ISSUE 食と農

4 years ago - 2012.06.18

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顔の見える農家・料理人・食べる人をつなぐ「はたんぼキッチン」が展開する、農家の会員制度「CSA」とは? [マイプロSHOWCASE]

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最近よく耳にする「顔の見える農家」という言葉。けれど野菜を買う時、本当の意味でつくり手の顔が見えているでしょうか?スーパーで「〇〇さんの野菜」と書かれた札を見かけても、どんな人がどんな風にその野菜をつくっているかはわからない。

はたんぼキッチン」が提案するのは、農家、消費者、料理人が実際に顔を合わせ、知り合える身近な関係です。「生産地から電車か車で3時間圏内」に住むお客さんだけを対象に、有機野菜のパッケージを販売しています。欧米ではすでに広まりつつある、農家の会員制度CSA(Community Supported Agriculture)のモデルを展開し始めているのです。

産地まで3時間圏内に住む地元人を対象に進める「地産地消」の野菜宅配サービス

光岡大介さんが事務局長を務める「はたんぼキッチン」は、兵庫県で有機農業を行う農家の生産出荷組合です。

地元の人たちに有機野菜を食べてもらうため、一昨年前より野菜の宅配サービスを始めました。「てんとう虫BOX」「みつばちBOX」といった、旬の野菜が詰まったボックスが、週1~4回自宅に届きます。

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「てんとう虫BOX」(1回 2,500円)
「みつばちBOX」(1回 3,250円) ※いずれも送料込み
現在、第五期ファームメンバーの募集中。(第五期お届け期間は2012 年6 月1 日~2012 年9 月30 日)詳細はこちら

全国的に有名な、「らでぃっしゅぼーや」や「OISIX」といった宅配サービスとは異なるのは、生産地までの距離が電車か車で3時間圏内、つまり物理的に顔の見える範囲に住む方のみを対象にしていること。

私たちが大切にしたいのは、ホストファームである農家を実際に訪れて、どんな風に野菜がつくられているのかを知った上で、食べていただくことです。

将来、商品によっては全国を対象に販売するものも出てくるかもしれませんが、できれば安全安心というだけでなく、農家がどれだけ手をかけて野菜をつくっているかを知ってほしい。食育の意味でも、大人にも子どもにも、とてもいい体験になると思います。

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会員制という選択、CSAとは?

「CSA(Community Supported Agriculture)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?アメリカやフランスでは少しずつ広まりつつあるモデルで、消費者が農家の会員となり、年間をとおして買い支える仕組みです。光岡さんたちが目指すのも、このCSAモデルです。

農家にとってはあらかじめお客さんが見えていることで、年間安心して野菜をつくることができ、消費者にとって農家は「自分の代わりに野菜をつくってくれる人」なのです。海外では、天候リスクも消費者が負うなど農家を守る仕組みであり、将来の農業のあり方の一つとして考えられています。

CSAでは「顔の見える関係」はとても理にかなっていて、「この方のつくった野菜なら食べたい」と思った消費者が、農家とパッケージ契約をすることができます。

「はたんぼキッチン」では、会員のことを「ファームメンバー」、生産農家のことを「ホストファーム」と呼び、現在会員数は約80名。目下、400名を目指しているのだそう。

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農家、料理人、消費者3者が一堂に会する場

「はたんぼキッチン」では、年に数回、農家を訪れる「産地訪問ツアー」を行っています。

今回私も参加した産地ツアーでは、神戸市郊外の「なでしこ農園」を訪れました。ツアーには、光岡さんが一方で経営するオーガニックレストラン野菜ビストロ「レギューム」のスタッフが参加。まさに農家、料理人、消費者の3者が一堂に会したツアーとなりました。

集合場所だった西宮市からバスで約1時間も走ると、緑の豊かな郊外に出ます。「なでしこ農園」は、西宮市内にある学校法人「阪急学園」の関連農園で、食育にも力を入れています。ここをきりもりする農園長の村田智洋さんが、出迎えてくれました。

なでしこ農園の村田さん

なでしこ農園の村田さん

シェフ、レストランスタッフや、会員であるお客さん、農作業に関心のある若い女性、小さな子どもさん含めて、参加者は約20名。前回のGWには、なんと50名ほども集まったのだとか。

現地につくと、まずは村田さんの案内で農園をまわります。いまビニールハウスでは何がつくられているのか、どんな風に堆肥がつくられるのか、この農園の水源池はどこなのか。子どもたちも、興味津々で繁みへ足を踏み入れます。

ビニールハウスにはいちごが植わっていました。

ビニールハウスにはいちごが植わっていました。

水源地は近くの森の中の泉。

水源地は近くの森の中の泉。

お昼には、「レギューム」のスタッフが調理した、有機野菜のお弁当を皆で囲むという時間も。農家にとっては、目の前で自分のつくった野菜を食べてもらえる機会であり、料理人にとっては自分の料理が試される場でもあります。

参加者には、目の前のプロがつくったものを食べるという、なんとも贅沢なランチタイム。野菜のつくり手、料理の担い手、食べる人が交流する、「はたんぼキッチン」が提案する理想的な姿を見ることができました。

フレンチビストロ「レギューム」スタッフによるお弁当

フレンチビストロ「レギューム」スタッフによるお弁当

お昼の後は、全員で農作業のお手伝いです。

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西宮駅前にオープンした、野菜ビストロ「Les Legumes」

 光岡さんは、もともとコンサルティング会社に勤めるサラリーマン。大学時代からの夢であった有機農業を広める事業を行うために、9年前に会社を辞めて、オーガニック野菜を取り扱う八百屋からスタートしました。

その後、オーガニックレストランとの共同事業や、アンテナショップの運営などを経て、現在は「はたんぼキッチン」(兵庫県有機農業生産出荷組合)の事務局長に就任。昨年は、この組合員や賛同者の出資による「ファームアンドカンパニー株式会社」という事業体を立ち上げました。

いま、組合では新規就農者の支援や、CSAを広める活動を始めています。一方、ファームアンドカンパニーでは西宮駅前の好立地に野菜ビストロ「Les Legumes(レギューム)」という、有機野菜を使ったフレンチのビストロをオープンさせました。

このお店が今、西宮ではとても人気があるとツアー参加者のひとりが教えてくれました。月2000人のお客さんが来店するのだとか。ビルの最上階にあり、大きな開放的な窓とテラスのある素敵なお店です。

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有機野菜をつかった野菜オードブル(左)とスイーツ(右)

有機野菜をつかった野菜オードブル(左)とスイーツ(右)

やはり組合だけでは、事業化の部分が追い付かないこともあります。どんなにいいことをやっていても、収益化できなければ長続きしませんから。農家はひとりひとりが経営者なので、協力して何かをやる場合にも無理は言えません。

今回しっかり事業体として立ち上げ、収益化が見込めることで、若い農家の方々と組んで農産物の販売も始めたいと思っているんです。ようやくここまできた、という感じです。うまくいかないことがあっても、あまり深刻に考えないようにしていますね。なるようにしかならないという性格でもあるので(笑)。

「はたんぼキッチン」代表の光岡大介さん(右)

「はたんぼキッチン」代表の光岡大介さん(右)

地方で採れた野菜を都心ではなく、栽培された各地域で消費すること。それが、一般の市場相手ではなかなか難しい有機野菜を増やしていくひとつの手段かもしれません。

CSAは、安心で安全なものを食べられるだけでなく、衰退が危ぶまれる農家の将来を支えるひとつの可能性でもあるのです。

はたんぼキッチンの活動についてもっと知ろう

野菜ビストロ「Les Legumes」を訪れてみる

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甲斐 かおり

甲斐 かおり

greenz シニアライター 編集・企画・執筆。地域コミュニティ、モノづくり、里山・郷土文化、農業をテーマに取材し、雑誌やwebで書いています。greenz.jpではコミュニティ、町づくり、「地域からの発信」を主に。『TURNS』『ソトコト』『自然栽培』ほか。 twitter: @karorirorin Facebook:甲斐かおりページ

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