ISSUE☆おすすめの連載! マイプロSHOWCASE関西編 with 大阪ガス

3 years ago - 2013.04.04

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全ての生き物に捧ぐ! おいしくヘルシーな鹿料理でマルチソリューションを生み出す「愛deer料理教室」

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特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

野生の鹿肉と聞いて、みなさんはどんなイメージをもたれるでしょうか? 固そう、癖がありそう、おいしくなさそう、中には「鹿を食べるなんてかわいそう」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

でも、もしも鹿肉がやわらかくて、おいしくてヘルシーで、食べることが森林保全や獣害対策などになって、ひいては鹿自体も守ることになるとしたら? 今回は、そんな“鹿肉食”を広めることでさまざまな社会課題解決を目指す「愛deer料理教室」をご紹介します。

鹿によって崩れ始めている“生物多様性”のバランス

「生物多様性」という言葉をご存知でしょうか。生物多様性とは、簡単に言えば生きもの同士のつながりのこと。地球には動物・植物・菌などさまざまな生物が存在しますが、どれもが他の生物と関わり合いながら生きており、単体では生きていくことができません。

その生物多様性のバランスが崩れると、地球全体でさまざまな影響が出ると考えられています。今回の舞台の兵庫県でも“鹿”が増え過ぎたことにより森林破壊が進み、山が荒廃。食べ物がなくなり、他の生き物の数が減少したり、鹿自体も小型化するなどの影響が出始めています。

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赤い色が濃いところほど鹿が多く生息しています(提供:兵庫県森林動物研究センター)

料理教室で鹿肉の“価値”を広める

対策として、兵庫県は県内に生息する鹿、約15万頭のうち年間3万5千頭を捕獲しているのですが、捕獲後どうしているかというと、そのほとんどが“廃棄処分”。ただのゴミとして捨てられているのです。この事実に林真理さんは大きな衝撃を受け、料理を通じて問題に取り組んでいこうと数年前に決意。昨年一月に鹿肉料理を専門とした「愛deer料理教室」を本格スタートさせました。

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宝塚のラボにて。代表の林真理さんはフードコーディネーター・野菜ソムリエでもあります

良い食べ物には三つの条件があるんですね。栄養があること、おいしいこと、そして安全であることです。鹿肉は脂質が少なくタンパク質と鉄分が豊富で、とってもヘルシー。適切に処理・熟成されたお肉を適切に調理すれば、すごくおいしくいただけます。

そして、野生動物は病気を持っていると言う人もいますが、そんなことはないんですよ。専門家によると、野生動物が病気をしたら死んでしまうので、山を走り回っている鹿が病気を持っていることはほとんどないそうです。

だからむしろ、自然の食べ物を食べている野生動物のほうがアレルゲンも低く安全なんですね。この三つが揃っていて、欧米ではジビエとして親しまれる非常に価値の高い鹿肉が、日本では無用な“廃棄物”として処理されている。このギャップは衝撃的でしたね。

林さんは現在、「兵庫県森林動物研究センター」で野生動物の研究をされている横山先生と協力して、兵庫県各地で料理教室を開催。鹿肉の食べ方を紹介するとともに、鹿を取り巻く現状と食物としての有用性を伝えたり、兵庫県立大学で食品と栄養の価値を研究されている吉村先生を加えて鹿肉を調査し、データ化するなどの活動を行っています。

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3月に宝塚の公民館で行われた兵庫県主催の無料の料理教室。講師は林さん

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子どもたちもたくさん参加していました

分かるようで分からない“鹿のデータ化”。どんな方法で、どんな目的があるのでしょうか? 横山先生に伺いました。

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鹿肉調査中。あれこれ言いながら楽しく作業が進められました

野生の鹿肉って、実はデータがまったくないんですね。だから、たまたま処理の仕方が悪いお肉を誰かが食べて、「その部位はまずいよ」と言ったらもうそうなってしまうんですよ。行政も、何か聞かれても基準がないので答えられませんし、商品を作りたくても情報がないので難しい。だから今後、鹿肉食を広めていこうと思ったらいろんな条件下で徹底的に調べ、データにしておく必要があるんです。

例えば今日でいうと、同じ水量で、同じ時間、さまざまな部位の鹿肉を同じサイズに切っていくつかの調理法で処理し、その縮小率や食味をデータとして残します。地味でしょ? でも、いずれ必ず役に立ちます。

鹿肉活用のアイデアがもたらすもの

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さまざまな部位の鹿肉たち。ほとんどが赤身で脂肪が見当たりません

「増え過ぎて駆除されている鹿をきちんとおいしくいただこう」。この林さんのシンプルなアイデアが広まった先には、いったいどんな可能性があるのでしょうか? 林さんは次のように話します。

まず、鹿の数を調整することが鹿を含む森林の生物多様性を守ることにつながり、鹿による農作物被害を減らすことにもつながります。ヘルシーで安全な食事が私たちの食環境を整えてくれますし、食料自給率にも貢献できますよね。

フレンチのレストランなどで食べられている鹿は主に北海道のエゾシカなのですが、地元に近い場所の鹿を活用できれば、フードマイレージ(食べ物を運ぶ距離)を縮められるので二酸化炭素の削減にもつながる。農村地域に残されている鹿食文化に光を当てるような活動ができれば、地域の活性化にもつなげていけるかもしれない。

マルチソリューション、つまりいろんな問題解決の糸口、あるいはそういう問題があることを気づかせてくれる重要な社会的ファクターだと思います。

鹿のポジショニングを変えたい

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パーティで振る舞われた鹿肉のカナッペ

戦後まで、日本には鹿肉をもみじ肉と呼び、食べる文化がありました。しかし、獲り過ぎたことで鹿は絶滅寸前となり、政府が保護政策を実施。これがなんと平成19年まで続けられていたというのですから、鹿が増え過ぎたのもうなずけます。そしてこの間、大切な“鹿肉を食べる食文化”が失われてしまいました。

困ったことに、食文化が途絶え、食べ方が分からなくなった鹿は“まずいもの”、ひどい場合は“ゲテモノ”と言われる位置づけになってしまいました。私は、鹿肉・鹿料理のポジショニングを変え、食文化として改めて広めていきたいと思っています。

「どうして捨てる肉を使うんですか?」という人がやっぱりいるんですよ。その認識を“価値のある肉”に変えていきたい。そのために、パーティ料理であるとか、家庭でできる料理であるとか、都市部、農村部それぞれが受け入れやすい形でプロモーションをしていくつもりです。

ブームで終わってしまっては意味がない。地元で食べ継いでいってもらえるようなアプローチをしていきたいと思います。

次々と出会う、同じ問題意識を持った仲間たち

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左から愛deer料理教室スタッフの岡田さん、林さん、吉村先生、横山先生

林さんが鹿を意識したのは今から4年ほど前のこと。野菜ソムリエの資格を取得し、専門性をもちたいと考えて購読した日本農業新聞の記事がきっかけでした。

毎日、鹿のことが紙面に載っていたんですね。鹿が増えているとか、どこどこでこんな被害があったとか、トラップを開発したとか…。鹿肉を国内外で食べておいしさを知っていたこともあってピンときて、鹿肉料理を人が集まるところやパーティなどで出してみたんです。最初はみなさん「なにこれ?」というような反応だったんですが、「食べてみたら結構いけるね!」といった声が多くて、これならやっていけるかなと。初めは料理教室のひとつのテーマくらいに思っていたんですけどね。

鹿料理をやっていると言い始めたら、横山先生や吉村先生に出会って、そのほかにも同じ問題意識を持った人や、鹿に興味を持ってくれる人との縁がどんどん広がり、ここ1年くらいであっという間にメインになりました。

立場の違う人と話し、否定的な意見も尊重する

最後に、林さんが大切にしていることをお聞きすると「鹿肉を食べない人となるべく話をすること」という答えが返ってきました。それはなぜなのでしょう?

料理教室に来てくれる人は私の料理に好感を持ってくれている人ですよね。でも、鹿肉食を広めたいんだったらもっと攻めなきゃいけないと思って、マルシェに出店するんです。こういうときに“ゲテモノ屋”って言われちゃったりするんですけど、そういうことを言う人がいることを知っておく。なぜ食べないのか、違う人の意見を聞いて、自分を見失わないようにする。その作業がとても重要だと私は思っています。

答えはひとつじゃありませんし、強要するのではなく尊重したい。食べたい人が食べてくれたらそれでいいんですね。この活動は世界を変えようと思って始めたことではないけれど、大切に育てていきたい。今はそんな風に思っています。明日も平和に安全に、価値ある命である食べ物が、多くの人に無駄なく届きますように。

今、鹿によって山々の荒廃はものすごい速度で進んでいます。鹿が増え過ぎたのは人間の身勝手な行いのせいなのに、その鹿をまた殺すのか! という声もあるかもしれません。でも現実に、捕食者にならなければ鹿も山も守れない。過去にこだわるのでなく、「今と未来」を見てすべきことがある。林さんはそのことに気がついて、このプロジェクトを始めたのだと思います。悲観的な出来事でも、見方を変えてプラスにできることがたくさんあるはずです。あなたのまわりにも、価値があるのに見過ごされてしまっているもの、ありませんか?

林さんに、家庭でできる鹿肉レシピを教えていただきました。鹿肉を扱う場合、どこで買うのかはとても重要。丹波姫もみじさんの鹿肉は兵庫県から認証食品の認定を受けた衛生的で安心・安全なお肉なのでおすすめだそうです。鹿を獲ることはできないけれど、ひとまず食べることから始めてみてはいかがでしょうか。

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鹿ハムのサラダ 新玉ねぎのとろとろドレッシング

材料(4人分)
鹿肉 400g
塩 小さじ1/2
赤ワイン 400cc
水(好みで) 200〜400cc
こしょう・ジュニパーベリー(あれば) 各6粒
レタス類・イタリアンパセリなど 適量

<ドレッシング>
新玉ねぎ(大) 1個
醤油 大さじ2
砂糖 大さじ1
白ワイン 大さじ1
酢 小さじ2

作り方

<鹿ハム>
①鹿肉にフォークでざっと穴をあける。塩(小さじ1/2)を擦り込んで数時間おく。
②①の水分をキッチンペーパーでとり、炊飯器の内釜に入れて赤ワイン・水・コショウ・ジュニパーベリーをいれる。鹿肉が水分につかっているようにする。つかっていなければ、赤ワインと水を適量足す。
③ふたをして保温ボタンを押す。機種によるが40分程度で40℃前後になる。
④1時間30分ぐらいで70℃近くになる。あれば温度計を刺して内部が65℃以上になっていれば、肉を取り出す。
⑤常温まで冷めたら、5mm幅程度に切り分ける。

※保温時間は肉の大きさや好みにより加減する。1時間10分でレアに。
※煮汁は鹿のアクがでているので再利用にはおすすめしません。

<ドレッシング>
①皮をむいた玉ねぎを縦半分に切る。繊維を切るように、輪切りの薄切りにする。
②醤油・砂糖・白ワイン・酢を鍋に入れて火にかけ、①を入れ、しんなりするまで煮る。
③別の皿にとって冷まし、レタスや鹿肉と一緒に盛り付ける。

(Text:赤司研介)

赤司研介(Akashi Kensuke)
1981年生まれ。熊本出身の神奈川育ち。奈良県在住。
広告制作会社でライター経験を積んだ後、フリーライターとして活動。現在は西日本最大級の生産力を誇る大阪八尾の印刷会社「株式会社シーズクリエイト」CSR室に所属。
“生物多様性”“地域活性”“中小企業支援”をキーワードに、これからの社会に必要な“しくみ”と“人の居場所”をつくる活動に取り組む。奈良県の観光産業を盛り上げるバイリンガルフリーペーパー「naranara」副編集長。

鹿肉パーティに行ってみよう!
2013年4月23日(火)19:30〜 参加費4000円 ※要申込

writer ライターリスト

赤司 研介

赤司 研介

greenzシニアライター SlowCulture代表/編集者 1981年生まれ、神奈川県出身。東京の広告制作会社でキャリアを積み、2012年、奈良東部の農村地に移住。2児の父。「自然である健やかな選択」をする人が増えていくための編集・執筆に取り組む。奈良の物事を日英バイリンガルで編集するフリーペーパー「naranara」編集長。「NPO法人ミラツク」研究員。「京都市ソーシャルイノベーション研究所 SILK」ライター・エディターとしても活動中。

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大阪ガス

大阪ガスは、関西エリアの「マイプロジェクト」=「ソーシャルデザインの担い手」たちを一緒に応援しています。 「マイプロジェクト」は、私たちにとっては大切な未来のステークホルダーであり、関西のコミュニティをともに元気づけてくれるパートナー。そんな“金の卵”とも言うべき彼らを、関西のインフラを支える私たちだからこそできる方法でサポートしたいと思っています。 ⇒ マイプロSHOWCASE関西編「大阪ガス×グリーンズ」座談会!大阪ガスグループ社会貢献活動 Facebookページ

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