、

「地域で仕事を興すための基本姿勢を身につける(まなざし)」
「地域の声をしっかりと聴けるようになる(受信力)」
「人間関係の狭い地域で、どうすれば前に進むことができるのか、実践者から学ぶ(推進力)」

という3つのテーマを学んでいきます。

合宿の間、さまざまなワークを行なった「村上家」。大規模な改修とリフォームが行なわれた古民家は、驚くほどの居心地の良さ。ここに滞在できるなんて贅沢です。
合宿の間、さまざまなワークを行なった「村上家」。大規模な改修とリフォームが行なわれた古民家は、驚くほどの居心地の良さ。ここに滞在できるなんて贅沢です。

合宿の間は、受講者と巡の環の担当スタッフが町の重要文化財にも指定されている古民家「村上家」で寝食をともにし、交流したり、話をしあえるようになっています。

今回の受講者は3名。また、中級コース受講者以外に、合宿のみの参加も受け付けていて、今回も1名が合宿のみの参加者でした。

気楽に参加したつもりが、気づきや学びの連続ですっかり本気に

平川まんぼう

じつは私まんぼう、取材を兼ねてということもあり、はじめは客観的な視点を失わないようにと、努めて気楽に冷静に参加していたところもありました。

しかしそんなふうに構えていられたのは始めだけ。新たな発見や感動、地域の現実の重みを知り、改めて考えさせられたことがあまりにも多くて、合宿を終える頃には、すっかり自分のこれまでのまちづくり活動とこれからのまちづくり活動を考えさせられる結果になりました。

それは、自分を見つめ直す時間と、実際にその土地に触れ、その土地で活動する人々と触れ合うことで生まれた“生々しい現実感”とでも言えるものかもしれません。

合宿の主なプログラムから、その一端をご紹介します。
 
1日目「学びの仲間づくり/地域で仕事をする上での基本姿勢を身につける」

隠岐神社を参拝。神主さんのありがたいお話をいただき、合宿の成功を祈願しました。神社の参拝は、巡の環の宿泊研修では恒例なのだそう。隠岐神社を参拝。神主さんのありがたいお話をいただき、合宿の成功を祈願しました。神社の参拝は、巡の環の宿泊研修では恒例なのだそう。

12:45 菱浦港到着
12:50 昼食(セントラル亭):離島の生き残りをかけた挑戦・CAS商品を味わう
14:00 オリエンテーション:今回の合宿の心意気を共有し、3泊4日の学びの心構えをする
15:00 神社へお参り(隠岐神社):神社へご挨拶へ伺い、地域へ入る心構えをする
16:00 海士町と巡の環の取り組み:海士町がどんな挑戦を続けてきているのか、巡の環の取り組みを知る
17:00 聴く力を高める:地域コーディネーターとして大事なスキルである「聴く力」を高めるトレーニング
19:00 夕食:参加者とスタッフのみの交流会

4日間海士町で過ごすうえでの予備知識を学んだり、まちを散策したりと、合宿に対する学びの姿勢を1日かけてじっくり作り上げていきました。

夜の交流会は、村上家のすぐ隣にあるレストラン「慶海」で、いわゆる宴会(笑)。この日、初めて顔合わせした参加者もすっかり打ち解け、交流会終了後も、村上家で夜遅くまで、それぞれの想いや悩みを語り合うまでになっていました。

 
2日目「地域への愛の深さや尊さを感じる」

滝中のじっちゃんのユーモアたっぷりのお話で、歴史を知る大切さに気づいた人も。滝中のじっちゃんのユーモアたっぷりのお話で、歴史を知る大切さに気づいた人も。

8:30 島内ドライブ:海士町の地形を自分の目で見る
10:00 海士町役場財政課長、吉元操さんのインタビュー:海士町の今を作ってこられた「地域の宝を守る人」へインタビューを行なう
13:30 集落歩き:海士町の名物観光案内人、滝中のじっちゃんこと滝中茂さんと集落を歩き、地域の宝にアンテナを張る
17:00 料理教室と夕食:海士町の料理名人、みっちゃんこと波多美知子さんとの会話を楽しみながら、地元の食材で料理を作る

2日目は、海士町のことをさらに知り、そこにある地元の方々の愛や想いを受信する日でした。

吉元課長へのインタビューでは、財政危機をどうやって乗り越えてきたのか、Iターンを積極的に受け入れてきた理由などをお聴きしました。

滝中のじっちゃんは、とにかくまちの歴史に詳しい人。海士町とゆかりのある後鳥羽上皇の話題を中心に、実際に集落を歩きながらお話していただきました。落語のように流暢で、ユーモアを交えた歴史の話に、みなすっかり釘付けに。多くの歴史の上に今があるのだと気づかされました。

みっちゃんと一緒にイカめしを作る。「お米つめすぎだよ! あとで膨れるから少なめに!」みっちゃんと一緒にイカめしを作る。「お米つめすぎだよ!あとで膨れるから少なめに!」

そして、夕方からはみっちゃんの料理教室。元気なみっちゃんに教わりながら(怒られながら)、タイスキやイカめし、煮物など、豪華な夕食が完成しました。海の恵みに感謝しながらいただく食事はまた格別。

後半は、みっちゃんの島への想い、Iターンで島にやってくる人々に感じている感情をありのままに知ることとなり、私たちもみな、すっかり考えさせられたまま、1日を終えました。

 
3日目「地域で矛盾を抱えながらも前に進む難しさ、自分自身がどこに向かうのか」

Life as a river

9:00 金光寺山へ行く:海士町でも有数の景観スポットを散策
10:00 岩本悠さんインタビュー:2006年に海士町に移住し、全国からの島留学の展開など、高校からのまちづくりに取り組む岩本悠さんにインタビュー
13:30 ワークショップ:これまで得た学びや感じたことを紙に書き出し、発表する。「Life as a river」を行ない、自分の人生を見つめ直す
17:00 夜の語らい:焚き火を囲み、お酒を飲みながら語り合う

3日目前半は、巡の環と同じように、海士町にIターンして教育の視点からまちづくりに携わる岩本悠さんへの対話形式でのインタビュー。

なぜ海士町にやってきたのか、途中くじけそうになったときのこと、それを乗り越えて学んだこと、どうやって周りの人を巻き込んで前に進んだのか、今後のことなど、同じように地域づくりに関わる者同士、共感できる話や聴いてみたかった本音の話を伺うことができました。

合宿でのインプットはここまで。後半は、この合宿を通しての学びや想いを、アウトプットする作業に。多くの気づきを得た人、まだ心の中がもやもやしている人など、それぞれが正直に自分の心のうちを話しました。

また、絵や写真のコラージュを使い、自分の人生を川にたとえて表現する「Life as a river」では、各自の個性の出た仕上がりに大盛り上がり。ともに学んできた仲間の人となりをさらに深く知ることができました。

まんぼうの「Life as a river」。私の人生はこんな感じです。
まんぼうの「Life as a river」。私の人生はこんな感じです。

夜の語らいでは、ひとけのない明屋海岸で、波の音を聴きながらの語らいを。火を見つめながら、もやもやした心のうちをさらに掘り下げて話をする時間になりました。たった数日でここまで自分をさらけ出し、深い話ができる仲間となっていることがとても不思議でした。

後半には飛び入りゲストも参加し“幸福度”に関する熱い議論が繰り広げられました。火を囲んで語り合う中で、大切にしたいことのズレなどから、正直なところ、円満とはいえない雰囲気になりました。

しかし、地域で本気で前に進む中では本音の衝突も必要であると聞いていたので、あえてごまかさずに、なぜこういう議論になってしまったのか、私たちが目指そうとしている地域づくりとはいったいなんなのかという、1歩踏み込んだところまで話を重ねました。結局、予定時間を大幅にオーバーし、深夜に村上家に戻りました。

火を囲むと話が弾む不思議。お酒も進みます。 火を囲むと話が弾む不思議。お酒も進みます。

 
4日目「学んだことを、これから日常にどう活かすか」

合宿のみ参加の島青志さんは、自身が関わる石巻の活動と繋げて「合宿を通して地域づくりには愛が大事だとわかった。でもその愛がとても深いので、今の自分には愛は無理かもしれないとも思う。でも…恋ならできる!」と、なるほどと納得してしまう、ユニークなプレゼンを展開しました。
合宿のみ参加の島青志さんは、自身が関わる石巻の活動と繋げて「合宿を通して地域づくりには愛が大事だとわかった。でもその愛がとても深いので、今の自分には愛は無理かもしれないとも思う。でも…恋ならできる!」と、なるほどと納得してしまう、ユニークなプレゼンを展開しました。

9:00 発表会準備:この合宿で得たことをどう活かすか、考えをまとめる
11:00 発表会:海士町に住んでいる人や他の参加者に、プレゼンを聴いてもらう
13:00 ワークショップ:ノンバイオレンス・コミュニケーションについて学ぶ。ペア・インタビューを行ない、4日間の学びを振り返る
15:15 菱浦港出港

4日目は、合宿での学びを、実際の自分の活動に落とし込む1日。考えをまとめてプレゼンとして聴いてもらい、感想やアドバイスをもらいました。和やかな雰囲気の中、質問もたくさん飛び交いました。と同時に、私も含め、それぞれがこれを持ち帰って、さらに深めていく必要性を感じました。ここでの課題や気づきを、これから6ヶ月間の研修で、さらに追求していくことになるのでしょう。

また、昨夜の焚き火での議論を受けて、急きょ行なわれたノンバイオレンス・コミュニケーションのワークでは、相手を否定せず、明確に具体的な行動を促す言葉で要求することの重要さを教わりました。

楽しい、だけど濃密! 海士町合宿のプログラム!

隠岐神社にて

「こんなにゆるい研修は初めてです」。ある参加者は、そんなことを言いました。

確かにプログラムは、まちを散策したり、食事をしながら語らったり、地元の人たちと笑いを交えながら話をしたりと、学校というよりも、海士町に遊びにきた延長のような、とても緩やかなものでした。

しかしその中には、いわゆる講義では得られないたくさんの現実を見ることができました。そして、それに対して自分が今どうしているのか、どうしたいと思っているのかを考えるだけの余裕がありました。

学びとは、上から下へ教えるものではなく、ともに学ぶもの。
自ら感じて、学び取ろうとするもの。

気づきを取りこぼすことなく、心に落とし込んでいけたのは、ひとえにこのゆるさの中にある“空白”の多さだったように、思います。

今回の合宿は、これから6ヶ月間の研修を受ける上で、そしてその後、各自がまちづくり活動を行なっていく上での姿勢を、体験として得た4日間でした。

最後に参加者と巡の環スタッフで記念撮影。みんなすっかり仲良しに。最後に参加者と巡の環スタッフで記念撮影。みんなすっかり仲良しに。

駆け足で紹介してしまったので、もっと詳しく、どんなことがあったのか知りたい! という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

次回、めぐりカレッジ合宿編・後半では、特に印象的だったできごとを紹介しながら、3つのテーマ「まなざし」「受信力」「推進力」に沿って、合宿で得た学びや気づきを具体的にお伝えします! お楽しみに!

海士町に行ってみよう
巡りの環 ウェブサイト

writer ライターリスト

平川 友紀

greenz シニアライター リアリティを残し、行間を拾う ストーリーライター 1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。体調を崩したことをきっかけにマクロビオティックを学び、持続可能なライフスタイルを模索し始める。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らし、コミュニティを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。 facebook:https://www.facebook.com/captainmanbou twitter:@captainmanbou

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