ISSUE まちづくり

3 years ago - 2013.10.06

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自分たちの街を、自分たちでつくる。大阪発、協働のまちづくりをサポートする「笑働OSAKA」

クリーンサポーター

みなさんは地域の清掃活動に参加されたことがありますか?大学生やシニアの方はもちろんという方が多いかと思いますが、社会人として毎日忙しく過ごしていると時間がなくてそういった活動に参加したことがない、地元のことなのにおろそかになるのはうしろめたいと思っている方もいるのではないでしょうか。

そんな方にオススメな取り組みが、大阪で始まっています。それが「笑働OSAKA」というプロジェクトです。

行政的な言葉でお伝えすると、大阪の街を良くするボランティア活動に取り組む個人・地域団体・学校・企業・行政を一つの輪でつなぎ、情報交換や協働のサポートと啓発を通し、府民に街への気持ちの変化を促す、大阪府都市整備部主体のプロジェクトです。

なんとも美しい産官学連携のシナリオに聞こえますが、実際はどんな活動をしているのでしょうか。事務局の梶間千晶さんに聞いてみました。

大阪府都市整備部事業管理室の梶間千晶さん
大阪府都市整備部事業管理室の梶間千晶さん

例えば寝屋川市にあるトヨタ部品さんという企業を例にご紹介しますと、工場周辺の清掃活動をされていたのですが、その企業とは別に地域の方々も町の清掃活動をされているという状況がありました。

地域の方の悩みは、集合場所やトイレ休憩の確保が難しいことだったのですが、それを知って互いを紹介したところ、「工場の駐車場やお手洗いを使ってもらったらいいですよ」と、工場の敷地をボランティア活動されている方たちに提供してくださりました。さらに日を合わせていっしょに協働で地域清掃をされるようになりました。

もともとトヨタ部品さんは、工場の樹木の葉っぱが道路に飛んでくるといった地域からの苦情があり清掃活動をされていたようですが、地域の方と協働で清掃活動することでコミュニケーションが生まれ、工場への苦情が減ったそうです。互いをよく知ることで思いやりが生まれたんだと思います。

笑働OSAKAはこういった協働が生む幸せのカタチを、もっともっと知ってもらって、いろんな人に活用してもらうよう取り組んでいます。

協働活動がさまざまな地域に連鎖してゆき、しっかりと取り組んで協働の輪を広げていきたいんです。最初は小さなことかもしれないけれど、笑顔の輪が広がっていけば地域が暮らしやすい場になっていくと思います。

こういった活動がカタチとなった例が二つあります。ひとつはリサイクルプロジェクト。

再生トイレットペーパー”OSAKA ROLL(オーサカ・ロール)” 古紙の回収は大阪紙業株式会社、トイレットペーパー製造は株式会社リバース。
再生トイレットペーパー「OSAKA ROLL」。古紙の回収は大阪紙業株式会社、トイレットペーパー製造は株式会社リバース

環境問題に着目した「笑働OSAKAリサイクルプロジェクト」は、大阪で使われたモノを大阪で再生していく循環型社会を目指す活動です。生活に密着した参加意識を持ってもらえるよう、企業との協働によって、古紙回収やオリジナルリサイクル商品の販売を行っています。商品の売り上げの一部は地域活動資金に還元されます。

そしてもうひとつは、笑働の森。

桃山学院大学や横山校区町会連合会のみなさんと、槇尾山の保全・再生に向けた森づくりとして、間伐作業、ベンチ作り、育苗ゾーンづくりなどを行なった様子。
桃山学院大学や横山校区町会連合会のみなさんと、槇尾山の保全・再生に向けた森づくりとして、間伐作業、ベンチ作り、育苗ゾーンづくりなどを行なった様子。

貴重な環境資源として保全し、広く府民に森・川・道を守り、森で遊び、森や川に親しむ環境体験エリアとして活用し、笑働OSAKAのシンボルとなる府民の交流の場をつくっています。

協働から笑働へ。大阪の新しいムーブメント

そもそもこの笑働OSAKAの前身となる活動をはじめたのは、現在の大阪副知事である小河さんでした。どんなきっかけではじまったのでしょうか。

大阪府副知事 小河保之さん。
大阪府副知事 小河保之さん

僕が土木事務所の所長をしていた10年前のことですが、吹田市の交差点部の歩道を拡幅して、そこに植樹をするという計画があったんです。この植樹に地域の人たちが積極的に参画してくださり、みんなで一緒に仕事をやり遂げることができて、「これはいいなぁ」と思いました。

当時は、道路は行政が管理して当たり前という意識が強く、「道路が汚れているからなんとかして欲しい」とか、「道路のゴミを撤去してほしい」といった、どちらかというと苦情や要望を聞くことが多かったんですね。そこで、もっと地域の人たちが参画して、府民と行政が一緒になって、街をきれいにできたらいいなという思いをずっと持っていたんです。

そんなとき、小河さんはアメリカで始まっていた高速道路のアドプト活動を知って、「これだ!」と感じたそう。アドプトというのは英語で養子にするという意味があり、自分たちが身近に利用する道路を自分たちの子どものように育てていこうという動きだったようです。

これが僕にとってのアドプトとの出会いで、大阪でもこういったことができないだろうかと考え始めました。そこで、最初に取り組んだのが、先ほどの吹田市の交差点の植樹事業。府の計画を地域の人たちに協力してもらうというよりも、一緒に計画していくという方法を試しました。

僕がまず実践したのは、「自分たちのほしい木を決めてください」と、地域の人たちに呼びかけていったんです。土木事務所の職員も賛同してくれて、みんなの気持ちが一体となった。「これは面白い!」と思いました。植樹だけなくて、地域全体のことを地域の方も一緒になってみんなで考えていきたいと感じました。 そのことがきっかけで街をみんなできれいにするためのアドプトプログラムを大阪で広げる努力をしました。

清掃活動に参加する人、サポートする人、感謝する人=すべて笑働

アドプトプログラム導入10周年を機に笑働OSAKAを立ち上げて、2年。プロジェクトはどう変化していったのでしょうか。都市整備部部長の村上毅さんはこう語ります。

大阪府都市整備部部長、村上毅さん。
大阪府都市整備部部長、村上毅さん

自分の住んでおられる地域の清掃をしていただき、そこから出たゴミは行政で引き取りますよというのがアドプトの原型ですが、そこに住んでいる方、働いている方は、清掃しているだけにとどまらず、木や花を植えたり、防犯に取り組んだり、介護や教育を考えたり…。どんどん広がっていくんですよね。地域を少しでも良くしようと汗をかいておられる。

そういった自立・自律の活動が、さまざまな地域で、一歩ずつ着実に根づきつつあります。笑働は、まず、その方たちに「感謝」するところからはじめたい。そして、その「広がり」をしっかりと見つめ、受け止めていく。そうやって、みなさんと一緒に手を携えていければ、2倍、3倍の豊かさが実現できるんじゃないかなと考えています。

昨年の秋に開催された「水都大阪フェス2012」でも会場内のゴミを清掃するクリーンサポーターが活躍しました。

クリーンサポーターがゴミを集めるためにリヤカーで水都大阪フェス会場内を行き来する様子。
クリーンサポーターがゴミを集めるためにリヤカーで水都大阪フェス会場内を行き来する様子。

「水都大阪フェス」のような参加型のまちおこしなど、「自分たちのまちを、自分たちでつくる」という機運が高まっています。各地域で活動されている、さまざまな団体や、それをサポートする企業、積極的にボランティアを行っている年配の方や若い学生…。それぞれは小さな点かもしれないけど、それをしっかりとつないで、広げていくことによって、「大阪の未来図」を描くことができるんじゃないかなと思います。

行政と各地域のつながりだけではなく、活動をされている地域同士での情報共有ができるような仕組みづくりや、企業や学校が連携しやすいフィールドづくりなど…。そうやって、府民が、オール大阪で取り組んでいく「大きな力」を生み出していくことが、笑働の果たす役割なんだと思います。そのために、みなさんと一緒に汗をかいて、がんばらないといけません。

地域で清掃活動をしている方の年齢層を見ると、社会人世代の層がどうしても少なくなります。清掃活動に取り組んでいる方に対して、まちの活動に取り組まないことを負い目に感じたり、感じさせたりしているかもしれません。

ただ、笑働OSAKAはひとつのアイデアを用意しています。参加することも笑働、伝えることも笑働、感謝を表すことも笑働。それぞれができることをやっていこうという緩やかなスローガンです。「ありがとう」という気持ちを伝えるための入口を笑働OSAKAはつないで広げているところです。

企業単位で清掃活動をされている現場を取材した際、若い社員の方がこんなことを言っていました。

ゴミを拾い始めるまでは、オフィス街はただのいつもの風景でした。でも今は、ちゃんと目に入ってくる。無意識にゴミを見つけてしまうんです。ゴミ袋を持ってないのに、拾いたい衝動にかられてしまって(笑)。

笑働OSAKAの活動は、こういった社会人世代が社会参加への意識を変えていく小さな一歩になるのかもしれません。

(Text:狩野哲也/笑働OSAKA Photo:笑働OSAKA)

笑働OSAKAの活動についてもっと知ろう
笑働OSAKA

writer ライターリスト

狩野哲也

狩野哲也

greenz ライター 京都生まれ、大阪在住。雑誌の編集者兼ライターを経て、現在は冊子やwebの企画編集執筆から、イベントの企画、NPO/NGOの広報アドバイス、企業や大学、行政のプロジェクトをデザインするなど、さまざまな領域で活動中。遊びと仕事の波打ち際で、流浪のトークイベント「サロン文化大学」 を運営しています。

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