ISSUE エネルギー

3 years ago - 2013.03.19

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次世代スマホ充電器のカギはH2!
ついに登場、ポータブルなR水素充電グッズ

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朝たっぷり充電してきたのに、移動中にメールやニュースのチェックをしていたら、もうバッテリーが半分!スマートフォンが普及して、いつも出先で電池残量を気にしている方も少なくないのでは?

ちょうど電池消耗の早さに困っていたとき、水素展(FC EXPO 2013)の会場で、「劣化しない上に1回充てんすれば2,3回はスマホをフル充電できる」という商品に出会いました。充てんするのは水素。これまでのリチウムイオン電池の充電器とは、まるで仕組みが違います。

今、私たちが使っているエネルギーは、化石燃料由来の電気にしても、直接燃やすガソリンや灯油にしても、消費とともにCO2を放出するものばかり。一方、水素は、エネルギーとして活用しても水しか出てきません。気候変動の不気味さを肌身に感じる今日このごろ、まったく炭素を含まないエネルギー源として、水素への期待は高まるばかりです。一体どんな充電器なのでしょうか。

衰えない水素のチカラ

その充電器と出会ったのは、「ホライゾンフュエルセルジャパン」(静岡県袋井市)の出展スペースでした。シンガポールに本社を置く燃料電池メーカーHorizon社が2012年に発売した「ハイドロフィル」や「ミニパック」という製品を、日本の高圧ガス保安法に準拠した国内仕様にして紹介していました。

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USB接続でスマホや各種端末の充電に使える「ミニパック」は、手のひらサイズの黒い箱です。そこに「ハイドロスティック」と呼ばれる水色の超小型水素ボンベが装着されています。ボンベといっても見た目は乾電池にそっくり。中身は水素吸蔵合金で、10リットルもの水素が入ります。

可逆的な化学反応で水素を吸着しているので、ただ物理的に閉じ込めたのと異なり漏れる心配がありません。水素を吸ったり吐いたり、ほぼ無制限に何回でも出し入れできるといいます。

合金が錆びれば劣化しますが、少しでも水素が入っていれば高圧なので空気は中に入れません。自然放電する電池と違って、質を落とさず長期保管できるのです。イザというとき即座に使えるため、水素吸蔵合金は災害時用の発電器(写真)にも使われています。何十年寝かせても変化しない「電気のモト」なんて、画期的ですよね!

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水素が自販機で買える時代が来る?!

ハイドロスティックは、そのままでは単なる「水素の缶詰」のようなもの。ミニパックに装着して初めて、電気を生み出します。ミニパックの正体は、小さいながら「燃料電池」なのです。

簡単な化学式で表わされるように、水素(H2)と酸素(O2)が結合すると水(H2O)になります。この化学反応に伴って電気が発生します。満タンのハイドロスティック1本で、水しか出ないクリーンな発電をして、スマホを2回以上フル充電できるというわけです。

コンビニでも手に入る一般的な充電器の電源は、長持ちしない二次電池や使い捨ての乾電池です。ハイドロスティックのような製品が店頭に並ぶようになれば、充電事情はガラリと変わりそうです。

ここで問題になるのは、詰める水素の種類です。水素は自然界に単体では存在しないため、人工的に作るしかありません。北九州のように、近隣の工場から出る副生水素をパイプラインで家庭に引ける地域もあるし、水素ボンベを個人でリースして自宅に置くツワモノもいるそうですが、これは例外です。

身の回りにたくさんあって簡単に手に入る水素のモトと言えば、やはり「水」でしょう。家庭向けに開発された同社の「ハイドロフィル」も、水から水素を取り出す装置です。エネファームのように大がかりなものではなく、簡単に持ち運べてテーブルにのるフレンドリーな水素発生器です。価格は10万円を超え、まだフレンドリーではありませんが……。

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装置に水をセットすると、懐かしい理科実験と同じ「水の電気分解」が進行します。水道水や雨水も使えれば有難いのですが、不純物がたまるので動作保証無しとのこと。メーカーが推奨するのは、ドラッグストアなどで手に入る「精製水」です。

電気を使って水を水素と酸素に分解し、理論上は水の容量の1000倍以上の水素(気体)が取り出せます。差し込み口にセットしたハイドロスティックを、約4時間かけて10リットルの水素で満たします。

そのうち、空ボトルとお金を入れると水素充填済みのボトルがポン!と出てくるような自動販売機が巷に出現するかもしれません。そうなれば、個人で水素をつくる手間はなくなるでしょう。

どんな電気で水素をつくる?

さて、ここで再び別の疑問が頭をもたげます。電気を得るのに水素を使う。その水素を得るのに電気を使う。あれ?堂々巡りじゃないの?――そうです。確かにハイドロフィルのプラグを壁のコンセントに差し込んでしまえば、消費するのは化石燃料や原子力由来の持続不可能な電気です。

ポイントは、水の分解に使う電気なのです。国際NGO「R水素ネットワーク」は「R水素」を、「水の中にある水素と再生可能エネルギーをマッチングさせる、持続可能なエネルギーのかたち」と定義しています。使い切れない余った自然エネルギーで水を電気分解して水素を作り、それを活用するのであれば、R水素の理念に合致します。

R水素ネットワークが掲げる理念はそれだけではありませんが、「エネルギーを蓄えて、コントロールしにくい太陽や風の力を安定的に無駄なく使えるようにする」という目的だけ見れば、R水素と蓄電池の役割は似ています。

先に普及したリチウムイオン電池は安く軽く便利になり、最近はスマホのフル充電を3,4回できる商品まで出回っています。一方、発売されて間もない水素の充電器は、まだこなれていません。しかも国内で買える「ミニパック」は、日本の規制に合わせるために海外仕様よりパワーダウンしてあります。

では、この製品の魅力って?――それはやはり、水しか出ないクリーンな発電を何回でも繰り返せる点にあるのではないでしょうか。「ハイドロフィル」をソーラーパネルにつないで使えば、水素を作ってためて出先で発電する過程で、いっさいCO2は出ません。「ハイドロスティック」は耐久性が自慢で、消費するのは水だけです。おまけに、発電中の「ミニパック」はほかほかと温かく、カイロ代わりに使えば排熱も無駄になりません。

エネルギーの過渡期を迎え、水素を作って持ち歩く今までにないライフスタイルが、にわかに現実味を帯びてきました。よりクリーンなエネルギーを求める人が増えれば、過剰な法規制の見直しも進んで、水素グッズの開発は大きく飛躍するのではないでしょうか。

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ミニパックにUSBのLEDライトを付ければ懐中電灯にも

(Text:瀬戸内 千代)

writer ライターリスト

瀬戸内千代

瀬戸内千代

greenz シニアライター 東京生まれ。両親の故郷で瀬戸内海に親しみ海洋動物生態学者を志すも理系文系の橋渡しに興味が移り出版業界へ。2007年からフリーランスの環境ライターとして書籍・雑誌、ウェブに執筆している。プロフィール画像は伊豆下田でスケッチしたムラサキクルマナマコ。

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R水素は、水の中にある水素をパートナーにすることで再生可能エネルギーのポテンシャルを高める、持続可能なエネルギーのかたちです。 NPO法人R水素ネットワークの公式ウェブサイトはこちら

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