ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

3 years ago - 2013.08.06

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デザインは誰でもできる!NOSIGNER太刀川英輔さんが、デザイン思考を分かりやすくレクチャー[イベントレポート]

デザイン思考を分かりやすくレクチャー(C)NaraYuko デザイン思考を分かりやすくレクチャー(C)NaraYuko

特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

“マイプロジェクト”をテーマに全5回シリーズでNPO法人ミラツクが開催している人気トークイベント「ダイアログBAR」。7月10日、第4回目が京都にある株式会社ウエダ本社南ビルで行なわれました。

ゲストはNOSIGNER代表の太刀川英輔さん。約40名の参加者が会場へ詰めかけ、前半は「デザイン」というテーマでのレクチャーがあり、後半は参加者が自身のテーマを発信する形でダイアログが行なわれました。

深い納得感で会場がいっぱいになった、そのイベントの様子をお伝えします。

太刀川さんにとっての「デザイン」とは?

参加者の中のおひとりが、太刀川さんへ質問を投げかけました。

太刀川さんを知ったキッカケが3.11震災後に立ち上がった「OLIVE」でした。このプロジェクトを通して社会との関わり変わったか、また他にもデザインを通して社会に変化をもたらした経験があれば教えてください。

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「OLIVE」は、物資よりも早く届く情報を届けようと、震災から40時間後に太刀川さんらNOSIGNERが立ち上げたwikiサイトです。被災地にありそうな材料を使って日用品や防寒に役立つグッズを作るアイデアなどが次々に書き込まれ、ウェブと紙媒体で、震災時に急速に広まっていきました。

数万人に対して、一気に情報を供給し、新たな関係を結ぶことができる。そんなこともデザインの力かもしれません。

「OLIVE」は、僕にとって、とても重要なプロジェクトでした。“デザインで評価される”ことを目指すとしたら、例えば災害救助のための方法を考えるよりも、「ミラノサローネ」のような世界規模のデザインの祭典で評価されることを目指すほうが手っ取り早いかもしれません。

でも、デザイナーとしての自分の存在意義を考えると、“新しい関係性をつくる”ことに尽きるんです。その視点に立てば、まだ見ぬ領域にデザインが役立てることを見つけるほうが、はるかに刺激的に思えます。

“関係性”はあらゆるデザインの中に潜んでいて、例えば椅子ひとつとっても、“背骨とお尻のカーブがあって、背もたれや座面と心地よい関係を考えることができる”のです。関係性を無視して形を考えることはできませんし、周囲との関係性が考えられていないデザインは、いいデザインになることはありません。

関係性を重視して、社会の中でデザインの果たすべき機能を考える。こうした考え方は、震災以後より一般的に、そしてより一層強まっており、僕としては楽しい状況になってきていますね。

「『OLIVE』をやる前と後の一番の変化は、“NOSIGNER”ではなく、“太刀川英輔”という個人名を表へ出すようになったこと」だと笑います。(C)NaraYuko 「『OLIVE』をやる前と後の一番の変化は、“NOSIGNER”ではなく、“太刀川英輔”という個人名を表へ出すようになったこと」 (C)NaraYuko

太刀川さんの自己紹介を兼ねたプロジェクト紹介では、“どういう関係性を育んだプロジェクトであるか”という言葉が並んでいました。


・aeru(和える)

aeru“和える”

いま日本の伝統産業の職人の多くが、非常に苦しい状況にあります。高い技術力を持っているにもかかわらず、仕事がなくなってきているのは、職人の腕の問題でも、経営方法の問題でもありません。職人を必要としてきた文化そのものが失われてしまったことが多くの原因にあります。例えば「嫁入り道具」という文化がなくなり、婚礼時の高級家具の需要がなくなってしまった事による木工産地のダメージは、実はとても大きいのです。

aeru(和える)」というブランドでは、伝統産業に紐づく新しい文化を作るため、日本の伝統産業を赤ちゃんや子どものための道具にデザインし直して、職人さんへ発注をしています。おじいちゃん、おばあちゃんが孫に本物の手仕事を贈ることで、伝統産業に対する経済の循環が起こっています。


・OCICA

ocica

このOCICAは、3.11で被災した石巻・牡鹿半島のお母さんたちと一緒に「新しい工芸をつくる」ことに挑戦しているプロジェクトです。ネックレスのデザインと作り方を提供し、地元のお母さんたちがこれを1個作ることで約1000円の収入を得ることができます。

それまで、牡鹿半島という漁村では、男性漁師をサポートするのが女性の主な仕事でしたが、震災によってその仕事がなくなってしまい、仮設住宅ではまだ知り合ったことのない人たちと共同で生活する状況を余儀なくされました。

その状況の中で、「つむぎや」という支援団体がこのネックレスを一緒に作る場所を立ち上げ、お茶っ子(お茶を一緒に飲む会のこと)をしながら、お母さんたちが丁寧に一つずつアクセサリーを編んでいます。コミュニティと手仕事を繋げている例です。

デザインは誰でもできる

デザインの新しい関係性を作ると同時に、“いいデザイン”を定義づけて、アイデアを発掘するためのコツや、デザイン発想を育むための教育プログラムを開発しているという太刀川さん。

「デザイナーじゃない人が、デザインをするため視点を得るためのコツや、その取っ掛かりを教えてほしい」という来場者からの質問へは、とても丁寧に答えていきます。



(1)たくさん観察する

デザインをするときに、まずはそれに関係するデザインをたくさん観察して、分解をします。すると色々なことが発見できます。(室内の壁を指さしながら)例えば、「オフィス内にコンクリートブロックの壁を使うと、工場っぽい感じになるし、ちょっとお洒落になるね」みたいなことが、一つひとつ引き出しとなって、発想を助けてくれます。工場っぽいインテリアを作りたいときに、思い出すかもしれません。

こういったデザインの引き出しは、デザイナーに限らず、多ければ多いほどよいと思います。例えばデザイナーへ発注する前にあらかじめ「こんな感じ」といったイメージをしておくと、より自分の思いにぴったりなデザインにたどり着きやすくなります。

(2)空気をつかむ

今みなさんが持っているスキルで、すぐにでも出来るのが、プロジェクトの空気感をつかむこと。ブランディングの手法では「ムードボード」と言われる手法があります。

自分の持っているデザインのイメージに近い写真を何十枚か集めて画用紙へ貼っていくだけの簡単な方法です。でも、そうすると不思議なことに「こんなイメージのカフェだ!」「こんなイメージのロゴだ!」といった空気感をつかむことができ、プロジェクトのイメージがグッと増すはずです。

(3)仮説を立てる

イメージに近い写真をたくさん集めると、“質が近いもの”がいっぱい集まります。何でそれらの質が近いのか、何がイメージの源を司っているのか、なぜ良かったのか、その理由に仮説立ててみるのが次のフェーズです。

「どうやら茶色みたいだ」「どうやら明朝体を使ったほうがいいみたいだ」「それはなぜだろう。」と問いかけを繰り返しながら、仮説を立てていくと、突然、それらの質の理由を一言で言い表せる瞬間が訪れます。それがデザインコンセプトになります。例えば「北欧の物語に出てきそう」というコンセプトが見つかったとします。それを元にすると、新しいデザインを想像することができるようになります。

プロジェクトに明確なコンセプトが見つかると「うぉーー!これだーーー!」という納得感があり、途端に考えやすくなります。とってもワクワクすると思いますよ。

(4)引き返す勇気を持つ

「なんか違うな」「まぁまぁだな」等と感じるときは、たいてい正解とは違いますから、小さな違和感に敏感であることが大切です。

コンセプトをデザインにすることは、アイデアの仮説を検証するプロセスです。それは“引っかかるまでたくさんザイルを投げる”みたいな作業で、“山を登る”ことそのものがデザインなわけではありません。

引っかかりを得るためにとにかく手を動かして作ってみる。そして、作ったものを見ながら考える。8割のゴールに執着せずに、少しでも違うと感じたら手元にあるアイデアを捨て、元へ戻る勇気を持ってください。

ちなみに、このスクラップ&ビルドの作業、太刀川さんは100繰り返すこともあれば、30回程で形を成すこともあり、またある時には1000回ほど繰り返すこともあるそうです。

捨て続ける作業はとても大事。谷底に落とし続けて、それでも這い上がってくるアイデアを待ちます。自分が納得いかない場合は、納期が迫っていても、ギリギリまで挑戦します。結局クリエイターの実力の差というのは、“どの段階のを完成として表へ出すか”という差を指しているのではないでしょうか。

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(C)NaraYuko

プロにデザインを頼む

進行役の西村勇哉さんから太刀川さんへ、プロに頼む意味やメリットは何かという質問がありました。

プロに頼まないとカッコいいデザインが出来ないかというと、そうではありません。デザイナーのプロになるために、天才である必要もありません。

ただ、「仮説を立て、検証し続ける作業」をこなしてきた量や質には、プロとそうではない人の差があると思います。また形にするための技術を取得するためにも長い時間がかかりますから、“時間を短縮する”という点においてはプロに頼む意味があると思います。

ミラツクのロゴができるまで

NPO法人ミラツクのロゴのデザインも、NOSIGNER太刀川さんが手がけたということ。ロゴができるまでの過程をお話しくださいました。

ミラツクのロゴ

ミラツクの事業が目指すイメージを聞いたときに、「“雁”が群を成して空を飛んでいるとき、先頭を飛ぶ鳥は一匹ではなく有機的に入れ替わり、交代でトップの役目を果たしている」という話を聞いて、たくさんの鳥が群を成して飛んでいるイメージを制作してみたんです。…でも何か違う。一方向にベクトルがありすぎる感じでした。

また、「未来へのより良い変化を、早めるような仕組み」という言葉を聞いて、ビデオテープの早送りのボタン(三角形)を鳥の群れのように配置してみたんです。…それでも「前へ進むだけが正解なのか」と考えたらそれは違う。

その次に「でも、間違いなく“人”だよね」という話になりました。独立した個人同士が、共感の輪で結ばれて、共に祈っているような状態。そんなイメージを形にしようとしたら、様々な人種の肌色を集合させて、彼らがダイアログを通じて渦になって渦を生んでいるロゴになりました。デザインは、感覚的な理解を生むための言語なんです。

「性格が合わないデザイナーと一緒にやってはいけません」というアドバイスからは、会場から笑いが漏れました。(C)NaraYuko 「性格が合わないデザイナーと一緒にやってはいけません」というアドバイスからは、会場から笑いが漏れました。(C)NaraYuko

クライアントが迷っている場合

ミラツクの場合は、組織として何を目指すのかという方向性が定まっていましたが、「クライアントが迷っている場合に、どういう言葉を投げかけるのか」という質問が飛び出します。

クライアントへは、いつも「どうなりたいですか?」「どうありたいですか?」「何が好きですか?」といったような質問をします。人生相談に乗りながら「目指すべき方向性」を一緒に見つけるプロセスからプロジェクトがスタートすることが多いです。

「問いかけに対する答えが見えてない」ことは問題ではなく、「考えることを放棄している」場合は困りますね(笑)。

大企業などでは、担当者の意志はあってもステークホルダーが多すぎて体制として進むべき方向性を定められない場合もあります。クライアントの体制に問題があると思った場合は、そのことを指摘することもあります。

ただ、基本的にユーザーや顧客のことを考えたくないと思っているクライアントはいません。クライアントがどう頑張っても解決できない問題は、「余条件」としてそのまま受け取るようにしています。

デザイナーの力量は、こういった“人生相談力”も大きいような気がします。

上手なデザイナーの、直感の使い道

結局デザインが上手いということは、「タイポグラフィがきれい、形状が美しい」などの形づくる能力を、「目指すべき関係性(ユーザーがどうなりたい・社会にどんな意味を持ちたい)」のために使い切れるかどうかだと思うんです。

マーケティングやリサーチが、ユーザーが求めているものとズレている場合もあります。もっと本質的に、直感的にユーザーの欲望をとらえ、作り手自身が「ぜったいほしい」と思えるものを目指そうよ、って言いたいですね。

「デザインする人」「発注する人」「出来上がったものを利用する人」の3つの視点を自由自在に行き来しながらのレクチャーに、自身の立場を重ね合わせながら話を聞き入っている皆さんの様子が印象的でした。


ダイアログの時間

後半のダイアログでは、参加者の皆さんが10個のトークテーマを発信し、チームに分かれて話し合いをする時間です。どんなトークテーマが上がったのかを見てみましょう。

貼り出された10個のトークテーマが並びます。(C)NaraYuko 貼り出された10個のトークテーマが並びます。(C)NaraYuko

1.「ゲストハウスをもっと身近に」
京都にはゲストハウスが多く、知り合いのゲストハウスへよく遊びに行く。ゲストハウスをもっと身近な存在にできるのではないか、ということを考えたい。

2.「NGO/NPOに役立つ(を助けてくれる)デザインの活用法」
熱帯林を守るNGOで活動しているが、 NPOやNGOは伝える力やデザイン力が弱いように感じる。こういった団体に役立つデザインの活用法を考えてみたい。

3.「Fasionの未来〜小さなブランドの生き残り方・日本のFasionの輸出」
自分自身がブランドをやっているが、将来どう生き残っていけるのか、また日本のブランドをどうしたら世界へ持っていけるのか考えたい。

4.「タバコを緑に!」
実現性は分からないが、タバコのフィルターと種をカプセルの中に入れて誰かにプレゼントするようなツールや、「吸い殻が緑の土壌になる」という循環が作れないかアイデアを頂きたい。

5.「ことこと逢美」
滋賀県から来ました。滋賀県といえば湖。そこに人(個)を放り込み、ことこと温めるような取り組み、例えば「滋賀県の近江にみんなで行きましょう!」といったツアーがやりたい!

6.「おそうじNPOグリーンバード 〜おそうじでつくる関係性」
みんなでそうじをする取り組みをしているが、そうじ+α何かできないか。例えば夜間のそうじでは周囲を照らしながらそうじをするがこのライトアップの活用法や、また参加者の関係づくりなど。

7.「レーザーカッターを使いたい・作りたい」
レーザーカッターを作ってみました。実際にものが切れます。「こんなもの作りたい、使ってみたい」というアイデアを募集しています。

8.「おや・こ・まご〜親子孫3代のコミュニケーション」
3代のコミュニケーションを活性化するために、企業やNPO、行政、個人が恊働して何かできないか考えたい。ちなみに、花を使った取り組みを考えている。

9.「HUB KYOTO〜40拠点で展開する社会起業家の共同拠点を京都にOPENしたのだが…。」
20人くらいの仲間でやってるが、これからさらに仲間を集めるための相談がしたい。

10.「廃校で◯◯!」
廃校を利用してワークショップなどやっている。廃校で何かしたいというアイデアがあれば、教えてほしい。

ダイアログへは、太刀川さんも参加。 ダイアログへは、太刀川さんも参加。

ダイアログBAR

ダイアログBAR

(C)NaraYuko (C)NaraYuko

トークタイム終了後には、前半のデザインについての講演内容をふまえ、それに重ね合わせた感想が聞かれました。

熱帯林を守る活動をしています。最初はなぜその森がなくなっているのか、どういう問題起きているのかについて必死に話をしていましたが、太刀川さんより「あなた自身は、どうしてその活動をしているのか?」と問われた時に、「自分は本当にその森が大好きだから、守っているんだ。」という本質に気づけました。これを可視化するのがデザインなんだと分かりました。

また、もっと自分の中で本質を掘り下げる作業が必要だと気づいた参加者の姿も。

「おや・こ・まご」の話をする中で、自分は「方向性が定まっていないクライアント」そのものだなぁと感じました。社内外で、もっと「おや・こ・まごダイアログ」を開き、本質を掘り下げてみたいと思いました。

「みなさんの日常の中で、デザイン思考を広げていってみてください。」と話す太刀川さん。(C)NaraYuko 「みなさんの日常の中で、デザイン思考を広げていってみてください。」と話す太刀川さん。(C)NaraYuko

この日、“デザイン”というフィルターをもたらしてくれた太刀川さんの話を聞いていると、本当にデザインとは、日々やっていることの延長にあり、気づこうとすれば、いつでも開くことの出来る世界なんだと感じました。

そして次回、ダイアログBAR 京都の最終回は、8月7日(水)の開催。ゲストは太刀川さんがデザインディレクションを手がけるブランド「”aeru”(和える)」を立ち上げたご本人、矢島里佳さんです。

たくさんの気づきを得るために、どうぞ足を運んでみてくださいね!

writer ライターリスト

楢 侑子

楢 侑子

greenz ライター “人と人をつなげること”を大きく“編集”ととらえ、その界隈で活動中。 学生時代にカメラマンとして仕事をスタートした後、様々なメディアで新規立ち上げや、企画づくり、ディレクションなどの経験を積み、2010年に独立。2011年から活動拠点を東京から大阪へ移しました。 現在は、情報発信(企画・編集・執筆・撮影)や、まちづくりのコーディネーターやファシリテーター、商品開発などの仕事をしています。 最近の仕事 ・千林商店街活性化「1000ピースプロジェクト」企画・コーディネート ・「PIC六甲アイランド」企画・コーディネート ・佐賀県に対する都市生活者の観光意識調査 ・執筆「日本をソーシャルデザインする」 ・撮影「福井人」「心がギュッと強くなる本 大切な人への手紙23通」 ほか

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ミラツクは、対話を通じて、異なるセクター、異なる地域、異なるステークホルダーの間に協力を生み出し、より良い社会に向けたイノベーションを生み出すことに取り組むNPOです。 ミラツクが応援するのは、未だあまり知られていない社会を良くする取り組みとそこにいる”人”たちです。1人の人が生み出す未来の可能性を世の中に伝えていくことで、また新しい次の未来の種が生まれる。そんな未来をつくるサイクルを共につくっていければと思います。 ⇒ 特集「a Piece of Social Innovation」ミラツク×グリーンズ対談!Facebookページ

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