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自動車が突然真っ二つ!そんなコンゴで活動を続ける石田さんから日本の若者へのメッセージとは。-石田勝子さんインタビュー(後編)

greenz/グリーンズ 石田勝子さん 授業風景

コンゴで医療技術者の育成を30年以上にわたって続けている石田勝子さん。前編ではコンゴについて、そして石田さんの活動についてお聞きしました。戦乱により学校も破壊され、多くの方が亡くなりましたが、それでも学校を続け、再建しようといまも努力を続けている石田さん。

私たちには想像することすら難しい暮らしを続ける石田さんは今の日本や日本の若者をどう捉えてるのでしょうか?日本の若者へのメッセージとは?

コンゴから日本を見て

コンゴに生活の中心を置き、教育に情熱を注ぐ石田さんですが、ほぼ毎年夏には日本に帰り、いろいろな人にあったり、情報を集めたりしてまたコンゴへと戻っていくそうです。30年以上そのようにコンゴと日本の両方を見つめ続けてきた石田さんが、いま日本や日本人に思うことはなんなのでしょうか?

石村 学校を再建し人材を育成するという目標に向けて、今必要なものはなんでしょうか?例えば日本人でもできることなどありますか?

石田さん(以下、敬称略) まず一緒に働いて欲しいですね。今の日本の検査技師はなんでも機械なのでどうかわかりませんが、引退した人などに来て技術を教えて欲しいです。看護師さんも日本は医者と完全に分業されてますけど、基礎があれば現地で適応できると思うので看護婦さんなんかにも来てほしいですね。

石村 やっぱりそういう技能を持った人がいいんですか?

石田 私は医療が専門だから医療のことを話しますけど、医療だけじゃないです。例えば前から思っているのは陶器を作れるような人がいたらいいなということです。土地にはたくさん粘土があるので、それを使ってみんなに必要なお皿を作れるような人がいたらいいですね。

気持ちがある人なら、必要はたくさんありますから。例えば、自動車の技術者とか。向こうの人達は日本じゃとても見られないような古い自動車でもずっと使っていて、例えば私が2000年に車を盗まれた時に、トヨタに「車をプレゼントしてもらえないだろうか」って言ったんですね。その時に学校の人達に聞いたら盗まれたのと同じスタウトという車が欲しいと言っていたのでそう伝えたんですが、トヨタの人が「えっ?」って顔をして、知らないんですよその車を。

昔を知っている人が「20年くらい前にそういう車を作ってた」って言うまでわからなかった。でもやっぱりスタウトがいいっていうので、ほうぼう探してウガンダで見つけて買ったんですよ。でも、半分に切られたのを継ぎ足したやつを買っちゃったんですね。

石村 え?

石田 日本から中古車を運んでくるんですけど、コンテナに詰める時に、たくさん積めるように半分に切っちゃうんだそうですよ。ウガンダについたらまた継ぎ足してペンキ塗って新品みたいにして売る。そんなことぜんぜん知らないから、向こうの人に任せたらそういうの買ってきて、それで仲介者の人にお金払わなかったので急いで逃げなきゃって逃げたんですけど、途中で道の脇に落っこちちゃって、そうしたら前と後ろにパカンと壊れて終わり。なんだこれって。

それでもスタウトが欲しいって向こうの人言いますよ。いまじゃもう30年以上なんですよ。それでもまだ走ってるの見ますからね。日本の車がいいっていうんですよどうしても。アジアなんかで作らせた車じゃなくて日本で作った日本の車が欲しいって。だから日本の中古車なんか向こうに欲しいですね。できたらそういう中古車を修理したり、組み立てたりするような工場作ってもらえないかって思います。

石村 日本の車も今はコンピューター制御のものが多くて、町工場なんかが潰れて行ってるということも聞くので、そういう人たちなんかが来てくれたら助かりますね。

石田 そうですね、そういう人たちが手を組んで、向こうで町工場作ってくれればいいのに。だから、協力できることはたくさんあると思うんですよ。でも日本の政府は大使館員もキンシャサから外に出ないんですよ。それでいて、ユニセフを通じてたくさん金を出してるからっていうんですけど、それは間違いですよね。確かに学校を建てたらプラカードの端に日本のマークついてますけど、そんなの見る人誰もいないですよ。向こうの人達は来た人を見て判断しますから。その点、中国は中国人の技師が土地に行って一緒に働きますからね。中国が高速道路を少し作ったんですけど、その時も彼らは一生懸命働いてましたよ。

日本の企業も怖がってばっかりじゃなくて、自分のためにも手出せないかなっていうところもありますよね。例えば電気が無いですから、発電の技術を向こうに持っていって、日本人の技師自身が行ってやったら本当に日本の存在ってあの国に知られるようになると思いますね。中国は製品は評判悪いですけど、中国人の技師は一目置かれてますからね。白人の技師たちは言いつけるだけで自分たちは指一本触れないっていうんですよ。自分たちが見下げられている気持ちになるんですね。それがアジアの人にはないってことで受け入れられやすいんだと思います。

石村 日本の何が問題なんでしょうか?

石田 心がないっていうか。自分自身をさらけ出さないところに問題があるんじゃないでしょうか。本当に隣人として同じように思ってるものとして行動を取ってくれたら本当に日本の存在が大きくなると思います。

greenz/グリーンズ 石田勝子さん 試験を受ける生徒

「出てきて欲しい」日本人の若者へのメッセージ

海外、とくに途上国から見える日本の姿として、人が見えないというのはよく言われることです。石田さんは日本人としてコンゴで切々とそのことを感じておられるようです。しかし、日本にいると「行って危なくないだろうか?」という疑問に対する答えすら見つけることが難しく、なかなか思い切っていけないということもあると思います。

でも、中には自力で石田さんのところにたどり着く若者もいるそうで、そんなふうにどんどん出てきて欲しいと石田さんは日本の若者に言います。

石村 日本の若い人たちにはどんなことを思いますか?

石田 何もできなくてもいいからとにかく出てきて欲しい。そうすれば彼ら自身が変われるんじゃないかと思います。日本で生きる意味も知らなくて自殺している人なんか見ると本当にそう思います。生きるところはそこだけじゃないんだから、出てきて欲しいです。

以前、アフリカを自転車で横断しているという大学生が来たことがありました。コーマという街で所持品を盗まれてしまって警察で説明してたら、北に行ったら日本人の宣教師がいるから行ってごらんって言われて、500キロくらいあるんですけど自転車でやってきたんです。それで庭にテント張らせてくださいって言って、私は「いいよ」って言って。

そうしたら広々としてすごい気持ちいところだって言ってしばらくいさせてくださいというので、私は「いいよ好きなだけどうぞ」って言って、しばらくいたんですけど今度は彼の自転車が盗まれてしまったんですね。それで私は飛行機で帰るよう勧めたんだけど、どうしても意志を遂げたいって言って歩いて行きましたよ。

もう一人、今度はナイロビに2年いたっていう女の子が日本に帰る前にコンゴ川を下ってみたいというので来てみたけど、ちょうど雨季で途中で道が通れなくなっていて、それでまた日本人の宣教師がいるからって言われて来たんですね。それでしばらくいて、結局コンゴ川は下れなかったんですけど、素晴らしいところだって言って、アフリカに来て本当に良かったって言って帰って行きました。

そういうふうに、心が広がるんじゃないかと思うんです。今の日本の若い人たちって、ちょっといじめられただけで悲観したりとか見方が狭くなってるんじゃないかなと思うんです。こっちに来たらお金なくても生きられるんだなとか気づくと思うんですよね。自分が知ってる世界だけじゃないんだってことを知ってもらうだけのためでも出てきて欲しいですね。世界人になってほしい。人間として大きくなってほしい。

具体的な必要な支援とは?

「本当に若い人に来て欲しい」と石田さんはいいます。別に骨を埋めるつもりでなくとも、旅行でもいいと。なので、若い人にはとりあえず行ってもらうとして、私たちが日本でできる支援とはなんなのでしょうか?

石村 若者にはぜひ行ってもらうとして、私たちが日本でできる支援にはどのようなものがあるでしょうか?

石田 先ほども言いましたが、2つ目の校舎を完成させるために1万5000ドル必要です。あと男子学生のトイレも壊されてしまって、いまは穴だけの草葺のお手洗いなので、それを建てるのに4000ドルかかります。あとは学校と検査室に24時間電気がほしいです。それは金額はちょっとわからないですが、出来ればソーラーパネルなんかでやりたくて、アメリカの団体が手術場に7.5kWhのパネルを設置するのに5万ドルかかったっていっていましたが、そんなには必要ないと思います。今は重油で自家発電しているんですが、結局お金がないと発電できなくなってしまうんで、重油に頼るっていうのは難しいんです。

去年、日本に帰ってきた時に四国で用水路を使った簡易発電機を見せてもらったんですが、そういうのが可能であればそのほうがいいのかもしれません。水は意外とあるので。どれくらいの落差が必要なのかとか、そういう技術について知りたいというのもあります。

インターネットも機械は以前滞在してた団体が置いていったものがあるんですけど、使用料が月に360ドルかかるっていうので今は使えてないんです。携帯電話もつながりにくいので、通信も不便なんですよ。

石村 本当に必要な物はいくらでもありますね。行くのはなかなか難しいですが、日本からできることはぜひやらせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。


実は今回のインタビューは石田さんの活動を知り、支援しようと有志の方々が立ち上がった英治出版にご協力いただき、一緒にお話をうかがいました。その一人、英治出版の高野さんに具体的な支援についてお聞きしました。

高野さん(以下、敬称略) 弊社のメンバーで「英治出版みらい基金」という任意団体をつくって、そこを窓口にして寄付を集めることにしました。弊社は寄付集めの経験はありませんのでどれだけ可能かわかりませんが、とりあえず男子トイレの話は気の毒ですから4,000ドルは何としても集めたいです。

石村 具体的にどのような方法で寄付を集めようとお考えですか?

高野 基金のホームーページからも寄付できますが、同時にクラウドファンディングの活用も始め、motion galleryでプロジェクトを展開しています。とはいえ、いずれにしても私たちだけでは力不足なので、お金、アイデア、行動、いろんな面で支援にご協力いただける方を探しています。

石村 クラウドファンディングで「石田さん宅の庭に宿泊する権利」がもらえるというのは面白いですね。寄付ももちろんですが、それでコンゴまで直接行ってくれる人が見つかるといいですね!

高野 石田さんがおっしゃるとおり必要なものはいくらでもありますので、本当にどんなかたでも協力していただけるなら大歓迎です!

世界最悪の紛争地域で医療普及活動を行っている石田勝子さんに支援を!