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専門家ではなく、ふつうの人が支え合う社会へ。悩んでいる人の“支え手”を応援する「Light Ring Time」

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「専門家にみてもらうほどではないけれど…」というちょっとした落ち込みやささいな悩みを抱えることは誰にでもあります。そんなときに身近に支えてくれる人がいるとほっとしますよね。

グリーンズでも以前とりあげた「Light Ring.」はそのような支え手を応援する団体であり、主催するイベント「Light Ring Time」(以下LRT)は支え手の集う場です。

Light Ring.はどうして悩んでいる本人でなく支える人に着目したのでしょう。代表の石井綾華さんにききました。

身近な若い人の支え方に困っている人を応援したい

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Light Ring.代表 石井綾華さん

悩んでいる人を支えようと頑張っているうちに、支え手自身も悩みを抱え込んでしまうことがよくあります。そんなとき、周りの人と話すと気持ちが軽くなることがあると、気づいてほしいと思っています。

専門家だけではなく当人を支えている人やさらにその周りの人が力をあわせることで、心の病の予防は実現できるものだと思っています。心の健康に気を遣うことのできる人が予防のアイデアをもっているものです。

病気になる前に周りの人が支えあう仕組みがあれば、少しでも多くの人の気持ちが楽になるのではないか。そこで、支え手たちが互いにより効果的な支援を行うために集うコミュニティ(LRT)や、支え手が増えるような育成講座(ソーシャルサポート力養成講座)を開催しています。

5月18日のLRTは、「支え手マニュアルづくり」をコンセプトに行われました。「誰もが自分と周りを支え合うことができる社会」のために、効果的な支え手行動をまとめて、その行動ができる人を増やすことがねらいです。

悩んでいる人を支える家族会の多くはねぎらいが中心になっています。ねぎらいも大切な要素ですが、それに加えて支え手側が自分の心のセルフケアを重視したり、自分の言動を改善したりすることを目的にする場も必要です。

ちょっと悩んでいますくらいのささいな悩みを支える上で困ったこと、やってよかったこと、やらないほうが良いと思った言葉がけや行動を言語化してまとめる。経験者だからこそできる、次に活かすノウハウ作りですね。支えたいけどどうしていいか分からず戸惑っている、次の支え手が行動を起こす第一歩になればと思っています。

普段と違うことは、何?

5月18日の回では自己紹介、支え手としての自分の振り返りをしたのち、マニュアル作りへ。下の(1)〜(3)の問いかけの答えを各自ふせんに書いていきます。

(1)どんなきっかけで周りの人の心の異変に気づきますか?
(2)最初にどのような言葉がけをしますか?
(3)最初にどのような行動を起こしますか?

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書けたら答えをもち寄って、グループで話し合い。
気づくキッカケについて、どのグループでも話題にのぼっていたのはTwitterと直接会ったときの表情でした。

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「Twitterに気持ちを吐露する人、多いよね」
「会っているときの表情や態度は大丈夫なんだけどTwitterがすごいことになってることはある」
「逆につぶやきでは普通なのに会ってみたら表情がすごく沈んでいることもあるよ」

また、好きなものにのってこない、本人は気づいていないけれど電話やメールが増えたなど行動に注目する人も。外見については「服装がいつもより乱れている」という気づきがあり、「たしかに!」とどよめきが起こっていました。

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距離感でアプローチは変わる

最初にかける言葉は「呑みに行こう」など誘うものや「元気?」という声かけが主流です。

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「距離感やその人の雰囲気によって使い分けてるかも」と、出し合った案を”年下もしくは同世代への言葉がけ”と”目上の人への言葉がけ”に分けているグループがありました。

「後輩や同世代にしている、元気?大丈夫?みたいな声かけってほんとうに訊いてるんじゃなくて反応を見るためにしてるよね」
「話を詳しく聴きたいときは、ご飯に行こう!と誘いますもんね」
「誘うときって気晴らしに連れ出してあげたい思いもあるんじゃないかなあ」
なぜそれを言うかに焦点をあて、言葉への理解を深めていました。

目上の人の場合、話しやすい場づくりがメインになっていくよう。「暑くてまいっちゃいますね」とあいさつする、こちらの悩みを打ち明けるなどです。「自分の話をすることで間接的に促すことが多い気がする」とのつぶやきが耳に残りました。

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「近い方が出にくいね」と、心の距離が近い人への接し方を考えているグループも。「言うまでそばにいて待つかな」「気分転換のために外に連れ出す!」など、あえて言葉がけをしないという結論にたどりついていました。

日々の行動から生まれるアイデア

最初にする行動は、聴く・誘う・差し出す・触れるの4つに絞られていたようです。

聴くことについて「相手を肯定しつづけるのがポイントかな」との意見があり共感を呼んでいました。”グチ大会を開く”というアイデアが出たグループもあります。

「”グチ大会”と銘打たれたみんなで言い合う前提の場なら、普段だと打ち明けにくい話もしやすくなるんじゃないかなって」

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お菓子をあげることが有効であることを語り合うグループも。

「疲れているときにもらうとうれしいね」
「ねぎらいが形になっているからこそのうれしさなんじゃないかな」
「話す場を提供できるいいチャンスにもなりますよね。ご飯に行こうみたいな誘いがしやすくなるというか」

話し合うことで知恵が磨かれる

「明日から新しく行いたいと思ったことはありますか?」グループの話し合いをシェアする際、石井さんから問いが投げかけられました。

カラ元気を出す人もいることに気づきました。もっと細かい変化に注目できるようにしたいです。

Twitter・LINE・電話やメールなど、どんなときにどういうツールを相手が使うかよく見ていきたいですね。効果的なはたらきかけをする素地になりますから。

「何があったの?」と直接的な聴き方ばかりになっていたけれど、もっとやわらかく聴く必要もあるかなと思いました。

LRTでのやりとりを通し、支え手としてよりよいあり方のヒントを得たようです。今回の話し合いでつくられた支え手のノウハウは、Light Ring.のホームページに分かりやすくまとめられて掲載されています。

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最後に石井さんが参加者に向けたメッセージを贈りました。

悩む人を支えたいと思っている人が支える行動を継続していけるように応援したい。支え手自身であるあなたの心が健康で幸せであること。それがLight Ring.の一番の願いです。

LRTのような場が増えることは、専門家だけが悩んでいる人を支える社会から、ふつうの人が支え合う社会づくりへの第一歩です。
あなたも、支え手の一歩を始めてみませんか?