ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

3 years ago - 2013.09.10

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エネルギーの未来を、じぶんたちの手でつくろう。藤野電力・小田嶋電哲さん × 鈴木菜央のエネルギー談義

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

3.11以降、私たちは「エネルギー」をどうしていくか? という課題に突然、直面せざるを得なくなりました。なにか行動したい、でも、エネルギーという大きな課題に自分ひとりで立ち向かえるはずがない。何をしたらいいのか分からない…。そんな人も多いのではないでしょうか?

そんな人々に対して、「電気を、自分で作ってみたら?」と提案しているのが、「藤野電力」です。彼らは2013年8月現在までで、全国100か所で「ミニ太陽光発電システム組み立てワークショップ」を開催、各地の、エネルギーを手作りする活動をアシストしてきました。

そんな藤野電力とグリーンズが協力して、新たに全国的運動をはじめます。その名も「わたしたち電力」。それは、全国に、電気を手作りする人を増やすこと、作り手同士を繋げ、地域や社会を元気にしていくことを目指しています。

言うなれば、日本全国に、さまざまなタイプの、「〇〇電力」がたくさん生まれ、全国的に活発に活動していく状況をつくろう、という全国的な運動です。

今回の対談で、「わたしたち電力」プロジェクトを一緒に進めている藤野電力の小田嶋電哲さんと、greenz.jp発行人・鈴木菜央のふたりに、このプロジェクトが目指していること、そして楽しみ方を聞いてみました。

エネルギーの未来を変えるためには、「自立」が必要

藤野電力 エネルギー戦略企画室室長の小田嶋 電哲さん
(左)グリーンズ発行人・鈴木菜央(右)藤野電力 エネルギー戦略企画室室長の小田嶋 電哲さん

対談を行った場所は、神奈川県・藤野にある「牧郷ラボ」。牧郷ラボは廃校をアーティストが再利用しているアトリエで、藤野電力さんが事務所を構えています。豊かな緑に囲まれ、セミの鳴き声や鳥のさえずりが聞こえる中、熱いトークが繰り広げられました。


鈴木 はじめに、「わたしたち電力」プロジェクトは、藤野電力とタッグを組んで、エネルギーをわたしたちの手に取り戻すべく、全国にムーブメントを広げていこう、という取り組みです。

活動は、greenz.jpでの、エネルギーの手作りや、地域が元気になっていく事例の紹介(一覧は「わたしたち電力」タグがついた記事一覧から読めます)、リトルトーキョーでの「ミニ太陽光発電システム組み立て体験ワークショップ」や、全国のgreen drinksオーガナイザーさんと共同で行う、エネルギーをテーマにしたgreen drinks、そして、全国でミニ太陽光発電システム組み立てワークショップを行っている藤野電力の活動のサポート、そのための「わたしたち電力」ウェブサイトの構築、わたしたち電力ハンドブックの配布などを始めています。

ようやくプロジェクトが始まったわけですが、こうしてご一緒できて、とても嬉しく思っています。今日は、お話できるのを楽しみにしていました。実は、ちゃんと話をするのは始めてなんですよね。

小田嶋 そうですね(笑)。よろしくお願いします。

鈴木 さて、「わたしたち電力」は、ちょっと大きく言うと、「依存からの自立」を促すムーブメントになるといいなと思っています。僕たちはエネルギーだけじゃなくて、金融とか、あらゆる仕組みにおいて「消費者」にさせられていると思うんです。何かモノを買わなければ人生が豊かにならないと思い込んでしまっているから、日々消費する。気がついたら、精神的な豊かさも細っていっているし、いろいろな面で相当「依存」してしまっていると思うんです。

そんな中で、3.11以降、誰もが突然自分ごとになった「エネルギー」という課題に対してフィットしたのが、ミニ太陽光発電システムをつくって、みんなでエネルギーをつくってみようよ、という藤野電力さんの活動でした。

小田嶋 自分の手を使ってミニ太陽光発電システムを組み立てていくと、なんだ、自分たちにもつくれるんだって、みんな気づいていくんですよね。ワークショップの開催は全国で100回を超えていますが、そうした気づきがあるからこそ、こんなに全国に広がっているのだと思います。

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ミニ太陽光発電システム組み立てワークショップ

鈴木 僕は、グリーンズというメディアを通じて、「自立」した人を増やしたいと考えているんです。精神的な面でもそうですが、いろいろな意味での「自立」です。生きる力と言ってもいいかもしれない。例えば、自分がいいと思わない社会が目の前に広がっていて、自分がその中にいるのなら、自分がいいと思う社会を自分たちでつくっていこうよ、って。

小田嶋 エネルギーについては、みんな何をしたらいいのか分からない、という状況かもしれませんね。

鈴木 そうですね。そんな中、藤野電力さんの「ミニ太陽光発電システム」を自分の手で組み立てて、電気はつくれるんだということを広めていこう、という活動を知って、「あっ、これだ!」と思ったんです(笑)。藤野電力さんと一緒に、エネルギーの未来を、じぶんたちの手でつくっていくというムーブメントを起こしていきたいなと。これが、「わたしたち電力」というプロジェクトの意図するところです。

ところで、小田嶋さんは、どのように藤野電力の活動に出合ったのですか?

世界を変えることは難しくても、身の周りを変えることならできる

小田嶋 まず藤野との出会いからお話しますと、今から10年前になりますが、「ひかり祭り」という、「ひかり」をテーマにしたアートフェスでした。祭り自体も楽しかったし、地元の人の温かさに触れる機会があって、それから度々訪れるようになりました。

それと、シュタイナー学園が藤野にあったことも、移住するきっかけにはなりましたね。「森と湖と芸術の町」と呼ばれる藤野ですが、移住した当初は毎週末、誰かがワークショップやイベントをやっていて、それらに顔を出して人と接していると、引っ越してきてから3ヵ月しか経っていないのに、3年も住んでいるような感覚を覚えるほど濃密な滑り出しでした。

そんな最中、トランジションタウン活動に出合いました。地域の資源を活用して、石油社会から脱しようという草の根運動です。当時の僕は自分や社会に対して、支配する側とされる側が共に依存している状態を克服したいと考えていて、「いつかこの支配から抜け出してやる!」といった強い思いにとらわれていました。

鈴木 なるほど。

小田嶋 当時の会社勤めの生活では、自分のように社会や世界に対して危機感を抱いている人間は他にいないと、思い込んでいましたが、トランジションの会合に参加してみると、メンバーはみんな「分かる、分かる」と頷いてくれるばかりか、その危機感からすでにさまざまな行動を起こしていました。

彼らとの出会いで、「いつか、どこかで、思いを遂げてやる!」という僕の執念のようなものは、「今、ここから、楽しんでやろう!」という彼らの前向きなメッセージにすっかり塗り替えられました。この変化は僕にとって、とても大きな衝撃でしたね。

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小田嶋 活動に身を投じてみると、メンバーは地域通貨を始めたり、山や森の再生に取り組んだり、どんどん行動していきました。できるかどうか分からなくても、楽しんでやってみたらいいじゃないか、ということで(笑)。やってみると、少しずつ手応えが出てくるんですよね。

「世界を変えてやろう」と考えてしまうと難しいかもしれませんが、自分の身の周りだったり、自分のいる地域を変える、ということなら案外できるんじゃないかっていう気がしてきたんです。面白いことを思いついて、仲間に話して、できそうな気がしてわくわくする。そんな高揚感や希望を、みんなで丁寧にシェアし合いながら、進めてきた活動ですね。

鈴木 藤野電力との出合いは、その後ですか?

小田嶋:はい。3.11のすぐ後に、地域通貨のメーリングリストに藤野電力をやらないか、というメールが回ってきたんです。その時すでに「藤野電力」という言葉が発せられていたんですよね。話し合ってみんなで決めたわけじゃないのに、何をやろうとしているのかは、みんな何となく分かっていましたね。こうしてトランジションの新たなワーキンググループが立ち上がりました。

鈴木 トランジションタウン活動自体に、消費するエネルギーを減らす暮らしをしていくという考えがもともとあるから、「藤野電力」という市民でつくる発電所のような発想が生まれやすかったんですね。

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千葉でおこなったgreen drinks BOSOでの様子

小田嶋 立ち上げ期はいろいろありましたが、2011年夏に行われた「ひかり祭り」(フライヤー)で使う電力を100%自家発電で賄うということになったんです。

鈴木 3.11以前は、100%自家発電で賄うという話はなかったんでしょうか?

小田嶋 ひかり祭りは第1回からバイオディーゼルをとり入れていたり、その後もソーラーでの音響に挑戦したり、もともと自然エネルギーへの意識が高い祭りですが、100%自家発電というのは2011年が初めてでした。初めての取り組みだけにいろいろな苦労もありましたが、気がつけば藤野電力のメンバーが総出で力を合わせて、祭りを支えていました。藤野電力はここで初めて具体的な成果を残せたのです。

鈴木 自家発電された電気は、全て太陽光ですか?

小田嶋 いえ、エネルギーの総量に占める太陽光の割合は小さくて、大半はバイオディーゼルです。2011年の祭りはみんなの想いも強くて、動員数を大きく塗り替えるような大成功を収めました。

鈴木 2011年ですからね、この時のひかり祭りには、特別な気持ちをみんな持っていたんでしょうね。グリーンズのアクセス数も3.11直後にものすごく増えたんです。グリーンズそのものは、3.11前後で何も変わっていないのですが、みんな、希望に飢えていたというか、前を向きたかったのだと思います。

小田嶋 そうですね。前を向くために必要なことは、やっぱり「自立」だと思うんです。自分の手を動かして、「自分にもできるんだ」ということを実感してほしい。何かを変える力って、「自分にもできるんだ」ということの積み重ねでしかないですよね。仲間と、楽しみながらやってみてほしいなって思います。仮にやってみて楽しめなかったら、やめてもいい。そしてまた何か楽しいことを見つけてやってみればいいと思うんですよね。

エネルギーを「自分ごと」に取り戻す

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鈴木 何でもそうですが、自分でやってみないと、リテラシーって上がらないですよね。エネルギーについても同じ。自分で電気をつくってみることで初めて、「こういうことか」と納得できるんじゃないかと思うんです。

現代社会って、自分の人生を、自分以外の誰かがプロデュースしようとする力が、たくさん働いているんじゃないかと思うんです。「競争を勝ち抜かないと、幸せになれない」とか、「これを買わないと、置いて行かれるよ」とか。自分にとって、本当に何が必要で、何が必要じゃないのか。自分は、本当は、何がしたいのか? 自分にとっての幸せってどんなことなんだろうとか、そうしたことを、考えなくていいように、社会ができている。でも、自分の手に取り戻していくと、いろんなことに気づいていくと思うんです。もちろん、自分につくれるサイズのエネルギーだから、不便なこともいっぱいあるけど。

小田嶋 そうですね。でも、身の丈サイズのエネルギーからは、多くの気づきをもらえますね。

鈴木 僕の自宅にも、ミニ太陽光発電システムがあるんですが、それで電気をつくると、パネルの大きさがこれくらいで、できる電気はこれくらい、という感覚がつかめる。だから家の電気使用量を見ても、その30倍だな、とかということが感覚でわかる。うちの市は人口が4万人だから……みたいな感じで、地域の電力のことも、何となく感覚でつかめる。そうなると国というレベルも完全に想像の範囲外、というわけでもなくなる。

得意不得意はあるけど、だいたい誰でも、料理って作れますよね。電気もそうなっていったら、それぞれの視野に、大きなことも入ってくるんじゃないかと。草サッカーでも実際やってみると、プロの凄さやゲームの面白さが分かるし、サッカー文化全体を楽しめるようになります。

小田嶋 なるほど。分かりやすいですね。

鈴木 そういう感じで、エネルギーというものを自分の手の中に入れること、自分ごとに取り戻すことは、とても意義があることだと思っています。エネルギーを通して、まったく新しい人生の風景が広がると思うんですよ。そんな体験を、多くの人にしてほしいな、って。

第二、第三の藤野電力が生まれてきて欲しいですね。藤野電力と同じじゃなくて、それぞれの個性があっていいと思っているんです。そのために、グリーンズが「わたしたち電力」というムーブメントを通じて、みんなに伝えたり、そういう人たち同士をつなげる場をネット上につくりたいと考えています。

鍵となるのは、市民の力

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鈴木 50W程度の「ミニ太陽光発電システムづくり」のワークショップは、将来的に東南アジアや他の国に広がっていく可能性は高いと思っているんです。ヨーロッパなどの自然エネルギー先進国にも、そういうムーブメントが伝わっていく可能性だってあると思いますね。

日本人はコミュニティでつながることがけっこう得意なんじゃないかと思っているんですが、市民がやり方を洗練させていけば、海外でも通用するんじゃないかと。特に途上国では50W、100Wで家一軒分を賄えたりするでしょうから。このムーブメントが、ゆくゆくは世界中に広がって、ひとつの文化のようになるといいなと思っています。

小田嶋 いいですね!

写真に写っているスクーターは電動バイク! 写真に写っているスクーターは電動バイク!

鈴木 ドイツやデンマークなどは自然エネルギー先進国と言われていますが、歴史をみてみると、必ずと言ってよいほど、市民が動いている。決して、エリートによるトップダウンではないんですね。でも、その方が断然面白いし、意味があると思うんですよね。他人ごとではなくて、自分たちごとになりますから。

将来的には、例えば学校にも自分たちのエネルギーは自分でつくることがカリキュラムに当たり前に入っていたり、エネルギー部という部活動があったりするといいなと思っています。もっとエネルギーが身近なものになっていけばいいなと。

小田嶋 何かに頼らずに、自分たちでやってみるということですね。

鈴木 はい。今後、電力の自由競争が始まるようになったら、自分で電気をつくったことがある人は選択も違ってくると思うんです。それに自分でつくったことがあれば、国の政策に対して「自分の考えはこうだ」というように、自分で考えることができるようになる。そうすると、投票の選択も変わってきたりして、選ばれる政治家も違ってくるかもしれませんよね。

そうやって、日本全体が変わってくる可能性だってあるわけです。そんな状況をつくりたいなと。

小田嶋 一方で、“小さいこと”も大事にしたいですよね。身の丈サイズというか。大きくなって味が薄まってしまうのではなくて、それぞれは小さいながらも個性があって、それらが増えていくというような。

自分たちの手で、「○○電力」をつくろう

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鈴木 「わたしたち電力」は、いろいろな地域やリトルトーキョーでのワークショップに加え、green drinksなどで藤野電力さんとコラボしながら全国で展開していく予定です。また、同じ想いを持った仲間でどんどんつながって、オープンソース的にノウハウを共有するなど、分かりやすさも大切にしたいと考えています。

「わたしたち電力」のウェブサイトから電力ハンドブックをダウンロードできるようにして、ワークショップを自分でやりたいという人が活用できたり、全国の「○○電力」のマップをつくって、あちこちで動き始めたムーブメントが可視化されるような仕組みにしたり。

小田嶋 それは、いいですね!

鈴木 そこに「○○電力」という自分たちのコミュニティを登録すると、Facebookグループに登録されるので、情報交換をしたり、他の地域の仲間とつながれるようなコミュニティをつくる動きも始まります。

また、来年ぐらいにはバイオマスなど熱の利用にも広げていきたいです。熱の利用はシンプルで、市民が手を出しやすいですからね。それと秋には、エネルギーを通して地域を盛り上げていくリーダーを養成するワークショップ、合宿をやりたいですね。もう盛りだくさんです(笑)。

小田嶋 同じ想いを持って仲間が集まる場があるといいですね。

鈴木 来年になると思いますが、これまで言ってきたようなことがギュッとひとつにまとまった「祭り」をやりたいと思っています。

小田嶋 祭り、やりましょう!

(対談ここまで)

 

少しずつ動き始めた、「わたしたち電力」プロジェクト。私たちにできることは、自分が日々の暮らしでつかうエネルギーに向き合ってみるということ。自然エネルギーを自分の手でつくってみることから、個人もコミュニティも豊かに、元気になっていく。今回の対談から、エネルギーのリテラシーを上げるために必要なことや、エネルギーと向き合う楽しみ方が見えてきたような気がします。

エネルギーという「よく分からないこと」こそ、自分で未来図を描けるようになってみたい。社会をつくっていくムーブメントは、そんな小さな個人の発見や気づきの積み重ねでしかないのかもしれません。「わたしたち電力」プロジェクトのコンテンツを、ぜひ今後もご注目ください!

writer ライターリスト

Masachika Inoue

Masachika Inoue

フリーライター。 燃料商社、エネルギー専門メディアの編集記者を経て、現在に至る。 自然エネルギーの活用など持続可能な社会をつくる人たちの活動を丁寧に伝えていきたいです。

partner パートナーリスト

GREEN POWER

わたしたちエネルギーは、エネルギーを、じぶんごとにして楽しむプロジェクトです。エネルギーを減らしたり、つくることを楽しむ。つくったエネルギーで得られる楽しさ、幸せをみんなで共有する。エネルギーで地域が自立する。今、そんな試みが全国に広がっています。わたしたちは、greenz.jpの記事をつくること、グリーンズの学校で共に学ぶことなどを通してそんな動きをサポートし、そして共に歩みたいと思っています。 このプロジェクトは、経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。 ⇒ 特集「わたしたちエネルギー」FacebookページGREEN POWER プロジェクト WEBサイト

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