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3 years ago - 2013.06.08

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世界最大のごみ処理場が、人を、社会を動かす世界最高峰のアートに変わる!実話を描いた『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』

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「変容させることこそ、アートの本質だ」。映画『ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』のなかで、現代芸術家、ヴィック・ムニーズはこう語ります。

ニューヨークで活躍するムニーズの故郷は、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロ。彼自身もまた、“変容”を体験した人間です。ケンカの仲裁に入ったときに銃弾を受け、その賠償金でアメリカに。そして社会的なテーマを身近な素材を使って表現するアートで注目を集め、成功を納めました。

成功で得たものを、故郷の貧しい人たちに還元したい。そんな思いで、ムニーズはリオ・デジャネイロ最大のごみ処理場ジャウジン・グラマーショをテーマにしたアートをつくることを思い立ちます。そこでムニーズが目にしたものは、ごみの分別をして生計を立てる、カタドールと呼ばれる人たちのたくましさと美しさでした。

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都市で生活している人は、ごみ箱に入れた瞬間から、ごみのことをあまり考えません。同じように、ごみ処理場でどのような人が、どのような仕事をしているのかを想像することもあまりありません。

グラマーショで働くカタドールたちもまた、リオ・デ・ジャネイロの人たちに、ごみのような存在、社会の外にいる人たちとみなされていました。カタドールたちの仕事は、街中から集められる7000万トンものごみの中からリサイクルができるものを分けて集め、再処理業者に売ること。

「自分たちの仕事のおかげで、環境汚染が防げる」。「自分たちは、売春や麻薬に手を染めずに生計を立てている」。彼らは、誇りを持って仕事をしていました。その一方で、社会的評価の低さから自尊心と、将来への希望をなくしている人たちもたくさんいました。

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ムニーズはブラジル社会が抱える問題のひとつは、学歴による格差だと言います。日本でもその傾向がありますが、その格差はどんどん広がり、固定化されつつあります。

ごみ処理場から一生離れられないと信じている人たちに、一瞬でも現実から離れさせたい。そして、自分の人生を見つめ、変えようという意志を持ってもらいたい。そんな思いでムニーズは、カタドールたちと共同で壮大なアート作品をつくろうと決意します。映画は、ムニーズとカタドールたちのふれあい、アート作品の制作、そしてそれが世界に広がるまでを追っていきます。

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私がこの映画を観て感じたのはまず、問題が起こっている現場に入ることの大切さです。一見、解決することが不可能のように思える問題も、その現場に入ってみると、思いがけない可能性を見出すことができるかも知れません。前向きにがんばっている人たちとの出会いがあるかも知れません。

そして、人間の思い込みの怖さと、それを打ち破るアートの力もリアルに感じました。アートは単なる娯楽ではなく、人の心を解き放つ力を持ちます。その力は、社会をも変える可能性をも持っているのです。

いま社会には、さまざまな問題があふれています。その問題の大きさに、私たちはときに無力感にとらわれます。しかしこの映画は、私たちに、問題から目を逸らさない勇気を与えてくれます。そして、心を揺さぶるアートやアイデアで、現実を変えてけるんだという希望を与えてくれます。

ムニーズの言う「アートによる変容」を体験したい方は、ぜひ劇場でこの映画を観ていただきたいと思います。

ヴィック・ムニーズ/ごみアートの奇跡』は、7月20日からユーロスペースにてロードショー。順次、全国で公開されます。

公開記念イベントも開催!

writer ライターリスト

丸原 孝紀

丸原 孝紀

greenz シニアライター 1976年京都生まれ。コピーライター(東京コピーライターズクラブ会員)。企業に社会貢献型のコミュニケーションを提案するとともに、NGO/NPOのクリエイティブを積極的にサポートしている。社会課題を解決するアイデアを提案するプランング・ユニット「POZI」のプランナーとしても活動中。

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