ISSUEインクルーシブ 高齢者

3 years ago - 2013.06.13

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北海道から大阪までを縦断!認知症の方、家族、支援者や地域住民が一つのたすきをつなぐ「RUN 伴」

RUN伴

“認知症”についてみなさんはどのようなイメージを抱いていますか?
なんとなくは知っていても、認知症の方が身近にいないのでよくわからないという人が多いのではないでしょうか。

65歳以上の高齢者のうち認知症の方は約15%いるといわれています(参考)。高齢化がすすんでいき、認知症についてわたしたちがもっと“自分ごと”として考える必要性は高まっていくでしょう。

しかし、一体どうやって“自分ごと”にすればいいのでしょうか。

認知症になっても安心して暮らせる町づくりをすすめるNPO法人認知症フレンドシップクラブ主催の「RUN伴(ランとも)」はそんなきっかけをつくっているイベントです。

「RUN伴」とは認知症の方、家族、支援者や地域住民が少しずつリレーをしながら、1つのたすきをつなぎゴールを目指すイベントです。2011年におこなわれた第1回では、函館—札幌間300キロをつなぎました。2012年の第2回は、札幌—東京間1200キロをつなぎ、今年の夏に開催される第3回は旭川−大阪間1700キロをリレーします。

認知症のイメージと現実のギャップ

「RUN伴」は一体どのような思いから始まったのでしょうか。「認知症フレンドシップクラブ」理事の徳田雄人さんにお話を伺いました。

徳田さんは大学卒業後8年間NHKにて勤務し、主に医療・福祉に関する番組の制作に携わっていました。その際、“認知症”というテーマに出会ったのです。当時のことについてこう語ります。

若年性認知症の夫婦の取材をさせていただく機会がありました。インタビューをしていく中で、私が当時抱いていたイメージとのギャップに気付かされました。ただ、「大変そう」というイメージだったのですが、実際認知症の方々の困りごとは私たちにもサポートできそうな身近なものだったのです。

例えば、「体は元気ですが、帰れるか不安で外出できない」や「友達づきあいがなくなってしまった」などでした。これらの悩みはほんの小さなサポートがあるだけで解消されます。

関心のない人にも知ってもらいたい

認知症をテーマに取材を続けていくうちに、徳田さんの意識は変わっていきます。

世間の認知症に対する認識を変えることで、認知症の方をサポートしたいと考えるようになりました。しかし、テレビ番組を通して問題提起をすることだけでは認知症について関心のある人にしかメッセージを届けられないと感じていました。

社会の中で孤立してしまっている認知症の方をサポートするためにはもっと別の方法があるのではないかと悩んだ結果、2009年に会社を退職しようと決意しました。

小さなサポートから大きな支えへ

退職後、徳田さんは取材を通してつながった「認知症フレンドシップクラブ」代表の井出さんと一緒に活動することになります。

当時、「認知症フレンドシップクラブ」は北海道の札幌を中心に、“やりたいこと”を支援する友人ボランティア「フレンドシップサポーター」や、
安心して利用できるお店や場所「フレンドシップスポット」の紹介を通じて、
一人ひとりの小さなサポートをつなげて、
大きな支えになるような町をつくっていくための活動をしていました。

認知症フレンドシップクラブ「旅サポ」の様子 認知症フレンドシップクラブ「旅サポ」の様子

徳田さんはこの活動を全国的にひろげていきたいと考え、「認知症フレンドシップクラブ」のメンバーになりました。

だれでも参加できて達成感を得られることとは

そして、徳田さんは「RUN伴」という新しいプロジェクトの立ち上げにかかわります。

「認知症フレンドシップクラブ」の新しいプロジェクトとして、認知症の方々と一緒にできて、さらに達成感のあることがしたいと考えていました。しかし、どうしても能力や症状の違いに影響されてしまうものが多く、だれでも参加できるというのはなかなか難しいことでした。

そんな時、意外なところで答えが見つかりました。

私と代表の井出の趣味は“マラソン”なんです。そこから、みんなでリレーをするのはどうだろうと考えるようになりました。走るのは難しいかもしれませんが、それぞれの人に合わせて距離を短くしたり、車いすを利用することでだれでも参加できると思いました。また、1つのたすきをつないでみんなでゴールを目指すことで、達成感も味わえます。

アイデアを初めて実現させたのは2011年7月でした。コースは函館から札幌の300キロです。

“みんなで走る”=“楽しそう”

「RUN伴」は第1回目にして思いもよらない反響がたくさんあったそうです。

1回目ですし、参加者10名くらいで開催できればいいかなと考えていました。しかし、介護事業所の方々や地域住民のみなさんにお声掛けするととても反応が良かったんです。認知症に関するイベントのお誘いをすることもあったのですが、それよりも「行ってみたい」というお声をたくさんいただきました。走ることが好きな人は多いのでハードルが低かったのではないでしょうか。結果として、171名の参加者が集まりました。


認知症当事者、家族、そして地域住民が自然とつながれる場

認知症当事者の方にとって「RUN伴」とはどのような機会になるのでしょうか。

認知症になって介護が必要になると、何かに“挑戦する”機会は減ってしまいがちです。人は目標があるといきいきとしますよね。「RUN伴」に参加されている時のみなさんは何かから解放されたようなとても良い表情をしていました。当事者の家族や支援者もその姿に驚き、喜んでいました。1年に1回参加することを目標としていただくことで、日々の生活もより楽しくなってくれればいいですね。

地域住民の反応はどうだったのでしょうか。

「RUN伴」ではおそろいのオレンジのTシャツを着てリレーをしています。その効果もあってか、不思議と仲間意識が芽生え、会った瞬間から参加者同士ハイタッチをしたりしていました。こんな雰囲気なので認知症の方と地域住民の参加者が自然に交流できる場になっていました。

伴走者として参加した地域住民の方が認知症の方に置いていかれるという微笑ましいシーンもありました。そういった光景は、認知症の方のイメージを変えるきっかけになると思います。

急スピードでひろがっていく輪

ユニフォームの効果はそれだけではありませんでした。

みんなが同じTシャツを着ていたので、地域住民の方に「何してるの?」とお声掛けいただくことが多かったです。

そして、第2回「RUN伴」はより多くの地域住民に参加してもらえるようになりました。

IMG_0752

なんと、ある地域では「RUN伴」の実行委員会が出来ていて、ミーティングがおこなわれていたのです。また、第2回「RUN伴」ではスポーツ少年団の子どもたち、大学生や市長さんも走ってくれることになりました。

認知症に関心のなかった人も、走ることで「よくわからない認知症」から、例えば「認知症の人ってあのおじちゃんのことでしょ」という風に意識が変わっていました。一人の意識が変わって周りに働きかければ、どんどん他の人にも伝わり、浸透していくでしょう。

地域のつながりでどんどん輪がひろがっていき、第2回の参加者は700名を超えました。また、「うちでもRUN伴をやりたい」という地域もでてきてコースも札幌―東京間の1200キロになりました。

今年開催される第3回「RUN伴」は旭川−大阪間1700キロをリレーするそうです。何名参加されるのか楽しみですね。

1本のたすきが世界一周!

今後の目標について、徳田さんはこう語ります。

目標は北海道から沖縄までの日本縦断、そして世界進出です。1年かけて世界1周するのも面白いですね。自分がつないだたすきが、色んな国の人がつないでいくことで世界一周するのはワクワクしますね。

認知症について少しでも興味のある方はもちろん、ただ「走りたい!」と思う方も「RUN伴」にエントリーしてみませんか?そこでは達成感と何か新しい気付きが得られることでしょう。広がる輪をますます広げていき、大きな輪を一緒につくってみませんか。

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writer ライターリスト

森近 恵梨子

森近 恵梨子

1990年ニューヨーク生まれ。上智大学大学院社会福祉学専攻1年。福祉のイメージをオシャレに変えるフリーペーパー「Wel-bee」を発行するサークルの発起人。若者を巻きこんだクリエイティブな福祉をデザインしている。

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