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3 years ago - 2013.05.31

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パタゴニア × 白木夏子さん・鮫島弘子さん・三原寛子さんと語る 「私たちがほしい未来」Vol.2

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(写真すべて:安彦幸枝)

アウトドアウェアブランド「パタゴニア」の女性スタッフさんとandu amet代表の鮫島弘子さん、HASUNA代表の白木夏子さん、そして、南風食堂主宰の三原寛子さんが出かけた女性ばかりの「おしゃべり登山」。

Vol.01では、それぞれの「仕事」や「ものづくり」について語り合った彼女たち。話は続いて、今度は「働き方」のお話へ。今回も、彼女たちが語り合ったたくさんの言葉をお届けします。

アテンドしていただいたのは、パタゴニアアルパインクライミングアンバサダーの谷口けいさんと、1% for the Planetアンバサダーの末吉里花さんです。

気になるそれぞれの働き方

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向かったのは、長野県と山梨県にまたがる八ヶ岳。森の中には白木さん(左)と鮫島さん(右)にとって、デザインのインスピレーションを刺激するものがたくさんあるのだそう。

パタゴニアスタッフ(以下パタゴニア) みなさんとてもお忙しそうだけど、どんなふうに働いてるんですか?

白木夏子/HASUNA(以下白木) 鮫島さんは、起業したてで大変な時期だよね?

鮫島弘子/andu amet(以下鮫島) 起業したてで、まだ全部自分ひとりでみなきゃいけないっていうのもあるし、日本とエチオピア、両方で業務があるから、大変は大変かなあ。イベントがあれば2徹3徹は当たり前だし、現地でも体力はかなり使うしね。今は楽しいのでつい無理しちゃうんだけど、この働き方をいつまでも続けていたらダメだということも分かってはいるんだ。ただ今はまだ新しい社員を迎え入れるだけの余裕もなくて……。

三原寛子/南風食堂(以下三原) 体力勝負になることも多いよね。もしかすると意外かもしれないけれど、ケータリングも肉体的にきついことも多いんですよね。何百人分の食事を限られた時間の中で一度に用意するとなるとね。さらにその後、現場に運び込むのも重労働。スープの入った寸胴鍋とか、信じられないくらい重たくって。

今、南風食堂は14年目なんだけど、そういうハードな部分もある中で、仕事として長く続けていくには、自分たちが楽しむ気持ちをどう維持していくかが大事になってくる。働き方については色々考えます。パタゴニアさんの仕事の仕方は、『社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論』などでも話題になっていますよね。だから、気になっていたんです。

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先頭で橋を渡るのは、三原さん(右)。みなさん、パタゴニアのウェアとシューズを着こなしてどんどん進みます。

パタゴニア たしかに、パタゴニアは“働き方”で話題になることが多いですね。所属部署にもよりますが、社員が自分の働く時間を融通しあえる企業文化がありますね。

白木 そうそう、社員さんが平日の日中にサーフィンに出かけちゃうって。

パタゴニア うちはもともとクライマーでありサーファーである仲間たちが始めた会社なんです。アメリカの本社も良い波が立つビーチの近くにあるんですが、それは日本支社でも同じこと。サーフィンを楽しめるロケーションというのが鎌倉を拠点にしている理由のひとつでもあります。サーフィンって、良い波がいつ来るか分からないから事前に予定が立てられないんです。だから、「良い波が来る」ってわかったらすぐに行ける立地で勤務できるのはありがたいですね。

三原 でも、不在中の方の仕事はどうするんですか?

パタゴニア そもそも「私が不在の間に代わりに仕事やっといてね」っていうスタンスじゃない。自分の仕事を自分で調整して、前後の時間に振り分けたり、責任を持って自分の仕事を管理するんです。

白木 私もそう。朝は家のことをしてから仕事をして、夕方にまた家のことをしてから、夜になってまた仕事をするっていう感じです。そうやって自分に必要な時間を確保することで限られた仕事時間のなかでの集中力も上がるから。

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緑におおわれた岩間から絹糸のように流れ落ちる吐竜(どりゅう)の滝に到着。パタゴニア 東京・ゲートシティ大崎スタッフの松宮愛さん(左)と、1% for the Planetアンバサダー末吉里花さん(右)。

三原 それでも、不在中とは知らずに電話がかかってきたりもしますよね?

パタゴニア そうですね。でも、そんな時は、本当に心からその同僚に「代わって対応してあげたい」って思えるんです。例えば、山派のスタッフが海派のスタッフに「明日は雨の後で岩がすごくしまっていて、登りたいんです」って興奮気味に言ったりして。もちろん、「岩がしまるって一体どういうこと!?」って理解不能だけど、サーフィンに置き換えれば、良い波が来るってことだろうなって分かるじゃないですか。そして、そこにどれくらい有意義な時間が待っているかを理解してあげられる。だから、お互いにサポートし合えるのかな。

新しい成長を生む10%の「空き」

三原 でも、そういうランダムな行動をスタッフ全員がしていると、業務に悪影響が出たりしないですか?

パタゴニア 大事なのは、そういった個人的に有意義な時間のために自分の仕事を周囲に押し付けるのではなく、自分で責任を持つということ。そして、これは会社にとっても良い仕組みなんです。パタゴニアはアウトドアスポーツウェアのブランドであり、スタッフがそのスポーツを愛する者であり、ギアの善し悪しやお客様の気持ちが分かる人であることはとても大切ですから。

鮫島 なかにはスポーツをしないスタッフの方もいらっしゃるんじゃないですか?

パタゴニア はい。でも、これはスポーツに限った特例じゃないんです。例えば、さっき白木さんが言っていたような子どもや家族との時間に対しても同じこと。それぞれがコミットしている大事な案件に時間を割くことに対して、理解があるんですね。きちんと仕事ができていれば、平日に子供の学校行事へ参加するのにも顰蹙を買うようなな雰囲気は一切ありません。個人的にやりたいことを実現しながら働ける職場環境には感謝していますね。

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山のアテンドは、アルピニストであり、パタゴニアのアルパインクライミング・アンバサダーも務める谷口けいさん。

鮫島 大事なことですよね。私は起業してから仕事をすべての最優先にしてきました。そうしなきゃいけなかったっていうのもあったけど、今は失敗も含めて、やった事がやっただけ形になっていく実感があって、それが嬉しかったから。

でも、今日久しぶりに大自然に触れながらゆっくりと自分の内面と向き合うことができて、何かが内側からふつふつと湧いてくるような感覚があって……。自分がこういう時間を必要としていたっていうことに気づきました。

白木 私も起業したころは、趣味をすべて忘れるようにしている感じでした。友達と出かけても会社のことが気になって気になって、割り切って上手に楽しむこともできなかったから、だんだんと行かなくなって。しばらくして、友達と会ったりすることもほとんどなくなった。ところが、一年ぐらいそんなふうに過ごしていたら、自分のなかからデザインが出て来なくなって、つくる情熱もなくなりそうになっていたんですよね。

鮫島 たしかに新しい企画を練ったりデザインするのって、自分の心のなかの貯金を使うようなところがあるよね。いつでもできるだけ感性を研ぎすませて、日常生活以外からも心の栄養をもらって自分の枠を広げていかないと良いものを作りつづけるのは難しい。でも、今日みたいに一歩遠くへ来ることでこんなにたくさんのインスピレーションを得られるわけだから。

白木 私も、週に一日は何も仕事を入れない日をつくったり、朝と夜のヨガで頭を無にして、一日を切り替えたりしてる。自分自身の90%が詰まっていても、10%は自分を大きくするために空けておくようにしているんです。

パタゴニア その10%がすごく大切な時間になりますよね。

三原 私もすごく忙しかった時は、仕事をして、そのまま床で仮眠をとって、また働いてっていう生活をしていた時もあった。でも、長い目で見たら、とても生産性が悪かったし、視野も狭くなっちゃってた。

例えば、忙しいなかでも、少し頑張ってごはんをつくって食べるのとそうではないのでは全然違うんですよね。そして、食事のあと、あわてて片付けてしまうか、一杯お茶を入れていただくかでも。日々、そんな選択に迫られるけれど、そういう一つひとつが自分をつくっていくんだと思うんです。

白木 そうだね。自分をつくっていくことって大事だなって思って、去年から美術大学に通い始めたんです。彫刻とか絵画を見て、人が美しいと感じるのはなぜなんだろう、美しさってなんなんだろうということを、ジュエラー(宝石デザイナー)として追求しようと思って。去年は西洋美術史と東洋美術史を学び、今、それがとても糧になってると思います。スタッフにジュエリーそれぞれの美しさについて伝える時にもより良い説明できるようになった。それまでは、そういう勉強にじっくりと取り組む時間もなく、とにかく目の前の業務をこなすということでいっぱいいっぱいだったから。

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雨の日のギアの使い方をレクチャーしてくれたのは、パタゴニア日本支社マーケティング部寺倉さん(左から2番目)。

三原 私もずっと忙しくやっていたんだけど、パートナーが出産休暇に入って活動がゆるやかになり時間ができた時に、大学で中医学を学んだんです。勉強すると、食材がどう人の身体に作用するかということが改めてわかるようになった。さらに驚いたのが、そうやって学びを重ねていくことで、今まで以上に自由に料理をつくることができるようになったこと。知識が身についた分、逆にいわゆる「食の常識」から自由になって、感覚の方を頼れるようになってきた。しかも、そうやって自由につくるようになってきて、料理の腕もあがったような気がします。

“変えていく”働き方

パタゴニア パタゴニアのスタッフも、自分の学びの時間を大切にしていると思います。私たちも環境NGOでの活動と両立したり、一ヶ月の休暇を取ってインドにヨガを学びに行ったり、海外でのボランティア活動に参加したりしています。

鮫島 わあ、一ヶ月の休暇なんて素敵!でも他の会社でそんなことしたら、帰ってきたら席がないかもしれないですね(笑)。

パタゴニア そうかもしれないですね。でも、そういう働き方にしたいって本気で思ってやってみたら、意外とできるものかもしれませんよ。みんなが休みを有効活用することで生産性が上がるし、それぞれがストレスも抱えず、みんなで目標に向かって進んでいるという感覚を持つことができます。

礼儀正しい日本人には、どこかで他人に迷惑をかけてはいけないという思いがあってやりたいことにフタをしているところがあるかもしれませんね。パタゴニアも日本支社の人たちは、アメリカ本社に比べたら控えめかもしれません。それでも、そういう制度を等身大でうまく機能させていると思います。

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2時間の山歩きで、すっかりリフレッシュ。気持ち良い疲労感とともに宿へと向かいます

鮫島 情熱を持って楽しく働き続けるために重要な仕組みかもしれませんね。私はエチオピアとビジネスをしているので、多くの方に大変でしょうとお声をかけて頂くことが多いんですね。確かにエチオピアのような途上国で働く大変さは多々あるのですが、日本で働く大変さってもしかしたらそれ以上かもしれないと思うことがあります。

日本では一字一句の間違いも1分1秒の遅れも許されないところがあるでしょう。日々張りつめた雰囲気の中で猛烈に働いて、だけどリフレッシュできる休暇も少ない。実は私の友人の中にも、それまでとても生き生きいと活動してきたのに、組織に入ったとたんうまくモチベーションを維持できなくなったという人、結構いるんです。日本にはそういう問題がたくさんありそうですが、逆にいえば働き方を変化させることで、これまで以上に力を発揮できる潜在性をたくさん秘めているのかも。

白木 たしかに、日本では就職問題もかなりシリアスになっているし、社会人の有給休暇だってまだまだ取りやすい空気とは言いがたいですよね。そういう部分は、少しずつ変わっていければいいなと思う。

鮫島 私や白木さんは途上国と深く関わりながらそちら側から世界を変えたいと思っているけど、パタゴニアさんは、日本の企業や労働環境に大きな影響を与えることができる会社。両方から少しずつ変化が起きていったら素晴らしいですね。

シェル紹介:Patagonia Women’s Torrentshell Jacket

冷たい雨や風を防ぎながら、水蒸気は外へ逃がすので蒸れない。雨の日も快適な防水性/透湿性ジャケット。小さく畳んで本体のポケットに収納できるパッカブル仕様も嬉しい。「街でも着られるデザインだから、このまま子どもの迎えにいきたい!」と白木さんもお気に入り。

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シューズ紹介:Patagonia Women’s Drifter A/C GORE-TEX®

軽快に歩ける履きごこちの良いトレッキングシューズは、随所にリサイクル素材を使用。ゴアテックス®ファブリクス採用で防水性に優れているので、雨の日のトレッキングも心強い。

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それぞれの視点から語り合った「働き方」。そして次回、最終回のvol.03では、「私たちのほしい未来」の話へと続きます。

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writer ライターリスト

柿原 優紀

柿原 優紀

柿原優紀(Yuki KAKIHARA)。エディター・プランナー。Glasgow School of Artを経て、京都精華大学芸術学部卒業。いくつかの出版社に勤務後、フリーランスとして活動。2011年10月にtaraxacum companyを設立。旅や食、地域文化、途上国支援を得意分野としてメディアプランニングや執筆を行う。また、「青空の下でウエディングをしよう!」をテーマにしたプロジェクトHappy Outdoor Wedding(H.O.W)も運営中。 taraxacum company http://www.taraxacum.co/ H.O.W http://www.happy-outdoor-wedding.com/ Twitter @yuukiburg

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