ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

2 years ago - 2013.11.18

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ケーキを食べ、紅茶片手に“死”について語り合う!欧米で広がる「Death Cafe」ムーブメントとは? [イキル×テツガク]

death cafe main© 2011 alBerto Trevino

シリーズ「イキル×テツガク」では、お堅く難しいイメージの「哲学」が、ちょっぴり楽しく身近に感じられるようなプロジェクトを紹介します。少し入口を変えて哲学に親しみ、日常の中で、自分なりに日ごろの生き方を見つめ直す時間を持ってみませんか?

“死”について、じっくりとおしゃべりしたことはありますか?

欧米ではこれまで、“死を話題にすることはタブー”という価値観が一般的でした。しかし今、そうした価値観から離れ、より良い人生を送るために死について考えようとする人が、欧米を中心に増えつつあります。

今回ご紹介するのは、そうした人たちによってアメリカやヨーロッパの各地で開催されている「Death Cafe」というイベントです。テレビ番組や新聞でも取り上げられるなど注目を集めつつあるこのムーブメント。一体どのようなものなのでしょうか。

death cafe atlanta 1Photo by Death Cafe Atlanta

Death Cafe」はもともと、スイスの社会学者で死を研究テーマとしていたBernard Crettaz(バーナード・クレッタズ)さんによって、約10年前に始められました。コンセプトはシンプルで、カフェやレストランなどでケーキを食べたり紅茶を飲んだりしながら、カジュアルな雰囲気の中で死について語り合おうというものです。

こうしたスタイルのイベントがベルギーやフランスへと広まる中、ブームに本格的に火を付けたのが、イギリスの社会起業家Jon Underwood(ジョン・アンダーウッド、以下ジョン)さんでした。

死にまつわるモノやコトにイノベーションを起こせないかと考えていたジョンさんは、パリで「Death Cafe」が開かれたことを知ってそのコンセプトに大いに共感。ロンドンの自宅やカフェなどで数多くの「Death Cafe」を開催するようになりました。

さらに興味を持った人がだれでもホストになれるよう、自らの経験を基にして、「Death Cafe」を開催するためのガイドラインを作り、ウェブサイト上で公開したのです。

進行役であるファシリテーターの役割は、イベントとしてのクオリティを保つ上でとても重要です。 進行役であるファシリテーターの役割は、イベントとしてのクオリティを保つ上でとても重要です。Photo by Death Cafe Atlanta

“eat cake, drink tea and discuss death”というキャッチコピーから始まるこのガイドラインには、ケーキを食べたり紅茶を飲んだりしてリフレッシュしながら話すことなど、主催する上での様々なアドバイスやファシリテーションの仕方が詳しく記されています。

それによれば、「Death Cafe」で大切にされていることは主に次の3つ。一人ひとりが自由に自分の考えを表現できるようにすること、特定の結論を出そうとしないようにすること、そしてカウンセリングやお悩み相談になりすぎないようにすることです。

開催予定の「Death Cafe」がチェックできるページ。フライヤーのデザインもそれぞれオリジナリティがあります。 開催予定の「Death Cafe」がチェックできるページ。ホストとして登録すれば、誰でもこのページで告知することができます。

これまで延べ300以上開催され、3000人以上もの人が参加したそう。実際にどういう思いを持った人たちが集まり、どういう会話を交わしているのでしょうか。ちょっと聞いてみましょう。

PDX death cafe Photo by PDX Death Cafe

アメリカで開かれたある「Death Cafe」では、29歳のソーシャルワーカーの女性がホストを務めました。彼女がまず出したのは「死からどんな言葉を連想する?」というトークテーマ。

「自由」「悲しみ」「安らぎ」などの答えがあがる中、「卒業」と答えたのは、自動車の免許を取ったばかりの友人を事故で亡くしたという25歳の女性。その友人の死を、なかなか受け入れられずにいるのだと言います。

そんな彼女に言葉を返したのは、100km以上離れたところからはるばる参加しにやってきたという69歳のおばあさん。母親を亡くして悲しんでいた時の自身の不思議な体験について語りました。

夢の中に若いころの元気そうな母親が出てきて、「私のことは気にしなくていいから、自分のことを頑張りなさい」って言われたの。それが何だったのかはわからないけれど、気持ちはとても楽になりました。

このほかにも「死に関することで一番怖いことは?」や「死ぬ前にしておきたいことは?」といったテーマで、年齢や職業など様々なバックグラウンドの19人の参加者が語り合いました。

ホストの女性は「Death Cafe」の魅力についてこう話します。

会話を通して、とんでもない発見が得られるわけではありません。でも、目の前の扉を少し開いてくれるんです。

before i dieSome rights reserved by xshamethestrongx

宗教や文化によって死に対する思想は様々かもしれませんが、自分の人生の終わりについてじっくり考えたり、ほかの人が死というものをどう捉えているのかを聞いたりする時間があってもいいのではないでしょうか。

世代を問わず、死について楽しく語り合える「Death Cafe」は、そんな時間を持つための良い入口になるかもしれません。次回のおやつタイムは、「Death Cafe」スタイルにしてみませんか?

(Text:松本優真)
[via The New York Times]

“死を想う”取り組みではこちらも有名!
キャンディ・チャン 「死ぬ前にしたいこと」 TED.com

writer ライターリスト

松本 優真

松本 優真

編集者 greenz ジュニアライター 1991年和歌山生まれ。 京都大学文学部で哲学・倫理学を学び、 2015年から、建築、まちづくり、 コミュニティデザインを専門とする 学芸出版社で書籍の編集に携わる。 ◎Blog:Medium

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