ISSUE☆連載 政治のつかいかた

3 years ago - 2013.08.22

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「政治ってどうやってつかえばいいの?」港区議の横尾俊成さんと作戦を練ってみた [政治のつかいかた]

横尾さん菜央さん対談

先日の参議院選挙、みなさんは投票に行きましたか?いよいよネット選挙解禁で少しずつ政治(家)とのソーシャルなつながり方が見えてきつつありますが、まだまだ政治はわかりにくいですよね。でも、私たちが目指す社会を実現するにはやはり政治を無視することはできません。

どうやって政治を使って社会を良くしていけばいいのか、グリーンズでは、港区議会議員の横尾俊成さんをパートナーとして、これからじっくりとその課題に取り組んでいこうと思っています。そこでまずは、「何から始めるべきか」という作戦会議を、そもそも政治がどういう仕組で動いているのかを理解するところから始めてみました。

聞いてみると「政治を使わないのはもったいない」と言える部分もあるようなので、「政治はよくわからないから…」と言わずにぜひ関心を持ってみてください。

政治を使わないと「もったいない」

まずは、いま「政治を使う」という時に何をすればいいのか、そのあたりを聞いてみました。それを聞くことでなぜ政治がわかりにくいのか、その辺りが少しずつ見えてきます。聞き手はグリーンズ発行人鈴木菜央です。



横尾 政治を使わないのは、「もったいない」んですよ。私が関わっている地方政治の話ですけど、たとえば地域の町会という存在は「政治」を使いこなしています。彼らはみんなで投票する代わりに、政治家に要求するカタチで、自分たちの声を通している。彼らが特別な訳じゃなくて、誰でも、実はそういうことができるはずなんですよね。

今のところ行政は、政治家と町会や商店会や業界団体だけを窓口と考えていて、その結果、彼らの既存の利益を守るような意見がより多く通ってしまう。でも、市民が政治家のところに行って、政治家と話をすれば意外と聞いてくれるし、行政もパブリックコメントとかタウンフォーラムとかやって市民の声を集めようとしている。だからもっと声を発した方がいいんです。

鈴木 てことは、行政も、市民の声を求めてるんですね。でも、そもそも政治と行政の違いがよくわからない人も多いと思うんですよ。横尾さんから見て、どういう関係性で動いているんでしょうか。

横尾 まず、市役所なんかの行政は基礎的な事業が決まっていて、それを実行していく。何かを変えたり新しいことをやろうとすると、新たに人が必要になるので、なかなか新しいことはできません。政治というのは、それに対して「こことここの優先順位変えたほうがいい」とか「こういう新しいことをやったほうがいい」ということを言って行政の仕組みを変えていくことなんです。行政も政治家の意見=市民の意見なので、その意見を反映して変えていくという関係です。

鈴木 わかりやすい説明ですね! なるほど。

横尾 だから、何か新しいことをやろうとか、何かを変えようとした時に、行政に持って行っても「話はわかりますが、難しいですね」で終わってしまう。それを変えるには政治家のところに持って行って話を通してもらうか、自分で人を集めて声を大きくして行政に訴えるしかない。行政も大きな声は無視できないので、検討せざるを得なくなるわけです。

鈴木 じゃあ、自分の活動に行政のバックアップが必要だとか、制度になっていないという時は、地元の政治家に話してみようということなんですね。その場合、僕らも町会の人たちみたいに政治家と「取引」しなきゃいけないと。町会は票をまとめるから、こういう要望を聞いてよ、という風に。いわゆる「ロビーイング」だと思うんですが、これまたわかりにくい。

ロビーイングのイメージ  Some rights reserved by Bread for the World
ロビーイングのイメージ Some rights reserved by Bread for the World

「ロビーイング」の実践?

「ロビーイング」つまりロビー活動というのはよく聞く言葉ではありますが、実際にどんなことをするのかイメージがわきにくいですよね。アメリカなんかではロビイストが政治を動かしていると言われたり、権謀術策が渦巻くどす黒い世界をイメージしますが…、実は私たちでもできないことではないようなのです。


横尾 フローレンスの代表の駒崎弘樹さんがいい例だと思うんですが、マイプロジェクトの形ではじめた「病児保育」や「小規模保育」で最終的に国の審議会に入って制度を変えるところまで行きました。

彼らは、「病児保育」や「小規模保育」という行政がやらないことを自分たちで始めて、それが広がるために必要だ、ということで公的に認めてもらうようロビー活動をした。今の彼らの成功は、その結果だと思うんです。自分たちでできることは自分たちでやった上で、行政が変わらないきゃダメだというところを見つけたら政治家にアプローチしていく、そういうやり方がいいんじゃないでしょうか。

鈴木 そう言われてもまだイメージがわきにくいんですが、具体的になにからやっていけばいいんでしょうかね。マイプロジェクトやっている人を集めて、「政治のつかいかた」ってスクールをやったりすればいいのかな。それで実際にロビー活動をしてみてその結果をシェアするとか。

横尾 そういうかもしれないですね。

政治を変えつつある「ソーシャル政治家」

その「スクール」については、後でまた検討することにして、まずは、このような現状の中での「政治のつかいかた」とは別に、今後の政治家や有権者はどうあるべきか、望ましい社会に変わっていくためには私達自身どう変わっていくべきなのか、その辺りについて作戦を練りました。


鈴木 横尾さんは港区議として、トップダウンで利益配分するんじゃなくて、下から上がってきた意見を実現するという、未来の政治家、というか本来の政治家がやるべきことをしているんだと思うんです。各地で横尾さんのような変革を起こそうとしている政治家はいるんだけどみんなバラバラにやっていて、政治家の新しい姿みたいのが浮かび上がってきてはいないようにも見える。

だからそういう人たちを「ソーシャル政治家」って名付けて、一回みんなで集まって話してみたりすると、いろいろ見えてくるんじゃないでしょうか。

横尾 それいただいていいですか。実は「ソーシャルデザイン×政治」というテーマでいま本をつくってるんです。

政治というとまずイメージするのは「国会」だと思うんですが、国会というのは、とても抽象度の高い議論がされている。そして必要に応じて、各分野のお偉いさんを呼んできて、議論して政策をつくっていく、そんな場です。それは市民からみたら、なかなか参加しづらいですよね。でも地方政治では、街場でどう活性化していくかという話で、「主役」は街に住んでる人だし、具体的だから話はわかりやすい。そういう”政治を街の人に近づける”活動をしている政治家たちで集まっていたいですね。

鈴木 ソーシャル政治家はいわば編集者のような存在ですね。今は声として聞いてもらえない小さい声をつなげて、集めて、行政に持っていく。

横尾 大きなコラボレーションをするときのファシリテーターとして、政治家を使うっていうのはあるかもしれません。今の大半の政治家は利益代表とのつながりが強くなりすぎちゃって、小さな声に耳を傾けていないけれど。

鈴木 でも、その利益代表自体も、弱体化していますよね。地域で言えば、商店街はほぼ崩壊してしまっていて、地域の人の声が届かない状況が生まれてしまっている。一方で、たとえば大手小売業などが参加する業界団体は存在感を強めている。その中で、地域のみんなの声を集めて、集約してまとめていくソーシャル政治家っていう存在が、どんどん必要になっていくんじゃないかと思うんです。

横尾 政治家でも新しい方法で市民の声を集約していくことを試している人もいるけど、議会の中にいると、そういう政治家は少数なんですよ。だから横でつながっていって仲間を増やしていって、「それでいいんだ。そのほうが、当選できるんだ」というふうになればそういう人が議会の中でも増えていくんじゃないでしょうか。

鈴木 ただTwitterやFacebookやってるっていうんじゃなくて、ちゃんとコミュニケーション取って意見を吸い上げている人を探さないといけないですね。

横尾さん菜央さん対談2

民主主義の「土作り」

私たちの声が届く社会を作るために必要な「ソーシャル政治家」、その一方で私たちも声を届かせるために、何かしないといけないんじゃないか。現状のおまかせ民主主義を抜け出すために、私たち自身も変わらなければいけないんじゃないか。そのために必要なのは何なのかも考えました。


鈴木 横尾さんが言うように、新しいタイプの政治家がどんどん出てきたら、たとえば社会的な課題を解決していこうという意識がある人にとっては、政治が近づくことになると思いますが、一般の人にはまだまだ遠い存在で在り続けるような気がするんですね。それを近づけるためにどうすればいいのか?そのために、私は「せんきょCAMP」という活動をはじめました。

せんきょCAMPは誰にでも開催できる「政治が身近になる対話の場」です。そこでは、参加者一人ひとりがどんな社会を望んでいるのか、という思いをちゃんと言葉にして、相手のことを心から聞くんです。そして、そのために、「それぞれ何ををしていくか」を話し合う。そんな対話の場が、全国80か所以上で開催されています。

こうして話すとなんてことないことのようですが、せんきょCAMPをやるたびに、参加者の表情がとても明るくなるんです。みんな満面の笑みで、ニコニコしながら帰っていく。それで気づいたのが、今の社会の中で、自分が望む社会について語り、他人の声を聞き、未来に向かってできることについて対話する機会が、ほとんどないってことだったんです。そんな対話がたくさん起きる社会、普通に語られる社会をつくって行きたいと思っています。

せんきょcampの様子
せんきょcampの様子

横尾 いいですね。

鈴木 せんきょCAMPはすぐに投票率が上がるわけじゃないので、即効性がある活動じゃないんです。投票率を上げることも大事だけど、そういう民主主義の「土作り」ができていないと、その上で花も咲かないんじゃないか。みんなでたくさん話して、どうすればいいか考えて、制度を変えていって、いつか僕達の国のリーダーは僕達が話し合った結果あそこに座ってるんだという”実感”を持てるようにしたい。せんきょCAMPはその第一歩で、リトルトーキョーもある意味ではそうかもしれません。

リトルトーキョーについてちょっとだけ話すと、リトルトーキョーでは民主制を実験したいと思っています。市議会を頻繁に開いて、みんなが収めた税金をみんなのためにどう使うかっていう話し合いをしてみたい。それが日本の将来に資するような実験になればいいなと。社会でいきなり実験できないことをここで実験してみてつくっていきたいですね。

横尾 「政治」って、基本的には「対話を通して合意していく」ってことだと思うんです。これまでは色々な利益を代表する政治家が議会で合意形成していたわけですけど、街の中でどんどん合意形成して、その環を広げていければそれが全体の合意になる。そうしたら、極端に言えば、政治家がいなくても成り立つ社会が実現できます。

鈴木 リトルトーキョーは市民が合意形成する場を作ることを学ぶ場所。そういう実験を一緒にやりましょうよ。

横尾 港区は100万人の昼間人口がいるわけですが、行政が向いているのは、実際に住んでいる20万人の住民の方なんです。リトルトーキョーがここで何かをやろうとしたら、町会などの既存の人たちにアプローチするだろうし、そういう人たちとうまくやりながら昼間人口として提言をしていくというのは面白いですね。僕がそこをつなげるっていうことはできると思います。

鈴木 リトルトーキョーでは、さまざまなテーマについてゼミ形式で学ぶスクールをやろうとしているんです。そこで、マイプロジェクトの人たちが政治を実際どう使っていくか、そんなことを一緒に実践できるといいですね。政治家に電話かけて会いに行って、一週間後どうなった?みたいなことをリアルに描き出せれば、いろいろ見えていくるんじゃないでしょうか?

(対談終わり)



政治家が変わることと私たちが変わること、そのどちらも必要であり、一朝一夕ではできないことです。

私たちにできるのは、自分の日々の暮らしについて考え、社会のことを考えて行動すること。そのうえで、政治家という存在が何を考えて行動しているのかを想像してみること。そうすることでおまかせ民主主義を卒業して、政治という仕組みを私たちの元に引き寄せることができるのではないでしょうか。

横尾さんは、今秋に政治をつかって目指す社会を実現するノウハウをまとめた本も出版する予定とのことです(「『社会を変える』のはじめかた」産学社刊)。横尾さん×グリーンズのパートナーコンテンツ、今後もご注目ください。ぜひみなさんのコメントもお待ちしています!

「政治の使い方」を考えよう!
政治の使い方

writer ライターリスト

石村 研二

greenz シニアライター 東京生まれ。大学の法学部を卒業するも、法律に向いていないことに気づき、長いモラトリアム期間を過ごしながらひたすら映画を観る。 2000年にサイト「日々是映画」を立ち上げ、書くことを仕事にすべく駄文を積み重ねる。現在、ライター/映画観察者。greenz.jp以外には六本木経済新聞、WIRED.jpなどに出没。暇なときはSFを読んで未来への希望を見出そうとし、世界は5次元だと信じている。 日々是映画-ヒビコレエイガ http://www.cinema-today.net/

partner パートナーリスト

横尾俊成

1981年3月生まれ。東京都港区議会議員(無所属)。NPO法人グリーンバード代表。街をつなぐ防災情報マガジン「Standby」発行人。早稲田大学院を修了後、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」と思う人の力で解消する仕組みづくりやオープンガバメントなどが主要テーマ。第6回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で、「まちのプロデューサー論」を連載中。

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