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カンヌ・クリエイティビティ祭2012の社会派クリエイティブ受賞作品を紹介(1)

昨年の様子。Some rights reserved by Digitas Photos

昨年の様子。Some rights reserved by Digitas Photos

毎年恒例のカンヌ・クリエイティビティフェスティバルからのソーシャル・グッドな受賞作紹介、今年もやります!今年もたくさんの素晴らしいクリエイティブが集まったので長い連載になりますが、よろしくお願いします。

まず今回は、ダイレクト部門のGOLD受賞作からご紹介します。

●BOOK BURNING PARTY

ミシガン州のトロイは財政の悪化から公立図書館をなくすことを検討し、図書館を残すために0.7%の増税をするかどうか住民投票することになりました。

投票を前に、潤沢な資金のある反増税団体はその投票すらやめさせるキャンペーンを展開。そのままでは、住民投票もないまま図書館はなくなってしまう勢いでした。

そこで図書館側は考えました。有権者たちに、増税の話ではなく、街の誇りである歴史ある図書館と、図書館のサービスがなくなる意味についての話をしてもらわねば、と。

そしてある作戦に出ました。それは、「BOOK BURNING PARTY」という架空のイベントの告知看板をあちこちに立てるというもの。「もうすぐ図書館を閉めるための住民投票が行われます」というメッセージとともに立てられたその過激な看板は、多くの人に図書館が失われることの意味を考えさせるとともに、怒りとショックのコメントがソーシャルメディア上にあふれ、国際的なニュースにもなりました。

結果として増税して図書館を残すことに賛成する票が予想の342%増で集まり、3,500ドルの資金で、潤沢な資金を使った反増税団体に勝つことになったのです。

●THE INVISIBLE DRIVE

メルセデス・ベンツは燃料電池車の開発で世界をリードしています。燃料電池車は、水素を燃料とし、排出するのは水だけ。環境に負荷を与えないゼロエミッションの車です。

次世代の車として一部の人に注目されている燃料電池車の技術をより多くの人に伝えるために実施されたのが、「THE INVISIBLE DRIVE」です。

ゼロエミッションというのは、ひとことで言うと「環境に対して影響を与えない」ということ。それをそのまま視覚化し、向こう側の景色が透けて見える車を街に走らせたのです。仕組みは、車の片側をLEDの画面で覆い、もう片側にカメラを設置。カメラで写した画像がLEDの画面に映されることで、まるで透き通っているように見えるようになっていたのです。

この「見えない車」を走らせたキャンペーン中には「燃料電池」や「Invisible Mercedes」といったワードが数多く検索され、世界中のメディアにも取り上げられることに。そしてベンツの燃料電池技術の認知度が43%も上がる結果になりました。

●THE SOLAR ANNUAL REPORT 2011

オーストラリアの太陽光エネルギー業界を代表する団体は、その年次報告書で、太陽光の素晴らしさと団体の革新性を伝える試みを実施しました。

その年次報告書は、そのままでは白いページの束でしかありません。でも、太陽の下で開くと、そこから文字やグラフが浮かび上がるのです。そう、太陽光に反応する特殊な印刷を施すことで、団体のことを伝えるとともに、太陽エネルギーの力も感覚的に伝わるようにしたのです。

工夫を凝らした年次報告書は注目を集め、印刷会社は増刷に追われたということです。

●I HAVE ALREDY DEAD

ALSは、筋肉が萎縮していく致命的な病気です。でも、診断されて平均3年で患者が亡くなることから、製薬会社はこの病気を発見するための投資に消極的になる傾向がありました。

そこで、一般の人びとにこの病気の苦しみについて知らせ、世論を喚起し、寄付を集めるために、実際の患者さん自らのメッセージを伝えるキャンペーンを実施しました。キャンペーンのメインコピーは「I HAVE ALREADY DEAD(私はすでに死んでいます。)

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ALSの患者さんたちが生前残した「私たちのためではなく、ALSの苦しみをこの世からなくすために寄付してください」と呼びかけるメッセージは共感を集め、500%増の寄付金を集めることに成功したそうです。

●BLOOD RELATIONS

隣り合う国同士で争いを続けるイスラエルとパレスチナ。政治的・歴史的に解決することが難しい問題で引き裂かれている二つの国の人びとを、運命を共にする人間として草の根レベルで結びつけるために考え出されたのが、国をまたいだ「献血」です。

アイデアの核となったのは「あなたの血が流れている誰かを傷つけることはできますか?」というひとつの問いでした。実際に献血ができない人たちのためはFacebook上で仮想血液の寄贈をすることで支援の意思を示すことができるようにもなっていました。

この血を分かち合いながら、流血の争いをやめようというメッセージは国を超えて大きな反響を呼び、アメリカのホワイトハウスや国際赤十字の支援を受けるまでに広がりました。

●INTEGRATION DAY

・TOYOTA

・illy

ダウン症の人たちの生活を守るには、彼らを保護する人たちがいなくなっても生活できるよう、雇用の機会を提供することが大切です。

ダウン症の人たちをもっと社会に受け入れてもらうために、「世界ダウン症の日」に合わせて、イタリアではさまざまなクライアントを巻き込んだ共同キャンペーンが実施されました。その目玉は、ダウン症の人たちが主人公になったCMの放映

Illy CoffeeやリキュールのAverna、クレジットカードのCartasi、トヨタ、パンパースなどの有名なブランドのおなじみのコマーシャルを、モデルとしてダウン症の人たちを主人公に替えたバージョンで放送したのです。

また、テレビ番組ではいつものスターに代わってダウン症の人が登場するなど、一日を通してたくさんのダウン症の人たちがメディアに登場しました。このキャンペーンは国中で話題になり、事務局にはダウン症の人たちの雇用について相談する企業からの相談が600%も増えたということです。

●HELP I WANT TO SAVE A LIFE

毎年、世界中では65万人以上が白血病やリンパ腫と診断されています。彼らの唯一の希望は骨髄移植ですが、骨髄のドナーとなる人は十分ではないので、半分くらいの人が自分に合うドナーを見つけられずにいます。

少しでも骨髄のドナーを増やすために考えられたのが、名前と少量の血があれば送れるドナー登録のキットでした。キットは店頭で販売される救急箱の中に入れられ、髭剃りに失敗したり紙で指を切ったりといった、日常的に血が出るときに集められるように工夫されました。

このキットはTEDを皮切りに、さまざまなメディアで取り上げられ、骨髄ドナー登録者を5倍に増やすことに成功しました。

CM

次回は、Direct LionsのSILVER受賞作からお届けします。どうぞお楽しみに!

(翻訳協力:@t_saori