「ひとりのユメをみんなのユメに」世の中がちょっと良くなる夢をみんなで応援する「ユメコラボ」

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ユメコラボ『LOVE&PUSH』FREE肩たたきイベント

特集「マイプロSHOWCASE関西編」は、「関西をもっと元気に!」をテーマに、関西を拠点に活躍するソーシャルデザインの担い手を紹介していく、大阪ガスとの共同企画です。

「こうすればちょっと世の中が良くなるはずなのに」。

きっと、誰もがそんな思いを胸のなかにしまいこんでいるのではないでしょうか? 「ユメコラボ」は、誰かの「実現すると世の中がちょっと良くなるユメ」をみんなで応援するプロジェクト。これまで「肩たたきを広めたい」「若者に日本酒のほんとうのうまさを伝えたい」など、ユニークなユメを実現させてきました。

「ユメコラボ」はケーブルインターネット接続サービス「ZAQ」を運営する株式会社テクノロジーネットワークスのウェブコンテンツ。企画・運営に大阪のNPO法人スマイルスタイルが参入し、より地域性を活かしたプロジェクト展開をしています。スマイルスタイルは、「もっと社会がこうなったらいいのに」「何かしたい!」という誰もが持っている“モヤモヤ”や衝動に訴えかける様々なプロジェクトを企業や行政との協働によってつくりだしています。

「スマイルスタイル」のプロジェクトは、どれもみなさんに紹介したいものばかりなのですが、今回は「ユメコラボ」を中心にして彼らの活動を伝えたいと思います。

下を向いて歩こう!? 「ごみひろい」が最初のブレイクスルーに

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スマイルスタイル代表 塩山諒さん

「スマイルスタイル」は、2007年に塩山諒さんが中心になって立ち上げました。当時、塩山さんは23歳。「何かせなあかんよなあ」とモヤモヤを抱えていた周囲の友人たちが、世界一周旅行やボランティアなど“3rd place”での出会いや経験をきっかけにブレイクスルーしていくのを見て、“3rd place”がカギを握っているのではないかと考えたそうです。

家と職場以外での「社会の中での自分の居場所」、3rd placeを若者が求めているなぁと感じていました。若者にとってそれは、一人ひとりのモヤモヤしているエネルギーを発散させる場所になり得るんじゃないかと。そして、誰もが海外に行かなくても、日本のなかでできることもあるんじゃないかと思いました。

ちょうど、アル・ゴア元アメリカ副大統領が主演した映画『不都合な真実』が公開され、地球温暖化や環境問題が叫ばれていた頃でした。「何かしないと、このままでは地球がダメになる」とテレビや街の広告は叫ぶものの、身近な友人たちは特に気にする様子もない。そこで、塩山さんは、「環境美化」や「エコ」という言葉を使わずに、カラオケやボーリングに遊びにいくような感覚でできる「ごみひろい」を始めることにしました。

なんだか遠いところにあるごみひろいの活動も、「楽しそう!」と自分ゴトに捉えることができたら、きっと若者は行動を起こしてくれるはず。そこで、ごみひろいをイベントにしたり、おしゃれなデザインのごみ袋を用意してみんなで街のごみを拾っていくという方法で注目を集めたのです。

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無人島ごみひろい

「ごみひろい」は、定期的に行う「ライフスタイルごみひろい」のほか、「オールナイトごみひろい」「無人島ごみひろい」などのユニークなイベント型ごみひろいで話題を作り、若い人たちをどんどん巻き込んでいきました。

街のごみを拾っていると、無意識のうちにポイ捨てがかっこわるく感じるようになり自分自身がしなくなります。自分の部屋にごみをポイ捨てしないのと同じように、街にごみを捨てられなくなるんですね。ほんの少し相手のことや街のことを考えられるようになると、生き方も変わっていきます。ごみひろいに参加していた人同士が結婚したり、すごくやんちゃだった子たちがしっかりしてきたり。

今も、関西の各地域にチームがあり定期的に活動していて、2011年には、スマイルスタイルのごみひろいを題材にしたドラマ「ハジメノイッポ」(テレビ大阪)が放映されました。ごみひろいは、僕たちにとって最初の成功体験だったと思います。

路上でFREE肩たたき1000人達成!
揉みニケーションの輪が広がる

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「ユメコラボ」がはじまったのは2009年のこと。ウェブサイトから「世の中がちょっとよくなるユメ」を定期的に募集。エントリーされたユメは書類審査をへて「ユメ会議」でのプレゼン審査に進み、見事「ユメニスト」に認定されたらプランニングやPR・企業マッチングなどのサポートを受けることができます。

「肩たたきを広めたい!」というユメをエントリーしたプッシュさんは、最初のユメニストのひとりです。プッシュさんは当時大学生。「お母さんが子どもを殺したり、子どもが親を殺したりする殺伐とした事件が多いけれど、人と人が触れ合っていればそんなことは起きないはずだ。だからこそ“揉みニケーション”が必要だし広げていきたい」というユメは、「ユメ会議」の審査員の心をガッチリつかみました。

彼は人の心を動かしていくなあと思ったし、「肩たたき券」を配るというアイデアもキャッチーです。彼が発している価値を一般の人に理解してもらうために、路上で「FREE肩たたき」に挑戦してもらい、「ぜひ、家でも肩たたきしてください」と「肩たたき券」を渡すことにしました。

「FREE肩たたき」のアイデアの元になったのは「FREE HUG」。「FREE HUG」と書いたパネルを持って、ハグをするというメッセージ性の高い活動で、「スマイルスタイル」の女性スタッフも学生時代にやっていたのだそうです。

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路上でFREE肩たたきをするプッシュさん

肩たたきを通して社会にしたいことを都会の真ん中で発信できるし、お金もかからないのでやろうということになって。すると、外国人が並んで待っていたりするおもしろい写真が撮れたので、プレスリリースを作ってメディアに送付。NHKをはじめとした多数のメディアから取りあげられました。

ひとりのユメが“思い”のマッチングを加速させる

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イベントで配布された肩たたき券

「FREE肩たたき」の話題が温まってくると、「ユメコラボ」はメディア掲載履歴を実績としてまとめて次のプランを練りはじめました。母の日、父の日に合わせて、ふだんは照れくさくて言えない「ありがとう」を肩たたきにこめて伝え、親子のコミュニケーションを生みだすイベントを企画するためです。

2010年と2011年の2年連続で実施されたこの企画は、ロフト、竹中庭園緑化、グンゼの三社を巻き込み、「母の日・父の日 肩たたきイベント LOVE&PUSH ―カタタタキに愛をこめて―」として実現。母の日には竹中庭園緑化からカーネーション、父の日にはグンゼからボクサーパンツをそれぞれ無償提供してもらい、大阪・梅田ロフト前で多くの人が参加。会場で肩たたきに参加してくれた先着400名に、母の日にはカーネーションと肩たたき券を、父の日にはボクサーパンツと肩たたき券をプレゼントしました。このプレゼントは、それぞれの家庭で親子の間に“揉みニケーション”を生みだしたのです。

また、このイベントの様子は、CMとしてケーブルテレビや街頭ビジョン、タクシービジョン等で放映。CM制作には、電通クリエイティブの若手スタッフがプロボノとして携わりました。

CMを作ってくれたのは、電通のなかでも賞をとったりしている優秀な人たちです。彼らはふだんは商業的な仕事にスキルを活用しているけれど、芸大出身の人も多いですし思う存分暴れてモノを作りたい“モヤモヤ”した気持ちがあって、やはり場を求めているんですね。またロック・バンドのジェイムスさんが楽曲を提供してくれたんです。

その後、ジェイムスのPVに肩たたきをするプッシュさんの姿が登場するなど、ユメのコラボレーションは広がり、まさしく「ひとりのユメ」は「みんなのユメ」になって叶えられていったのです。

“いい錯覚”を起こしてグッドサイクルを作っていく

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「若者に日本酒のほんとのうまさを伝えたい!」酒の仕込みをする19歳の若者たち

このほかにも、ユメニスト・うえっちさんの「若者に日本酒のほんとのうまさを伝えたい!」というユメでは、19歳の若者たちが田植えから稲刈り・酒づくりを行って、成人式に自分たちでつくった日本酒で人生初の乾杯をするというプロジェクトを実現。「日本酒はおいしくない」「成人式やお正月などの行事に不本意に飲まされる」といった悪いイメージを覆すべく、若者にとって飲みやすい日本酒をつくり、衰退する日本酒業界の活性化を目指しました。

今注目を集めるユメは、高亜希さんの「病児保育を通して、子育てと仕事の両立に奮闘するママさんをサポートしたい!」。 電通のコミュニケーションデザインチーム「おかんカンパニー」とコラボレーションし、100名を超える働くお母さん(お父さん)の意見を聴いて、「子どもが病気の時ののりきりかた」をリサーチ。2012年の母の日に「働く!!おかん図鑑」という冊子を制作しました。この冊子は、発行後より現在までに1200部も売れる人気になりました。

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「働く!! おかん図鑑」

また、以前greenz.jpでも紹介した川口加奈さんのユメ「ホームレスの方に雇用の場を」も、今年は大阪・住吉区とのコラボレーションが決まるなど順調に進んでいるようす。今後、ユメコラボとしてどのようなユメの応援の仕方があるか、現在話し合いが行われているそうです。

僕たちはよく「いい錯覚を起こしたいね」と言うんですけど、世の中で起きていることは結局錯覚なんだなあと思うんです。できないと思っていることはできないけれど、できるんだという思いこみや錯覚をデザインやコピーの力で覚醒させていく。ひとつのストーリーやプロセスを含めて共感していけば、明日が変わっていくグッドサイクルを生みだしていけるんじゃないかと思うんです。

塩山さんの話には、たびたび“モヤモヤ”というキーワードが登場します。どちらかと言えば、ネガティブなイメージで使われるこの言葉を、塩山さんはポジティブに捉えているのがとても印象に残りました。

モヤモヤって処理できていない状態。どうしていきたいのか言語化していないというか。実は、その状態は一番楽しくて、答えが見えると失望してしまったりすることもありますよね。でも、モヤモヤはエネルギーの出るところで、どういうモヤモヤにしていくのかが一番大事なのかなと思うんです。それをかきたてて突破することが僕らの仕事です。

「スマイルスタイル」の仕事は、クライアントのビジネス目標やニーズを達成しながら、同時に社会的課題解決につなげるプロジェクトの企画・制作・プロデュース全般。個人、企業、行政のなかになるモヤモヤをコンサルティングして新しいプロジェクトが立ち上げることです。そのたびにちょっとずつ世の中が良くなり、また「スマイルスタイル」を応援したい人たちも現れて、また一回り大きなグッドサイクルを生み出しています。

「何かやりたい」というモヤモヤを自分や誰かのなかに見つけたら、それはきっとエネルギーの種火のようなもの。そのままで終わらせないで、ときには思い切りモヤモヤをかきたてて行動に移してみれば、それがグッドサイクルへの扉を開くことになるはずです。

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