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ニューヨークのスーパーマーケットに学ぶ、コミュニティのつくりかたとは? green drinks下北沢 [イベントレポート]

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green drinks下北沢では、下北沢を好きな人が、クリエイティブな活動をシェアする場ということに活動を行っています。今回のテーマは、「共に支え、運営し、持続するために。」

現在、さまざまな地域や場所でいろいろな活動が行われていますが、多様な立場の人が集まって一緒に活動するというのは、必ずしもうまくいくとは限りません。そういった活動を持続可能にし目的を成し遂げるためには、どういった在り方が考えられるか?

今回はその問いから、持続可能な生活を応援するためのウェブサイトを作成している「ハイエナライフ」さんにお越しいただき、作品の一つである、ニューヨークの『パークスロープ・フードコープ』の映像をもとに持続可能な活動について意見を交わしました。

持続可能な農園でとれたお野菜

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この日振る舞われた料理は、ママンカ市場で取り扱っている、サンキュウ農園さんのお野菜で使った料理。料理を担当してくださった久保佳代さん!

メニューは、とうもろこし入りごはん、塩麹の鳥ハム ジェノベーゼのせ、ピクルス、タマネギと黄色のズッキーニとインゲンとインカのめざめ(黄色のジャガイモ)のキッシュ、夏ミカンと黄色のにんじんケーキ(紫のにんじんのボーロと豆乳と甘夏のカスタードクリームのせ)

お皿は、日本の林業を守るために国産の木材から作られたKIZARAを使用しました。お腹を満たしたところで、さっそく上映へ!

パークスロープ・フードコープとは?

上映の前に、ハイエナライフの映像のコンセプトと映像作成を担当している中川伊希さんより作品についてご説明いただきました。

中川伊希さんはニューヨーク在住。もともとマンハッタンに住んでいましたが、子どもができた頃にブルックリンへ引越し、そこでパークスロープフードコ―プを知ったそうです。それまでは、協働で店をもつことや、どういった商品を買うかを考えたことがなく、この映像をつくることでコープに接することに。そして、上映へ…。

パークスロープ・フードコープ(PSFC)はニューヨーク・ブルックリンにある会員制のスーパーマーケット。会員になる条件の一つは4週間に一度、2時間45分、店で働くということ。この店がいかにして40年もの間、そして現在では1万5千人の会員を有し持続してきたかを5部のビデオジャーナルでレポートする。(ハイエナライフHPより引用)

映像は51分となる作品でしたが、皆さん真剣に観てくださりました。

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コミュニティはつくっていくものだと気づいた日本

上映後は、下北沢の線路跡地について考える「グリーンライン」の活動を行なっている丹野いのり、農園と消費者をつなぐ市場「ママンカ市場」を手掛けている小出麻子さん、そしてファシリエーターとしてハイエナライフの中川邦彦さんと、日本の各地でともに協力し、生活者の力を強めることについて話し合いました。

ママンカ市場」では人手不足を補うため一般市民からも手伝いを募集。お手伝い一時間あたり“百笑(100円)”の地域通貨を渡し運営を支えてもらっています。一方、パークスロープのコープの場合は「僕たちが運営しているから、働くのは当たり前」という考えから労働は金銭化されていません。

これが議論のポイントとなり、参加者からも「書類の作成などでどうしても必要な作業が発生した場合は報酬が必要なこともあるのではないか」との意見がありました。

一方、参加者からはこんな意見が出ました。

約20年間、生協を利用しているという方からは、日本の現状として、生協での共有で配達してもらうという基本さえも面倒がって、個別配送を希望する人がいる。映像を見て、アメリカで協働が成立できているのにとても驚いた。

40年間続いていて会員数1万6千人の組織であるというパークスロープのコープには特殊性を感じ、それはパークスロープ地域特有のコミュニティのようなものがあるのではないか。

こうした意見に対し、ハイエナライフの中川さんからは、パークスロープでは地域のコミュニティはなく、むしろコープがコミュニティを形成している状態とのお話がありました。

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また、コープのディスプラニティコミュニティの人から「アメリカは、コミュニティはあるものではなく、つくっていくもので、対立しながらつくっていく。日本は、コミュニティは既にそこにあるものと考えているのだと思うから、関わりにくいと感じているのだと思う」という話があったそうです。

この話に対し、参加者から「今、日本ではコミュニティはつくっていくものだと追い込まれているのだと思う。しかしノウハウがないので(コミュニティを形成・持続するのが)難しい。だからこそ国民性に応じた新しいノウハウが必要と思う。一方で今回のコープの映像ではその参考になりそうな細かいノウハウはわからなかった」と指摘もありました。

またある参加者からは、すでにある地域のコミュニティに対して、若者や新しく地域に住む人たちは意見が言いにくいため、誰でも意見を言えるような場が必要だという意見も。一方、グリーンライン下北沢からは、そのような議論の場を持とうとしても、それ以前に日本人の傾向として対立を避ける状況があり議論までいかないとの話が。

これに対し、中川邦彦さん、伊希さんからは、団体内で議論する時の“ファシリテーターの存在”と“議論の持ち越し”についての話が出されました。

アメリカで議論をするときには、ファシリテーターの存在がある。ファシリテーターは同じ意見が繰り返される場合は議論を阻害しないよう、各意見はきちんと書き記し“見える化”する。そのようにして整理し繰り返し議論をしていきます。

またコープでは、「アジェンダコミッティ」というものがあり、ここに議題を出すとこの人たちが、議論の再定義の前に前回の議論が改善されているかポイントをチェックしています。こういった存在が議論を深めていくのです。

参加者やパネリストからは、そこまでやる感覚やエネルギー、そして時間は日本にはないとの意見もありましたが、中川邦彦さんから、

私たちは、消費者である前に生活者で、どういう風に生きたいのかを自分達で考え、自分達で要求していくということをどのようにやるのか。こういうものを作っていく必要があります。

とお話しいただき、最後は、参加者の方からの質問により、各団体いろいろ問題点がある中で、それでも”自分が活動を続ける意味“について述べ、この日は終了となりました。

今回、“活動を継続するための方法”について、より具体的な意見を交わすことはできませんでしたが、“議論交わすことに対して、考え方に違いがある”と知れたことは、大きなポイントになったのではないでしょうか。

このgreen drinks下北沢vol.3の内容をヒントに、一つでも多くの活動が継続されればと思います!

ハイエナライフ
アシスタントディレクター大澤綾菜さんより
ニューヨークと東京を拠点に活動しているハイエナライフでは、<持続可能なライフスタイルを応援する>ということをテーマとして、ウェブサイトを中心に映像を紹介。作品を見る事で、「自分自身の生活の持続可能性について考えてもらう」ということを目的としている。

NPOグリーンライン下北沢
理事 丹野いのりさんより
グリーンライン下北沢では、小田急線東北沢駅〜世田谷代田駅間が地下化した後の“線路あとち”について、地下化以前より市民などから意見を募りつつ提案を行っている。また、提案だけではなく、将来できる公共空間で何ができるかを考えて実行する“みんなの庭プロジェクト”なども実施している。

ママンカ市場
小出麻子さんより
ママンカ市場は、今回green drinksの会場となった場所をオフィスとするウェブデザイン会社が運営する産直市場。この市場では“下北沢×野菜×子育て”をテーマに毎月第四日曜日に近所の真龍寺(通称:天狗のお寺)で開催。農家さんと組んでの商品化の実施などもしている。

(Text:丹野いのり)