ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

3 years ago - 2013.07.07

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あなたはどんな解決策を提案する?適切なイシューを設定する「issue+design」筧裕介さんを迎えた「ダイアログBAR京都」[イベントレポート]

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

その人の名前とあわせて「自分にできること」が書かれた赤、青、黄、緑のゼッケンを背中に貼ったボランティアの人たち。「できますゼッケン」と名付けられたそのデザインを、ある人は被災地で、ある人は写真で、見たことがあるかもしれません。

NPO法人ミラツクが主催する「ダイアログBAR京都」2013年3回目のゲストには、そんな「できますゼッケン」が生み出された「issue+design」プロジェクトを運営する筧裕介さんがお越し下さいました。

ミラツクを主宰する西村勇哉さんのガイドで、ウエダ本社南ビルに集まった約60名の参加者による自己紹介が行われた後、前半部は筧さんご自身によるissue+designや現在行われているプロジェクトについてのレクチャー。後半には参加した方々による13のマイプロジェクトに関する「ダイアログ」が行われました。

今回のダイアログBAR京都のキーワードは「公助型地域生活」から「自助共助型地域生活」へ、ということ。今回のレポートではまず筧さんにとっての「デザイン」を紹介し、プロジェクトの内容にもいくつか触れながら、自助共助型地域生活のあり方について紹介していきたいと思います。

社会課題を「デザイン」で解決する

まず筧さんがissue+designのプロジェクトを説明される前にお話された二つの大切なことについてご紹介したいと思います。ひとつは日本が「課題先進国」であるということ。もうひとつは、筧さんが「デザイン」という言葉をどうとらえているか、ということです。

issue+design
「issue+design」ウェブサイト

日本は「課題先進国」だと言われていて、さまざまな問題が山積みです。人口が減って高齢者の割合が増えているなど、世界に先んじて日本が直面している課題が多い。逆に言うとその課題を克服できれば、これから先その課題を経験する他の地域にとっての大きなケーススタディとなります。そこに日本にとってのビジネスチャンスも生まれて来るのです。

こうした状況にあって、筧さんは「デザイン」という言葉をこのように定義づけられます。

デザインとは論理的な思考や分析的なアプローチだけでは読み解けないような複雑な問題の本質を、直感的推論的にとらえ、そこに調和や秩序をもたらすものであり、美しさのように人の心を動かす共感の力で行動を喚起して社会に幸せなムーブメントを起こす、そういう創造的な行為です。

複雑な社会問題に対して調和と共感をもたらす「デザイン」を、デザイナーという限定された職業にのみ囲いこまず、より多くの人たちによる創造力を生かして行っていこうとする姿勢こそ、issue+designプロジェクトの重要な特徴です。



何ができるのかを自ら考え、知らせること:できますゼッケン

ではここからissue+designで行われている個別のプロジェクトに耳を傾けてみましょう。この日紹介されたプロジェクトは、「できますゼッケン」「親子健康手帳」「COMMUNITY TRAVEL GUIDE」「日本婚活会議」「自殺・うつ病対策WEBストレスマウンテン」「認知症+design LABO」の六つ。

まずは冒頭でも触れた「できますゼッケン」の紹介から。

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「できますゼッケン」

180万人を超えるボランティアの人が神戸やその周辺に駆けつけた1995年の阪神大震災。当時はボランティア文化がまだ定着しておらず、駆けつけた本人も何をしていいか分からなく、また受け入れ側の行政も混乱している。そんな課題、つまり「イシュー」に対応することがテーマとして設定されました。

そのときデザインに何ができるか?そこで九州大学の学生さんがシールを貼れるIDカードのようなものをデザインしてくれました。それを首から下げることで会話のきっかけにもなるし、その人に何ができるのかも分かる。2011年の東日本大震災があったときにそれをアレンジしたのが、背中に貼る四種類のゼッケンです。

このゼッケンにおいて重要な点は、単に助けを求める人にボランティアで来た方が何ができるのかを知らせる、だけではないということです。

ボランティアに行く人が「自分は被災地のために何ができるのか?」を考え、それによって覚悟を持ってもらえるんです。

現在ではこの「できますゼッケン」は、issue+designウェブサイトから誰でもダウンロードでき、またさまざまな自治体で取り入れられています。



人々に出会う旅:COMMUNITY TRAVEL GUIDE

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次は観光に焦点を絞ったプロジェクト。今、日本人の観光スタイルが大きく変わってきているという「イシュー」の発見に関する話からスタートします。

20世紀型の観光は地域にある珍しいものを見に行ったり、消費したり、同じようなところに行って画一的な旅を楽しんでいました。対して21世紀以降の新しいスタイルは、そこでしか得られない深い知識を学んだり、手を動かしたり、地域の生活環境を楽しむという旅だと思います。

筧さんが挙げられたキーワードに即して言いなおすと、20世紀的な観光は地域の持っている「ハードの資源を消費」するのに対して、21世紀的な観光はその地域の「ソフトの資源を体験」する旅。その「ソフトの資源」を体験するためのガイドとして、地域の人と出会うための本『COMMUNITY TRAVEL GUIDE』が刊行されます。

COMMUNITY TRAVEL GUIDE
『COMMUNITY TRAVEL GUIDE vol.2 福井人』

一冊目の「海士人(海士町)」に続き、二冊目の「福井人」が最近完成。この本の特徴を、筧さんはこうシンプルに語ります。

ごく普通の人たちが出てきて、地域の魅力を語り、魅力的なライフスタイルを紹介します。

そしてその新しい試みとして、こんなことも考えられています。

地域の人を紹介する本を地域の人がお金を出して、自分たちでつくると面白いんじゃないかと思っています。自分たちの力でつくって、自分たちの力で盛り上げる。そのひとつの形になるのではないかと考え、クラウドファンディングの「READYFOR?」を使ってトライしています。

第三弾の「三陸人」は「復興を頑張る人を応援する旅」がテーマ。本をつくるプロセスにさまざまな人たちが参加するというねらいのもと、今年四月に仙台でワークショップを実施しています。そんな『COMMUNITY TRAVEL GUIDE vol.3 三陸人』は、ミラツクと共同で現在制作中です。

よりよい「イシュー」の設定

自転車通勤、婚活、自殺、認知症、いじめ、津波防災、食育。さまざまな問題に対して「デザイン」の力で解決策を提示するissue+design。このプロジェクトにおいて鍵を握っているのは、スマートな解決策を生み出すための「イシュー」の設定でしょう。筧さんは、プロジェクトに取り組まれる際のプロセスをこのように語ります。

プロジェクトをはじめたときは先入観がない真っ白な状態で、その問題に取り組んでいる人にヒアリングします。A3の紙一枚にイシューを書いて、構造的に整理しながらその中でどれが大切かなと選びます。

課題解決の切り口が見えるようなテーマの設定をしますが、逆に言うと、依頼してくださった方との対話の中でそれがどうしても見えない場合は、お断りする場合もあります。

「親子健康手帳」のプロジェクト説明を例に挙げてみましょう。

乳児の死亡率が高かった戦時中、「母子手帳を持っていたら配給が優先的に受けられる」というシステムを筧さんは評価しつつも、現在求められているのはまた別の問題ではないか、と問いを立てます。

そして、高齢出産、共働きなど、当時はまだまだ多くの人の目に明らかでなかった現在の状況の中でどんな母子手帳が求められているのか、という新しい「イシュー」を設定。現在では159の自治体で正式に採用されている新しい母子手帳「親子健康手帳」が生み出されました。

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「親子健康手帳」

公助型の地域生活から自助共助型地域生活へ

issue+designで現在進行中のプロジェクトを説明した後、「自助共助型地域生活」という目指すべきひとつのモデルに触れながら筧さんのレクチャーが終了しました。

国や自治体が市民に対してサービスを提供して、それに依存するのが公助型であるのに対して、自助共助型というのは、市民が自律してお互い協力し合って、その中で課題を解決します。それに対して国や自治体は側面から援助をする。公助型で「地域に産業を」となると、企業を誘致して公共工事をして、ということになりますが、ガイドブックのプロジェクトがそうであったように、地域にはすでに魅力的な資源があるんです。

こうした筧さんのお話に関連して印象的だったのが、「すでにあるシステムを利用する」ということ。まったく見たことのない「新しいモノ」を生み出すのではなく、既存の仕組みに疑問を持ち、デザインしなおしたりすることでよりよい状況を生み出していくこと。住民自身が行動を起こしていくことを目指して共感の輪を広げていくことが「issue+design」の特徴であり、またそこに「ダイアログ」との連続性を感じました。

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休憩中にも会場内ではさまざまな対話が行われています。

13の「マイプロジェクト」の紹介

後半部はマイプロジェクトについての「ダイアログ」。皆さんがすでに取り組まれているプロジェクトについてのもの、これから行おうと思っているプロジェクトについてのもの、そして今興味を持っていることがらについてのもの、さまざまな「マイプロジェクト」やその種が提案されました。

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1:地域と大学生をつなげたい
2:滋賀の『COMMUNITY TRAVEL GUIDE』をつくりたい
3:「三ごとデザイン塾」ですばらしい成果品をつくりたい
4:「ものづくり」で地域の問題を解決する。「SoHub」の取り組みについて。
5:「スイセンプロジェクト」球根シェア5for5 3年目でプロジェクトの展開を考えたい
6:岡山で対話の場をつくりたい
7:未来のミュージアムって何?
8:1000人がダイアログを通じて創る未来とは?
9:日本を世界一尊敬される国にする
10:個人が支えあう農業をひろめる
11:被災したこどもたちに学習を!
12:学びと食でイノベーション。ミキサーについて語ろう!嫌を欲しいに変えるストーリー
13:ヒミツキチ×笑学校

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今回は「はじめてから数年経ったプロジェクト」についてのダイアログに参加してみました。ひとつは日比谷花壇さんが協賛する「スイセンプロジェクト」を担当される方が提案されたダイアログ。これから先「協賛者」という形にとどまらず行えることはどんなことだろうか、という興味深い問いかけを軸にダイアログが進んでいきました。

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もうひとつ参加したダイアログは、使わなくなった参考書の再販によってマネタイズを行い、被災地の書店で地域のこどもたちのための学習教材を購入するという循環モデルをつくられている「参考書宅救便」メンバーさんのダイアログ。彼女からは、はじめて数年経ち、現在学習教材に対する現地のニーズがそれほど高くなくなりつつある、という状況において自分たちにできる行えることは?という意識を軸に皆のアイデアが提案されました。

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筧さんがおっしゃられていたように、プロジェクトにおいて重要なのは無理なく解決ができる「イシュー」の設定です。「ダイアログBAR京都」シリーズの「ダイアログ」ではまさにこの「イシュー」をどのように明確にするのかが問われているように感じます。それが他の参加者にとってもはっきりしたものになればなるほど、新たな解決の糸口=アイデアが生まれて来る。「ダイアログBAR京都」ではそんな創造の場面がさまざまに生まれているのではないでしょうか。

(Text:榊原 充大)

榊原 充大 
建築家/リサーチャー。大学では文学部芸術学科に所属し建築を研究。その後2008年から、より多くの人が日常的に都市や建築へ関わるチャンネルを増やすことをねらいとし、建築リサーチ組織RADを共同で開始。RADとして建築展覧会、町家改修ワークショップの管理運営、地域移動型短期滞在リサーチプロジェクト、地域の知を蓄積するためのデータベースづくりなど、「建てること」を超えた建築的知識の活用を行う。同組織では主として調査と編集を責任担当。
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榊原充大

榊原充大

Mitsuhiro Sakakibara 建築家/リサーチャー - 大学では文学部芸術学科に所属し建築を研究。その後2008年から、より多くの人が日常的に都市や建築へ関わるチャンネルを増やすことをねらいとし、建築リサーチ組織RADを共同で開始。 RADとして建築展覧会、町家改修ワークショップの管理運営、地域移動型短期滞在リサーチプロジェクト、地域の知を蓄積するためのデータベースづくりなど、「建てること」を超えた建築的知識の活用を行っています。 同組織では主として調査と編集を責任担当し、個人でも文章を書いています。建築のみならず、街全体を見通すような人やプロジェクトをとりわけ紹介していきたいと思っています。 - RAD http://radlab.info

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