ISSUE ものづくり

3 years ago - 2013.03.29

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職人の技術に自分の体験を加えて、世界にひとつだけのモノを手に入れる「にっぽん てならい堂」

職人

手のひらに馴染むマグカップ、長年使っていい感じに味が出て来た通勤鞄。お気に入りのモノに囲まれた暮らしって素敵ですよね。

でも、実はその製品の背景に、革新を積み重ねてきた職人たちの歴史や、地域に深く根ざしたストーリーがあるとしたら。それを知ることで、身のまわりの製品がもっと愛おしく、生活がより豊かになる気がしませんか?

2月にオープンした「にっぽん てならい堂」は、そんな暮らしを身近にしてくれるオンラインショップです。

“体験”つきの“モノ”を販売する

てならい堂
http://www.tenaraido.jp/

てならい堂のコンセプトは、「日本全国のモノづくりを体験するコトを集めた、新しいセレクトショップ」。サイトには「モダンで人気の有田焼のお茶碗を自分色にカスタマイズ」「美濃の酒器。窯元と蔵元の見学&試し飲み体験」など素敵な体験が並んでいます。

商品だけ、体験だけなら他にも似たようなサービスはありそうですが、てならい堂の面白いところは“体験つきの商品”を販売しているところ。

たとえば有田焼を選んだら、購入した人は自力で佐賀県の有田へ。200年の歴史を持つ「有田製窯株式会社」で有田焼の生産工程を見学し、工程の一部(絵付け又は釉掛け)を体験。職人さんの技術と自分の手作業が重なった、世界に一つだけのお茶碗ができるというわけです。毎日ごはんをよそるのが楽しくなりそうですね。

日本のものづくりを応援したい

中村真一郎

このサービスを始めた「合同会社 続(つづく)」の中村真一郎さんは、暮らしに関わる選りすぐりのアイテムを販売するネットショップ「All About スタイルストア」の元店長。47都道府県を巡って伝統工芸の職人さんやものづくりに携わる方々に会ううちに、ものづくりの魅力と課題の両方を知ったといいます。

現場で話を聞くと、右から左にモノが売れていた時代が終わって、どこも苦戦していました。でも、今の担い手たちは、何十年何百年も続いてきたものを後世に残そうと、闘おうとしている。しかも、自分の製品だけ売れればいいという考えではなく、地域全体を盛り上げようとしている方ばかりでした。その姿がすごくかっこよくて、「応援したい」と思いました。

一方で、作り手の人に会い、「こうやって作っているんだ」とその背景を知ると、その製品がほしくなるんですよね。家で使っていても、愛着があるから大事にするんです。こういうのを求めている人はきっといるにちがいないと感じました。実際、スタッフからよく「私も行きたい!」と言われて。もっとモノづくりの現場に行くこと、体験することを身近にしたいと考えました。

「地域に人を呼びたい」という若旦那たちの声と、「現場に行きたい」という周囲の声。それまで見聞きしてきたこと、考えていたことが自然とつながり、てならい堂のアイデアが浮かんだと中村さんは振り返ります。

ネットショップが増えて価格とスピードの競争になってきたことも、気になっていました。僕はその方向に、ワクワクしなかったんですよね。だから、その真逆を行こうと。ネットショップって便利でしょう。家で商品を選んで家に届く。てならい堂の商品は届かないんです。現地にわざわざ取りにいかないといけない、究極に不便なネットショップをつくろうと思いました。

ネットショップなら仕事で培ったノウハウやスキルがあり、自分が取り組む意義がある。そう考えた中村さんは、企画書を作り、お世話になった方々の元へ。「売れるかどうかわかりませんが…」とおっかなびっくりの提案でしたが、職人さんたちは「大事なことだし、必要なことだと思う」「結果はともかくやってみましょう」と背中を押してくれたといいます。

想いが込められたモノに囲まれて暮らす

MAITO蔵前

3月はじめ、てならい堂初の商品が販売されました。草木染めの染色工房「MAITO蔵前 WORK&SHOP」で天然素材のストールを桜染めする体験です。初回にも関わらず、想定していた人数より多い13名の方が参加してくれました。

桜染めの原液は、花の咲く前のつぼみのついた小枝を集めて小さく切り、40日にわたって煮出して冷まし、熟成することでようやく出来上がります。その原液も、染める素材や温度・湿度によって仕上がりの色が変わるので、一定の色を出すには職人の熟練した技が必要。状況に応じ、時には時機を待って。生き物と対峙するような作業です。

店長のMAITOさんが桜染めについて熱く語ると、参加者たちは、「この軽やかな桜色が出るまでにこんなに時間がかけられていたなんて」と感嘆。実際に手を動かしてストールが桜色に染め上がると、とても嬉しそうにしていました。

中村さんはその様子を見て、この事業が間違っていないことを確信したそうです。

桜染め

ぼくたちの世代は、“大量に買って大量に捨てる”ことにストレスを感じる人が多い気がします。それよりも、自分がいいなと思ったモノを長く使っていくのが心地よいと感じるんですよね。ぼくが見てきた現場には、そういった要望に応えられる、太くて深いストーリーを持ったモノがたくさんありました。

それを一番語れるのはやっぱり作っているひと本人なんですが、職人さんは自分で発信するのが苦手だったりします。でも、現場に行って聞くと快く話してくれるんですよね。というか、止まらない。帰してくれない(笑)。みなさん、自分の仕事に熱い気持ちを持っていますから。

そういう人の話を聞いて、一緒に手を動かして、想いがたっぷり注がれたモノを家に持って買って、大事に使う。そういうのって、やっぱりいいなと思います。

てならい堂を47都道府県に

¥002

てならい堂の当面の目標は、全国制覇。全県に少なくとも一つずつ商品があり、「てならい堂のサイトを見れば、今まで知らなかった素敵なモノと体験に出会える」という状況をつくりたいそうです。

そのために必要なのは、全国各地のパートナー。「やりたい」という職人さんや企業の方がいれば、一緒に企画を考えていきたいとのこと。企画料はとらず、売上のみをシェアする形をとっているので、興味のある方は問い合わせてみてはいかがでしょうか。

最後に、「グリーンズ読者に向けて、何かメッセージはありますか?」と問うと、中村さんは「…どうですか?と聞きたいですね」と話していました。

ぼくが考えていること、やっていることがみなさんに受け入れられるか、ピンとくるのかどうか、聞いてみたい。先月サイトをリリースしたばかりでまだまだこれから。みなさんの意見を取り入れながらよりよいものにしていきたいと思っています。

ものづくりの背景にある物語を知り、そこに自分の“体験”を加えて世界にひとつだけのモノを手に入れる。そんなてならい堂のコンセプト、読者のみなさんはどう感じましたか?

「共感した!」という方、「もっとこうしたらいいんじゃない?」というアドバイスがある方はぜひ、てならい堂のFacebookページに投稿してみてくださいね。

てならい堂で新しい体験をしよう
「にっぽん てならい堂」ウェブサイトFacebookページ

writer ライターリスト

hidaemi

hidaemi

greenz.jpエディター/ライター 1984年2月29日生まれ。茨城出身、神奈川在住。 「地域」「自然」「生きかた・働きかた」をテーマに、書くことや企画することを生業としています。虹を見つけて指さすように、この世界の素敵なものを紹介したい。 HP:http://www.cotohogu.com/ blog:http://himaemi.blog.jp/ twitter:@emi229「東北マニュファクチュール・ストーリー」というサイトを、一般社団法人つむぎやと一緒に運営しています。 ・日本橋のシェアオフィスにて、気ままなごはん会「6階食堂パルプンテ」を開催。日によって美味しさにばらつきがある、適当な会です。

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