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誰もがものづくりに触れる時代に必要な知識を。僕らの未来を変えるマシン「3Dプリンタ」ガイド本プロジェクト[CAMPFIRE]

 Some rights reserved by A. Buser

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WIRED」の元編集長クリス・アンダーソン氏著の『MAKERS』や、FabLab Japan 発起人の田中浩也氏著の『FabLife』といった書籍の登場や、また都内では「FabCafe」という、レーザーカッターが常設してあるカフェができるなど、ものづくりに対する意識や環境が高まっています。それによって、誰でも「ものづくり」ができる時代になるのでは、と言われています。これまで、製造業など限られた人たちだけが高価な機材や工具を使いハードウェアやプロダクトを作っていましたが、技術や環境が変化し、私たちの生活のあり方も少しづつ変わる可能性がでてきました。

そうした中、クラウドファンディングサービスのCAMPFIREにてスタートしたプロジェクトである「日本初!僕らの未来を変えるマシン「3Dプリンタ」ガイド本プロジェクト」が始まりました。プラスチック樹脂などで何層にも固めて立体物を作る3Dプリンタの使い方などをまとめた教科書をつくりたい、というプロジェクトです。

安く誰でも機材が使える時代だからこそ、その使い方や、どう使うか、ということも考えないといけません。そうした思いのもとに、プロジェクトをスタートした神田沙織さん。彼女に、プロジェクトの概要や、ものづくりの現場に関わる中で感じた考えや、これからのものづくりの現場について話を聞いて来ました。

3Dプリンタってなに?に答えるガイド本をつくる

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そもそも、CAMPFIREに掲載されているプロジェクトのテーマにもなっている3Dプリンタは、これまで紙の上にインクがプリントされるように、プラスチック樹脂を一層ずつ固めて積み重ねながら輪切り形状の積層で立体物を印刷(出力)するもので、立体物を印刷することから3Dプリンタと総称されています。立体を作れるという意味では、どんな形でも作ることができます。制約は造形のサイズと形状だけです。

3Dプリンタは技術の進歩と同時に機材や生成できるものも変わっていき、それまではプラスチックの樹脂のみだったのが、今では機材によってはコンクリートや食用材料、繊維など幅広いものも機材によっては出力することができます。しかし、3Dプリンタといっても紙のプリンタと同様に、値段帯や機材によって実際に出力できるものに違いもあります。なんでも作れるけど、用途や機材によって、それらの制限には幅があると言ってもいいでしょう。

まだまだ製造業やアート、映像、デザインの分野でも日々3Dプリンタの可能性について議論や実験、制作もおこなわれています。そうした意味で、発展途中の技術と言ってもいいかもしれません。

そうした中、どうやって使うのか、なにが印刷できるのかということがまだまだ理解がされない中、3Dプリンタという言葉だけが浸透している状況から、もっと一般の人にも広く知ってもらう機会を作るために、わかりやすく理解できるようなガイド本をつくりたい、ということからプロジェクトはスタートしました。

みんなの疑問を解決して3Dプリンタをもっとよく知ってもらうために、現在の3Dプリンタを取り巻く状況をまとめたいと思います。本は2冊組みで、そもそも3Dプリンタとは?といった初歩的なことや、原理、歴史など3Dプリンタついて知る「知る編」と、実際に3Dプリンタを使ってみたい人がどこで、どのように、どんな特性で使えるのかといった「使う編」の2編で構成します。

プロジェクト発案者の神田沙織さんは、今回のプロジェクトの目的について語ってもらいました。

リターンによっては、実際の生成工程に立ち会えたり、出力されたアルファベットキーホルダーなどももらえることができます。

このプロジェクトが、3Dプリンタという言葉を聞いたことはあるけれども、実際どういったものかよくわからない、使ってみたいけどどうやったら使えるのかわからない、といった人たち向けの導入となればと思います。そして、さらにこの本をきっかけに、これからのものづくりの役に立てればと思います。

ものづくりの現場の女性ならではの視点を

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プロジェクトを始めたきっかけは、昨年のMAKEカンファレンスに、3Dプリンタを自作で組み立て、出展したことでした。その際に、出展の協力をしていただいたテクノロジーやエンジニアリングについて女子高生にも楽しく伝えれるようフィールドワークや実験をおこなっている「渋谷ラボ」と一緒に、本プロジェクトを立ち上げることになりました。

しかし、そんなプロジェクト発案者である神田さんも、数年前までは女子大で経済を学ぶ普通の大学生活を送っていました。就職によって、製造業コンサルティング会社に入社。金型製造、光造形試作の営業の仕事に就いてから、ものづくりの現場に入ったそうです。

会社に入って、それまでまったく触れたことがなかった製造業を中心としたものづくりの楽しさを知りました。と、同時に、営業をしている中で、人に伝えのが難しいものだとも実感しました。その中で、製造業の中でも少ない女性という存在が、なにかものづくりの現場を明るくしてくれるのでは、と考えました。

そこで神田さんは、ものづくりに携わる女性同士が情報交換などをしながら、お互いの仕事の領域などに触れ、新しいものづくりの可能性を模索する「ものづくり系女子」というコミュニティをつくり、ものづくりの現場にいる女性同士のコミュニケーションを図ってきました。一言でものづくりと言ってもここで幅を広く定義しており、製造業に携わる人からデザイナーや映像制作、グラフィックや服飾に携わる人なども含まれています。

コミュニティはすでに100名以上が関わっており、そこから、様々なプロジェクトが立ち上がりました。

「ものづくり系女子」と周りに言ってから、色々な人たちがを紹介してくれたことで、様々なジャンルの「ものづくり系女子」が集まってきました。何かしら技術を持っている女性同士が集まっているからこそ、自分たちの日々の仕事の中での情報の共有だけじゃなく、毎月テーマを持ち寄り互いに違った分野の技術を使い、互いに教えあったり、こういうのあったらいいよね、ということから会話から実際に作ってしまったりと、様々な動きが起きてきました。

自分たちで考え、作り、見せて、売る、というような様々なプロセスを共有しながら、「ものづくり」というテーマにゆるやかにつながった人たち同士。仕事では関わりがなかったような企画や、自分たちがもっている技術を応用しながら、新しいものをつくる実験をするなどの動きが起きているのです。

日々の生活に溢れているちょっとした技術の素晴らしさを感じる

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神田さんは、「ものづくり系女子」をスタートして、同時に、同じ「ものづくり」に関わる人たちと日々コミュニケーションしていく中で、自分が作った、という体験によって新しい感覚がもてるのではと考えました。

ちょっとしたアイデアと技術があれば、自分が必要とするものが意外と作れるという実感でした。同時に、日々私たちの生活に欠かせない道具がどう作れられ、そして作られるために必要な技術の素晴らしさも実感しました。自分のニーズにあったものはやはり自分の手でつくることで、自由にカスタマイズすることができます。そして、ミシンや工具を使えば、ある程度のものは作れます。

売れなくても、自分がつくったという体験はだんだん自分がほしかったものに近づいてきます。それが、単純にお金を払って買うという行為ではでてきません。作ることによる愛着や、作ることでその道具が作れられるまでの過程を知ることで、より製品のことを感じることができると思うんです。

普段、私たちが触れている道具には、あらゆる技術やテクノロジーが使われています。しかし、生活をしているとそうした製造の過程を感じることが難しくなってきます。神田さんも、なぜ高額な商品なのか、ディテールや細部を分析することで、その商品を作るために必要な高度な技術を感じることで、ものづくりの現場に携わることで、日頃の生活の見る目線が変わってきたと言います。

何気なく売られているものの価値を理解するということは、誰でも“ものづくり”に携わることができるからこそ、製造業や技術の素晴らしさを感じてもらいたいそうです。

3Dプリンタで何を作るか、を考えること

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そうした中、いまの3Dプリンタに対する大きな注目は、同時に私たちになにが欲しいのか、なにが作りたいのか、ということを改めて考えさせられるものだと言います。

3Dプリンタは何でもつくれるけど、道具である限り私たちがなにをつくりたいかということを実現するためのツールでしかないんです。3Dプリンタも万能ではありません。できることできないことを理解し、そうしたうえで、自分たちが本当に欲しいものはなにか、ということを考えさせられます。

だからこそ、3Dプリンタのことを少しでも多くの人に理解し、そして、ちょっとでもいいから触れてもらい、使ってもらうことで、ものづくりの楽しさや苦労も感じることができると思います。

神田さんは、3Dプリンタの可能性と同時に、そのプリンタを使って私たちが何を作るか、何を作ろうと考えるかが大事だと言います。3Dプリンタだからこそ作れるものを楽しんでつくる、そして、これまでの大量生産な無機質なものから、自分たちの手で作り出し、ほしいものをほしいだけ作るという体験ができることが、これからのものづくりに大切なことだと考えています。

従来の大量生産と、オジリナルなオンリーワンな製品との間にある、ほしいものをほしいだけ自分たちで作るという考えを、“ものづくり”という考えをコミュニティの中心に作られることによって、友人とアイデアを出し合って一緒に何かをつくっていく、ということの可能性を感じさせます。

ものづくりは料理

今回のプロジェクトでは「知る編」「使う編」の2種類の冊子の作成をおこないます。これまで3Dプリンタの使い方を覚えるきっかけのアプローチをおこなっていきます。そして、まだ構想中ですが、3部目の「作る編」も考えているそうです。

本来、3Dプリンタは組み立てキットとして機材やモーターを用意することで、自分で組み立てることができます。つまり、自分自身でものづくりの環境をつくることもできます。そうすることで、3Dプリンタの仕組みそのものを知り、ツールを使うだけでなくツール自体を作るというところからものづくりを始めることができます。それによって、また新しい可能性も切り開けるのではと考えています。

3Dプリンタ以外にも、個人が扱える工作機械が少しでてきつつあります。そうした中、一人でつくるもの、仲間でつくるものなどを組み合わせながら楽しむことで、日々の生活の視点がまた変わってくるのではないでしょうか。

材料を揃え、作るものを考え、作り方を覚え、そしてみんなと作り、作られたものを周りと楽しむ。ときに、これまでと違った材料や作り方で新しい方法を模索する。まさにものづくりは「料理」であり、その料理の「レシピ」のような作り方などを示していきたいと、最後に神田さんは語りました。

これまで、“ものづくり”というものが普通の人にとって敷居があったものが、技術や環境の変化によって誰でも作ろうと思えば作れるようになってきました。だからこそ、自分たちが本当に欲しいものはなにか、なにを作りたいか、そして、どう日々を過ごしていきたいか、ということが問われているのかもしれません。

今回のクラウドファンディングのプロジェクトも、そうした、これからの生活のあり方をちょっと変えるかもしれないきっかけになるのかもしれません。

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