ISSUE☆連載 邪道のキャリアデザイン

3 years ago - 2013.09.18

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会社勤めをしながら週末のみ開店!「海福雑貨」店主・遠藤和海さんの型破りなお店の始め方 [邪道のキャリアデザイン]

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「将来の夢は?」子どもの頃、そう聞かれて「花屋さん」や「雑貨屋さん」と答えたことがある人は多いのではないでしょうか。自分の好きなものに囲まれて毎日働けるって、素敵ですよね。

小田急・江の島線、東林間駅の閑静な住宅街にある「海福雑貨」は、クリエイターの手づくり雑貨や古物を集めたお店。わずか7坪の店内は色とりどりのアクセサリーや年季の入った古時計などこだわりを感じる商品で溢れていて、小人になって宝箱の中を探検しているような気分になります。

このお店が生まれたのは2007年。店主の遠藤和海さんは会社勤めの傍ら週末を使って自分で内装・外装を手がけ、お店をつくっていきました。初期投資はなんと60万円以下。「駅から徒歩15分」「週末だけの営業」という厳しい条件にも関わらずファンを増やし、現在では週5で営業。近隣のお店やクリエイターと一緒にイベントを開くなど、地域全体も盛り上げるお店に成長しました。

今回は、独自のやり方でお店を育ててきた遠藤さんに、自分の「好き」をとことん追究して夢を形にする方法を教えていただこうと思います。

初期投資は60万円以下!”週末雑貨屋”のはじまり

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遠藤和海さん

「自分の空間を持ちたい」。遠藤さんがそう考えるようになったのは、高校生の頃だったといいます。

周囲を見渡すと、ほとんどの大人が満員電車に揺られて都心まで通勤していました。でも、ぼくにはそれがあんまりピンとこなくて。自分が生まれ育った東林間で、好きなものを集めた空間をつくって仕事をしたいと思いました。

大学卒業後、一旦は一般企業に就職。働きながら準備を進め、25歳の時に「海福雑貨」を開店しました。

お金もあまりなかったし、雑貨屋で働いた経験もなかったけど、「やりたい」という気持ちが抑えられなくて。まずはできるところから始めてみようと思い、不動産屋さんに紹介してもらったアパートの一室を借りて自分で改装しました。レジや複合機など最低限必要な機材は買いましたが、棚や什器はできるだけ自分でつくったので、初期費用としてかかったお金は60万ほどです。

通常、開店資金は数百万必要といわれるので、60万という数字は驚きです。それ位で開店できるとなると、ぐっとハードルが下がりますね。

一等地にお店を構えようと思うと家賃だけで莫大な費用が必要ですが、ローカル駅から歩いて15分かかる場所なので、家賃はかなり安く済みます。さらに、最初の頃は店舗兼住居としてそこに寝泊まりしていました。

少しでも出ていくお金を抑えて、リスクを減らしたくて。商品を並べる棚の一番下の引き出しにはぼくの私服が入っていたし、ソファは自分のベッドとしても使っていました(笑)

平日は会社勤めを続け、「週末雑貨屋」としてお店は土日だけ営業。休みはゼロです。傍から見るとキツそうに思えますが、遠藤さんは「全く辛くなかった」と言います。

体力的にはちょっとしんどかったけど、自分のやりたいことだから全然苦痛ではありませんでした。それが目標や夢に沿ったことなら、人は苦労だなんて思わないんじゃないかと思います。

専門知識がないから、「自分の好きなものだけを集める」ことに特化

自らも作家である遠藤さん。「地図絵」という独特の絵を描いています。
自らも作家である遠藤さん。「地図絵」という独特の絵を描いています。

お店に置く商品は、クリエイターの手づくり雑貨をメインにしました。ギャラリーや文化祭をまわって作家さんに声をかけ、少しずつ商品数を増やしていったそう。作家さん選びの基準は、「自分が気に入るかどうか」。“確実に売れるとわかっているけどお店の雰囲気に合わないもの”と、“売れるかわからないけどなんとなく惹かれるもの”のふたつがあったとしたら、間違いなく後者を選ぶといいます。

専門的な教育を受けたわけじゃないので、「自分の好きなものを集める」ことだけに集中、特化しました。売れ線の商品を揃えたほうがいいのかな、と考えたことはありますけど、それじゃお店をやる意味がなくなっちゃうし、大手と同じことをしても勝てっこない。

だから、お客さんにウケるかどうかで商品を選ぶのではなく、自分が選んだ商品にウケてくれる人を呼び込もうと考えました。

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ブログやツイッターで商品を紹介すると、趣味の合う人が集まってくれるようになり、その人がまた拡散してくれて…と自然と輪が広がっていったそうです。

自分の惚れ込んだものだから、話していても書いていても、説得力があるんですよね。好きなものを売るって、実は一番効率がいいと思います。

お店を通して仲間が増え、地域が盛り上がる

遠藤さんがお店を始めて驚いたことは、人間関係がとても広がったことだそう。作家さん、お客さん、近隣店舗の経営者…自分と好みが似ている人、価値観が合う人が周囲にどんどん集まり、仲間が増えたといいます。

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ギャラリーやパン屋さんなど、相模原界隈のお洒落なお店を集めて紹介するフリーペーパー「おさんぽマップ」

オープンしてから半年後に、近くのカフェと一緒に「おさんぽマップ」を発行しました。お店同士の横のつながりもできたし、お客さんに「ここのカフェも素敵ですよ」って紹介して喜ばれたりして。お客さんも含めた大きなコミュニティができました。

お店同士で盛り上がり、おさんぽマップ掲載店が一か所に集まるイベント「おさんぽマルシェ」も開催するように。最初はカフェで開催しましたが、人が集まりすぎてしまい会場を相模大野の二宮神社境内に移動。定期的に開催しています。

神社の方は「地域の人に神社のことを知ってほしい、もっと気軽に来てほしい」と思っていたようです。人を集めることで少しでも役立てたら嬉しいですね。

服や小物、食べ物のお店が並ぶ「おさんぽマルシェ」 服や小物、食べ物のお店が並ぶ「おさんぽマルシェ」

隣駅の小田急相模原駅ビルでは「オダサガ文化祭」というイベントも実施。このイベントは海福雑貨に作品を置いている作家さんが集まり、自分で作品を販売するというもの。こちらも好評で、北海道や大阪から泊まりがけで来てくれるお客さんもいるのだとか。

作家さんとの結束も今まで以上に強まりました。この地域に愛着も持ってくれたみたいで、うちの近くにお店や工房を開きたいと言ってくれる方も。実際、駅前には「ハイカラ雑貨ナツメヒロ」さんのお店が、うちのアパートの別の部屋には「Rucca」さんの工房ができました。こうして地域に仲間が増えていくのは嬉しいですね。

海福雑貨があるのは、こんなのんびりした路地の一角
海福雑貨があるのは、こんなのんびりした路地の一角

「デスティネーション・ストア」という言葉があります。「目的地となるお店」という意味です。駅から遠い場所に人を集めるお店ができると、周囲に少しずつお店が増え、その通りが賑わうもの。海福雑貨も「デスティネーション・ストア」になりつつあるのかもしれません。

自分ではそんなこと言えませんけど(苦笑)そう言ってもらえるのは嬉しいです。「お店を開くなら駅前がいい」と思いがちですよね。黙っていれば人が入ってくるから。でも、駅から遠いところに店を開いて人を呼び、まちをもりあげるという考え方もあります。東林間は大好きなまちなので、これからも良いまちであってほしいと思っています。

それに、駅前でなんとなく立ち寄った人の対応に追われるよりも、わざわざここまで来てくれた人とじっくり話した方が楽しいし、お店の雰囲気もよくなります。お金がないから駅から遠いところを選んだけど、遠ければ遠いでいいこともあるんですよ。

「家族でお店を経営する」という夢も叶った

奥さんのカンナさんと息子さん、スタッフのマミさん。
奥さんのカンナさんと息子さん、スタッフのマミさん

最初は週末だけだった海福雑貨ですが、奥さんのカンナさんが手伝ってくれるようになり、いまでは週5で営業しています。カンナさんもアクセサリー作家。海福雑貨主催のイベントに来てくれたことがきっかけで知り合い、作品をお店に置くようになったといいます。

お店を始めた頃から、「自分の城をつくって家族とやれたら」という気持ちはありました。その夢も叶いましたね。カンナは手芸店で働いていたので、売り場づくりの知識や経験があったんです。そのおかげでお店の雰囲気もよくなりました。

昨年7月には長男が誕生。成長したら、一緒に海外へ仕入れに行ったり、本人が希望すれば店番や売り場の装飾を任せたりしたいと考えているそう。一般的に、「子どもを持つと諦めるものは増える」といいますが、遠藤さんの場合は夢が広がっているように見えます。

「好きなことをしていると子どもはつくれない」という人もいますが、子どもができたらできたでなんとかなるものです。カンナが妊娠して売り場に立てなくなったのでマミさんという新しいスタッフを雇ったんですが、それによってできることも増えて、一年の間に売上も1.5倍になりました。

去年の2月には、同じアパートの一室に「海福雑貨分室」もオープンしたので、今はもう一人スタッフを増やしたいと思っています。

理科系雑貨など、少しダークな世界観の作品が並ぶ「海福雑貨分室」
理科系雑貨など、少しダークな世界観の作品が並ぶ「海福雑貨分室」

常識を取り払い、「どうすればできるか」を考える

お金も知識も経験もない中「海福雑貨」を始めた遠藤さん。もし、コンサルタントが初期の海福雑貨を視察に来たら、「これじゃやっていけないよ」と言ったことでしょう。でも、遠藤さんを見ていると、「やりたい」という気持ちがあれば条件が揃っていなくてもなんとかなるのではないかと思えます。

「できない」なんてことは、よっぽどじゃないとありません。「◯◯がないからできない」と言っている人は、自分で歯止めをかけているんだと思います。そこまで本気じゃないということなんじゃないかな。

本当にやりたかったら、なんとかする方法を見つけ出すと思うんです。お金がないならないなりに、時間がないなら限られた時間の中で。スキルがなかったらそれを補ってくれる人に協力してくれる人にお願いすればいいし、真剣にやっていたらそういう人って現れるものです。だから、自分にできる精一杯をすることが大事だと思います。

物腰は柔らかながら、しっかりと芯が通った考え方をしている遠藤さん
物腰は柔らかながら、しっかりと芯が通った考え方をしている遠藤さん

いきなり会社を辞めて新規開業するのは高いリスクを伴うもの。遠藤さんのように「会社勤めをしながら週末から始める」というのはリスクヘッジにもなります。

ぼくはいまでも、お店の仕事以外にデザインや販促コンサルティングのような仕事をしています。もうお店一本でも食べていけるのですが、新たに目標ができたので、いまは外から稼いでこようと思っています。目標というのは、このアパートを丸ごと買うこと。自分や仲間たちのお店や工房を入れたら面白いな、と思っています。

お店を始めてみたら、どんどん次の夢や目標ができたという遠藤さん。「お店をやる意義」にもいい意味で変化があったそうです。

「自分の空間をつくりたい」と思って始めたお店でしたが、いまは「お客さんを楽しませたい」という意識が強くなりました。自分がいいなと思って集めたものを人が気に入って、笑顔になってくれる。ここにいる間は、楽しい気持ち、わくわくする気持ちになってくれる。多少なりとも人に居心地の良い時間と空間を提供できているって思うと、この仕事をしている意味があったと思えます。

「社会は厳しいから、好きなことを貫いてばかりもいられない」と言われることがあります。でも、本当に好きなことをとことん追究していけば、それはいつか人を喜ばせるものになるのではないでしょうか。

もし、あなたに叶えたい夢があるなら、「◯◯がないとダメ」という常識やセオリーを一旦取り払い、「どうすれば実現できるか」を考えてみるのはいかがでしょう。「なんだ、こうすればいいじゃん!」とアイディアが溢れてきて、楽しくなってくるかもしれませんよ。

 

おまけ:遠藤さんの夢年表

history

 

小田急江の島線東林間駅、徒歩15分
海福雑貨
「仕事旅行」で海福雑貨へ
雑貨屋になる旅

writer ライターリスト

hidaemi

hidaemi

greenz.jpエディター/ライター 1984年2月29日生まれ。茨城出身、神奈川在住。 「地域」「自然」「生きかた・働きかた」をテーマに、書くことや企画することを生業としています。虹を見つけて指さすように、この世界の素敵なものを紹介したい。 HP:http://www.cotohogu.com/ blog:http://himaemi.blog.jp/ twitter:@emi229「東北マニュファクチュール・ストーリー」というサイトを、一般社団法人つむぎやと一緒に運営しています。 ・日本橋のシェアオフィスにて、気ままなごはん会「6階食堂パルプンテ」を開催。日によって美味しさにばらつきがある、適当な会です。

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