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3 years ago - 2013.08.11

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DJ学んでフェスしよう!ベルリン発、子どもと大人で放課後の遊び場をつくる「ユースセンター」 [放課後アートリサーチ]

音楽フェスの当日。近所の人達で賑わっていた。ベンチに座ってビール飲みながら、演奏を楽しむ。入場は無料!ビールは1.5 €。 音楽フェスの当日。近所の人達で賑わっていた。ベンチに座ってビール飲みながら、演奏を楽しむ。入場は無料!ビールは1.5 €。

はじめまして。東京の練馬区で「アーティスト・イン・児童館」というNPO法人のディレクターをしている臼井隆志です。東京の練馬区を拠点に、子どもの遊び場である「児童館」にアーティストを招待し、作品制作の”作業場”として活用してもらうプログラムを運営しています。これまでアーティストと子どもたちと共に様々な作品を制作し、展覧会や演劇公演などを開催してきました。

今回から「放課後アートリサーチ」というテーマで、先日旅行してきたドイツはベルリン、ライプチヒ、エッセンで見てきた、子どもの放課後に関わる文化活動の事例を紹介させていただきます。

はじめは、エッセンを中心に行われている「ルールトリエンナーレ」という芸術祭がおもしろそうで、いつかリサーチしたいなぁ~と思っていただけなのですが、彼女が5月から3ヶ月間ヨーロッパで仕事をすることになり、いい機会だし旅行ついでに行ってみよう!と思い立って今回のリサーチ旅行へ。

ベルリンの街は ”Poor But Sexy”

生涯初ドイツ。事前の知識としては、ビールとソーセージがうまくて、サッカーが強くて、ベルリンの壁があって、あと有名な哲学者(カール・マルクス、イマヌエル・カント、ヴァルター・ベンヤミンなど)がたくさん輩出されている、とか、そのぐらいです。

滞在していたお家の近くにある大壁画。バスから見えて驚いた。 滞在していたお家の近くにある大壁画。バスから見えて驚いた。

ベルリンのテーゲル空港から市内に向かうバスに乗り込み街の風景を眺めていると、ヨーロッパらしい古いマンションが立ち並び、オープンテラスの様々なお店が並んでいます。「おお~!ヨーロッパ!」と海外慣れしていないぼくは感動していたのだけど、ピザ屋やケバブ屋、カジノ、そしてところせましとグラフィティ(落書き)。基本どのグラフィティも看板も、どこかダサかったりボロかったりするんだけど、センスがいい。

グラフィティかな?と思ったらピザ屋のメニューでした。 グラフィティかな?と思ったらピザ屋のメニューでした。

「あれ?もしかしてベルリンってダサカワな街なの?」と彼女に聞くと、「そうだよ!ベルリンの市長のクラウス・ヴォーヴェライトさんの名言は ”Berlin is Poor But Sexy”」とのこと。

確かにベルリンの町並みは、新しくてキレイ、というよりちょっと古くて落書きだらけ。だけどその落書きや手作りの看板はダサ可愛いセンスに満ちてるし、週末はみんなこぞってパーティーに出かける。「貧乏だけど色っぽくいこう」…なるほど納得でした。ちなみにその市長はゲイであることをカミングアウトしているほか、パーティー好きのアッパーな方らしいです。

ベルリンはもともと貧しい学生や芸術家が暮らす暗い街…というイメージだったらしいのですが、現在ではベルクハイムというでっかいクラブのほか数多くのクラブがあり、若者たちも街中でパーティーをしていて、夜になるといろんなところでドッ、ドッ、ドッ、ドッとテクノが轟いているし、みんな昼間からビール瓶片手に街を闊歩している。とにかく若者・子どもが多くて、高齢者をあまり見かけない。物価が安い、家賃が安い!ということで、他の都市、他の国から移り住む人が多いようです。

ちなみに、ゴツとした重めのドイツビール、安いところだと350mlで0.8ユーロ(90円ぐらい)。100円以下ですよ、ドイツビールが。

ベルリンの北東にある廃墟バー。戦争で焼けた元福祉施設の一部がバーになったり、ダンスや演劇の公演会場になったりしている。 ベルリンの北東にある廃墟バー。戦争で焼けた元福祉施設の一部がバーになったり、ダンスや演劇の公演会場になったりしている。

子どもたちの放課後の遊び場を、みんなでつくる。

さて、そんな若者の街ベルリンには、日本の「児童館」に相当する「ユースセンター」があります。ドイツの学校は昼に授業が終わり、お昼ごはんは家で食べる、というのが普通だそう。日本に例えるなら毎日が土曜日の時間割!だから放課後の遊び場は子どもにとっても大人にとっても必須で、遊び場や子どもの活動の場をつくるNPOがたくさんあります。

市民とソーシャルワークの専門家が協働してつくるNPOが空いた場所を見つけて施設の建設計画を立て、行政や財団企業から補助金をもらって、ユースセンターやチルドレンズミュージアム、「冒険遊び場 (*) 」などを運営しています。日本の指定管理者制度とは、少し仕組みが違うようです。

*子どもたちが自ら遊びをつくることをコンセプトに、デンマークから始まった遊び場づくりの運動。廃材を活用した遊具や建築づくりや、泥や水や火を使った遊びなど、多少の危険を伴う冒険的な遊びができる。「自分の責任で遊ぶ」というルールや、「プレーリーダー」を中心にしたコミュニティづくりなど、活気ある遊び場をつくる仕組みが特徴。

施設の壁面には、利用している子たちが描いたであろうグラフィティがたくさん。 施設の壁面には、利用している子たちが描いたであろうグラフィティがたくさん。

今回は、ベルリンの南西部、ちょっと郊外の住宅地にある「JUGEND UND KULTURZENTRUM SPIRALE(青少年遊び文化センター)」に行って来ました。この施設の入口にあるカフェの店員、タミールさんが案内してくれました。

10歳~22歳ぐらいまでを対象としてるのが「ユースセンター」で、ここでは文化、スポーツを自由に楽しむことができます。ゆったりした広場と、バスケットボールとフットサルができるコート、そして建物の1階にはカフェと工作室。地下にはスタジオ、2階にはホール。外観はちょっと変わったマンションのようで、子どもたちが描いたグラフィティが壁を彩っています。古くなったマンションをリノベーションしている施設も多いです。

こちらはベルリンの東側にあるユースセンター「naunyun riztze jugend zentrum」の壁面。壁画の上に、みんなの”タグ”が描かれている。こちらはベルリンの東側にあるユースセンター「naunyun riztze jugend zentrum」の壁面。壁画の上に、みんなの”タグ”が描かれている。

利用する子ども・若者は、音楽、ダンス、演劇、DJ、グラフィティなど多様な表現を学ぶためのワークショップに参加することができます。DJをここで学んで友だち集めてパーティーする、というのはベルリンではよくあること。参加費はなんと3ヶ月で10ユーロ(約1000~1200円!)。スタジオ使用料も込み!ワークショップを経験した子は、スタジオで自主練して、フェスやパーティーに出演を目指します。自分たちでフェスを企画することもあるそうです。

このユースセンターの対象者は中高生限定というわけではなく「22歳ぐらい」と上限はぼんやりしています。館内にカフェがあってビールも飲める。大学生以上の大人も普通にスタジオとして利用することも多いそうです。10代前半の子たちにとっては、カフェでジュースを飲みながら20歳以上のバンドマンと知り合える空間は魅力的でしょう。「おれの大学生の知り合いが、これ教えてくれてさぁ」とか言いながら、ちょっと昔のかっこいいテクノのCDを友だちに見せびらかせるわけです。

子どもは地域のなかで「自立」を学ぶ

案内してくれたカフェスタッフのタミール・シュナイダーさん。イスラエルから移住してきて、ドイツ語を勉強しながらここで働いているそう。案内してくれたカフェスタッフのタミール・シュナイダーさん。イスラエルから移住してきて、ドイツ語を勉強しながらここで働いているそう。

このカフェ空間がポイントで、見に行った冒険遊び場にも、チルドレンズ・ミュージアムにも、青少年センターにも開かれたカフェがあって、近所の人がお茶を飲みにきています。フェスの時などは近所のおじちゃんも土曜日の昼下がりにステージ脇でビールを片手に若者たちの演奏を楽しみます。子どもをケアする施設というより、子どもを中心としたゆるやかな公共圏を創出している感じです。

施設ごとに「パンク系」「ヒップホップ系」など特色があるので、趣味に合わせて選べます。ジャンルが偏ったり、コミュニティが閉鎖しないように、ベルリン市内のユースセンターと公園で同時開催フェスをやったり、バンド大会やダンス大会をやったりしています。こういう青少年の音楽祭を企画するNPOというのもあります。

ここで特徴的なのが、青少年のバンドフェスやダンス大会のチラシが、全然子どもに媚びた感じではなく、大人がつくるライブイベントなどと並列にならべられていることです。チラシのデザインも妥協なし。 企画の方向性を決めるディレクターがいて、出演するための審査会があって、 グラフィックデザイナーがポスターやサインをつくるというように、大人のそれと同じなのでしょう。

美術館でかわいくて思わず手にとったチラシは、「FETE DE LA MUSIQUE」という青少年音楽祭のもの美術館でかわいくて思わず手にとったチラシは、
「FETE DE LA MUSIQUE」という青少年音楽祭のもの。

これらの施設の目的の一つに、「BUILDING」、つまり子ども・青少年の「自立」を支援する、ということがあります。「自立=ステージに立つ(大人と対等に作品を発表する)」という形で体系化していて、文化とは福祉であり、福祉とは面白い文化活動を内包するものだ、という思想があるように感じました。子どもたちの表現は、教育や福祉の名目のもとに回収されるのではなく、数ある表現の、ひとつのジャンルとして市民に受け入れられています。

日本では、福祉は課題のある子どもをケアするものであり、文化とは別のものという認識があります。日本で「福祉×アート」という見出しが有効なのがその証拠でしょう。日本は、マンガ、ゲーム、アニメ、演劇、テーマパークなど、いわゆる「子ども向け」の文化はものすごく発達しています。しかし、それは子どもを客体として扱い、彼らの主体的な創造性を引き出すことはしません。

大人から子どもへのサービスとしての福祉/文化ではなく、子どもから大人への表現を可能にし、彼らを面白い大人へと変えていく福祉/文化を、どうカッコよくつくりだしていくか、ということ。これが、今日の児童福祉の課題であると感じています。

道端にもこんなのがいてかわいい。道端にもこんなのがいてかわいい。

次回は、ベルリンからバスで南に2時間ほどのところにあるライプチヒで出会った、子どもたちが絵本作家になる工房「BUCH KINDER」のことをご紹介します。

(Text:臼井隆志)

臼井隆志
usui
アーティスト・イン・児童館 プログラム・ディレクター 
1987年東京都生まれ。アーティスト・イン・児童館プログラムディレクター。2008年より練馬区を拠点に、子どもの遊び場である児童館をアーティストのアトリエとして活用するプログラム「アーティスト・イン・児童館」を開始。本事業の企画・運営を担当している。2012年度より特定非営利活動法人アーティスト・イン・児童館の理事を務める。
http://jidokan.net

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