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打ち水やキャンドルナイトがはじまった”2003年”に何があったの?真田武幸さん×鈴木菜央のムーブメント談義 [ソーシャルアクション元年への旅]

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みなさんは10年前、どこで何をしていましたか?実は2003年は、日本のソーシャルアクションの歴史を語る上で欠かせない年なのです。

というのも、「みんなでいっせいに打ち水して、真夏の気温を2度さげよう!」と呼びかける「打ち水大作戦」をはじめ、夏至と冬至にみんなでいっせいにでんきを消す「100人のキャンドルナイト」やゴミ拾いボランティアの草分けである「greenbird」など、今なお強い影響を残している多くのムーブメントが続々とはじまった時期。打ち水大作戦の真田武幸さんは、そんな2003年のことを「ソーシャルアクション元年」と呼んでいます。

今年で10周年を迎える打ち水大作戦とのパートナーコンテンツ「ソーシャルアクション元年への旅」では、その頃に何があったのか、そして、これからムーブメントを起こしていくのは、どうすればいいのか、そんなことを掘り下げていく予定です。第一弾は、真田さんとgreenz.jpのムーブメント担当、鈴木菜央との対談から!

2003年=ソーシャルアクション元年!

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左からgreenz.jp発行人・鈴木菜央、副編集長・小野裕之、真田武幸さん

菜央 今日はよろしくおねがいします!

真田さん よろしくおねがいします。

菜央 2003年というとちょうど僕が「ソトコト」にいた頃なんですが、初めて打ち水大作戦のことを聞いたとき、「これはおもれぇ!」って興奮したのを覚えています。完全に違うじゃないですか、今までの環境活動と。

真田さん そうなんですよね。そこでさっそく本題なのですが、僕はそれはインターネットの普及と関連しているんじゃないかと思っているんです。

菜央 というと?

真田さん その頃はまだスマホはもちろん、TwitterやFacebookなどソーシャルメディアが当たり前ではなかったですが、ネット人口が9割を超えたタイミングだったんです。

ちょうどブログの黎明期でもあり、特に2ちゃんねるが元気すぎる感じでした。1つの大きい掲示板のなかで、なんかおもしろいことやろうぜって呼びかけたら、すごい人数が勝手に集まってしまうっていうのを目の当たりしてて。

例えば2001年夏ごろに、2ちゃんのサーバーが落ちそうになったタイミングがあって、そのときみんなで知恵を出しあって復旧したってこともありました。

菜央 ありましたね。

真田さん あれもなかなかソーシャルアクションとしては素晴らしいことですよね。

菜央 みんなが享受しているインフラを維持するために、自分たちでできることをしようぜって言って、まとまったわけですものね。

真田さん ほかにも「マトリックスオフ」という、みんなが映画『マトリックス』のスミスの格好して渋谷に集まるみたいな、みんなでバカなことをしようぜ、というオフ会も広がった。

こういう”ひとつの共通言語”をきっかけとした実験的な遊びが2002年くらいまでに行われていて、それがソーシャルな活動と結びついたのが、2003年なんじゃないかなと。

菜央 なるほど。

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真田さん というのも仕組みは、ほとんど同じなんですよ。なんか肌感覚で「いいね!」って思えるし、不特定多数でそれをやるのが面白そうだから参加してみたいっていう。でも、クオリティの高いものはそれまでそんなになかった。

菜央 2003年前後にインターネットがみんなものになったとき、「楽しい」を原動力に圧倒的大多数にリーチできるようになった。社会運動と快楽主義がつながったのは、そのへんが最初なのかも。

真田さん 快楽主義、まさにそうですね。もちろん、そのためには社会運動をすごいがんばってきた方々の系譜があって初めて花開いたものだと思うんです。

ただ僕はただのオタクなので、打ち水に関わったのも、関係ない人たちがつながるコミュニケーションということにすごく興味があって、ソーシャルとかあまりよくわかってないんです。それを今回の「ソーシャルアクション元年への旅」で探っていきたんです。

菜央 いいですね。この10年続けてきたからこそ抱えてる課題とか、これからどうなっていくのか、とかも聞いてみたいところです。

真田さん そうそう。そんなことを打ち水大作戦の10周年パーティーをやりたいなと思っています。

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2003年以前のソーシャルアクション

菜央 この話で思うのは、「ナマケモノ倶楽部」や「BeGood Cafe」が誕生した1999年にも一山あったなということです。

ナマケモノ倶楽部は全国アクションというタイプの活動ではないんだけど、社会に対する意識をちゃんと持ちながら起業していくとか、そういう考え方を広めていました。そこから「カフェスロー」や「SLOW COFFEE」につながっていって。

真田さん なるほど。

菜央 新しい文化を創ろうっていうふうに彼らは掲げていたんだよね。そのなかに、やっぱり「楽しい」が原動力っていうDNAがあったんじゃないかと思っていて。

一方のBeGood Cafeは、完全に僕たちがやっているgreen drinksの原型なんですね。思想に共鳴して集まった、おもしろい若者がいっぱい動く「場」みたいな感じ。そこではいろんな実験が行われていて、いろんな人が巣立っていった。

真田さん そこらへんはまったく知らないんですよね。

菜央 あとは1990年代にはじまった「アースデイ」も大きいですね。ただ、アースデイ東京は十何万人が集まる巨大イベントに成長して、ある意味成功したのかもしれないけれど、全国に広がっていくとかムーブメントにはなっていない。うまくいきすぎたがゆえの課題もあるのかもしれません。

真田さん その点、キャンドルナイトや打ち水大作戦は、いろんな商店街とか自治体とか、もういたるところで行われるようなことになってしまっていて、ちょっと不思議な感じがありますね。そこまで戦略的に考えていたわけではないのですが。

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菜央 打ち水はネット文化をバックグラウンドにしているというか、オープンソース的なんでしょうね。水まいて人集めればOKって、水まいたら楽しいに決まってるじゃん!(笑)

真田さん そうですね(笑)。キャンドルナイトも。

菜央 そうそう、火灯したら素敵じゃん、みたいな。徹底的に入り口も行為もシンプルだけど、出口に、あらゆる意味付けが潜んでいる。風呂敷とかもそうですよね。別に説明書なんていらないけど、どう使うかっていうのは無限の可能性がある。

真田さん 打ち水も水まくだけですしね。

菜央 水まけば、右脳が喜ぶじゃん。「あ〜水だ、気持ちいいな!」「あいつにもかけちゃえ」みたいな、なんかこう原始的な、人間の喜びがベースのところにある。

真田さん そうそう(笑)。

菜央 その奥に、「人と人がつながる」とか「温暖化」って話も出てくると。

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真田さん 最初の打ち水大作戦って「8月25日の正午になったら、外に出て一斉に打ち水してください」としか言ってないんですよ。僕も打ち水大作戦のホームページでそれをみて、実際にやったんです。で、その全国の動きをネットで誰かがまとめてくれていて、つながってる感覚がありました。

もちろん近所でも、今まで会話もすることもなかった人と話をするようになったというちょっといい話もあったり。インターネットでテーマを投げかけると、そんなことが起こるなんてなるほどなあと思った。

菜央 分散型なんだね。

真田さん ただ、あまりに分散しすぎるとメッセージも発信しづらいってことで、次の年からイベント型に変化していったんだと思います。

菜央 中心の打ち上げ花火はやろう、と。確か凱旋門の前で撒いてる写真とかあったよね。

真田さん そうなんです。スウェーデンやスペインとかにも広がりました。

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フランス・パリにて

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スペイン・サラゴサにて

菜央 キャンドルナイトや「Earth Hour」みたいに、同時刻に一斉に何かをやるっていうアイデアは本当に人と人がつながっている感じがありますよね。

真田さん アイデアもデザインも、世の中に共感されるものをつくろうという意識が生まれたのがこの頃かもしれませんね。

菜央 矢印が逆転したんだと思います。言いたいことを主張していた時代から、相手がどのように受け取るかってことをちゃんと考えてコミュニケーションとるようになった。

真田さん そういうところから考えると、一定の質が必要になってくるじゃないですか。快楽主義はすごい大事なキーワードで、そこがないと受け取ってもらえない。

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この10年を振り返りながら対談は進みます

競争ではなく、楽しいことを共有する

菜央 真田さんは最近どんなことをやっているんですか?

真田さん 去年から友だちとよく「ソーシャルマラソン」っていうのやっています。略して「シャルソン」。いまってランニングアプリで、走った軌跡と距離と時間を測れるじゃないですか。

それでみんなでゴールの時間だけ決めてマラソンしようって。スタート時間とコースが決まっているのがマラソンだけど、全部逆転して、ゴールの時間は乾杯の時間だからそれに間に合うように来いと。

菜央 おもしろい(笑)

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シャルソン終了後の飲み会の様子!

真田さん 東京マラソンの抽選にもれた人が考えた企画で。30万人から抽選して、3万人しか受からない。残り27万人は走りたいのに走れない。そんなのおかしいという話になって。

フルマラソン走りたい人はフルで、無理な人はハーフでも10kmでもいいし、それも無理なら400mでもいいから走れと。その履歴と思い出をソーシャルメディアでどんどんアップするんです。

マラソンって記録を競うためにやるんじゃなくて、そういう楽しかったことを共有するほうがよっぽどいいですよね。最後は乾杯もあるし。

菜央 確かに。

真田さん いま全国15ヶ所くらいでシャルソンが行われていて。経堂からスタートして、横浜シャルソンとか、いろんなところで行われています。でも一度に参加できるのは乾杯できる人数までなんです。

菜央 なるほど。ソーシャルメディアの時代になって、ムーブメントがどんどん細分化しているのかもしれないね。

真田さん そうですね。こうやってソーシャルアクション元年からこれまでの系譜とその背景にある変化をさかのぼることで、これからのヒントがたくさん得られそうです。

菜央 インフラが変わるとムーブメントも変わっていく。この連載でそんなところがみえてくると面白そうです。今日はありがとうございました!

(対談ここまで)



日本のソーシャルアクションの歴史をちょっとだけ振り返ってみる対談、いかがでしたか?僕たち自身「初めて知った!」という内容もありますし、その脈々と受け継がれてきた歴史のなかに、グリーンズもあるんだということを、改めて気付かされました。

打ち水大作戦とのパートナーコンテンツ「ソーシャルアクション元年への旅」では、今後打ち水大作戦の仕掛け人である池田正昭さんへなど、2003年のキーオパーソンにぞくぞくとインタビューしていく予定!そして、8月23日には、打ち水大作戦10周年特別企画として、ソーシャルアクション10年をテーマにした「ソーシャルアクションフォーラム」を日本財団で開催致します。

詳しくは、打ち水大作戦本部ウェブサイトまで!

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