ISSUE エネルギー

3 years ago - 2013.07.24

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大切なのは、専門家と市民の歩み寄り。専門家と語る「R水素でつくる、これからのエネルギーのかたち」 [イベントレポート]

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Some rights reserved by Diogo Martins.

「エネルギーはサービスです。なくても暮らせるけれど、ないと困ると言って皆が求める。それがエネルギーなんです」。

そう話すのは、NISTEP(科学技術政策研究所)のウラシマクニコさん。ウラシマさんは電気を専門とする研究者で、政策決定者に提出する資料を作成するという重要なポジションにいます。市民感覚と政策がかい離しているとしたら、そこをつないでくれるのは、ウラシマさんのような専門家なのではないでしょうか。

今回は「持続可能な地域づくりとエネルギー ~誤解と先入観を解く」と題して、低炭素社会の構築から、節電や節水やリスク・コミュニケーションまで語っていただきました。聞き手はR水素ネットワーク代表の江原春義さんです。

再エネの中では「地熱」が有望

どのエネルギーにも良い面と悪い面があり、パーフェクトなものなんてありません。サービスであるエネルギーに対して、どれくらい要求するかということです。専門家は進んでエビデンス(科学的根拠)を示し、市民は積極的に学んで考えましょう。お互いそれぞれの立場で相手を思いやり、歩み寄ることが大切です。

日本が直面している課題は多岐にわたります。特に、世界一のスピードで進む超高齢化やそれに伴う経済低迷は深刻です。東日本大震災が発端となったエネルギー不足も未解決です。

ウラシマさんはまず、日本の科学技術を方向づける総合科学技術会議について解説。続いて、近年の原子力推進の原点はCO2削減だったこと、ライフスタイルの変更は節電に有効だが持続させるのは案外難しいことなどを、例を挙げながら語りました。

原発が止まり、日本は今、安定電力供給のために火力発電をしています。電気の90%が化石燃料由来です。つまりCO2の排出がどんどん増えています。それに対して、再生可能エネルギーは1%と非常に少ない。太陽光発電や風力発電は、設備利用率が低いために、どうしてもコストがかかります。

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PEACE DELIの新納平太さんが用意したヘルシーメニューをいただきながら。 (C)藤井勝己

参加者から「太陽光発電は導入コストが低いのでは?」という質問がありましたが、ウラシマさんは、「それは規模による」と答えました。メガソーラーや巨大な風車であれば、用地取得や環境アセスメントなどに、やはり時間とお金が必要だからです。

再生可能エネルギーにも材料の問題や故障・廃棄などの問題があります。そんな中で、最も有望なのは地熱でしょう。日本の地熱のポテンシャルは世界3位です。国内で新設されないために海外に出た日本の地熱発電技術は、世界で7割のシェアを誇っています。温泉や国立公園との兼ね合いが課題ですが、法改正も進んでいます。


アイスランドの地熱発電 Some rights reserved by rwhgould

地熱は環境を汚さない上に、R水素とも好相性のエネルギー。「なぜこれまでは、あまり進まなかったのですか?」と質問が飛びます。

地熱発電は昔からありましたが、日本は1970年代に地熱ではなく原子力を選んだのです。

原子力も地熱も大がかりなエネルギーですが、当時の日本は、原子力に時間とお金をつぎ込む道を選びました。現在の国のありようは、その結果でしかないということです。

リーダーには責任があり、国は、一人でも多くの人が幸せに安定した生活を送れることを考えています。今後は例えば、100%自然エネルギーの地域が増えるかもしれない。国はオプションを増やし、私たちは選ぶ。そうなっていくでしょう。

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谷崎テトラさんを招いた前回に続き、原宿の「空き地」が会場を提供 (C)藤井勝己

国も注目する水素の可能性

R水素ネットワーク代表の江原春義さんは、「まだ市場もできていないし、選べる状況ではないけれど」と断りつつ、地域自立型のR水素の魅力を語りました。特に、24時間発電できる地熱や小水力エネルギーを水素でためる社会を目指そうと提案しました。

ウラシマさん R水素にはクリアすべき問題がたくさんありますが、水素の可能性には、国も着目しています。既に水素社会への取り組みには多くの予算がついています。2015年には一般に水素自動車が発売される予定ですし、今から20-30年後には水素自動車が当たり前になるかもしれません。

江原さん 私は、20-30年後では間に合わないと思っています。昨今の気候変動をどう感じるか、この「感じる」ということが大事ではないでしょうか。今は原発と化石燃料中心に経済が成り立っているので、それを変えるのは非常にハードルが高い。でも、声を上げないと何も変わりません。

参加者からは、水素の安全性について不安の声が上がりました。水素爆発も記憶に新しく、水素は危険なイメージと直結しがちです。

ウラシマさん それについては、誤解があります。自動車メーカーも実験映像などを公開していますが、水素は軽い気体なので、ある意味ガソリンよりも安全なのです。とはいえ、水素に限らず、技術に「完璧」はありませんから、リスクを知り、その上で使用するかどうかですよね。

何よりも、「お互いに歩み寄り、話し合って考えよう」というウラシマさんの呼びかけが心に残るトークイベントでした。主催者のR水素ネットワークは今後、R水素ハウスなど目に見えるモデルづくりに力を入れ、今回のようなイベントも継続するそうです。これからのエネルギーのかたちに興味がある方は、ぜひR水素のサイトをチェックしてくださいね。

(Text:瀬戸内千代)

writer ライターリスト

瀬戸内千代

瀬戸内千代

greenz シニアライター 東京生まれ。両親の故郷で瀬戸内海に親しみ海洋動物生態学者を志すも理系文系の橋渡しに興味が移り出版業界へ。2007年からフリーランスの環境ライターとして書籍・雑誌、ウェブに執筆している。プロフィール画像は伊豆下田でスケッチしたムラサキクルマナマコ。

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R水素は、水の中にある水素をパートナーにすることで再生可能エネルギーのポテンシャルを高める、持続可能なエネルギーのかたちです。 NPO法人R水素ネットワークの公式ウェブサイトはこちら

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