ISSUE 環境

3 years ago - 2013.03.17

SHARES  

人類5万年の進歩の先にあるものは…?壮大なスケールで未来を問う映画『サバイビング・プログレス』

8370032766_4f792e5df5

私たち人類は、さまざまな病気を克服し、世界中とつながり、宇宙にまで手を伸ばすようになりました。しかしその一方で、環境破壊、紛争、貧困などは止まることなく、私たちの文明はいまや危機的な状況にあります。果たして人類の歴史は、進歩の歴史だったと言えるのでしょうか。そしてその先には何が待っているのでしょうか。

3月26日からロードショー公開される映画『サバイビング・プログレス―進歩の罠』は、21世紀に生きる人類とその文明が抱える問題を浮き彫りにし、解決への糸口を探ろうとするドキュメンタリーです。

映画は、実験室にいるチンパンジーの親子の映像から始まります。そして、5万年にわたってさまざまな文明を興しては壊してきた人類の歴史を振り返りながら、矛盾を抱える現代社会のリアルな映像と、知識人たちのインタビューを織り交ぜ、いま私たちの文明が抱える問題を解決する糸口を探るという内容になっています。

8370032190_40306aa152

ベストセラーとなった本『暴走する文明-「進歩の罠」に落ちた人類のゆくえ』の著者である、ロナルド・ライト氏をナビゲーターに、生々しい環境破壊の現場、そして映画監督や霊長類学者、物理学者、環境活動家、経済学者などが語る未来が畳み掛けるように飛び込んでくる映像表現は圧巻です。

バックアップ用の地球は存在しない

古代から人類は豊かさや便利さを追求し続けてきました。狩猟時代からそのままの本能は止めどもない発展を求め、自然の富を奪い、いくつもの文明が滅びて行きました。これがこの映画で言うところの「進歩の罠」です。

グローバル化が進むまでは、ひとつの文明が滅んでも、また別のところで新たな文明を興すことができましたが、交通と通信の発達で地球全体がひとつになった今、文明の崩壊は、そのまま人類の滅亡につながりかねません。なぜなら、すぐに移り住むべき、もう一つの地球はないのですから。

8370031822_c2699cd65c

私が試写会でこの映画を観て特に印象に残っているのは、アマゾンの原生林を伐採する現地住民たちが出てくるシーンです。住民たちは、「世界の人たちが生きていくためにはアマゾンの森林から出る酸素が必要だ。でも自分たちが食べていくためには木を伐らなくてはいけない」と主張します。

貧困と環境破壊をともに解決することがとても難しいことを象徴するこのシーンは、現代の資本主義が抱える構造的な欠陥を象徴しているように思えました。そして、たくさんの人と自然の犠牲のもとに生活している先進国の人間として、より責任ある行動をしていかねば、という気持ちになりました。

これからについて、考え、語るヒント

自然の恵みを「外部経済」として計算に入れない資本主義がグローバル化によりモンスターと化し、自然と人を壊し続ける中、私たちに残された時間も希望も、どんどん少なくなってきています。

8368965417_56938e71f5

この映画には、さまざまなヒントがありますが、決定的な答えはありません。それだけに、一人ひとりが深く考え、人と語り合うきっかけになるのではないかと思いました。この映画を配給するユナイテッド・ピープルでは自主上映者を募集しているので、映画を観た人たち同士での対話などをセットにした上映イベントなどを開いてみるのもいいかもしれません。

観る人に長期的な視点をもたらす映画

試写会の後は、ミュージシャンのSUGIZOさん、構成作家の谷崎テトラさん、そしてユナイテッド・ピープル代表の関根健次さんによるトークセッションが行われました。

IMG_7192

SUGIZOさんは、現代文明が忘れていることに改めて気づかされたと言います。

人類は、精神性や倫理観を進化させないまま、技術だけを進化させてしまっている。脳というハードウェアだけでなく、心というソフトウェアも、狩猟時代から変わっていないのではないか。だからほどほどということを知らないし、奪い続けることを止めない。

人は、自分ひとりのことを考えているだけでは、本当に幸せになることはできない。これからも社会的な活動を通して、みんなで幸せを共有したいです。

谷崎テトラさんは、これからの社会への希望を語られました。

たしかに、人間の脳というハードウェアは5万年変わっていない。だけど、心というソフトウェアはこれからも変えていくことができる。心はコミュニケーションと置き換えられるかもしれない。

企業、政府、市民、NGOなど、違う考えを持つ人たちが対話の方法を洗練させていけば、民主主義の意思決定プロセスは進化していくのではないだろうか。人類が地球全体を見る視点をもち、地球意識を持つようになってからまだ少ししか経っていない。まだまだ希望はある。

関根健次さんは、この映画の配給にあたっての想いを語られました。

この映画は、5万年というスケール感で語られるので、観る人に長期的な視点をもたらしてくれる。震災から2年経とうとしているけれど、どうも今の世の中は、短いスパンで物事を切り取って、場当たり的に選でしまうことが多いように思います。

間もなく7月に参院選があります。その前に、多くの人が長期的な視点に立って物事を選ぶきっかけとしてこの映画を届けたいと思いました。今年から国連が3月20日を「世界ハッピーデイ」と定めます。これは、これまで経済一本できたように見える社会から、幸せ、倫理観が中心となる社会にしていくんだという決意だと思います。そのためには何より、私たち一人ひとりが長期的な視点に立って、次の世代のために何を残せるかという問いかけをしていくことが重要です。

映画というと、現実を忘れるための娯楽として観ることが多いかもしれませんが、より現実をシビアに見て、考えるきっかけとして、この映画『サバイビング・プログレス』を観に行ってみてはいかがでしょうか。

writer ライターリスト

丸原 孝紀

丸原 孝紀

greenz シニアライター 1976年京都生まれ。コピーライター(東京コピーライターズクラブ会員)。企業に社会貢献型のコミュニケーションを提案するとともに、NGO/NPOのクリエイティブを積極的にサポートしている。社会課題を解決するアイデアを提案するプランング・ユニット「POZI」のプランナーとしても活動中。

AD

infoグリーンズからのお知らせ