ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

4 years ago - 2012.11.20

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もしかして綺麗なゴミを作っているだけなの?「”本当にいいもの”を作りたい!」から始まったエチオピアレザーブランド 「andu amet」

六本木のショップにて

六本木のショップにて

特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

最初は、自分がデザインしたものを人が使ってくれることがとても嬉しかった。でも3年ほどして、「すでに口紅を10個持っている人の11個目の口紅を作っているなら、自分はもしかして綺麗なゴミを作っているだけなのではないか」と思ってしまったのです。

今年4月に新しく登場したブランド「andu amet(アンドゥ・アメット)」の代表兼デザイナー、鮫島弘子さんは、全ての始まりをこのように振り返ります。

「andu amet」は世界最高峰の素材ともいわれるエチオピアのレザーを使用したラグジュアリーブランド。実は、企画(アップサイクル)、素材調達(エコ)、製造(フェアトレード)、販売(スローファッション)と、事業に関わるすべてのプロセスにおいてエシカル(倫理的であること)を追求しているブランドでもあります。

もともと日本のメーカーでプロダクトデザイナーとして働いていた鮫島さん。大量生産で安価に作られるさまざまな製品がものすごいスピードで消費され、破棄されていく様子に、ものづくりの一端を担う者として、疑念が拭えなかったと言います。

ずっと大切にしてもらえるような、本当にいいものを作りたい。でも「本当にいいもの」って何だろう?

そう考えていたときに青年海外協力隊のことを知り、「なにかヒントがあるかもしれない」と応募。エチオピアへデザイン隊員として派遣されることになり、初めてかの国を訪れました。

ethiopia sheep

エチオピアはアフリカ最古の独立国。一説には人類の発祥の地ともいわれています。古い歴史と独自の文化を持つ美しい国ですが、一方で世界最貧国の一つでもあります。1970〜80年代のエチオピア大飢饉以来、厳しい経済状況が続いており、それゆえ日本でも「エチオピア=飢餓、干ばつ」というイメージが強く残っているのではないでしょうか。

その国で協力隊として活動中、鮫島さんは、デザインに関するプロジェクトを複数実施。エチオピアで出会った職人さんたちとはファッションショーを運営し、大成功を収めます。

最初は、エチオピアの貧しい状況にショックを受けました。エチオピアのことを全く知らないまま行ったのですが、当時のエチオピアは、それまでに自分が訪れたどの途上国よりも悲惨な状況でした。でも実際に住んでみて、エチオピアの人々と寝食を共にし、仕事をするなかで気づいたのは、情熱を持って仕事をするのは同じなのだということでした。そこに大きな可能性を感じました。

hiroko-samejima-2

ブランド名「andu amet」とは、エチオピアの言葉・アムハラ語の「一年(ひととせ)」を意味するand ametをもじって作った言葉。革という一年一年異なる表情を楽しめる素材を使って、長く愛用してもらえるものを、エチオピアの生産者や日本のユーザーと一年一年時を重ねながら、丁寧に作っていきたいという意味が込められています。

andu ametのロゴ

andu ametのロゴ

エチオピアは家畜の数が豊富で、その保有数はアフリカで1位、世界でも10位。食用の副産物の牛・羊・山羊の皮が輸出されています。中でも特に羊の皮は、まるで赤ちゃんのほっぺのようにきめ細かく、ふんわり柔らかく、さらにしっとり濡れたような極上の肌触り。日本の市場ではまだあまり知られてはいませんが、その品質は世界最高峰といわれており、高級外車のシートをはじめ、世界中のラグジュアリー製品に使用されています。

しかしその一方、それほど素晴らしい素材があるにも関わらずエチオピアからは付加価値の低い原皮(まだなめす前の生の皮)の状態での輸出にとどまっており、国内の経済や産業の発展にあまり貢献できていないという現状があります。そこでandu ametではそんなエチオピアの最高素材を使って現地で最終製品にまですることで、エチオピアへは皮革産業の発展に貢献し、日本へは最高品質のものをリーズナブルな価格で提供しようとしています。

大切なパートナーみたいなバッグを作りたい

伊藤 ローンチから半年がたち、いろんな製品が増えましたがどれもすてきです! あらためて、製品についてご説明ください。

鮫島さん(以下、敬称略) バッグや小物などのアクセサリーを作っています。エチオピアのレザーの中でも最良の革を選び、手作りにこだわり、とことん手間をかけて一つひとつ丁寧に仕上げています。

デザインのコンセプトは「HAPPY!」。 バッグって、会社に行くときもショッピングに行くときも、デートに行くときも、とにかく出かけるときはいつも持っているものでしょう?だから機能やデザインだけではなくて、一緒にいるとワクワク、フワフワ幸せな気持ちになれる、大切なパートナーみたいなものを作りたいと思いました。

たとえば弊社で一番人気のHugシリーズ。その名のとおりぎゅっと抱きしめると、深いレザーの香りとふわふわの触り心地包まれて、本当に心からHAPPY!な気分で満たされると思います(笑)。

Big hug

Big hug

伊藤 五感で楽しめるというのは素敵ですね。他にはどんな特徴がありますか。

鮫島 全ての製品に、デザインのアクセントとしてモザイクレザーを使っています。実はこれ、日本の寄木細工の技法を、木ではなくレザーで再現したもの。縫製の中で出てきたエチオピアンシープスキンの端切れを一枚一枚積み重ねて作っているんですよ。いってみれば日本の伝統技術とアフリカの色彩感覚の融合です。

今後もデザインには日本や、エチオピアからインスピレーションを得たものをとり入れていくつもりです。欧米の模倣ではなく、日々消費されていく<流行りもの>でもない、“andu ametらしいデザイン”を追求していきたいと思っています。

フリンジ部分に施された、モザイクのような装飾はandu ametのアイコン。日本の伝統工芸<寄木細工>にインスピレーションを得たもの。

フリンジ部分に施された、モザイクのような装飾はandu ametのアイコン。日本の伝統工芸<寄木細工>にインスピレーションを得たもの。

気持ちよく働ける環境をつくる

伊藤 2010年末から何度もエチオピアに足を運び、準備をしてきた鮫島さんですが、どんな道のりだったのでしょうか。

鮫島 まずは人探しをしましたが、それがなにより大変でした。レザークラフトを教える学校の卒業生をあたったり、職人仲間の友人知人をあたったり…。

寸分のズレも違いも許されない日本とは違い、エチオピアの市場では縫製などが歪んでいたりずれていたりなどは当たり前。そのため、「そんなに厳しいこというなら自分はできない。もうやめる」「エチオピアでそんなことできる人いないよ」などと言い合いになることもしばしばありました。

結果的に、品質へのこだわりを理解し、本当にいいものを作りたいと思っている職人だけが工房に残りました。それでもやっぱり文化や価値観の違いもあって、同じところを目指すのは簡単ではなくて…。納得のいくものを仕上げるために何をすべきか、どう伝えるか、ということは常に最大の課題です。

andu amet factory (6)

伊藤 そのためにどういった取り組みをされているのでしょうか?

鮫島 まず、皆が気持ちよく働ける環境をつくりました。お金はかかりましたが、工房もしっかりしたものを借りました。いい仕事してもらうためには十分な広さが必要だし、明かりも必要。みんなが好きな音楽をかけたり、軽食やコーヒーを用意したりなど工夫もしています。気持ちよく働くことができれば、自然といい仕事ができますよね。

伊藤 「いいもの」は「いい仕事」からしか生まれませんね。そのために他にもされていることはありますか?

鮫島 ただ指示をするだけではなく、常日頃からスタッフ一人一人とコミュニケーションをとり、向き合うことを心がけています。例えば仕事が予定どおりに進まなそうなとき、あるいは上手くできなそうなときに「あなたの責任でしょう」とただ追求するのではなく、できるだけ話を聞き、一緒に解決策を探したりしています。

スタッフの中にはandu ametの工房で働く前は、NGOの生活保護を受けていたという者もいますし、ストリートチルドレンだった者もいます。そんな彼らが抱えるものは、ちょっと話を聞いただけではなかなか分かりません。最初は「ヒロコは外国人だから僕たちのことは分からない」と思われていたかもしれません。しかし2年間、日本とエチオピアを往復しながらではあったけれども一緒に過ごし、同じものを食べ、たくさん話し合いながらその壁を乗り越えてきました。

これからも一人ひとりに最適な環境を用意し、一緒に良いものを作ろうと思ってもらえる関係を結んでいきたいと思っています。日本にいるユーザーの方や現地製造者が一年一年お互いを知り、尊敬しあい、友情を育み、そうやって関係をつなぐブランドでありたいと思っています。

andu amet factory

使う人も、作る人も、幸せを感じるブランドに

伊藤 その背景には、どのような思いがあるのでしょうか?

鮫島 andu ametの商品は簡単にできるデザインではないからこそ、彼らの力が必要です。それに私はデザインはできても、縫製の勉強はしていませんし、自分ではバッグ1つ作れません。「ここを直してほしい」と言っても、「じゃあ自分でやってくれ」と言われてしまったら、商品は作れません。物が作れるのは職人である彼らがいるから。だからこそ彼らにも誇りを持って、いきいきと仕事をしてもらえるようにしたい。一緒に仕事してもらえる人にも気持ちよく仕事をしてもらいたいということが第一にあります。それは別にエシカルブランドであるからだとか、エチオピアという途上国だからということではありません。

伊藤 途上国支援、ということを論じる前に考えるべき基本的なことかもしれませんね。

鮫島 エチオピアにいると、「あぁ、幸せだな」と思うことがよくあります。それは、小さなことでエチオピアの人たちが幸せそうにしているのを見ているとき。電車やバスの中でたまたま乗り合わせた人と笑い合ったり、道端に咲いている花を、かわいいと言って摘み取って大切に持っていたり…なんていう光景を見ていると、本当に幸せな気分になります。エチオピアには幸せがたくさんある。そんなエチオピアの幸せを使ってくれる人に届けられたらと思います。

貧困国の雇用創出のため…ということ以上に、エチオピアと日本で、使う人にとっても作る人にとっても意味のある、HAPPY!なものづくりをしたい。みんなが幸せを感じられるブランドにするにはどうしたらよいかということを、これからも考えていきたいです。

最近、新しいスタッフが増えました

最近、新しいスタッフが増えました

この秋登場した新色は、エチオピアシープスキンの吸い付くようにしっとりとした気持ちよさが生かされたデザインはそのままに、さらにカラフルで魅力的な仕上がりになっています。

最高級の素材に最高の技術を駆使すれば、確かに「本当にいいもの」が出来上がります。しかし真の意味で「本当にいいもの」とは、素材と技術だけでなく、そのモノとそれを扱う人の関係性の中で見つけられ、育てられるものではないでしょうか。

現在、六本木ヒルズで期間限定ショップも開催中!ぜひ、なめらかなシープスキンから溢れる優しい思いを抱きしめに行ってみて!

六本木ヒルズポップアップブティック

場所:六本木ヒルズ 2F ウエストウォークワゴン(エストネーション向かい)
期間:2013年1月15日まで

andu ametについて調べてみよう。

writer ライターリスト

Hitomi ITO

広島→米・ミシガン州→広島→東京。フランス語科卒。国際協力×ファッションで、現在はEthical Fashionについてライターなど。誰かと「セカイ」がつながるファッションの道を考える日々。 Facebook: http://www.facebook.com/hitomi.it0

partner パートナーリスト

ミラツク

ミラツクは、対話を通じて、異なるセクター、異なる地域、異なるステークホルダーの間に協力を生み出し、より良い社会に向けたイノベーションを生み出すことに取り組むNPOです。 ミラツクが応援するのは、未だあまり知られていない社会を良くする取り組みとそこにいる”人”たちです。1人の人が生み出す未来の可能性を世の中に伝えていくことで、また新しい次の未来の種が生まれる。そんな未来をつくるサイクルを共につくっていければと思います。 ⇒ 特集「a Piece of Social Innovation」ミラツク×グリーンズ対談!Facebookページ

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