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自分の“好き”を育てるために、アーバンピクニックをはじめませんか? 「東京キャンプ」の岩崎雅美さんに学ぶ、マイプロジェクトの育て方

東京キャンプ ピクニックラグ

梅雨が明け、すっかり暑くなりましたね。川遊びに、キャンプに、屋外フェスにと、イベントが盛りだくさんの夏。けれど、周りにアウトドア好きの友達はいないし、自らキャンプを企画するほどアクティブでもない。もっと気軽にアウトドアを楽しむことってできないかなぁと思っている人はいませんか?

それなら、都会でゆるくアウトドアを楽しもうと動き出したのが「東京キャンプ」の岩崎雅美さんです。2009年より活動を始め、今年で5年目に突入中。パンピクニックのイベント企画、丸の内朝大学でのピクニッククラス開講、greenz.jpでおなじみのgreen drinksとのコラボなど、その活動内容は様々です。

マイプロジェクトとして始めた活動はいつしか多くの人から共感を呼び、企業とのコラボ、雑誌掲載やラジオ出演、ひいては商品の販売と、一歩一歩確実に進んできた彼女。今回はマイプロの先輩として、「東京キャンプ」がどのようにして成長してきたのかお話を伺いました。

きっかけは、都会に対する違和感

20代の頃はキャンプやフェスにはまり、アウトドアを楽しんでいたという岩崎さん。自然の中での開放感を満喫し、元気をチャージすると同時に、生活の基盤である東京への違和感を感じていたそう。

お話を伺った「東京キャンプ」の代表、岩崎雅美さん お話を伺った「東京キャンプ」の代表、岩崎雅美さん

以前から、旅や自然があるところが大好きでした。アウトドアだと緑の中でリフレッシュできるし、旅先では人の温かさをストレートに感じることができんですよね。その時間がとても気持ちよくって。

一方、東京での生活は情報過多で物が溢れ過ぎていて…。帰りの車の中ではいつも、都会の生活と自然や旅先の境界線ってなんだろうと考えていました。もっと毎日の生活に自然を取り入れることはできないかなって。

そんな時に仲間と思いついたのが、「キャンプを東京でやればいいんだ」という発想。毎日の生活にもうすこし自然があれば、心が解放されてきっと気持ちもニュートラルになるはずだ、と。

そこでいろいろ調べてみると、東京は意外にも緑が豊かで素敵な公園の宝庫だったそう。広々とした芝生が広がる公園もあれば、火を使えたりキャンプを許可している公園もある。それに加えて、屋上や公共スペースなど、自由な発想で楽しい事ができそうな空間がいっぱいだったのです。

好きなものを外に持ち出す、気軽なアーバンピクニック

中でも岩崎さんが注目しているのが“ピクニック”です。

ピクニックはヨーロッパ貴族たちの社交場として始まりました。いつしかその風習は欧米に広がり、交通機関や車の普及、公園や公共空間の整備などに伴い、一般のライフスタイルに浸透していきました。現在は、娯楽やエンターテイメント要素も加わり、ピクニックのスタイルは非常に多様化しています。アウトドアの中でもピクニックはハードルが低く、老若男女誰でも参加できる気軽さがあります。

私の中では「ピクニックがこういうものです」という定義はありません。ランチとラグをもって近くの公園に行くだけでピクニックになるし。外のベンチで読書するだけでもいい。みんながそれぞれ好きなものを外に持ち出そうよ、という感覚です。海外のように、公園や公共の場をもっと自由に自分らしく使えるようなライフスタイルが広がればいいなと思います。

青空の下、ラグを広げて、おいしいご飯を食べる空間って、とっても開放感がありますよね。好きな時間に来て、日が暮れたら帰るようなゆるい感じが心地いい。季節や参加する人によって、様々な楽しみ方ができるのもピクニックの醍醐味です。

ピクニックの楽しさと気軽さはすぐに広がり、丸の内朝大学でピクニック講座を担当することになりました。

人とつながるきっかけの場

アウトドアに興味があるけど、周りにアウトドア好きの友達がいなかった人。ピクニックを始めたいけど何をすればいいか分からない人。朝大学のクラスではそんな生徒の興味を刺激して、新しい発想でのピクニックの楽しみ方をディスカッションしています。

授業でいろんな形のピクニックを体験してみて、イベントを発信する楽しさに触れてみる。気軽に始められるので、クラスが終わった後も、みんなそれぞれ自分なりのピクニックを楽しんでいます。わたしにとってはそれが一番嬉しいことです。

受講生の多くは、自分の好きを共有できる仲間を作りに来ているのだとか。実際、授業でフィールドワークに行くと、教室では畏まっていた子も自然と打ち解けて、クラス全体の一体感が感じられるそうです。

つながり、それもオープンでフラットなつながりを求めている人が増えているように思います。仕事や肩書きではなく、自分の力が問われる時代を生きる私たちにとって、素の自分を受け入れてもらえる場は大切な心の拠り所です。景色と食事と時間を共有しながら、つながりに出会えるピクニックには、大きな可能性が秘められているような気がします。

ビギナーさんは、“3歩先の”ピクニックから

ピクニックのきっかけをつかめていない方は、ちょっとしたアイテムで気分を上げるのがおすすめ。岩崎さんの次なるプロジェクトは、株式会社フェリシモとコラボした、新しいお買い物提案ブランド「Chichetti(チケッティ)」です。

chichetti 「Chichetti」のウェブサイト。月に一回ずつ可愛いピクニックアイテムが届きます

「好きを見つけて大切に育てよう」をモットーに、旅、本、雑貨、ファッションなど、7つの分野で活躍している専門家(キュレーター)を招き、その人ならではの価値観でセレクトした商品をお届けするサービスです。岩崎さんはピクニックプランナーとして、いつもの暮らしの中で自然を楽しめるアイテムを紹介しています。

今回の企画で私が嬉しかったのは、女の子が好きを見つけるというテーマの中にピクニックという要素が入ったことです。本や雑貨や旅って人気のあるテーマですよね。そこにピクニックが入れたことは光栄です!

毎月一個ずつ、1年間で12アイテムを販売する予定。彼女がこだわっているのは、アウトドア体験のない女の子が気になるような“3歩先の”ピクニックアイテムと楽しみ方を提案すること。

作り手さんも私も、納得のいく商品作りを目指しています。作るからには皆さんに長く使ってもらいたいし、いろんなシチュエーションで役立ててほしいですから。いろいろ制約はありますが、少しでもソーシャル性を伝えられる商品にできればと奮闘しています。

深さや形にこだわったピクニックバスケット。「東京キャンプ」ロゴカラーのリボンがアクセント 深さや形にこだわったピクニックバスケット。「東京キャンプ」ロゴカラーのリボンがアクセント

それぞれの商品には、ストーリーやこだわり、楽しみ方を提案する小さなムック本が付いてきます。愛着が湧くアイテムになってほしいという岩崎さんの配慮が感じられる商品に仕上がりそうです。

楽しさが伝わってくるカタログ。撮影で使った小物は、岩崎さんが愛用しているアイテムなのだとか 楽しさが伝わってくるカタログ。撮影で使った小物は、岩崎さんが愛用しているアイテムなのだとか

マイプロジェクトはライフワーク、ピクニックはライフスタイル

岩崎さんのピクニック好きは、いつしか彼女のライフワークに変わっていきます。「東京キャンプ」をマイプロジェクトで終わらせたくないと言い切る彼女に、マイプロを長続きさせる秘訣を聞いてみました。

マイペースに続けてきたからですかね(笑)。最初の1、2年は正直大変でした。私も本業があったので、仕事の後とか、朝早くおきて「東京キャンプ」の作業をしたり、取材はランチタイムや週末に受けたり。でもそのお陰でいろんな出会いがあって、今は仲間と一緒に活動しています。様々なアドバイスをもらえるし、私ができないところはフォローしてもらえる。チームワークは大切です。

人との出会いを大切に、様々なイベントを通じて活動の場を広げてきた岩崎さん。今後はもっと情報発信に力を入れていきたいそう。

最近デザインを一新した「東京キャンプ」のウェブサイトでは、おすすめの公園やおいしい外ごはん、外遊びを生業にしている人たちのインタビューなど、ピクニックに関する様々な情報を提供する予定です。

「東京キャンプ」のウェブサイト。イベント情報やピクニックのHow to情報を掲載中 「東京キャンプ」のウェブサイト。イベント情報やピクニックのHow to情報を掲載中

アーバンピクニックのニーズは、これからさらに高まっていくと感じています。コミュニティ作りという観点からも、世代を超えたフラットな場を提供するピクニックには大きな可能性が潜んでいます。

食や交流を生み出す場として、自然との関わり方を体験する場として、そして、アウトドア知識やサバイブしていく感覚を得る場として、それぞれのライフスタイルに合ったピクニックのカタチが増えれば、東京はもっと生活しやすく、住みやすくなると思います。

ピクニックのこととなると、アイディアが尽きない岩崎さん。少しでも多くの人にピクニックの楽しさを分かってもらおうと邁進する彼女の口からは、“嬉しい”という言葉が何度も飛び出しました。



「東京キャンプ」流マイプロを長続きさせる秘訣、きっとそれは、

自分の好きを育てること。
人とのつながりを大切にすること。
嬉しさと楽しさを分かち合うこと。

自分の“好き”を刺激する自由な空間、それがピクニック。
「東京キャンプ」はこれからもピクニックというきっかけの場を提供していきます。