一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

”七色のマメ”が大阪と東北をつなぐ!納豆の魅力を伝え、納豆のイメージを変える「710TVプロシェクト」

こちらの記事はNPOのソーシャルメディア活用を支援するプロボノユニット「テントセン」によって寄稿されています。

DSC_0501
カラフル納豆

「おもしろいことを本気でやろう!」その一念で、3人の男たちが大阪で始めたのが、納豆の魅力を面白く自由気ままに伝える「710TVプロシェクト」です。

きっかけは「納豆なんてよー食うわ、腐ってるで」と納豆を嫌っていた友人の一言。「あいつに納豆を食べさせてやる!納豆のイメージを変えたい!」という思いから、3年前に始まりました。

大阪では、納豆は野球の巨人みたいなもんなんです。本当は好きな人がたくさんいるのに、変な圧力があって言い出せない。そんな状況を変えたかった
。

プロジェクトメンバーの一人、石川武志さんはそう語ります。最初に手をつけたのは、納豆の魅力を配信するUstream番組。料理研究家をゲストに呼んで納豆料理教室を放送したり、納豆トークをしたり、テーマソングを作ったりと手広くやったそうです。


710TVlogo


3.11がスイッチを入れてくれた

とはいえ本業ではないので、基本は休日やスキマ時間に活動し、当初はサークルのような雰囲気だったようです。そんなときに直面したのが、3.11の大震災。「このままでいいのだろうか」と改めて自分たちの活動を見直したといいます。

何か自分たちにできることがないかと、アイデアを出し合いました。それで見つけたのが、僕たちのいる大阪府“福島”区から、気仙沼が710(ナットー)kmの位置にあるという事実と、復興支援のための諦めない納豆「ネバー(粘ー)ギブアップ納豆」というアイデアです。そのとき、東北にむけたプロジェクトをやろうと決心しました。

“福島”、“710(ナットー)”、“ネバー(粘ー)”と、やたら語呂を大事にする石川さんたちのチーム。ふざけているわけではなく「これがぼくらの、関西人のやり方なんです」とのこと。まだまだ納豆をめぐる語呂合わせは続きます。


食べたマメーをマネーにする「カラフル納豆」

mametomoney

「納豆を作って売って食べて、東北の力になろう!ネバネバギブアップや!」そんな意気込みとともに、関西での納豆の悪いイメージをこわし、さらに納豆の故郷、東北の力にもなれるような「ネバーギブアップ納豆」をつくるプロジェクトは動き出しました。そのなかで、ひとつの案に過ぎなかった「カラフルな納豆」というアイデアが「七色の納豆」へと昇華されました。七色というのは、大豆・うずら豆・青大豆・黒大豆・赤大豆・えんどう豆の7種類。

「これでいける。日本だけじゃない、世界七大陸をつなぐ納豆だね」なんて冗談を飛ばしながら、作ってくれる人を探し始めたといいます。石川さんたちは、七色の納豆プロジェクトをたくさんの納豆業者に売りこんでいきました。ところが、一見すれば社会人が本業の合間にやっている、ただのヘンテコなプロジェクト。アイデアの斬新さ、採算性の低さもあって、しばらくはどこも真剣に取りあってもらえませんでした。

そんなとき、Twitterでつながったのが「小杉食品」という三重県にある中小納豆企業。石川さんたちはDMで約束をとりつけ、急いで企画書をもっていき、すぐに「一緒にやっていこう」とタッグを組むことができました。

小杉食品の小杉社長には「東北のためになにかしたい、でも自分たちが納豆送っても焼け石に水。なにもできなくて歯がゆかった」という憤りがあったそうです。そこからプロジェクトは一気に加速。石川さんたちのアイデアと小杉食品の技術力、そしてお互いに共通した納豆愛と東北への想いがあって、史上初のカラフル納豆はなんと製作期間3ヶ月で出来上がりました。

実際に恐るおそる食べてみましたが、驚くほど美味しいんです!7種類のマメが口の中で心地良い食感のリズムを生んでくれます。味も複雑で濃くて、咀嚼するのが楽しい納豆なのです。

七色の納豆がつくるソイシャルナットワークとナットホームな空間

完成した七色のカラフル納豆を携え、石川さんたちは2011年7月10日(ナットーの日)に、 商品発表会を大阪アメリカ村のカフェで開催。その後、一週間で1000食を売り上げました。

そこから1年、大阪のスーパー店舗での営業や被災地にとどける活動などを行い、石川さんたちが翌年の7月10日に満を持して仕掛けたのが、大阪府福島区でやるバル「福島ネバル」です。

福島ネバルの様子。1番左が、取材に応じてくれた石川さん
一番左が、取材に応じてくれた石川さん

福島ネバルでは福島区の飲食店31店舗が、7月10日のためだけに、カラフル納豆を作ったオリジナル料理を出します。そしてそれが1食売れるたびに、東北への100円の寄付金となるんです。この試みは福島区の人に受け入れられ、納豆アウェーの大阪でも大盛況!

福島ネバルのFacebookページにその楽しそうな様子がまとまっています。大阪人は納豆嫌い、というのはただのステレオタイプなんだと思い知らされました。特にカラフル納豆磯辺揚げは本当においしそうです。

ちなみに、この七色のカラフル納豆によって集めた現在までの募金総額は、154,310円。額は小さいかもしれませんが、本業の合間でもこれだけの商品を生み出し、実際に東北にお金を送る仕組みをつくったことは大成功といえるでしょう。なによりこの納豆によって地域の人たちがまとまって盛りあがり、東北を意識するきっかけにもなった成果はお金の価値に代えられません。

soycialnattowork

石川さん自身も、確かな手応えがあるといいます。

みんなで食べるのって、いいですよね。すごくアットホームな感じがして。ぼくらのカラフル納豆がさらにそれを盛り上げてもっと楽しくなるから、ぼくらは”ナットホームな空間”って呼んでるんです。

710TVチームは、これからもまたまだ仕掛けていくとのこと。特に7月10日には注目です。震災から2年経った今年も「福島ネバル」をやろうと、チームも地域も、新しい試みを考えている真っ最中だそうで、楽しみですね!

(Text:テントセン小川未来)