ISSUE ものづくり

3 years ago - 2013.05.17

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パタゴニア × 白木夏子さん・鮫島弘子さん・三原寛子さんと語る 「私たちがほしい未来」

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(写真すべて:安彦幸枝)

理念やワークスタイルが気になるポジティブなオーラ漂う企業。でも、なんだかちょっと遠い存在。でも、できることなら未来について一緒に語ってみたい。そこでgreenz.jpは、そんな気になる人たちを思い切ってお誘いし、出かけてみることにしました!

お誘いしたのは、積極的な環境問題への取り組みや創業者の著書『社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論』で紹介された形態にも注目が集まるアウトドアウェア・スポーツウェアブランド「パタゴニア」の女性スタッフさん。そして、HASUNA代表の白木夏子さんとandu amet代表の鮫島弘子さん、「南風食堂」主宰の三原寛子さん。

貧困問題や環境問題を意識した仕事に取り組む彼女たちが、パタゴニアの理念を体現してイキイキと働く女性スタッフとともに、フル回転の日々からちょっとだけ抜け出して、女性ばかりの「おしゃべり登山」に出発しました。彼女たちが語り合った「つくること」「伝えること」「働くこと」「暮らすこと」。たくさんの言葉を3回の記事にわたってたっぷりとご紹介します。

今回はパタゴニアアルパインクライミングアンバサダーの谷口けいさんと、1% for the Planetアンバサダーの末吉里花さんにアテンドしていただきました。

それぞれの「仕事との出会い」

パタゴニアスタッフ(以下パタゴニア) 今日は、素晴らしい女性企業家の方々と山に来るのを楽しみにしていました。みなさん山へはよく来ますか?

三原寛子/南風食堂(以下三原) 昔からアウトドアは好きなんです。元々海の近くに生まれて、山より海派だったのですが、ここ数年、山が好きな友人に連れていってもらって八ヶ岳や丹沢に登山に登るようになり、山の気持ち良さに目覚めてきたところなんです。

鮫島弘子/andu amet(以下鮫島) 私はなんだかしばらく慌ただしくしていて、本当に久しぶり。やっぱりすごく気持ちいい。

白木夏子/HASUNA(以下白木) 私は、仕事で海外の山にも行くこともあるんだけど、登山と言うより鉱山の採掘の現場。ゆっくり登山に来るのはひさしぶりでリフレッシュできそう。山には、インスピレーションもたくさんもらえるしね。

三原 山に来ると、いろんな「発見」があるよね。実は最近、狩猟に熱中していて、またぎの方たちに付いて猟に行ったりしてるんですよ。

パタゴニア なぜ、狩猟を?

三原 料理の仕事をするうえで、震災をきっかけに考えることがたくさんあって。食べ物についてさらに深く考えるようになり、新しいチャレンジとして始めたんです。

パタゴニア きっと、それぞれのお仕事のなかで日々さまざまなチャレンジがありますよね。パタゴニアは、クライマーが自分用のクライミング用具の製造を始めたことから生まれたのですが、みなさんのお仕事が生まれたきっかけには、どんな出来事があったんですか?

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登山開始。「美し森」から「天女山」へと八ヶ岳の山麓を横断するコースへ。

白木 私は、短大卒業後にロンドン大学で国際開発を専攻したのですが、現地の状況を自分の目で見てみたいという思いからインドの貧困層が働く鉱山を訪れたのがきっかけです。ジュエリーや電気機器類の原材料を手に入れるために鉱山採掘を行うわけですが、そこには、アウトカーストの村の人たち、さらには子どもたちが過酷な労働環境下で暗い表情をして働いているという現実がありました。

採掘した原石は買い叩かれ、一日に一食しか食べることができない、素手素足、マスク無しで鉱山に入るなど労働環境は劣悪でした。世界中の鉱山で働く人たちを中心にジュエリーづくりに関わる人たちが笑顔で働ける会社をつくりたくて、5年前に立ち上げたのが、「HASUNA」というエシカルジュエリーブランドです。

鮫島 私は、「andu amet」というブランドを立ち上げ、世界最貧国のひとつといわれるエチオピアでシープスキンを使ったファッション製品を作っています。エチオピアは実は世界最高峰の品質の革の産出国なのですが、産業の発展が遅れているため付加価値の低い原材料の状態での輸出に依存しています。

そこで、現地の人たちに技術を伝え、市場にあったデザインの最終製品を作ることで、現地の生産者、日本の消費者、関わるすべての人がHAPPYになれるものづくりができるのではないかと思ったのがきっかけです。

パタゴニア なぜ、エチオピアだったんですか?

鮫島 もともとは日本のメーカーに在籍してデザインの仕事をしていたのですが、大量生産・消費の現状に疑問を抱くようになり、退職して青年海外協力隊にデザイナーとして参加しました。そこで配属されたのがエチオピアだったんです。

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背後には、南アルプスや富士山を望めます。(奥から谷口さん、鮫島さん、白木さん、末吉さん、パタゴニア日本支社マーケティング部の寺倉さん)。

三原 協力隊にデザイン職があったなんて知らなかった! 私はもともとアート関係の編集の仕事をしていて、並行して大学時代の同級生と一緒にやっていたのが、料理ユニットだったんです。そしたら、アーティストのイベントでケータリングを頼まれるようになって。そこから仕事が育っていったという感じです。

その後、環境プロジェクト「ap bank」の立ち上げに加わり、理事として全国の環境をテーマにした企業やプロジェクトへの融資、数万人規模の音楽イベントの環境対策、店舗の立ち上げ、書籍の編集など、さまざまなプロジェクトを担当するようになりました。でも、今とは違って当時はまだ環境問題の話題ってあまり理解されなくて……。そんな状況と戦っていましたね。

パタゴニア みなさんが社会問題への意識を持ってお仕事を作ってきていることに、会社の規模はそれぞれでも、私たちとすごく通じるものを感じます。

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パタゴニアアンバサダー谷口さんによるコースの案内には、山の知識もいっぱい。

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三原さん、お楽しみのランチタイムには、かわいいクロスを広げて。

深い愛情を注いでもらえる「良質な製品」を

パタゴニア パタゴニアは早くから環境活動に取り組んできたので、一昔前はちょっと変な会社だと思われていたと思います。パタゴニアは製造を請け負う工場が出す排水についても調査して改善を求めるし、素材の生産現場に担当者が足を運んで確認します。

例えば、ニュージーランドの牧場で、羊たちが良い環境で病気にならずに、そして過放牧による浸食などで土地を荒らさずに育てられているかということもチェックして、そのような生産者だけと取り引きをしています。これはきっと、製品を見てもわからないことなんですけどね。

白木 そのストーリーを製品にどれくらい乗せて発信するかって、難しいところだと感じることはありませんか?たとえばHASUNAには、貧困問題解決に取り組むというミッションがあって、インドの鉱山で見た光景を思い出すと今でも暗い気持ちになるし、そういう現実があるということを多くの人に知って欲しい。

でも、HASUNAのジュエリーを見る時にはそういう暗い気持ちになってほしくはないんです。矛盾して聞こえるかもしれないけれど、「かわいそうな人たちのためにこのジュエリーを買いましょう」というふうには思ってほしくない。ジュエリーって人を幸せにするもので、自分を勇気づけたり、結婚や婚約という愛の象徴として身に付けるものだから。「HASUNAのジュエリーを身につけることで、輝く笑顔で世界中が満たされていくんだよ」って伝えたい。でも、そのバランスが難しくて。

鮫島 本当にそうなんだよね。エシカルだからと買ってもらいたくないけど、物の後ろ側に潜むストーリーを伝えていくこともミッションのひとつだから、まったく言わなくて伝わらないというのも違うという葛藤があるよね。

三原 南風食堂は、どんなコンセプトをうたうより、どんな大変な思いをしてつくったかを伝えるより、とにかく食べて「おいしい」と喜んでもらえることを一番大事に考えている。「食べて幸せになってもらう」のが料理だから。

以前、数万人規模のイベントの飲食出店のすべての食材をオーガニックにする企画をしたことがあって、それが想像以上に大変だったんですよ。制作側からも、参加したつくり手からも「無理だ」という声があがって。それでも、やり遂げてみたら、お客さんたちの反応が全然違ったんですよ。やっぱり、大切にオーガニックで育てられた身体に良い素材だと断然においしいから。

そうすると、「どんな野菜を使っているんですか?」ということになる。そして、つくり手たちも「こんなに違いがわかって喜んでもらえるなら、これからはオーガニックにしよう」という意識が広がる。やっぱり、ちゃんとおいしければ、そのうしろにある伝えたいことはちゃんと伝わるんですよ。

鮫島 食も同じなんですね。私の場合、途上国でものづくりをしているから「エシカル」って思ってもらいやすいかもしれないけれど、大切なのはそれだけじゃないでしょう。本質を見失わないようにしたい。

三原 鮫島さんにとっての本質って?

鮫島 「“本当に良いもの”をつくる」という姿勢や覚悟かな。日本は世界中で一番品質に厳しい目を持つお客様がいる国だし、市場にはさまざまな商品が溢れ帰っているけど、そんな中で本当に気に入ってandu ametの製品を選んで欲しいと思ってるし、その気持ちを真摯に持ち続けたいな…と。

“本当に良い”っていうのは「素材」「デザイン」「技術」にもちろん「製造過程」も入るわけだけど、いくら社会や環境に配慮されていても、愛用してもらえなければ新たなゴミを生み出しているのと同じことだから。

パタゴニア 同感ですね。パタゴニアもみなさんに選んでいただける「最高の製品」を販売することで、環境問題に取り組もうとしています。鮫島さんは、自社製品をどんなふうに使ってもらいたいですか?

鮫島 本当に気に入ったものをひとつだけ選び、それを大事に手入れしながら長くご愛用いただけたらうれしいです。毎日使えば傷や汚れもできるけど、それでも思い入れがあるから簡単には買い替えられない。傷や汚れも含めて一緒に愛してもらえる、そんなふうに使ってもらえたら作り手冥利につきますね。

パタゴニア パタゴニアのお客様にも、昔のモデルのウェアを大切に着てくださっている方や何度も同じアイテムのリペアにいらっしゃるお客様がいらっしゃいます。何十回穴が空いたんだろうと思うパンツなのですが、買い替えずにひとつを大切に着続けてくださる姿に、無駄なものを削ぎ落とした「less is more(シンプルであることは、より豊かなことである)」の美しさを感じますね。

白木 そういうふうに思ってもらえると、つくった人間としては嬉しいですよね。

パタゴニア そうですね。きっと、リペア代の方が、もとの製品の価格の何倍もかかっていると思うんですけど。

鮫島 それって、お金以上の価値を感じていただけているということですよね。いかに深い愛を注いでもらえる製品をつくれるかが大切なんですよね。

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女性ばかりの登山では、おちゃめな脱線も楽しい。

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パタゴニアのウェアとシューズで快適に進みます。

ビジネスは、ほしい未来へ向かうための「手段」

三原 パタゴニアさんは過去に、それまで使われていたコットンからオーガニックコットンへ全面的に切り替えたんですよね? どんなきっかけだったんですか?

パタゴニア きっかけは、製品の製造と環境問題の関わりを調べる環境アセスメント調査でした。その結果、“天然素材”であるコットンも栽培方法によっては、石油からつくられるポリエステルやナイロンなどの合繊繊維よりも環境に悪影響を与えることがわかりました。人体にも有害な殺虫剤が大量に使われていたんです。そして、96年に、全コットン製品にオーガニックコットンを使用することを宣言し、実行したんです。それ以来、パタゴニアは、従来農法のコットンは使っていません。

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やっぱり海が大好きというパタゴニア東京・ゲートシティ大崎スタッフの松宮さん(右)。

鮫島 それでも、移行することでコストはかさみますよね?こだわればこだわるほど。今は、どの会社も削れるコストは全部削って、それでも大変だっていう時代じゃないですか。そういうなかで、どのようにして事業を黒字化させているんですか?

パタゴニア 経営のことを考えると大変ですが、我々のビジネスのミッションは、環境問題に警鐘を鳴らして社会を変えることですから。全てのコットン製品をオーガニックコットンに切り替えると決めた時は、社員であった私もすごく不安でした。コストももちろんですが、「店頭に出せる製品が減ってしまうんじゃないか?」って。各現場の努力も相当なものだったと思います。

余分な手間やリスクを心配する農家さんを説得して賛同してくれる農家を確保し、紡績工場では新たな技術を一緒に開発して「これだけ必ず買うからやってみてほしい」と保障もしました。品質を保持するための試行錯誤を重ね、さらに大幅な値上がりにならない価格設定に尽力して、販売数が落ちないように努めました。そうやって、すべてのコットン製品をオーガニックコットンに切り替えることができたんです。

白木 パタゴニアさんにとってのビジネスは、環境問題に警鐘を鳴らして社会を変えるための「手段」なんですよね。

パタゴニア そう。みなさんと同じように、ビジネスを通じて伝えたいことがあり、社会を変えたい。だから、そのためにビジネスをしているのに、環境に悪影響を及ぼして売上げを立てていくわけにはいかない、ということに立ち返りながら進んできました。

白木 本当にたくさんの学びがある、大切なお話ですね。

パタゴニア だからこそ、みなさんを見ていると同じ方向でがんばっていかれている人たちがいるんだと、とても勇気をもらえますね。


まだまだ続く女性たちの会話。ここから広がる、「働く形」や「自分を高める暮らしかた」へのお話は、次回に。

【参加者プロフィール】

白木夏子(しらき・なつこ)HASUNA代表
鹿児島生まれ、愛知育ち。短大卒業後、ロンドン大学にて国際開発を専攻するなかインドのNGOに2ヶ月在籍し、鉱山での貧困問題に直面する。卒業後は国連にてインターンを経験し、投資ファンド事業会社を経て、2009年4月に株式会社HASUNAを設立。人や社会、自然環境に配慮したエシカルジュエリーを製造・販売する。
HASUNA:www.hasuna.co.jp

鮫島弘子(さめじま・ひろこ)andu amet 代表
東京出身。国内メーカーのデザイナーを経て、青年海外協力隊デザイン隊員としてアフリカへ。帰国後、外資系ラグジュアリーブランドのマーケティングに携わる傍らプロボノとしてHASUNAの立ち上げに参加。2012年2月に株式会社andu ametを設立。世界最高峰の羊皮エチオピアンシープスキンを贅沢に使用したエシカル×リュクスなレザー製品を製造・販売する。
andu amet:www.anduamet.com

三原寛子(みはら・ひろこ)南風食堂主宰
東京出身。日本大学芸術学部で出会った小岩里佳さんとともに、ケータリングユニットを結成。アートブックや書籍を製作する後藤繁雄事務所を経て、「ap bank」の立ち上げに携わる。現在は、より良い「食」の場のプロデュースを目指し、ケータリングや企画提案、雑誌や WEBで のレシピ紹介などを行う。
南風食堂:www.nanpushokudo.com

末吉里花(すえよし・りか)フリーアナウンサー
フリーアナウンサーとして、テレビやラジオ、イベントの司会などを務める。『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界中を取材。環境問題やフェアトレードの取り組みにおいて精力的に活動中。1% for the Planetのアンバサダーを務める。

谷口けい(たにぐち・けい)アルパインクライマー
08年、インド・カメット南東壁を平出和也氏と初登はんし、『ピオレ・ドール賞(金のピッケル)』を日本人登山家として初の受賞。日本を代表する女性クライマーとして、パタゴニアのアルパインクライミング・アンバサダーを務める。

パタゴニア
寺倉聡子(てらくら・さとこ)パタゴニア日本支社マーケティング部
松宮 愛(まつみや・あい)パタゴニア東京・ゲートシティ 大崎スタッフ
パタゴニア:www.patagonia.com/japan

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writer ライターリスト

柿原 優紀

柿原 優紀

柿原優紀(Yuki KAKIHARA)。エディター・プランナー。Glasgow School of Artを経て、京都精華大学芸術学部卒業。いくつかの出版社に勤務後、フリーランスとして活動。2011年10月にtaraxacum companyを設立。旅や食、地域文化、途上国支援を得意分野としてメディアプランニングや執筆を行う。また、「青空の下でウエディングをしよう!」をテーマにしたプロジェクトHappy Outdoor Wedding(H.O.W)も運営中。 taraxacum company http://www.taraxacum.co/ H.O.W http://www.happy-outdoor-wedding.com/ Twitter @yuukiburg

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