ISSUE 食と農

3 years ago - 2013.01.12

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美味しいチョコレートに隠された児童労働の実態を知ってほしい。3人の女の子が奮闘するドキュメンタリー映画『バレンタイン一揆』

画像提供:映画「バレンタイン一揆」より

画像提供:映画「バレンタイン一揆」より

もうすぐバレンタインデー!というには気が早いですが、月末にはもうバレンタイン商戦真っ盛りとなるわけです。そのバレンタインの定番といえばチョコレートですが、そのバレンタインデーのチョコレートを巡る1本の映画が公開されます。高校生と大学生の3人の女の子が児童労働の実態を知るためにカカオの産地ガーナへと旅し、その経験を多くの人に伝え、フェアトレードを広めたいと奮闘する姿を追った『バレンタイン一揆』です。

特定非営利活動法人ACEのワークショップで知り合い、児童労働の実態を知るためガーナに行く事になった高校3年生の「まほちゃん」と「アリカ」、大学2年生の「こっちゃん」の3人。映画はこの3人がガーナに到着するところからはじまります。3人は現地のNPOを訪ね、ACEと現地のNPOが活動を行なっている僻地のカカオ生産へと向かいます。そこまでは車で10時間、電気も水道もないその村で彼女たちは実際に児童労働に従事していたという15歳の少年に話を聞き、その過酷な労働の一部を体験もします。そして、さらにカカオ労働者の家族や学校をたずねます。

こう書くと単なる訪問記のようですが、この映画のポイントは単に映画制作者がガーナのカカオ生産地へ行き現地の人々の姿を追ったのではなく、3人の女の子たちの訪問を追ったという点です。そもそも映画(あるいはスクリーン)というのは観客である私たちとカメラが切り取った対象との間の壁であり、同時に媒介物でもあります。

ドキュメンタリー映画の場合にとくに顕著ですが、私たちはカメラという目を通してその世界を覗き見るわけです。しかし、この映画では私たちとガーナとの間にもう一つ3人の少女という媒介物が存在します。それによってカメラという「目」は後退し、私たちは彼女たちの「目」を通してガーナを見、そこに存在する問題や希望を見ることになるのです。それが実現するのは、児童労働に従事する子どもたちにより近い目線で問題を見つめることができるということです。

彼女たちは「ガーナと日本をつなげたい」ということをたびたび口にしますが、ある意味ではこの映画に出ることですでにその役割を果たしていることになるのです。そのようにして彼女たちが実際に現地で体験したことの何分の一かを分けてもらう、それがこの映画を見ることで体験できることなのだと思いました。

画像提供:映画「バレンタイン一揆」より

画像提供:映画「バレンタイン一揆」より

映画の後半では日本に帰国してからの彼女たちの活動を追います。それが「バレンタイン一揆」という、バレンタインにフェアトレードのチョコレートを選んでもらうことで児童労働の問題を知ってもらおうという活動です。

前半に倣って映画的な視点から見ると、この後半部分では彼女たちは媒介物ではなく対象になります。私たちは彼女たち「と」対象を見るのではなく、彼女たち「を」対象として見ることになるわけです。なので、この映画は前半と後半でガラリと印象が変わりますし、映画に対して感じることも変わってくるはずです。前半部分で彼女たちに共感した人なら、後半部分では彼女たちを応援する、そんな気持ちになるのではないでしょうか。

そのようにして共感を生み、同時に見た人を行動に駆り立てるような「ソーシャル」な映画なので、多くの人に見てほしいですし、フェアトレードや児童労働という問題についての教科書的な役割も果たすことができると思うので、3人の女の子たちやガーナの子どもたちと同じ年代の人たちにもぜひ観てほしい作品です。

ただ、このような問題提起的な作品が常に抱える「その問題を知っている人にとっては説明が過剰になってしまうという」という問題を、この映画もやはり抱えています。特に「共感」を誘うはずの前半部分でナレーションによる説明が詳細すぎ、ある程度問題意識がある人には感情移入の妨げになってしまうように思えます。これはつまり「誰にどう伝えるのか」という問題なわけですが、これは映画の中で3人(特にこっちゃん)が直面する問題でもあります。

この映画のテーマは伝えること、知ってもらうこと、つなげることです。3人の女の子がそれを実現しようと奮闘している姿を映し出すことで、映画そのものもそれを実現しようと奮闘している、そんな映画なのだと思います。

『バレンタイン一揆』
http://acejapan.org/campaign/15th/
2012年/日本/64分
監督:吉村瞳
企画:並河進
製作:特定非営利活動法人ACE
2013年1月12日(土)より、渋谷アップリンクでロードショー。素敵なゲストをお招きしたトークショーも合わせて開催予定。
自主上映者募集!
ドキュメンタリー映画『バレンタイン一揆』の自主上映者を募集します。自主上映会は2013年1月19日(土)以後開催が可能となります。
※東京都内を除く。東京都内では2月2日(土)以後上映が可能となります。
自主上映会は、プロジェクターとDVDを上映出来る機材があれば、どなたでも企画可能です。学校やカフェ、会社の研修としてもお申し込み頂けます。まずはお気軽にお問い合わせください。
→詳細・申込みはユナイテッドピープルまで

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writer ライターリスト

石村 研二

greenz シニアライター 東京生まれ。大学の法学部を卒業するも、法律に向いていないことに気づき、長いモラトリアム期間を過ごしながらひたすら映画を観る。 2000年にサイト「日々是映画」を立ち上げ、書くことを仕事にすべく駄文を積み重ねる。現在、ライター/映画観察者。greenz.jp以外には六本木経済新聞、WIRED.jpなどに出没。暇なときはSFを読んで未来への希望を見出そうとし、世界は5次元だと信じている。 日々是映画-ヒビコレエイガ http://www.cinema-today.net/

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