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3 years ago - 2013.10.25

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世界一 “楽しく、正しい” プレミアムアイスクリーム「BEN&JERRY’S」の創業に隠されたストーリーとは?

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チョコレートやクッキーなどの“チャンク”が大きくゴロゴロと入った『BEN&JERRY’S』のアイスクリーム。世界35カ国で商品を展開して愛され、2012年春には、表参道ヒルズに日本第1号店がオープンして話題になりました(みなさん、もう食べましたか?)。

このBEN&JERRY’S、アイスクリームの味が気になるのはもちろんですが、今年の参議院議員選挙では、Facebookで投票宣言をした人にアイスクリームを1個無料でプレゼントするという「選挙に行ってアイスをもらおう」キャンペーンを展開したことでも注目を集め、greenz.jp読者のみなさんにとっては、「BEN&JERRY’Sって、どんな会社なの?」と、ちょっと気になる存在なはず。

というわけで、今回、このちょっと気になるBEN&JERRY’Sさんを訪ねました!

お会いしたのは、BEN&JERRY’S の“フレーバーグル”であるピーター・リンドさん(フレーバーグルは、アイスクリームのフレーバー開発を担当する人!)と、日本にてBEN&JERRY’S Japanを担当する浜田宏子さん。

美味しいアイスクリームの裏側に、まだまだ日本では知られていないBEN&JERRY’Sの隠れた魅力がありました。

BEN&JERRY’Sって、どんなふうに生まれた?

同社の誕生ストーリーを浜田さんが教えてくれました。

BEN&JERRY’Sを創設したのは、ベンとジェリーという2人の青年。彼らは、同じ中学校に通った同級生で、運動音痴で食いしん坊というちょっとサエないタイプのお友達でした。高校卒業後もアルバイトをクビになったり、大学入試に失敗したりして……。

そんな彼らが、思い切って挑戦したのが、大好きなアイスクリームを販売するお店の経営。なんと5ドルの通信講座でアイスクリームの作り方を勉強してのスタートでした。それから30年が経った今、BEN&JERRY’Sは、世界中で愛されるブランドになりました。

左)創設者のベンとジェリー/右)1978年、バーモンド州にオープンした1号店
左)創設者のベンとジェリー/右)1978年、バーモンド州にオープンした1号店

最高のアイスクリームを、“最高のカタチ”で

「BEN&JERRY’Sのアイスクリームって、最高に美味しいと自信を持って言える。でも、僕たちのポリシーは、最高のアイスクリームを、“最高のカタチで届ける”ということなんです」と、ピーターさんは語ります。

彼らが考えるアイスクリームをつくる“最高のカタチ”とは、どんな形なのでしょう。

それは、アイスクリームをつくる人たちと楽しんでもらうファンと「共存共栄」できる形。BEN&JERRY’Sのアイスクリームはそのフレーバーごとに、世界じゅうのたくさんの生産者さんに支えられています。

僕たちは、良質な原料を選び、かつ適正な価格で継続的に取り引きをしたいと考えているのです。メキシコのコーヒー農家さんやアフリカのバニラ農家さんなど、直接取り引きを行っています。そうすることで、確実な“フェアトレード”を行う。味わいのあるすばらしい豆を提供してくれているメキシコのコーヒー農家とは、もう約22年のお付き合いです。

それから、アフガニスタンの農家さんには、フルーツとナッツをつくってもらっている。アヘンの原料植物であるケシをつくっていた彼らが変わっていくために、みんなで応援しながらね。ただ、応援したいという思いがあるとは言え、僕たちが納得できるクオリティじゃないともちろん取り引きはできない。そこで、あとひと息というところでは、時に他者の力も借りて、より原料の価値を磨くこともある。つまり、一緒に歩むことができる方法も、二人三脚で考えるのです。

使いたいのは、“Happy Cows”の牛乳

「共存共栄」のために取り組むのは、フェアトレードだけではありません。どんなふうにつくられた原料を選ぶかにとことんこだわるため、たとえば、スーパープレミアムアイスクリームの原料の多くを占める牛乳の選び方にも明確な基準があるのだそう。

使いたいのは、健康ないわば“Happy Cows(幸せな牛たち)”の牛乳。何千頭もの牛を一度に育てている大規模な農家より、小さくても一頭ずつの面倒を丁寧にみている農家がいい。

こだわっているのは、成長ホルモン剤を使われていない牛の牛乳であること。搾乳量を多くするためにホルモン剤を利用する農家が多くなりましたが、ホルモン剤を利用すると牛は病気にかかりやすくなるのです。しかし、ホルモン剤を使わずに人道的に牛を飼育するとコストもかかりどうしても値がはることになる。だからこそ、僕たちには、この値のはる部分をきちんと支払い継続的に取り引きをする責任があると考えています。

正しいと思う形を提案し、しっかりと取り引きを行うことで農家に還元し、生活を支えていく。きっと、多くの企業がそうありたいと思う考え方でありながらも、激しい競争のなかで目の前の収益力や効率の向上を第一に追求しがちな現代では、難しいこと。

大事なのは、「これが僕たちの進むべき道なんだ」と示すこと。どんなに大変でもホルモン剤の使用をしないでほしい、より良い品質を求めて作り続けてほしいということをサプライヤーにも理解してほしい。

だから、僕たちは、すべての製品をフェアトレード製品に切り替えることを決めた際には、サプライヤーみんなを集めて、フェアトレードについての理解を深めてもらうための場をつくりました。

そして、そこで僕たち自身もこの取り組みの意義と継続性を強く伝えるのです。そんなふうにこの道を進む仲間を増やしていく。BEN&JERRY’Sのそういう地道な取り組みが、僕は好きですね。

ブラウニーを作るために人を雇うのではなく、
人を雇うためにブラウニーを作るのだから

原料や素材にこだわってきたBEN&JERRY’Sの歴史を振り返ると次々と出て来そうな苦労のストーリー。しかし、そんなストーリーをピーターさんはなつかしそうに笑いながら語ります。

たとえば、人気フレーバーである「チョコレート・ファッジ・ブラウニー」に使用するブラウニーは、ホームレスだった人や低所得者、公民権を奪われた人などの自立支援を行う「グレイストン・ベーカリー」という団体から購入しているのですが、彼らと取り引きを始めた時のてんてこまいは、今でも忘れられないストーリーです。

グレイストンのブラウニーを知ったBEN&JERRY’Sは、彼らの活動を応援するためにこのブラウニーをアイスにと考えたのだそう。

ベンは彼らにトラック2台分のブラウニーをオーダーしました。もちろん彼らは、日々ブラウニーをつくっていたわけで、ブラウニーづくりはお手のもの。そして、特注オーダーを受けた彼らは、アイスに入れられるようなダイス状のブラウニーを大きな特別トレーに薄くブラウニーを焼いて、それをピザカッターでダイス状に切り分け、冷凍庫で凍らせて、苦労の果てに4ヶ月かかって納品してくれた。それでも、到着したのはトラック1台で、ブラウニーはその半分にしか積み込まれてなかったけれどね。

そして、いざ、僕たちがブラウニーをアイスに入れてみようとしたら、そこにゴロリと転がり落ちてきたのは、小さなダイス状のブラウニーがくっつき合った巨大なかたまりだった……。あれは、居合わせたみんなが、仰天した瞬間だった。結局その後、5人を雇ってくっついたブラウニーをひとつずつバラすという作業を永遠に行うという、思い出す度に笑っちゃうような体験になりました。

左)現在もグレイストン・ベーカリーで焼かれるブラウニー/右)大人気の「チョコレート・ファッジ・ブラウニー」 左)現在もグレイストン・ベーカリーで焼かれるブラウニー/右)大人気の「チョコレート・ファッジ・ブラウニー」

そんな大失敗がありながらも、グレイストンとの取り引きは継続することに。

一回目は確かに失敗したけれど、彼らにも僕たちにも失敗に立ち向かう熱意があったから。それに、この失敗から得た教訓は、今でも生きています。それは、とても基本的なことだけど、自分の希望は十分なコミュニケーションをもって、正確に細かく相手に伝えるということ。

例えばこの時、僕たちはどんなものがほしいかは何度も伝えたけれど、細部が足りなかった。「凍らせたものがほしい」と聞いて彼らは0℃で凍らせたわけだけど、ひとつずつをバラバラにした状態で保つためには、-30℃が好ましい。そういう細かい部分に研究を重ねていけば良いのです。

失敗があれば、改善してでも一緒に進む。なぜなら、僕たちは、グレイストンに居る人たちの自立を応援するためにブラウニーを使うのだから。ブラウニーをつくるために人を雇うのではなくて、人を雇うためにブラウニーをつくりたかったんだということを忘れずに進まなければなりません。

そんな失敗を経て、「チョコレート・ファッジ・ブラウニー」は、いまや、同ブランドの代表的なフレーバーに成長。そして、その間、グレイストンからはたくさんの人たちが自立し、巣立っていきました。さらに、彼らの多くがこのベーカリーでの労働から有意義に学び、優秀な起業家も生まれているのだそう。

これが、僕たちの進むべき道

「共存共生のための心得は?」と聞くと、ピーターさんは、ふたつのことをあげてくれました。

“会社や知識はオープンなものであるべき”

一緒に進むためには、信頼できるコンサルタントを取引先の生産者に紹介したり、時には、運営を続けるために最適なサイドビジネスのアドバイスもする。いつも自分と彼らは共存関係であることを忘れずに、親身になること。

“選んだ相手とは、長い目で向き合う”

むやみに喜ばせれば、悲しませることになる。だから、きちんとした取り引きができるまで、無責任な期待は持たせないこと。そして、一緒に仕事をしていた相手とも、品質や製造量が追いつかないこと等で取り引きを打ち切りにせざるをえないこともある。これは、とても辛い選択です。それでも、一度は終わりになってしまった相手とも関係を続けて、再び可能性が感じられればまた一緒に仕事をすることも検討する。そうやって、長い目で付き合うことが共存においてとても大切なことだと思います。

全原料フェアトレードを目指す

しかし、良いものを適正価格で取り引きすることで商品価格が上がり続ければ、販売が難しくなるのでは?

他社が安く仕入れているものを適正価格で仕入れるだけでは、確かにそうなるかもしれません。だからこそ、自らを見直してのコストカットが必要になります。フェアトレードのように自分たちが正しいと信じるコストは受け入れて、その他に潜んでいる本当の“ムダ”を見つけて削るべきを削る。

例えば、廃棄を出さない工夫をするとか、人員のコストを徹底的に見直し、管理する。そういう努力をすることで、商品価格をコントロールしていくのです。

左)BEN&JERRY’S Japanを担当する浜田宏子さん/右)と“フレーバーグル”ピーターさん 左)BEN&JERRY’S Japanを担当する浜田宏子さん/右)と“フレーバーグル”ピーターさん

現在では、すでに多くの原料がフェアトレードされているのですが、さらに、世界で販売する全ての商品の全ての原料を2014年の半ばまでにはすべての原料をフェアトレードのものすることを目標としている同社。いまや世界中で販売され、フレーバーの違いとサイズの違いをすべてカウントすると240種類にもなるという商品群。果たしてそれは、実現可能なのでしょうか。

本気ですべてを変えたいと思えば、ひとつずつをやっていくしかない。現実的にどのように取り組むのか? まず商品を整理して、同じ原料を使っている商品に対して、ひとつの原料を確実に置き換えていく作業になります。気の遠くなるような作業ですが、それをしなければ、10年経っても、何も変わらない。

大切なのは、この作業は、「いつまでも終わることがない」のだと受けとめること。より良くするための作業は、永遠と続いていくものだと受けとめることです。

世界26カ国に店舗を出店するまでにいたったBEN&JERRY’S。実は、本国アメリカでは、「社会に貢献していると思う企業は?」「地域コミュニティ活動を支持する企業は?」という意識調査では、上位にランクイン。たくさんの支持を集める理由は、こんなふうに発展途上国で暮らす農家の方々の生活を支援するためにフェアトレードに取り組んだり、地域社会への貢献活動を積極的に実施する姿なのです。

社会問題への取り組みも、楽しくユーモアを持って!

日本でも、ブランドを理解して、選んでくれるファンに出会いたいですね。そして、若者たちと一緒に楽しく社会を良くしていきたいと考えています。

そう、彼らがいつも添えるのは、“楽しく”という言葉。

ジェリーの言葉を借りるなら、”If it’s not fun, why do it?” (楽しくなければやる意味ないよ)だと、ピーターさんは言います。

僕たちが大事にしていることは、社会問題に対して提案を投げかける時、誰かにお説教をすることでもなければ、怒鳴り合うことでもない。問題に気づいて、みんなが、自分にできることを考えるということ。だから、ユーモアと美味しいアイスクリームをもって、美味しいね、楽しいね、から始まる気づきを提供していきたいのです。

アラスカでの石油採掘反対を訴えるためのデモ「ベイクドアラスカ」(この時に作られたフレーバーは、後に、定番フレーバーに)や日本で行った「選挙に行ってアイスをもらおう」キャンペーンもそう。未来については、楽しみながら考えたいですよね。

左)石油採掘反対を訴えるためのデモ『ベイクドアラスカ』/右)『選挙に行ってアイスをもらおう』キャンペーン 左)石油採掘反対を訴えるためのデモ「ベイクドアラスカ」/右)「選挙に行ってアイスをもらおう」キャンペーン

日本でも始まっている、BEN&JERRY’Sのソーシャルアクション

気になる日本での展開はというと、ベン&ジェリーズの日本限定フレーバーとして登場したのが、「カボチャンク」。かぼちゃピューレをふんだんに使ったアイスクリームに、ホクホクの皮付きかぼちゃとチョコチップクッキーのチャンクが入ったなめらかで自然な甘みのアイスクリームです。

そして、そのチョコチップクッキーを作っているのは、障がいのある方の自立と支援参加を支援する「スワンベーカリー」。サンデーなどに使用するクッキーも、「スワンベーカリー」から仕入れているのだそう。

「日本でのロードマップは、まだ描き始めたばかり」と語る、ピーターさんと浜田さん。

しかし、そのロードマップには、「楽しく社会問題に取り組みたい」「若い人たちとアイデアを交わしながら、進みたい」そんなアクションが計画されているのだそう。楽しく正しく、BEN&JERRY’Sが進む道。「好きなことを楽しくやっていきたい」、そんな思いをもとにたった5ドルの通信講座から始まったグローバルカンパニーが進むその道を、おいしいアイスクリームを食べながら一緒に歩いてみたいと思いませんか?

[sponsored by BEN&JERRY’S Japan]

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writer ライターリスト

柿原 優紀

柿原 優紀

柿原優紀(Yuki KAKIHARA)。エディター・プランナー。Glasgow School of Artを経て、京都精華大学芸術学部卒業。いくつかの出版社に勤務後、フリーランスとして活動。2011年10月にtaraxacum companyを設立。旅や食、地域文化、途上国支援を得意分野としてメディアプランニングや執筆を行う。また、「青空の下でウエディングをしよう!」をテーマにしたプロジェクトHappy Outdoor Wedding(H.O.W)も運営中。 taraxacum company http://www.taraxacum.co/ H.O.W http://www.happy-outdoor-wedding.com/ Twitter @yuukiburg

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