ISSUE ☆日本と世界のソーシャルデザイン

3 years ago - 2012.07.17

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“恋のウラ騒ぎ”にコンドームの付け方動画?! 性の問題にアイデアで勝負する「ピルコン」 [マイプロSHOWCASE]

イベント「恋のウラ騒ぎ」にて妊娠・月経の仕組みを再度おさらい中の染矢さん
イベント「恋のウラ騒ぎ」にて妊娠・月経の仕組みを再度おさらい中の染矢さん

年間に22万件。

これは何の数字だと思いますか?
実は、日本の中絶件数なんです。(平成20年度時点厚生労働省調べ)

さらにこの数字を読み解くと、

・そのうち、24歳未満の女性の件数は約10万件
・出生数の約5分の1の件数
・女性の約6人に1人が経験している計算
・中絶した女性の3分の1は2回以上繰り返している
・中絶した女性の半分はコンドームをつけていた

という衝撃的なデータが見えてきます。

これらの事実を知ったことをきっかけに立ち上がったのが、避妊啓発団体「ピルコン」です。性の話はなかなか他人と共有しづらいものですが、ピルコンでは、より多くの人にアプローチするためにユニークな活動をしています。

例えば、「恋のウラ騒ぎ」というワークショップ。ちょっと気になりませんか?さっそく代表の染矢明日香さんのお話と共に「ピルコン」の活動を見ていきましょう。

性の問題を自分ごとにしてもらうことが大事

前述の「恋のウラ騒ぎ」は恋愛をもっと楽しみたい人や男女間のコミュニケーションをもっとよくしたい人に向けて行うトークイベント。例えば、女性だったら「彼にお願いごとを上手に伝える方法」だったり、男性向けなら「彼女が結論のない話をだらだらとしている際の心構え」といったコミュニケーションにおけるTipsをイベントを通して伝えます。

このように、直接的なコンドームやピルの啓蒙活動だけでなく、身近で実際の生活に取り入れやすい男女間のコミュニケーションスキルを向上する機会を提供することで、関心層をぐっと広げることに成功しています。

イベント「恋のウラ騒ぎ」にてワーク中の皆さん(相手のいいところを探してほめるワーク)

イベント「恋のウラ騒ぎ」にてワーク中の皆さん(相手のいいところを探してほめるワーク)

性の問題は自分ごとにすることが大事だと思います。避妊するためにはコンドームはつけなければいけない、低用量ピルを飲んだほうがいい、こういったことは今ではみなさんが知っていることだと思います。

でも、「やらなければいけないけどやっていない」というのは自分ごとになっていないということ。いざその場に直面した時に自分がどういう行動をとるのかというのをきちんとイメージできているか、そうでないかの違いは大きいです。

「性の問題に無関心な人たちを集めることによって、その人達を関心層に変えていきたい」と語る染矢さん。だからこそ、今までの啓蒙団体とは異なる角度からアイデアが湧いてくるのでしょう。さらに、こんなことにも気をつけているそうです。

Facebookでイベントの告知をするときに、参加表明する人たちが恥ずかしくないような、そして「これどんなイベント?」と気になってしまうようなタイトルをつけるように心がけています。

例えば、「中絶をなくそう!」というイベントタイトルにした場合、本当に強い意思を持っている人しか集まらないと思うんです。だから本当に普通の人でも気軽に参加しやすい場として使ってもらえるように考えます。

その言葉のとおり、他にも月経や妊娠のメカニズム、低用量ピルの活用術など、女性の体について学ぶ「オンナのカラダを知る♪女子力アップ朝活」といったワークショップも開催しています。

「オンナのカラダを知る♪女子力アップ朝活」の様子 製薬会社のパンフレットや書籍を参考に、ピルコンでオリジナルの資料を作成。 おすすめの書籍や信頼性の高い情報の見つけ方などもレクチャー!

「オンナのカラダを知る♪女子力アップ朝活」の様子。 製薬会社のパンフレットや書籍を参考に、ピルコンでオリジナルの資料を作成。 おすすめの書籍や信頼性の高い情報の見つけ方などもレクチャー!

「オンナのカラダを知る♪女子力アップ朝活」の様子 和気あいあいとした雰囲気で、参加者同士の交流で 「意識の高いお友達ができた!」という喜びの声も。

「オンナのカラダを知る♪女子力アップ朝活」の様子 和気あいあいとした雰囲気で、参加者同士の交流で 「意識の高いお友達ができた!」という喜びの声も。

性について学ぶことがよりよい人生につながる

イベントの参加者は、20〜30代のいい恋愛をしたいという意識を持った男女。男女比は7:3で男性も3割ほど参加しています。

参加男性から、「今まで女性の月経のしくみやコンドームの失敗率など男性が知る機会はほとんどなかったし、知らなかった。すごくためになった」と言われた時、男性にとっても生きていく中で重要なことが共有されていないと感じました。

実は、私自身ピルコンの活動をしていて、「ちょっと恥ずかしいことをやっているんじゃないか」とか「大っぴらに言っていいものか」という迷いも正直ありました。でもその言葉を聞いて正しいことをやっているんだなという自信がつきました。

現在イベントの参加者は女性が中心ですが、男性にとってもを参考になる企画やイベントを考えていきたいそうです。

性というといやらしいものだと思われがちですが、誰もが避けては通れないことです。結婚、出産と同じ軸上にあり、よりよい人生を送るためにとても大切なもの。男性だけ、女性だけ、ではなく、男女が一緒に学ぶことが大事だと思います。

イベント「Re:Program」にて、リプロダクティブヘルス&ライツに関わる団体の発表を聞く参加者の皆さん。

イベント「Re:Program」にて、リプロダクティブヘルス&ライツに関わる団体の発表を聞く参加者の皆さん。

コンドームの付け方の動画を無料配信!?

「ピルコン」が、目下取り掛かっていることの一つとして、コンドームの付け方の動画をつくって無料配信しようという計画があります。

日本では約8割のカップルがコンドームを避妊に使っていますが、 実は、コンドームの年間避妊失敗率は3~15%にもなると言われています。 中絶した女性の半分はコンドームを使っているのに、避妊ができていない現実があり、「実はちゃんと正しいつけ方を習得してないんじゃないか?」というところからアイデアが生まれました。

動画を見るためにお金を払わなくてはいけないとなると、それが障壁になってしまうので、できれば年内中に動画製作と無料配信ができないかなと思っています。まずはひとつの取っ掛かりとして動画をつくり、今後シリーズ化していって、企業とコラボをしてお金を出してもらったりファンドレイジングしながら製作できないかなと思っています。学校の性教育の教材としても是非使ってほしいですね。

より分かりやすくするために模型を制作したりと、工夫を凝らしてしているというこの動画は、外国語に翻訳して世界中へ配信することも視野に入れているそうです。

他にも続々と!「ピルコン」がやりたいこと

2011年に本格的に始動し、まだ歩き始めたばかりのピルコンはこれからやりたいことがたくさんあります。

まずはリサーチをやりたいと思っています。望まない妊娠についての研究を厚生労働省がやっていますが、中絶に至ってしまう理由のところまで深く掘り下げられておらず、この膨大な数の中絶をドラスティックに減らす具体的な解決策については未だ検証する域まで至っていません。

中絶がどうして起こるのか、中絶する人は何を考えているのか、といったことをまずは100人程度のアンケートをとることで、どういう傾向があるのか見てみようと思っています。

現役ワーキングマザーをゲストに招いたトークイベントの様子。

現役ワーキングマザーをゲストに招いたトークイベントの様子。

さらに、「ピルコン」では、学生など若い人たちに性について教えたり、考えたりする機会を与え、判断基準を持ってもらうこともとても大事だと考えています。そこで生まれたのが、助産師との連携です。

助産師は体力も使うし、いつ呼び出されるかもわからないきつい仕事のため、資格を持っている方でも妊娠や出産をきっかけにやめる人が多いそうです。そういう人達は「潜在助産師」と呼ばれているのですが、連携して何かできないかと考えています。

例えば、学校に講師として派遣し、妊娠や避妊についての講演を行います。その後はメールなどを使ってその助産師さんに自由に相談できるような仕組みができないかなと。学校側では深く教えることが難しい性の悩みを解決できるし、生徒は学校以外のところで相談できるサービスができれば安心して学ぶことができると思っています。

確かに自分を振り返ってみても、学生の頃は友達にさえ性について話すことはハードルが高かったように思います。染矢さんの言うように、きちんと性について学べたり、悩みを相談できる学校以外の第二の場所というのはニーズも大きい気がします。

知らないことから来る性の不幸がない社会を作りたい

とても明るく溌剌とした笑顔が印象的で、自分のことを「スーパーポジティブ」と語る染矢さんですが、実は染矢さんご自身も20歳の頃に妊娠中絶を経験した一人。「当事者になって初めて自分自身にも起こりうる問題なんだと気付きました。本当に悩みましたし、その選択をする前も、した後もすごく辛かった」という当時を振り返りながら、こんな話をしてくれました。

けれど、妊娠、中絶という経験がなかったら今のような機会に恵まれなかったと思います。辛かった時期を乗り越えることができたから自分の生き方に対してすごく前向きになれたし、辛いことも嫌なことも、そこから学んで次に生かすことのほうが価値はあると思うんです。

だから、この経験を自分だけのものとして留めずに、「ピルコン」の活動を通して、性に対して正しい知識を持ち、それを実践することで、知らないことから来る性の不幸がない社会を作りたいと思っています。

 (株)ルシーダと共同主催した「ワーキングマザーに聞く!これからの女性の生き方」参加者の皆さんとの集合写真。右下が染矢さん。

(株)ルシーダと共同主催した「ワーキングマザーに聞く!これからの女性の生き方」参加者の皆さんとの集合写真。右下が染矢さん。

現在、染矢さんは企業での仕事と両立しながら「ピルコン」の活動を続けています。

他にやっている人が少ない分野なので、いろんな人を巻き込んで共通認識を持っている仲間を増やして行ければと思っています。一緒に市場をつくっていけるといいですね。

とその意欲は衰えることを知りません。

今まで自分の人生を若干受け身に送ってきたところもあって、自分と仕事の向き合い方について悩んだ時期もありましたが、今は自分が一番やりたいことを思いっきりやることができている気がします。

自己実現をしている感じというか、「ピルコン」の活動を始めることで、やりがいと生きがいを持って人生を送れるようになりました。「誰かにやらされている」ことではなく、「自分が心からやりたい」と思ったことだから頑張れるんです。

やりたいことをやっているから頑張れる」これほどシンプルで強力なパワーは他にはありません。染矢さんからは、まるで自信と充実感が体中から溢れているかのよう。

「ピルコン」では今後メンバーを増やしていきたいそうです。これからの「ピルコン」に興味を持った方はまずはイベントから参加してみてはいかがでしょうか?

ピルコンの活動をチェックする

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writer ライターリスト

坪根 育美

坪根育美(Ikumi TSUBONE)。greenz.jp初代副編集長(フクヘン)。2010年1月にgreen drinksの日本プラットフォームとなるgreen drinks Japanをスタート。2011年1月より香川県高松市に移住。2012年3月に再び東京に拠点を戻しフリーランスのエディターとしてgreenzに参加。最近の頭の中は都市と地方をつなげる新しい生き方/働き方、マイプロとgreen drinks Japanをどう編集し応援していくか、などなど。 green drinks Japan http://www.greendrinks.jp/ Twitter http://twitter.com/Iku_mii

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