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エネルギーも経済も、自分たちの手に取り戻す!地域でつくる再生可能エネルギーを知るドキュメンタリー映画『パワー・トゥ・ザ・ピープル』

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

インターネットの普及は、まさに革命的でした。それまで情報発信はマスメディアが中心で、世界に向けて誰もが情報を発信できるなんて想像もできないことでした。かつて情報の分野でインターネットがもたらしたような革命が、いまエネルギーの分野で始まろうとしています。その鍵を握るのが、太陽光や風力、地熱、小水力といった、再生可能エネルギーの普及です。

映画『パワー・トゥ・ザ・ピープル グローバルからローカルへ』は、100%再生可能エネルギーを実現したデンマークのサムソ島の事例と、地域自立型のエネルギー社会をつくろうと動き出しているオランダのテセル島の取り組みなどを紹介するドキュメンタリー映画です。

それぞれの事例をナビゲートするのは、「第三次産業革命」、「水素エコノミー」の著者でもある文明批評家、ジェレミー・リフキン氏。グリーン経済のパイオニアであるヤーマン・ミネスマ氏のコメントなどもインサートされ、いま起きている変化を知るだけでなく、この変化がどのような意味を持っているのか、そしてこれからどんな可能性を秘めているのかといった知見も得られる深い内容になっています。

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デンマークとオランダから学ぶヒント

事例としてまず登場するのはデンマークのサムソ島。かつて農業と畜産加工が主な産業だったサムソ島は、グローバル化が進むことで不況になり、失業者が増えていきました。産業を立て直すために注目されたのは、島に吹く風でした。そこで島民が中心になって、洋上風力発電による電力事業をスタートさせます。

洋上風力でできた電気は、まず島民たちで使い、余ったぶんは固定買取制度を使ってデンマーク本島の電力会社に売却します。その収入で島の暮らしは豊かさを取り戻し、島の人びとは島に留まったまま仕事や子育てができるようになりました。また固定買取制度をうまく活用した売電事業は投資として魅力があるため、島外から多くの投資を呼び込んでいるそうです。

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続いて紹介されるのがオランダのテセル島の事例。オランダには固定買取制度がありませんが、市民主体のエネルギー事業に取り組む人は、固定買取制度の問題点を、水槽を使って説明します。

水槽にいろいろなところでつくられた電力が注がれる。風力、化石燃料でつくられたもの。混ざってしまうので、消費者は自分が使うエネルギーが環境に配慮したものかどうかわからない。自分の使った電力が再生可能エネルギーであることを証明するために、グリーン電力の会社と契約して証書をもらうことはできるけれども、使う電気そのものがグリーンかどうかはわからない。

つまり、せっかくの再生可能エネルギーも送電線を通して混ぜてしまうことで、本当に環境にいいものかわからなくなる上に、売電というかたちで地域外の巨大な資本に頼ることで、エネルギーをつくる人や使う人たちの責任感や主体性がなくなる恐れがあるのです。

地域外の資本に頼らず、地域で融通しあう地域自立型の「顔が見える」エネルギーコミュニティを目指すテセル島の取り組みは始まったばかりのようですが、これからスマートグリッドやR水素の技術が進むことで、巨大送電線網に頼らないエネルギーのかたちも実現していくのではないでしょうか。

新しいアクションを生み出す一歩に

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ジェレミー・リフキン氏は、社会において通信は「神経」、エネルギーは「血液」の役割を果たすと言います。情報とエネルギーの主体が国家やグローバル企業から、個人、そして市民にシフトすることで、経済のかたち、そして文明そのものが変わっていく可能性があるのです。

ヤーマン・ミネスマ氏は、革命を起こすには、あらゆる人が関わる必要があると指摘します。科学者の警鐘に耳を傾け、課題を次世代に残すことなく、一人ひとりがいますぐハンドルを切らないと、わたしたちの文明は取り返しのつかない危機に陥るかも知れません。

いま日本でも地域電力の取り組みが始まりつつあります。気候変動とグローバル経済の影響を食い止め、豊かな社会をつくっていくために、責任と信頼をベースとした地域のコミュニティからできることはまだたくさんあるはずです。

映画「パワー・トゥ・ザ・ピープル」は、全国で上映中です。自主上映する人も募集しているので、地域のみんなで観て、何か新しいアクションを生み出すきっかけにしてみてはいかがでしょうか。