ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

3 years ago - 2012.08.22

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新しい未来をつくる、新しい対話の場「フューチャーセンター」って知ってる? [マイプロSHOWCASE]

Some rights reserved by RichardBH

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特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

みなさんは「フューチャーセンター」という言葉を知っていますか?もし知らないとしたら、ちょっとだけ想像してみてください。Futureは“未来”、Centerは“機関”。そのままつなげると、“未来の機関”と訳すことができそうです。

フューチャーセンターとは、ひとことで言ってしまえば、未来思考で対話し、変化を起こして行くための“場”のこと。そのために、多様性豊かな参加者を招き、社会的課題解決のためのビジネスモデルを考えたり、参加者同士のつながりを促進させたりする“場”なのです。

でも、それって、いろいろなところで行われている会議とどんな違いがあるのでしょう。フューチャーセンターを日本中に広めようと活動している、フューチャーセッションズの野村恭彦さんにお話を伺ってきました!

セッション

フューチャーセンターと聞くと、頭のなかで、特定のどこかの施設などを思い浮かべてしまいそうですが、それは正しい捉え方ではないようです。

フューチャーセンターがちょっと把握しづらい理由のひとつは、「これぞフューチャーセンターと呼べるはっきりとした事例が、まだ日本には存在していないから」ということのようです。フューチャーセッションズの野村さんは、今の状況を次のように話してくれました。

たとえば、まだ学校がなかったときのことを想像してみてください。学校をつくろうと思った人は、それをほかの人にどんな風に説明したでしょうか。「子供たちがいて、先生がいて、教育プログラムも必要だよね…」なんてことを話し合ったんじゃないでしょうか。学校は特定の施設の名前ではありませんよね。

フューチャーセンターもその当時に話し合われた学校のようなもの。対話する人がいて、ファシリテーターがいて、プログラムがある場ということなんです。

フューチャーセンターには誰もが参加できる

フューチャーセンターの最大の特徴は、創造的なファシリテーターによって参加者全員が、未来思考で対話する「フューチャーセッション」にあります。フューチャーセッションは、“誰もが参加できる”という大きな特長を備えた、開かれた場だそうです。

たとえば、教育関係をテーマに対話の場をつくると、教育について関心の高い人や関係者が多く集まってしまいがちですが、フューチャーセッションはもっと広く門を開くことを心がけています。企業、行政、非営利団体など、さまざまな立場の方に老若男女を問わず参加してほしいのです。

専門家ばかりが揃ってしまうと、意外なことに、かえって議論がすすまなくなることも珍しくないのだそう。

原発について議論したとします。議論のテーブルに、経済の専門家、環境の専門家、原発の専門家などが集まっても、お互いの専門領域から話をすることしかできません。専門を極めてしまえばそれだけ、専門外の人との間に壁がでてきてしまい、縦割りでしか動けなくなってしまうのです。

それよりも、いろいろな立場の人が参加して、いろんな意見を出し合い、お互いの立場を理解し合うことで、一緒に変化を起こして行く同志になれるのではないか、というのがフューチャーセッションの立場なんです。

街づくりをしようと思ったら、お役所勤めをして、それができるポストに就かなければならないと考える人もいるでしょう。でも、そのポストに就く能力と、実際に街づくりをする能力って、実はまったくの別物なんですよね。

フューチャーセンターのことを話す野村さん

野村恭彦さん

野村さんは企業に勤めていた頃に、社内や社外の組織変革に取り組んでいました。なんども組織変革を試みて気が付いたのは、外部から風を入れてあげなければ変革は難しいということ。ファシリテーションをしながら、非営利団体や社会起業家などを招いてセッションをすれば、企業側には多くの気づきが得られ、組織に変化が起きました。

また、企業は非営利団体や社会起業家側が必要とする支援をすることも可能でした。いろいろなステークホルダーが集まったからこそ、創造性が発揮され、新たなつながりを生むことができたのです。

お気に入りのシナリオに向かって進んでいこう

もうひとつ、フューチャーセンターを理解するために大切なものを上げるなら、フューチャーセンターは“未来思考”という発想を大切にしているということ。

未来思考とは、文字通り、未来のことを思い浮かべること。そのときに、どんな未来が考えられるか、さまざまなシナリオをポンと置いてみるのです。たとえば、日本全国にフューチャーセンターがたくさんあって、会社の会議や地域の集会などは、みんな各々のフューチャーセンターで行われている未来。

たとえば、専門家がたくさん育っていて、彼らが物事をどんどん解決していく未来。こういうものを未来に置いてみて、あとはどれが好きか選ぶだけです。ここで議論をする必要はありません。好きな未来に向かって、何ができるかを考えていけばいいのです。

専門家がたくさん育つ未来を選ぶ人がいても、それはそれでかまわない。ただ、そうすると縦割りのままで、つまらないかなって思うんですよね。そこで僕はフューチャーセンターをたくさんつくるという未来を選択したというわけです。

未来のシナリオをいろいろ考えて、そこからお気に入りのものをチョイス。そこに近づいていけるように歩んで行くだけ、というのは、とても簡単で、わかりやすい発想法です。でも、シナリオを考えるときには注意点があるのだそう。

未来をイメージするときは予測にならないようにしてください。未来のことって、ある程度予測できますよね。これから高齢化社会になんていくんだろうな、とか、外国人労働者が増えるんだろうな、とか。しかし、そういうゆったりとした変化なら、いままでも想定していたはず。そして、何も手を打たずにきたのです。

それよりも、日本は人口の50%が高齢者になるとか、日本にいる人の3人にひとりが外国人労働者とか、ちょっと極端な例を置いてみてください。やるべきことが自然とみえてくると思います。

フューチャーセンターという考え方の原点

ソーシャルメディアの発達で、地域活性化や農業の復興など、さまざまな社会的課題の解決の場を自発的に設けようとする人たちがたくさんの場をつくるようになりました。また、そういった問題に取り組む社会起業家の数もどんどん増えています。フューチャーセンターは、まさにいま、そしてこれから、求められていく“場づくりの方法”なのだと思います。野村さんがフューチャーセンターという発想にたどり着いた原点について伺ってみました。

フューチャーセンターの運営において、僕はふたつの価値観を大切にしています。ひとつは、“関わる人に上下関係をつくらない”ということ。もうひとつは、“参加者全員が等しく参加できるように”ということです。このふたつの価値観には僕の原体験が大きく関係しています。

個人的な話になりますが僕には3つ年上の兄がいます。子どものころ一緒にゲームをしていて、たまに僕が勝ちそうになるとゲームをリセットしてしまう(笑)。ケンカになっても、まず力ではかないませんでした。僕はいつも思っていました。「僕ならもっとやさしい兄貴になれるのに」って

「年齢が上だから、力が強いから威張るのはおかしい!」。上に兄弟がいる子なら誰もが一度は心に抱きそうなこの感覚。野村さんのそんな気持ちは、社会人になって、さらに強くなりました。

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上に立つ人間、力を持った人間の意見が正しいという感覚にはずっと違和感がありました。富士ゼロックスにKDIという組織を立ち上げて、組織コンサルティングをやっていたときもそれは同じ。

一般的に、組織コンサルティングでは「トップの考え方をいかに組織に浸透させるか?」ということが重視されていたのですが、トップひとりが満足する戦略より、その下で働く何千何万人の人が知恵を出し合うことのほうが重要だと僕は考えたのです。それが知識創造型組織なのだと。上下の隔てなくフラットな関係性を組織内に生み出すことを考えていました。

会議などに上下関係が持ち込まれると、誰もが言いたいことが発言できる状況には成り得ません。逆に言えば、フューチャーセンターは、誰もがお互いを尊重し、安心して発言できる場であり、言葉にしやすい環境を整える仕組みがつくられているのです。

そしてもうひとつ。これも非常に個人的なことになるのですが、僕は小さい頃、教室の前で話したりすることが緊張してしまい苦手でした。大学のゼミの先生に積極的に質問するように求められたり、企業内外でプレゼンする機会が豊富に設けられたことで、緊張することはなくなっていきましたが。それで、人前でなぜ緊張していたのだろうかと考えてみると、そのひとつの結論が、「聴いている人全員の目を気にし過ぎてしまうから」ということでした。

ところが、緊張せずに話せるようになると、この弱みが、私の強みになっていることに気づいたんです。たとえば、100人でセッションを行っていても、誰がどんな気持ちでいるか、大抵わかるんですね。「あの人はつまらなさそうにしているな。どうしてなのか聞いてみよう」「あの人は反対意見がありそうだな」といった具合に。言えない人の気持ちがわかるから、その人の気持ちをフックアップしたいという思いがあります。それが、“参加者全員が等しく参加できるように”という価値観に繋がってきています。

すべての人がフラットに、意見や知恵を出し合えるフューチャーセンター。野村さんはいつしか、「フューチャーセンターは僕の思想そのもの」と言えるほど、その価値観に溶け合っていったそうです。

表参道にある株式会社フューチャーセッションズのオフィスにて

表参道にある株式会社フューチャーセッションズのオフィスにて

フューチャーセンターを広めるために

市民会館や会社の会議室など、日本中にフューチャーセンターが置かれ、そこで毎日、いろいろな対話が進められている…。思い描いたそんな未来に向かって、野村さんは、忙しく働いています。

すでにお話したようにフューチャーセンターは特定の施設ではありません。立派な施設をつくったって、人が集まるわけではありませんから。思いを持った人がいて、そのまわりにコミュニティができる。そこをサポートしてあげるものがフューチャーセンターなんですよ。

だから、まずはフューチャーセッションを継続的に開き変化を起こして行く推進者を1000人育てたいと思っています。それから、推進者同士がノウハウを伝えあったり、セッションを通じて知り合った人同士がつながったりするプラットフォームもつくっていきたいと思っています。

多様なステークホルダーが集まって、対話を重ねる場づくりがいろいろなところで行われるようになりました。ただ、対話の進め方などは、確かにもっと進化させる余地があるように感じられます。

「対話をやってみたいけれど、どんなふうに進めていいかわからない」「もっとクリエイティブな場づくりをしたい」なんて方は、ぜひフューチャーセッションズのサイトを覗いてみてください。もちろん、1000人の推進者のひとりに立候補する、なんてこともいいかもしませんね!

フューチャーセッションズのサイトを見てみよう

writer ライターリスト

井上 晶夫

greenz ライター フリーランスのエディター&ライター。編集プロダクションや出版社を経てフリーランスとして活動開始。企業コンテンツや雑誌、ウェブの記事などを手がける。今、テーマとしているのは“対話”。

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ミラツク

ミラツクは、対話を通じて、異なるセクター、異なる地域、異なるステークホルダーの間に協力を生み出し、より良い社会に向けたイノベーションを生み出すことに取り組むNPOです。 ミラツクが応援するのは、未だあまり知られていない社会を良くする取り組みとそこにいる”人”たちです。1人の人が生み出す未来の可能性を世の中に伝えていくことで、また新しい次の未来の種が生まれる。そんな未来をつくるサイクルを共につくっていければと思います。 ⇒ 特集「a Piece of Social Innovation」ミラツク×グリーンズ対談!Facebookページ

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